登場から40年を超えてもまだまだ走る! あらためてランクル70を眺めてみよう・ランクルBASE「ランドクルーザー70 Overseasカスタム」【東京オートサロン2025】

ランクルBASEが手がける「ランクル70 Overseas カスタム」。
ランクルBASEのブースは、TOYOTA GAZOO Racingと同じブースに併設されていた。
トヨタ自動車のグループ会社にしてランドクルーザー70を製造するトヨタ車体が企画運営しているのが「ランクルBASE」。親会社のトヨタ自動車からもきっちり認められた、ランクル関連を専門業務とする立派なひとつの部門なのだ。
ここに展示されていた、ランクル70 Overseas カスタムをご紹介しよう。
TEXT/PHOTO:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)

ランクルBASEのブースに展示されていたのは当然ランクル70

1984年の登場から昨年2024年に発売から40周年を迎えた長寿モデルだ。もっともこれは世界的に見ればの話で、日本では2004年に生産終了したのち、2014年にバンモデルのガソリンエンジン車が5MT期間限定で復活発売され(発売30周年)、2023年11月には乗用ワゴンのディーゼルのATで再々販売されている。それが現行モデルだ・・・あらためて見ると、ランクル70は2004年の生産終了以来、ほぼ10年ごとに復活を遂げていることがわかる。

それにしても、通常の乗用車とはモデルサイクルが外れがちなオフロード4駆とはいえ、40年にも渡って生産されているのは異例だ。このままいくと、三菱Jeepの45年に追いつくのではあるまいか。

さて、ランクルBASEのブースで展示されていたのは、「ランドクルーザー70 Overseasカスタム」。ランクルBASEオリジナルパーツとして販売する「Overseas PARTS」を装着したモデルだ。

ランクルBASEが手がける「ランクル70 Overseas カスタム」。

その「Overseas PARTS」とは、海外仕様のランクル70に装着されているパーツシリーズのことで、次のパーツが揃っている。

・メッキフロントバンパー(8万8000円・消費税込み、以下同)
・メッキドアミラーカバー(1万3200円)
・アルミサイドステップ(3万0800円)
・シュノーケル(11万円)
・リヤコンビレンズ(2万7500円)
・16×7Jアルミホイール(ダークグレーメタリック・5万0710円)
・ラゲージマット(2万0350円)

本記事では、まず日本では見かけないシュノーケルについて、ハジさらしを交えてお伝えしよう。

右フェンダーから右フロントピラーにかけ、樹脂製のパイプが装着されている。オフロード4駆マニアは先刻承知だろうが、これがシュノーケルだ。

ランクルBASEが販売するシュノーケル。

ハジかいたのはここから。

「これはフード辺りまでの深さがある水の中でもエンジンが何とか吸気できるようにするためのものですか? インターネットの動画で、このシュノーケルをつけたランクルが、ラジエーターグリルが水に浸かるほどの中を走っているのを見たことがありますが……」

担当者の方に伺ったら、

「いやいや、そうではありません。」と。

オーストラリアのような砂ぼこりが舞う中を走るとき、ラジエーターグリルから空気を取り入れて吸気する通常の方式だと砂ぼこりも一緒に吸ってしまう。そこで砂ぼこりが少ないルーフ高さの位置から吸気するための仕掛けがシュノーケルなのだそうな。
にわか知識のくせに知ったかぶった質問なんてするもんじゃないとハジをかいた瞬間だったがこの担当の方も、このランクル70の業務に就くまでは同じ勘違いをしていたそうだ。

「だから動画などで見る、水の中を走る使い方は間違いです。本当はあの走り方をすると水で横に流されます」

みんな、気をつけましょう。

さて、このシュノーケル、カタログによれば取付時間4時間となっているが、実際には車両を「1泊2日お預かりして」取り付けるという。
加工部位は右フェンダーと右ピラーの穴あけ。それからエアクリーナーのフィルターも専用のものに付け替える。これで税込み11万円は、台数や作業内容を考えると高いとは言えないだろう。

これは展示車の話ではなく、ランクル70実車そのものの話だが、あらためておさらいだ。

運転席に座ってまず抱く違和感は、通常なら水平もしくは車両前方に向かうにつれて下がっていかなければならないエンジンフードが、手前から前に向かってまず盛り上がっていることだ。

歩行者対策で高さが情報移動したフード。

これは歩行者保護対策で、はねてしまった歩行者の頭部がフードに当たるとき、エンジンとフードの間の距離を稼ぐための処置。この距離が短いと歩行者は軟体であるフードを介して、剛体であるエンジン(のシリンダーヘッド)から損傷を受けてしまう。確かその距離は一律50mmと聞いたような気がしていたのだが、これも不勉強の露呈のハジさらしで、担当の方は「車種によって異なり、ランクル70の場合はもっと距離を稼いでいる」と。

考えてみたらエンジンサイズ、特に丈が大きくなるほどフードだってより上方に離さなければならない。軽自動車の50mmとレクサスLSの50mmとランクルの50mmは違って当然、ランクル70なら50mm程度の距離じゃあとうてい足りないわけだ。

もうひとつ、いまのランクル70を見て誰の目にも奇妙に映るのは、リヤランプ一式がバンパーに移ったことによるその跡地の姿だろう。

いまのランクル70の本来の姿(写真は2023年モビリティショーで展示されていたランクル70)。
今回の展示車は、ランクルBASEが販売するリヤコンビレンズ(2万7500円)がついているからまだサマになっている。
リヤランプすべての機能はリヤバンパーに移されている。

実はこれは、バックドアが観音開きであるランクル70ならではの措置なのだ。

ランプ位置が従来のままだと観音開きのバックドアを開けた際、その反対側からテール&ストップなりターンシグナルなりリバースなりがバックドアに隠れて見えなくなってしまうため、すべてのリヤランプ機能をバンパーに移し、跡地はカバーで覆ってある。これは1984年当時にはなかった法規対応だったのだ。

バックドア閉じ状態。
観音開きのバックドアを開けると在来のランプが隠れてしまうため、バンパーにランプを移す必要があったのだ。

ただ、過去のリヤランプそのままの形の車体色カバーはどう見ても絵にならない。というわけで、ランクルBASEではさきに紹介した2万7500円の「リヤコンビレンズ」を販売している。

筆者は、「一度は所有してみたい」という思いで旧ジムニーを検討し、最終的に旧ジムニーシエラを選んで乗っているところだ。

「いまのクルマはつまらない」「いまのクルマは家電化した」といわれて長いし、筆者も同じ思いを抱いているが、「つまらな」くなって「家電化し」てくるにおよび、従来の姿のままでいただけなのに、逆に武骨さが目立つようになってにわかに人気が上昇したランクル70。このランクル70も、財力があったら「野郎のクルマ」として、一度は所有してみたい1台だ。

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