激安!?実際どうなの? 284万円の小型EV「ヒョンデ・インスター」ライバルと比較して買いか?【東京オートサロン2025】

全長:3830mm、全幅:1610mm、全高1615mm。日本で扱いやすいサイズとなっている。
東京オートサロン2025において、ヒョンデは新しいコンパクトクラスのBEV(電気自動車)「インスター」をジャパンプレミアした。軽自動車より一回り大きいくらいのボディに、Cセグメント並みのバッテリーを搭載したBEVのスペックをライバルと比べてみると、284万9000円〜357万5000円という価格以上にコスパの良さが明確になってきた!

PHOTO&REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya)


バッテリー総電力量49kWhの最上級グレードでも357万5000円はお得?

ヒョンデ・インスターは、バッテリー総電力量は42kWhと49kWhの2タイプを設定する。

日本ではゼロエミッション専用ブランドとして確立されている「HYUNDAI(ヒョンデ)」が、コンパクトBEVの「インスター」を日本初公開する場として選んだのは東京オートサロン2025だった。ともすればBEVは高価格帯で、庶民には関係ないカテゴリーというイメージを持っているかもしれないが、インスターのエントリーグレードは284万9000円というハイブリッドカーと比較したくなるほど身近な価格設定となっている。

また、コンパクトなボディながら上級グレードでは49kWhという大きな電力量を持つバッテリーを採用しているのも見逃さないポイントのひとつ。全長3.8m程度のボディにどうやってこれだけのバッテリーを搭載したのかや、日本での一充電航続距離がどうなるのかは気になるが、ともかくコンパクトBEVだから長距離ユースには向かない…ということはなさそうだ。

もっとも装備が充実したインスターの最上級グレード「Lounge」の主なスペックと価格は以下のようになっている。

ヒョンデ・インスター

【INSTER Lounge】
全長:3830mm
全幅:1610mm
全高1615mm
バッテリー総電力量:49kWh
乗車定員:4名
最高出力:85kW
最大トルク:147Nm
メーカー希望小売価格:357万5000円

ボディサイズは、日本の軽自動車規格より一回り大きいくらいで、乗車定員が4名となっていることから、日本でもっとも売れているBEVである軽自動車の日産SAKURAと比べたくなるのが人情だろう。ADAS機能「プロパイロット」を標準装備する「G」グレードのスペックと価格は以下の通りだ。

日産・サクラ

【SAKURA G】
全長:3395mm
全幅:1475mm
全高1655mm
バッテリー総電力量:20kWh
乗車定員:4名
最高出力:47kW
最大トルク:195Nm
一充電航続距離:180km
メーカー希望小売価格:308万2200円

比較するポイントとしては、インスターのバッテリー総電力量は倍以上であるにもかかわらず、価格差は50万円を切っているということだ。インスターの一充電航続距離については未公表だが、この価格差で航続距離でも倍以上の差があるならば、インスターのコスパは圧倒的といえそうだ。

日産リーフより大きなバッテリーを搭載して圧倒的に安い

テールレンズのデザインは上級モデルであるアイオニック5にも通じるもの。

それでは、国産BEVの雄といえる日産リーフと比べてみるとどうだろうか。リーフには40kWhと60kWhのバッテリーが用意されている。CセグメントのリーフとコンパクトBEVのインスターを比べると、ちょうどリーフが搭載する2種類のバッテリーの中間的な電力量となっている。

ここでは40kWhのリーフGグレードとスペックを比べてみよう。

【LEAF G】
全長:4480mm
全幅:1790mm
全高1560mm
バッテリー総電力量:40kWh
乗車定員:5名
最高出力:110kW
最大トルク:320Nm
一充電航続距離:322km
メーカー希望小売価格:444万8400円

いかがだろうか。インスターのほうがバッテリー総電力量が大きいにもかかわらず、価格では約87万円も安価になっている。ボディサイズ的には比較すべきではないという意見もあるだろうが、BEVのコストを左右するバッテリー搭載量と価格の関係にフォーカスすればインスターのコスパは、やはり優秀といえそうだ。

プジョーやBYD、総電力量が同等の輸入BEVと比較してみよう

乗り心地など走行フィールについては未確認なので、今回はスペック上での比較だ。

というわけで、国産BEVの代表モデルといえる日産SAKURAおよびリーフと比べてみると、バッテリー総電力量と価格の関係においてインスターのコスパが優秀というのは間違いなさそうだ。

では、輸入BEVと比べてみると、どうなのだろうか。冒頭でも記したように欧州系BEVの多くは圧倒的なバッテリー総電力量により航続距離を稼ぐといったタイプが多い。その中でインスターにバッテリー総電力量が近いモデルとしてプジョーe-208をピックアップしてみよう。

プジョー・e-208

【e-208 GT】
全長:4095mm
全幅:1745mm
全高1465mm
バッテリー総電力量:50kWh
乗車定員:5名
最高出力:100kW
最大トルク:260Nm
一充電航続距離:395km
メーカー希望小売価格:512万4000円

ほとんど同じバッテリー総電力量で150万円以上の価格差ではコスパ的には勝負にならないだろう。インスターとe-208を比較する上で覚えておきたいのは、e-208の一充電航続距離が395kmという点だ。同じくらいのバッテリー総電力量でボディの小さなインスターには、この数値を超える性能が期待される。

もう一台の比較対象はBYDのエントリーモデル「ドルフィン」だ。こちらは標準版(44.9kWh)とロングレンジ(58.56kWh)を用意するが、ここでは前者のスペックで比べてみることにしよう。

BYD・ドルフィン

【BYD・DOLPHIN】
全長:4290mm
全幅:1770mm
全高1550mm
バッテリー総電力量:44.9kWh
乗車定員:5名
最高出力:70kW
最大トルク:180Nm
一充電航続距離:400km
メーカー希望小売価格:363万円

モーターの最高出力や最大トルクといったスペックにおいても互角といえるもので、インスターの購入を検討するときに最大のライバルとなりそうだ。

ボディサイズが異なるため、バッテリー総電力量と価格だけを比べるのはアンフェアかもしれないが、それでも価格競争力に定評あるBYDのモデルをライバルと想定しても、インスターのコスパが際立ってくるのは事実。

ヒョンデ・インスターについては、アンダー300万円の価格設定としたエントリーグレードに注目しがちだが、最上級グレードをライバル比較しても、コスパについて不満を覚えることはなさそうだ。もっとも、いくらスペック上のコスパが優秀に見えても、乗り味が「安かろう…」と感じるものでは満足度は高まらないだろう。はたして、日本仕様としてサスペンションなどもセッティングしてきたというインスターは、公道でどんな走りを見せてくれるのか。著名モータージャーナリストによる公道試乗レポートが待たれるといえそうだ。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…