日産最高級車の最高級グレード「プレジデント・ソブリンVIP」、令和なら約1214万円!【今日は何の日?1月30日】

日産・プレジデント ソブリン
日産・プレジデント ソブリン
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日1月30日は、日産自動車の最高級車「プレジデント」の2代目に設定された最高級グレード「プレジデント・ソブリンVIP」が誕生した日だ。マイナーチェンジで追加設定された最高級グレード「ソブリン」の8年後に、さらにソブリンを超える最高級グレード「ソブリンVIP」が登場したのだ。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・60年代国産車のすべて、80年代日産車のすべて

■プレジデントの最高級グレード、ソブリンVIP誕生

1985(昭和60)年1月30日、日産自動車が誇る最高級車「プレジデント」の2代目で1977年に設定された最高級グレード「プレジデント・ソブリン」に対し、さらに後席周りの高級感を高めた最高級グレード「プレジデント・ソブリンVIP」が設定された。

日産・プレジデント ソブリンVIP
1985年に追加された日産2代目プレジデントで追加設定された最高級グレード「プレジデント ソブリンVIP」

本格的なショーファーカーのプレジデント誕生

純国産ショーファーカーへの期待と要望が強まった1960年代半ばの1965年12月に日産プレジデントは誕生した。主要な用途は官公庁要人のVIPカーや会社幹部の社用車といったショーファーカーだった。

日産初代「プレジデント」
1965年に誕生した日産初代「プレジデント」

堂々たるボディサイズは、5045/1795/1460mm(全長/全幅/全高)で、ショーファーカーらしく広い室内スペースいっぱいに豪華さを演出。また、熱線吸収ガラスのフロントウインドウや電熱線入りリアウインドウ、パワーウインドウ、パワーベンチレーター、パワードアロック、パワーシートなどの豪華な装備が満載された。

日産初代「プレジデント」
日産初代「プレジデント」

ボディは、強度剛性の高いモノコックボディを採用。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リアがリーフリジッドという当時の高級車の定番を装備。ステアリング機構として、乗用車として日本初のパワーステアリングが採用されたことも注目された。

パワートレインは、最高出力180ps/最大トルク32.0kgm を発揮する4.0L V8 OHVエンジンと125ps/23.0kgmの3.0L直6 OHVエンジンの2機種と、3速ATおよび3速MTの組み合わせ。車両価格は、4つのグレードで185万/200万/250万/300万円に設定された。

日産初代「プレジデント」
日産初代「プレジデント」のパトカー仕様…レアだ

2代目の最高級グレードとしてソブリン誕生

プレジデントは1973年に2代目に移行し、ボディサイズは5280/1795/1460mmと先代より全長が伸び、フロントマスクが突き出したようなデザインとなった。パワートレインは、グレードAとBには125ps/23kgmを発揮する3.0L直6 OHVエンジンが、Dグレードには排気量を拡大した200ps/35kgmの4.4L V8 OHVが搭載され、さらなる上級化が進められた。

日産2代目「プレジデント」
1973年にデビューした日産2代目「プレジデント」

そして1977年のマイナーチェンジでは、昭和53年排ガス規制に適合させ、同時にDグレードよりさらに上級のソブリンが追加で設定された。

日産「プレジデント・ソブリン」
1977年に追加された最高級グレード、日産「プレジデント・ソブリン」

ソブリンは、その大きく威厳のあるスタイルに、フロントグリルやリアバンパー、リアコンビランプなどを変更し、さらにリアにパワーシートを標準装備。その他にも、クラッシュド・モケットのルーズクッションシート、シャギー風カーペット、黒色のファッションホイールが採用された。ソブリンの車両価格は、462.7万円だった。

日産2代目「プレジデント」
1977年に追加された最高級グレード、日産「プレジデント・ソブリン」

ソブリンを超える最高級グレードのソブリンVIP誕生

日産・プレジデント ソブリンVIP
日産・プレジデント ソブリンVIP

そして1980年1月のこの日、ソブリンを超える最高級グレードのソブリンVIPが追加された。ソブリンから強化されたのは、主に後席回りの装備である。

日産「プレジデント・ソブリンVIP」のリアビュー
日産「プレジデント・ソブリンVIP」のリアビュー

世界初のリヤシート・エアサポート機構(後席左側)は、VIP席乗員の腰椎部をエアマットで支持する電動エア式ランバーサポート、および大腿部を支持する電動エア式サポート。また、リラックスシート(セパレートシート車のみ)は、助手席の背もたれの中央を後ろに倒して、そこに足を延ばせるリラックスシートである。

日産「プレジデント・ソブリンVIP」の豪華なコクピット
日産「プレジデント・ソブリンVIP」の豪華なコクピット

その他にも、赤外線を利用したラジオとエアコンの調整が後席からできる機能、世界初のリア断熱ガラス、ヒーター付きリアシートなどを装備。また、専用のエンブレムバッジも取り付けられた。

日産「プレジデント・ソブリンVIP」
日産「プレジデント・ソブリンVIP」の前席シートアレンジ
日産「プレジデント・ソブリン」
日産「プレジデント・ソブリン」の広々した後席アレンジ

ソブリンVIPの車両価格は、フロントシートが手動のデュアルシート仕様が594.7万円、フロントシートが電動のセパレートシート仕様が607.0万円に設定。当時の大卒初任給は、11.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で1189万円/1214万円に相当する。

日産が誇った最高級車プレジデントも2010年に生産終了

プレジデントはその後、1990年に3代目に移行。3代目プレジデントは、専用設計を止めて前年に北米市場向けの高級車ブランドとして米国で設立されたインフィニティのフラッグシップ「Q45」をベースにした。Q45の全長とホイールベースを150mm伸ばし、重厚感のある大型フロントグリル、七宝焼きのオーナメントなどを備えた最高級車として仕上げられた。

3代目プレジデント・JHG50型
1990年10月に登場の3代目プレジデント・JHG50型が登場

そして、2003年に最終モデルとなる4代目が登場。シーマと同じコンポーネントを利用した最上級モデルだったが、当時日産が進めていたラインナップの整理によって2010年に生産を終えた。

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長くライバル関係にあったトヨタのセンチュリーは、モデルチェンジしながら現在もトヨタが誇る最高級車としてラインナップし続けている。当時の日産には、プレジデントを存続させる余裕がなかったということだろうが、2025年1月現在、ホンダとの経営統合に向けた協議がされていることを考えると、再び日産からプレジデントのような最高級車の出現は難しいかもしれない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…