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■2代目インサイトは実用性を重視したハッチバックに変身
2009(平成21)年2月5日、ホンダのハイブリッド車「インサイト」の2代目がデビュー(発売は翌6日)した。IMAシステムを搭載して燃費トップを達成した初代に続いて、2代目もIMAを搭載したハイブリッド車だったが、ユーザー層の拡大を狙って5ドアハッチバックとなった。

プリウスに対抗して登場した初代インサイト

初代インサイトは、1997年に誕生したトヨタ「プリウス」に対抗する形で、1999年にデビューした。インサイトはプリウスとは異なり、ファストバックスタイルの2シーターハイブリッド車だった。

3ドアの流線形スタイルでスパッと切り落とされたようなリアハッチを持ち、リアホイールを覆うホイールスカートが特徴。これにより、空気抵抗Cd値は初代プリウスの0.3を上回る0.25を達成し、さらにアルミフレームやアルミのボディパネル、樹脂パネルを使うことによって徹底した軽量化が実現された。

パワートレインは、最高出力70psの1.0L直3 SOHCエンジンに、エンジンをアシストする薄型DCブラシレスモーターをトランスミッションとの間に挟み込んだIMAシステムを搭載。トランスミッションは、CVTだけでなく5速MTも設定され、こちらも徹底的な軽量化が図られた。
IMAは、減速時にはモーターが減速エネルギーによる発電を行ない、搭載されている駆動用ニッケル水素電池に充電する。この電気を使ってモーターを駆動させ、エンジンの駆動力をアシストする、いわゆるマイルドハイブリッドである。
これにより、35.0km/L(10-15モード)という当時の世界一の燃費を達成。初代インサイトは、2シーターで荷室も狭いのである程度限定した販売にはなるものの、実用性よりもプリウスの燃費28.0km/Lを上回る燃費を追求したハイブリッドだった。
実用性を重視して5ドアハッチバックとなった2代目
燃費訴求に徹した初代インサイトは、2006年7月まで1.7万台の販売台数で生産をいったん終了した。そして、2009年2月のこの日に復活、2代目へと移行した。

ボディタイプは、実用性を考慮して5ドアハッチバックに変貌。シャープなラインで構成されたスタイリングは、全体的にはプリウス似となった。またインテリアについては、速度計をデジタル表示にしてエコドライブの度合いをスコアで表示するなどして、ハイブリッドらしさを強調していた。

ハイブリッドシステムは、初代と同じマイルドハイブリッドのIMAシステム。エンジンは、最高出力88psの1.3L直4 SOHC、組み合わせるモーターは初代と同じ10kWの薄型DCブラシレスモーターである。組み合わせるトランスミッションはCVTのみでFFレイアウト、駆動バッテリーも初代と同じニッケル水素電池が使われた。

2代目インサイトは、エンジン出力が向上し、低回転域などエンジンの駆動力が不足する領域をモーターが補うので、1.3Lエンジンでも感覚的には1.5Lのノーマルエンジンと同等の走りが実現された。

燃費は、30km/L(10-15モード)/26km/L(JC08モード)で、燃費訴求車だった初代に較べると燃費は低下したが、その分走りや実用性は向上した。車両価格は、標準グレードで189万円に設定された。
ライバルのプリウスは大きく進化
ライバルのプリウスは、2003年に初めてのモデルチェンジで2代目に移行。エンジンは、初代と同じ1.5Lだったが、ハイブリッドシステムは駆動電圧の高電圧化やモーター出力を33kWから50kWに高めた新世代THS IIを搭載して、燃費は35.5km/L(10・15モード)へと向上した。

そして、インサイトが2代目となった2009年に3ヶ月遅れで3代目がデビューした。3代目プリウスは、モーター出力(50kW→60kW)の増大とともに、エンジン排気量を1.5Lから1.8Lへと拡大。さらに、先進的な流線形のスタイリングによる世界トップクラスのCd値0.25を実現した空力性能、電動ウォーターポンプや排熱回収器の採用によって、燃費は世界トップの38.0km/L(10-15モード)/32.6km/L(JC08モード)を達成した。

本格ハイブリッドを搭載したプリウスは、2代目以降、燃費性能でインサイトを大きく引き離し、販売でもインサイトを圧倒。結局、インサイトは2018年の3代目を最後に2022年に日本での販売を終えた。
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ホンダのハイブリッドは、インサイトの“IMA”で始まったが、マイルドハイブリッドなので燃費ではどうしても本格ハイブリッドのプリウスには敵わない。インサイトとは別に、ホンダはさらなる燃費向上を目指して本格ハイブリッドの“i-DCD”や“i-MMD”を経て、現在は“e:HEV”に収束させてホンダらしいハイブリッドを完成させている。
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