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■NSXタイプRに続いてタイプSが登場
1990年に鮮烈なデビューを飾ったホンダのスーパースポーツ「NSX」。1992年の「NSXタイプR」に続き、さらに走りを極めた「NSXタイプS」が1997(平成9)年2月6日にデビューした(発売は翌7日)。排気量を3.2Lに拡大したエンジンに新設定された6速MTを組み合わせた専用チューニングを施したスペシャルモデルだ。

ホンダスポーツの象徴として誕生したミッドシップのNSX
NSXは1990年2月に、新時代を象徴するホンダ渾身のミッドシップスーパースポーツとして華々しくデビューした。

注目されたのは、世界初のオールアルミ・モノコックボディなど、クルマ全体の90%をアルミ化によって軽量化したこと。強度と剛性を維持しながら、加工法や溶接技術の難しいアルミを多用し、クルマ全体で200kgの軽量化に成功し、車両重量1350~1390kgいう驚異的な軽量化と高い剛性を両立させた。

またリトラクタブルヘッドライトやグリルレスのフロント周り、スポイラー一体のテールエンドなど優れた空力性能を実現。エンジンは、ドライバーの背後に最高出力280ps/最大トルク30.0kgmを発揮する3.0L V6 VTECエンジンを搭載し、超軽量チタンコンロッドやモリブデン鋼のカムシャフトなど、F1エンジン並みの材料が惜しみなく使われた。

軽量化ボディに高速高出力エンジンをミッドシップしたNSXは、0→100km/h加速が5速MTで5.0秒(4速ATは6.8秒)、最高速度は270km/hと、欧州のスーパーカーにも負けない走りと安定した操縦安定性を誇った。
一方で、誰でも乗りこなせるスポーツカーとして、5速MTだけでなく4速ATが用意されている点も他のスーパースポーツとは一線を画した。
スペシャルモデルのタイプRとタイプTを追加

ホンダは、より高次元な運動性能を実現するために1992年にNSXタイプRを投入。その特徴は、さらなる材料置換による軽量化とホンダがF1で磨いたレーシングカーのチューニング技術が採用されたこと。具体的な軽量化として、バンパービームのアルミ化、リアスポイラー素材見直し、レカロ製の超軽量フルバケットシート、ENKEI製超軽量アルミホイールなどで、NSXよりもさらに120kgの軽量化に成功した。

足回りもレーシング仕様でまとめられ、ダンパーやスプリングの強化はもちろんのこと、車高を10mm下げ、分離加圧式高応答ダンパーなどを採用。エンジンスペックは同じだが、レーシングチューンニングを施し、トランスミッションは5速MTのみ。

さらに1995年には、オープントップの「NSXタイプT」がデビュー。タルガトップのオールアルミ製ルーフの脱着は、左右のレバーによる簡単な操作で行なえ、取り外されたルーフはトランクスペースを犠牲にすることなくリアキャビン内に収めることができた。
優れた走りとともに爽快感が楽しめるオープンスポーツも、ユーザーの期待に応えるために追加されたのだ。
極めつけとしてさらにスポーツ志向を高めたタイプSが登場

1997年2月のこの日、NSXをマイナーチェンジし、同時に新たに走りを進化させたタイプSが設定された。この日行われたマイナーチェンジでは、排気量を3.2Lに拡大し、トラスミッションが5速MTから6速MTにグレードアップされた。

モデルSは、“ワインディングロードを極めて爽快に駆け抜けること“をテーマに開発。軽量シートや電動パワーステアリングの簡略化などで45kgの軽量化、専用デザインのBBS鍛造アルミホイールの採用で5kgのバネ下荷重の軽量化が達成された。

パワートレインは、マイナーチェンジで新たに設定された最高出力280ps/最大トルク31kgmの3.2L V6 VTECエンジンと6速MTの組み合わせ。全域のトルクアップが図られたことで、さらにスポーティで力強い走りが実現された。

その他にも、MOMO製本革巻きステアリングホイール、レカロ製フルバケットシート、チタン削り出しシフトノブ、サイドインテークの軽量メッシュグリルなども採用。車両価格は、1035.7万円、同時に行なわれたマイナーチェンジのNSX910.7万円より125万円高額に設定された。当時の大卒初任給は19.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約1222万円に相当する。

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スーパースポーツNSXは、究極のピュアスポーツの完成形を目指して続々と進化させたスペシャルモデルを投入した。ホンダのNSXに対する熱い想いが伝わるようだが、最終的にはNSXは約15年間で累計1.8万台を販売して幕を閉じた。そして第2世代は、2016年に次世代を意識してハイブリッドのスーパースポーツに変貌して登場したのだ。
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