キャリイ×ジムニーのパリダカレプリカにマーチ・スピードスターやCX-5ピックアップ!? 自動車大学校のスゴいカスタム!【東京オートサロン2025】

日本が世界に誇るカスタムカー文化を支えるメーカーやショップのプロたちがしのぎを削る舞台である東京オートサロンには、次世代を担う若者たちも集う。それが自動車専門学校によるカスタムカーの出展だ。正直、粗削りな面もあるものの、若さと情熱が生む独自の発想で作り上げられるクルマたちには、来場者を惹き付ける魅力にあふれている。『東京オートサロン2025』の会場に花を添えてくれた若きカスタムビルダーたちの作品に注目してみた。
REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

MARCH 718 Speed Ster by 筑波研究学園専門学校

茨城県土浦市にある筑波研究学園専門学校の自動車整備工学科は、レストアに挑戦。それも市販車ではなく、2016年に先輩たちが作り上げたコンセプトカーに、再び命を吹き込んだ。

後輩たちの手で再び実働可能な美しい姿となったマーチ718スピードスター。

当時の学生たちは、オープンのスポーツカーを作りたいと考え、ポルシェ356ルックのカスタムを行ったという。その名が示す通り、ベースとなったのは2代目のK11型日産マーチだ。

1992年から2002年まで販売されたK11型の2代目マーチ。(PHOTO:NISSAN)

ブルーのボディは、愛嬌たっぷり。パネルは、全て専用となっているが、フロントウィンカーには、マーチのフロントフェンダーに装備されていたウィンカーが流用されている。このほかにも、リヤのナンバー灯とドアハンドルが流用されている。ボディは、6mmの鉄パイプを格子状とし、その上から鉄板を張り、パテで仕上げているという。

マーチのフロントフェンダー用のものを流用したウィンカーレンズ。
ナンバー灯もマーチからの流用品だという。
155/65R14サイズのMOMO OUTRUN M-20 PROを装着。

インテリアはシンプルに作られており、ボディ同色のインパネには最小限の装備が並び、クラシックカーの雰囲気を醸し出す。ベンチシートはダイハツ・ミラからの流用だそう。足元を見るとAT車ベースだと分かるが、シフトレバーもMT風によく仕上げられている。

クラシックカー風のシンプルなコクピット。ベンチシートはダイハツ・ミラからの流用品だ。
シンプルな2眼式メーターを装備する。
ATだが、シフトレバーはMT風。
ATなので2ペダル。

今回はレストアだが、やはり2016年の展示での役目が終わった後は、動かされていなかったことで不動状態に。約半年かかったという作業では、ボディの塗装よりも、エンジンや冷却系などを修理し、実走可能な状態までもっていくことの方が大変だったとのこと。

ベースが日産マーチとは思えない流麗なフォルムのボディ。

学生の卒業制作であるコンセプトカーやカスタムカーは、一定期間は保管や活用されるが、その後は廃棄となってしまうことが多いと聞く。再び、日の目を見ることになったMARCH 718 Speed Sterに当時の卒業生たちも大いに喜んでいるに違いない。

絵本に登場するような可愛さが魅力のお手製スポーツカー。このレストアを機に大切に保存して欲しい。

WiZ CONCEPT XIX CX-Vision by 国際情報工科自動車大学校

学生たちの想いが詰まった手作りのNASCAR風ピックアップトラック。

福島県郡山市にある国際情報工科自動車大学校の作品は、なんとピックアップトラックだ。その理由は、製作したメンバーにピックアップトラック好きが多かったからだという。しかも市販のピックアップトラックをカスタムするのではなく、この世にない1台だけとするために、SUVをベースに作り上げることにした。

マツダCX-5のマスクを移設したのではなく、CX-5そのものをピックアップトラックに仕上げたことにビックリ!!

デザインは、クールなピックアップトラックが鎬を削るNASCAR風とすることを決定。その際、マツダからCX-5を提供してもらえることに。そこで「マツダといえば787Bだ」となり、カラーリングをチャージ・マツダ風とした。

1991年のルマン24時間耐久レースで日本車初勝利を遂げたチャージ・マツダのマツダ787B。(PHOTO:MAZDA)

ベースとなるCX-5は、なんと新車。それを大胆にもBピラーから後ろを切断し、ピックアップトラック化した。ロールケージやインパネ、トラックベッドなどを可能な限り手作りしたという。

コクピットも完全にオリジナルに作り上げられ、NASCAR風に。
Bピラーより後ろは大胆にカットして、ピックアップトラック化。

NASCARのスタイルに拘り、ドアやミラーをスムージングしている。そのため、乗降は、サイドウィンドウからというのも本格的だ。迫力満点のボディにも手を加えており、左右+40mmのワイド化。全長を+400mmとし、長いトラックベッドを与えた。

Bピラーには、レーサーではなく、製作スタッフの名前を記載。
赤い給油キャップも良いアクセント。
ホイールはDaytona SS。タイヤはDUNLOP DIREZZA ZⅢの225/50R16。

最も大変だったというのが、キャンディ塗装だ。メタリック塗装の上に、クリアカラーのトップコートを重ねることで、キャンディのように半透明で強い光沢を放つ塗装だが、ボディ表面で液ダレを起こしてしまうと、塗装を剥離して塗り直さなくてはならないそうだ。それだけに慎重に作業が進められた。その苦労もあり、存在感のある美しいチャージカラーに仕上がっていた。

CX-5のままなのは、フロントマスクくらいとのこと。キャンディ塗装で再現させたチャージカラーが美しい。

製作には、15名で約2か月を要した。ベース車の面影を残すのは、フロントマスクだけというほど、大幅に手を加えて生まれた世界に一つだけのCX-5のピックアップトラックは、大きな注目を集めていた。

CX-5をピックアップトラックに仕上げた国際情報工科自動車大学校の学生たち。

NATS MINI RANGER by 日本自動車大学校「NATS」

隣に立つスタッフとの対比を見てほしい。ビジュアルはまさに”あの”パリダカマシンそのものだが、サイズは可愛らしいもの。

NATSの愛称で知られる千葉県の日本自動車大学校は、例年、複数台のカスタムカーを展示。学生たちの力作を楽しみにいている来場者も多い。その中で注目したのが、小さなパリダカマシンだ。

フォルムもパリダカ仕様の日野レンジャーを上手に再現している。
リヤゲートのカバーはロール式となっている。
荷台にはスペアタイヤや工具などが搭載されている。

「Small and Big Rally Car」をコンセプトに、パリ・ダカールラリーで2001年まで参戦車として活躍していた日野レンジャーをモチーフに、軽自動車で製作されている。可愛くユーモアに溢れる存在だが、ラリーカーらしい雰囲気もしっかりと再現されている。

2021年パリダカールラリー仕様の日野レンジャー。(PHOTO:HINO)

ボディには、90年代に販売された軽トラックのDC51T型スズキ・キャリイを使っているが、ライトをバンパー内蔵とし、フロントグリルもレンジャー風に改造されているので、一目では、まずキャリーとは気が付かない仕上がり。もちろん、外装は学生たちによるオリジナルデザインだ。

オリジナルパーツを作ることで、日野レンジャー風のフロントマスクを再現。

驚いたことにフレームは、キャリーにあらず。同じく90年代に販売されていた2代目スズキ・ジムニーのJA11V型を使用しているのだ。つまり中身もミニマムとはいえ、しっかりとラリー仕様が目指されている。

DC51型キャリイ(PHOTO:SUZUKI)
JA11V型ジムニー(PHOTO:SUZUKI)

車内を覗くとAT車なのはご愛敬だが、ステアリングホイールはディープコーンタイプのNARDIスポーツタイプラリーを装着。シートもBRIDEのフルバケットシート「ZETAⅢ」に変更されていた。

ディープコーンタイプのステアリングホイールや追加メーターがラリーマシン風味を強める。
シートはBRIDE製のフルバケに換装。ただし、シートベルトはノーマルのままだった。

足回りと排気系チューニングには、大阪のジムニー専門店「モーターファーム」のパーツが使われている。走行可能というから、ラフロードを走る姿を一度見てみたいものだ。

見た目はトラックだが、中身はジムニーを流用。これも本物感を演出する一工夫だ。

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…