カルタス後継、スズキ初代「スイフト」は101万円~の安さが売りの軽ベースコンパクトカー【今日は何の日?2月9日】

スズキ初代「スイフト」
スズキ初代「スイフト」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、スズキを代表するコンパクトカーである「スイフト」の初代が誕生した日だ。初代スイフトは、軽自動車「Kei」をベースにボディをスケールアップしたコンパクトカーで、当時大ヒットしたトヨタ「ヴィッツ」とホンダ「フィット」の陰に隠れて地味な存在だった。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・スズキ 新型スイフトのすべて、コンパクトカーのすべて

■初代スイフトは軽自動車のスケールアップ版コンパクトカー

2000(平成12)年2月9日、スズキから新型コンパクトカー「スイフト」が発売された。1983年にスズキとGMの共同開発で誕生した「カルタス」の実質的な後継車で、低価格を重視し軽自動車ベースで開発されたコンパクトカーだった。

スズキ初代「スイフト」
スズキ初代「スイフト」

スイフトのベースとなった軽自動車Kei

Keiは、1998年10月の軽自動車の規格改定を機に、街中でもオフロードでも快適に走れる軽自動車のクロスオーバーSUVとしてデビューした。規格改定は、衝突安全性を高めるためにボディが、全長340mm(+100mm)、全幅1430mm(+80mm)、全高2000mmに拡大された現行(2025年2月)の規格である。

スズキ「Kei」
1998年にデビューしたスズキ「Kei」、軽のクロスオーバーSUV

アルトより全高が145mm高く大型タイヤを履いたダイナミックなボディに、十分な最低地上高を確保してオフロードにも耐えられるように構成。軽のクロスオーバーSUVの先駆け的なモデルだった。

エンジンは、軽の出力自主規制値である最高出力64ps/最大トルク10.8kgmを発揮するアルミ製660cc直3 VVT(可変バルブ機構)付DOHCインタークーラー付ターボと、60psのSOHCインタークーラー付ターボ、ベーシックな55psのNA(無過給)DOHCエンジンの3種を用意。トランスミッションは、5速MTと3速&4速AT、駆動方式はFFと4WDが選べた。

特にインタークーラー付ターボモデルは、リッターカーを凌ぐ走りとオフロードの優れた走破性を発揮し、当時大ヒットしていたワゴンRとともにスズキの人気モデルとなった。

初代スイフトは安さが売りのコンパクトカー

スズキ初代「カルタス」
1983年にGMとの共同開発されたスズキ初代「カルタス」。3代目カルタスがスイフトの前身に相当

2000年2月のこの日、カルタスの後継車として登場したのが、初代スイフト(海外名は、イグニス)である。カルタスは、GMとの共同開発で1983年に誕生した小型乗用車の世界戦略車。スズキにとっては少量生産だった「フロンテ800」を除き、実質初めてのコンパクトカーだった。

スズキ初代「スイフト」
スズキ初代「スイフト」

スイフトはKeiのプラットフォームを流用し、ホイールベースは同じでトレッドを広げた5ドアハッチバックのコンパクトカーに仕上げられた。パワートレインは、88ps/11.6kgmを発揮する1.3L直4 VVT付DOHCエンジンと、3速および4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFと4WDが用意された。

歴代スイフト
歴代スイフト

車両価格は、2WD仕様の3グレードで101.8万円/116.8万円/132.8万円に設定。当時の大卒初任給は、19.7万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約119万円/136万円/155万円に相当する。

Keiベースで、さらにKeiの部品を流用した低価格が売りだったが、逆に軽自動車のイメージから脱却できず、さらに1999年にデビューしたトヨタ「ヴィッツ」や2001年のホンダ「フィット」の大ヒットもあり、その後のようなスイフトの存在感をアピールすることはできなかった。

スイフトの躍進は2代目から始まった

専用部品に設計し直して初代の軽のイメージを一掃したのは、2004年に登場した2代目スイフトである。計画段階から世界戦略車として開発され、国内外でスイフトと認知されたのは2代目であり、スズキの実質的な世界戦略車第1号と位置付けられる。

スズキ2代目「スイフト」
2004年にデビューしたスズキ2代目「スイフト」

2代目の最大の特徴は、初代で不評だった軽ベースのプラットフォームを止め、コンパクトカー専用設計に刷新されたこと。スタイリングは、ワイドトレッドを強調した全体的に丸みのある洗練された欧州車のトレンドを取り入れたフォルムに変貌。パワートレインは、先代と同じ1.3L直4 VVT付エンジンに、110ps/14.6kgmの1.5L直4  VVT付DOHCエンジンを加えた2種エンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、先代に続いてFFベースでフルタイム4WDも用意された。

スズキ3代目「スイフト」
2010年にデビューしたスズキ3代目「スイフト」
スズキ4代目「スイフト」
2017年にデビューしたスズキ4代目「スイフト」

この2代目スイフトで、スタイリッシュなデザインとスポーティな走り、軽快なハンドリング、そして手頃な価格という現在も続くスイフトの魅力が出来上がったのだ。

スズキ5代目「スイフト」
2023年にデビューしたスズキ5代目「スイフト」(現行/2025年2月)

その後も、燃費も重視しながら進化を続け、2025年2月現在は5代目を迎えて相変わらずの人気を獲得している。

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初代スイフトは、安さに重点をおいた軽自動車のスケールアップ版であり、軽自動車メーカーのスズキが新しいコンパクトカーを作ったというように受け止められたのかもしれない。しかし2004年に登場した2代目がそのイメージを払拭して、スズキの新しい時代を切り開く存在となったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…