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N-BOXのご先祖様は歴史に名を刻んだ名車N360



N-BOXの“N”は、ホンダ初の軽乗用車として大ヒットした「N360」の志を継承するという想いの表れである。また、NにはNew、Next、Nippon、Norimonoの頭文字からNを共通のネーミングワードとし、ホンダの軽ブランド復権を目指すという意味も込められている。

1967年にデビューしたN360は、先進的でスポーティな2ドア2ボックスの軽量ボディに、FFパッケージングによる広い室内空間を確保。さらに、実績のある2輪用エンジンをベースにした最高出力31psを発揮する360cc直2空冷4ストロークエンジンによる卓越した走りによって、ライバルたちを圧倒した。

また当時の競合車よりも5万円以上安価な31.3万円という低価格が追い風となって、N360は“Nコロ”の愛称で瞬く間に大ヒットモデルとなった。それまで10年間トップの座に君臨していた国民的な人気モデル「スバル360」から首位を奪取したのだ。
1990年後半から軽市場はハイトワゴンとスーパーハイトワゴンの時代に
スバル360とN360の大ヒットで幕を開けた軽市場は、その後排ガス規制などの試練を乗り越えながら順調に人気を獲得してシェアを伸ばしていった。

そして1993年、軽の歴史を変えたと言われた画期的な軽自動車のスズキ「ワゴンR」が登場。ワゴンRは、車高をセダン「アルト」より255mm高い1680mmに上げ、さらにホイールベースをクラス最大の2335mmに延長し、従来の軽になかった圧倒的なサイズ感、室内空間を実現したのだ。

ワゴンRの大成功を受けて、他社も続々とハイトワゴンを市場に投入。最大のライバルであるダイハツは、1995年に「ムーヴ」を発売し、ハイトワゴンブームが巻き起こった。さらに、2003年にはダイハツからムーヴに続いて独自のパッケージングでさらに車高を高め、クラス最大級の室内空間を実現したスーパーハイトワゴン「タント」が登場。2008年には、スズキが同じくスーパーハイトワゴン「パレット」(その後、「スペーシア」にバトンタッチ)で追走し、軽市場はハイトワゴンからさらに車高の高いスーパーハイトワゴンが一気に人気を集め、2025年2月現在も軽の主流となっている。
そのハイトワゴンとスーパーハイトワゴンブームをけん引したのは、スズキとダイハツの2強だった。
画期的なパッケージングで圧倒的な室内空間を実現したN-BOX


スズキとダイハツのハイトワゴンとスーパーハイトワゴンが軽市場を席巻するなか、ホンダは2011年にスーパーハイトワゴン「N-BOX」を投入した。N-BOXの開発に際しては、ホンダN360から長く取り組んでいた“MM思想“(マン・マキシマム/メカ・ミニマム:人のスペースは最大に、メカニズムは最小に)がベースとなっている。

N-BOXは、ボクシーなフォルムに便利な両側スライドドアを装備。何よりも最大の特徴は、圧倒的な室内の広さである。これを実現できたのは、フィットで実績のある燃料タンクを運転席の下側に配置するホンダが独自に進めている“センタータンクレイアウト“であり、このレイアウトがパッケージングの自由度を高めているのだ。

これにより、大人4人がくつろげる室内空間、特に後席は余裕の空間を確保。さらに、多彩なシートアレンジとリアのスライドドアを含め開口部が広いことで乗降しやすく、ユーティリティの高さも高い評価を受けた。
パワートレインは、徹底的なコンパクト化と高効率化を追求。最高出力58psを発揮する新開発の660cc直3 DOHC のNA(無過給)は、スムーズな走りとクラストップレベルの燃費を両立。また最高出力64psのターボモデルは力強い走りを実現し、トランスミッションはCVTのみで駆動方式はFFと4WDが用意された。


2012年の販売台数は21万1155台、2013年が23万4994台、2014年には17万9330台と軽トップの販売実績を達成して、一躍軽自動車の主役に躍り出た。
個性的なホンダNシリーズを次々と投入
N-BOX以降も、ホンダは“Nシリーズ”の個性豊かな人気モデルを投入。2012年にスポーティな走りの「N-ONE」、2013年にN-BOXよりもやや車高が低いハイトワゴン「N-WGN」、2018年には商用車の「N-VAN」が加わり、それぞれ異なる魅力で人気を博しています。

・N-BOX(スーパーハイトワゴン)
車体:3395×1475×1790~1815mm、燃費(WLTP):19.0~21.2km/L、価格:144.87万~225.28万円

・N-ONE(セダン系)
車体:3395×1475×1610~1630mm、燃費(WLTP):20.2~23.0km/L、価格:159.94万~199.98万円

・N-WGN(ハイトワゴン)
車体:3395×1475×1675~1725mm、燃費(WLTP):20.0~23.2km/L、価格:129.8万~182.71万円

・N-VAN(商用車)
車体:3395×1475×1945~1960mm、燃費(WLTP):17.0~19.8km/L、価格:127.6万~187.22万円
「N-BOX」が誕生した2011年は、どんな年
2011年にはホンダ「N-BOX」の他にも、ダイハツ「ミライース」、三菱の「MINICAB-MiEV(ミニキャブ・ミーブ)」、トヨタの「プリウスα」と「アクア」などが登場した。
ミライースは低燃費技術“e:Sテクノジー”を採用して低燃費と低価格を両立して話題を集めた。MINICAB-MiEVは三菱のEV第2弾で、i-MiEVの技術を流用した商用車ミニキャブのEV。プリウスαはプリウスベースで3列7人乗りが可能なワゴン。アクアはプリウスをベースにしたハッチバックスタイルのコンパクトハイブリッド車である。

自動車以外では、3月11日に東日本大震災が起こり、東北地方に甚大な被害をもたらした。その影響で自動車部品が滞る問題が発生し、サプライチェーンの脆弱性が露呈した。ドイツで開催された女子サッカーのワールドカップで日本が優勝、“なでしこジャパン”が流行語大賞に。アップル元CEOのスティーブ・ジョブズが死去。アナログ放送が終了し、地上デジタル放送へ移行した。
また、ガソリン132円/L、ビール大瓶198円、コーヒー一杯412円、ラーメン586円、カレー740円、アンパン146円の時代だった。
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後発の軽スーパーハイトワゴンながらライバルを圧倒し続けているホンダ「N-BOX」。ホンダ伝統の“MM思想“を具現化して軽らしからぬ広い室内空間と優れた走りを実現、日本の歴史に残るクルマであることに間違いない。