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モータースポーツも楽しみ方はそれぞれ
古希(2025年2月11日で71歳)を超えても現役ラリーストとして活躍中の国際モータージャーナリスト・清水和夫氏と、元カーグラフィック副編集長/編集委員、NAVI編集長を務めたジャーナリスト・高平高輝氏のふたりによる、切れ味鋭いクロストーク。前回の前編に続く今回も、モータースポーツの楽しみ方、2025年のモータースポーツの見どころなどを語った。

高級車が売れない日本、スポーツカーが売れない韓国、その違いとは?

清水:2024年11月にサウスカロライナでBMWのイベントがあって、たまたま韓国のジャーナリストと一緒だった。そうしたらね、韓国って高級車は日本より売れているんだって。レクサス、BMW、メルセデス・ベンツ…。
高平:そうそう!
清水:だけどポルシェ、フェラーリは全然売れていないって。日本はポルシェ、フェラーリの両方とも販売台数世界第3位、ランボルギーニもね。「なんで日本はスポーツカーが売れるの?」って聞かれて、「日本はサーキットがいっぱいあるし、レースもいっぱいある。全日本選手権だけでもドリフト、ジムカーナ、ダートラ、S-GT、ラリー、カート…なんでもあるよ!」みたいなことを言ったら、「韓国にモータースポーツはほとんどない。サーキットも少ない。だから高級車は売れるんだけどスポーツカーは売れない」。だから韓国のクルマ好きはけっこう日本に来るんだよね。
高平:うんうん、そうですね。富士スピードウェイを使った韓国ブランド、中国ブランドのイベントって、今はもう珍しくないですから。
清水:そうそう。そういう意味で日韓って、高級車は日本では売れてないんだけど、スポーツカーは日本は売れているよね。日本人ってやっぱりクルマ好きだね、イギリス人と似ていて。そう思わない?
高平:すごくよく分かります。
清水:小さいところも含めてサーキットの数が多いし、レースも多い。もちろんF1ドライバーもいるし、WECドライバーもいるし、WRCドライバーもいる。
2年連続WRCチャンプのロバンペラがKP61でヒストリックラリー!?


高平:2024年のWRCはGAZOO Racingのカッレ・ロバンペラ(Kalle Rovanperä/2000年生まれのフィンランド人)、彼は2022年と2023年に2回WRCチャンピオンになっているのにも関わらず、2024年はセバスチャン・オジェ(Sébastien Ogier)とシートを共有するパートタイム参戦しかしていなかった。で、2024年に何をやっていたかっていうと、F1に乗ったりジェットスキーやったり、フォーミラドリフトジャパン(FORMULA DRIFT JAPAN)に出るためにわざわざ日本に来たり。でもWRCラリージャパンには来なかった。
で、ラリージャパンとほぼ同じ頃にアイルランドでやっていたキラーニー(Killarney Historic Rally 2024)っていうヒストリックラリーに昔のトヨタ・スターレット、KP61!、それを350psくらいに改造したとんでもないやつで走っていた。海沿いのターマック、デコボコ道を楽しそ~に。「オレはいろんなクルマで、いろんなモータースポーツに出たいんだ!」って。WRCチャンピオン2回もとったのにですよ!

清水:2024年、日本で超有名な自動車アナリストのNさん。たまたまあるイベントで一緒になって、雪の広場でテスラ・モデル3の4WD+スタッドレスタイヤに乗せたのよ。「こんな楽しかったの!?♪」って。何十年もアナリストやっていて、ドリフトしたことなかったんだって。
高平:雪道って恐る恐る走るっていうことはあるかもしれないけど、ドリフトするなんてなかなかチャンスがないんでしょうね。

清水:モデル3にはトラックモードがあって、前後のトルク配分が1対9とか限りなくFRになる。そのボタンを押せば、ちょっと踏んだだけで簡単にピューンとドリフトするので、アナリストの先生がクルマ好きになっちゃった。
高平:そういうドライビングレッスンみたいなのがあったんですか?
清水:いやいや、たまたまテスラがポンと置いてあったので「乗っていい?」、「いいですよ」、でNさんに「乗りなよ!」、「いやボクはいいです」、「面白いから乗りなよ!」、でドリフトさせた。「え? こんなに楽しいの♪」って。だから日本も、経済記者全員に雪道の特訓! それで日本のメディアも変わると思うな。

高平:それはぜひ国会の先生にもお願いします。ランクルに乗ったことのない人を『さなげアドベンチャーフィールド(愛知県豊田市にある4WD体験のできるコース)』に連れていって、「こんなふうに登れるんです」、「生きて帰れるっていうのはこういうことなんです」って、そういう先生たちに経験させればいいじゃないですか。
清水:アナリストの先生もそうだけど、経済記者、政治記者、社会部の記者、この辺に乗せたいね。多分、日本は変わるよ。オレたちはずっとクルマ好きできたから、世間から見たら “変態扱い”じゃない。
高平:そうなんでしょうね。
新興レーサーはビッグデータを駆使して走る(清水)
清水:2024年のマツダ・ロードスターメディア対抗レース。ついにeスポーツで1000ラップくらい筑波を経験したヤツがポンと来て、リアルで10ラップしないうちにベストラップ出しちゃうとか、そういう時代だよ。

高平:ベテランのドライバー…佐藤久実ちゃんとか桂コボ伸一ちゃんとかも、「なんであの人たちはあんなライン取りしても速いんだろう?」っていう話題になる。
清水:“アウト・イン・アウト”を取らない。鈴鹿のヘアピンでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とシャルル・ルクレール(フェラーリ[2025年はアストン])は“アウト・アウト・アウト”だよね
高平:えっ?て思いますよね。

清水:多分、データを取ると1000分の何秒の単位で速いっていうラインがあって、あえてアウトに行かないラインもあるじゃない、鈴鹿の最終とか。それで距離を短くするとか、そういうことなんだなって思って。
高平:ビッグデータが今現在、活躍している第一線の若手には、自然と身に入っているんでしょう。
清水:これはもう大谷翔平選手の野球見て分かったけど、野球もそう、ゴルフもそう、みんなデータだよね。
高平:今のスポーツはそうなっていますよね。
2025年、日本開催の4種の世界選手権が熱い!(清水)

清水:日本は凄くモータースポーツを頑張っているんだけど、2025年、フォーミラEが5月16~18日に東京・有明で2レースあるよね。オレ、いろんなカテゴリーのクルマに乗って、遊びでF1も乗ったことあるし、デイトナ24時間でCカーも乗ったことあるんだけど、フォーミュラEだけ乗ったことないんだよ。面白いかなぁ?
高平:ウ~ン分からない。今の車両はジェネレーションIVですか。最初にアグリチームがやっていた頃とはもう全然別物だ!ってみんなが言うんですけど…。
清水:次のレギュレーションからフロントにモーターも付けられるから4WDになるしね。

高平:本当に速いらしいんですけど、最初の頃を知っているから本当かな?と思うんですけど。またお台場でやるんですか?
清水:2024年のコースをもうちょっと長くしたり観客席を増やしたりしながら、土・日に2レース。
高平:コースをもうちょっと見直して、空き地で走っているみたいな感じじゃなくて、後ろに東京の風景が少しでも映るような感じでやってくれるといいな。

清水:日産は2024年に結構頑張っていたんだけどね。ポルシェは2029年までやるって言っているし。だから面白いんだろうな。
高平:和夫さん、ぜひ乗ってみてくださいよ!
清水:春の陣として桜の季節4月3~6日にF1日本GP(鈴鹿)があって、5月16~18日にフォーミュラE(東京・有明)があって、秋は9月26~28日のWEC(富士スピードウェイ)、11月6~9日のWRCラリージャパン(愛知・岐阜)。だから、世界選手権が日本は4つもある。こんな国って意外にないよね。アメリカにはWRCがない。
1~2年後にWRCアメリカ戦が復活する!?(高平)
高平:アメリカのWRCラリーは多分ね、今強力に動いているので2026年か2027年って言われているんですよ、F1の成功を見て。
清水:リバティメディア!?(Liberty Media Corporation/アメリカのマスメディア関連企業/F1とMotoGP事業を所有)
高平:そう。WRCプロモーターもソッチを無視できないんです。

清水:なるほど~。アメリカだとどこ走るんだ? コロラド辺りかなぁ、ロッキー山脈とか。
高平:アメリカはいくらでも走るところがある。最後は1986年のオリンパス・ラリー。
清水:ロッド・ミレン(Rodney K. “Rod” Millen)がマツダ・ラリーチーム・ヨーロッパのファミリア4WDで走った(第21回オリンパス・ラリー/ワシントン州シアトル/1986年12月4~7日)。
高平:そうそう、西海岸のワシントン州。そこからロッキー山脈のコッチ側まですごい綺麗な場所。
清水:SS(スペシャルステージ)150kmくらい取れそうだよね。

高平:好きモンはちゃんとアメリカにもいるし、SUBARUはアメリカでも大活躍しているんですよね、ラリーXとかのスタジアム・モトクロスみたいなものとか。だから、WRCも次はアメリカ。同時に今、サウジアラビアが何にでも手を出しています。
清水:今年、オレたちなんかやる?
高平:アソコね…ドライカントリーなので和夫さんどうぞ! ボク、お酒が一切飲めない国は…! ただ世界から今、観光客をすごく誘致しているのでようやく普通に入れるようになったんです。なのでWRCサウジアラビアもチャンスあると思いますよ。
清水:ネットでいろいろモータースポーツが観られるので注目だね。F1はルイス・ハミルトン(Lewis Carl Davidson Hamilton)がフェラーリに行ったし、結構ドライバーがガラガラポンしているのでそれもまた面白い。マクラーレン強そうだなぁ、フェラーリも強そうだなぁて感じで、ホンダがどこまで行けるか。
高平:しかも2026年からはアメリカ勢も出てくるでしょ。
清水:アメリカ勢…なんだったっけ、キャデラック! 新しいレギュレーションになってからね。ホンダがアストンマーチンに行く2026年も面白そうだ!

ということで、モーターファン.jpをご覧の皆さん、2025年はぜひモータースポーツにも注目してください!