インテグラの前身、ホンダ「クイント」は斬新な5ドアハッチバック、93.8万円~デビュー【今日は何の日?2月13日】

ホンダ「クイント」
ホンダ「クイント」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、「シビック」と「アコード」の中間に位置する5ドアハッチバックの「クイント」が誕生した日だ。コンパクトカーでなく、ミドルクラス以上でリヤゲートを持つ5ドアハッチバックという斬新なスタイルで、セダンのような快適さとワゴンのようなユーティリティの高さをアピールした。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・クイントインテグラのすべて、80年代ホンダ車のすべて

■インテグラの前身モデルにあたるクイント

1980(昭和55)年2月13日、ホンダの5ドアハッチバック「クイント」がデビュー(発売は2月16日)。クイントは、後に大ヒットしたインテグラの前身となるモデルで、このクラスのファミリーカーでは3BOXセダンが一般的な中で、5ドアのハッチバックスタイルを採用して注目された。

ホンダ・クイント
ホンダ・クイント

セダンの快適性とワゴンのユーティリティを融合させたクイント

5ドアハッチバックのクイントは、1980年のこの日にデビューした。当時、ミディアムクラスや上級クラスではオーソドックスな3BOXセダンが好まれ、5ドアのハッチバックスタイルを採用するクルマは希少だった。

ホンダ「クイント」
ホンダ「クイント」の斬新な5ドアハッチバックスタイル

クイントは、シビックとアコードの中間に位置し、主要部品はシビックとアコードから流用された。外観は、すっきりした直線基調のハッチバックで、大きな窓を持ち開放感あふれる広い室内と、使い勝手の良い大型のテールゲートを持ち、セダンの快適性とワゴンのユーティリティを融合させていた。

ホンダ「クイント」
ホンダ「クイント」に搭載された1.6L直4 CVCCエンジン

パワートレインは、最高出力90ps/最大トルク13.2kgmを発揮する1.6L直4 SOHCのCVCC(副燃焼室式希薄燃焼)エンジンと5速MTおよびホンダマチックの組み合わせ。駆動方式はFFで、車重が900kgを切る軽さだったので、軽快な走りで最高速度は160km/hに達した。

ホンダ「クイント」
ホンダ「クイント」のコクピット

車両価格は、93.8万円/107.3万円/117.8万円の3グレード。当時の大卒初任給は11.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約187.6万円/214.6万円/235.6万円に相当する。

ホンダ「クイント」
ホンダ「クイント」の上級な雰囲気のフロントシート

日本で“5ドアハッチバックのクルマは売れない“というジンクスを覆し、クイントはデビュー当初は順調な販売を記録した。

クイントの販売低迷挽回のために登場したクイント・インテグラ

当初は販売が順調だったクイントだが、徐々に販売が低迷。挽回のためにモデルチェンジして1985年に登場したのが、インテグラの名を加えた「クイント・インテグラ」である。

ホンダ「クイントインテグラ」(初代インテグラ)
1985年にデビューしたホンダ「クイントインテグラ」(初代インテグラ)

クイント・インテグラは、クイントの実用性重視のファミリーカーから一転、スタイリッシュなフォルムのスポーティなモデルへと変貌。低いノーズで当時流行っていたリトラクタブルヘッドライトを採用し、3ドア/5ドアハッチバックと4ドアセダンの3つのボディが用意された。

ホンダ「クイントインテグラ」(初代インテグラ)
1985年にデビューしたホンダ「クイントインテグラ」(初代インテグラ)

パワートレインは、1.6L直4 SOHCエンジンと5速MTおよび3速AT(後に4速AT)の組み合わせ、駆動方式はFF。クイント・インテグラは、すでに人気を獲得していた「プレリュード」よりも小気味よい走りで高い評価を受け、国内外でヒットを記録した。

ホンダ2代目「インテグラ」
1989年にデビューして大ヒットしたホンダ2代目「インテグラ」

このクイント・インテグラが初代インテグラとされ、1989年に登場した2代目では車名からクイントが外れて、単独名の「インテグラ」となった。2代目インテグラは、リトラクタブルヘッドライトを廃止、代わりに横長ワイドのヘッドライトを採用。スポーティなロー&ワイドのウェッジシェイプのフォルムに、3ドアクーペと4ドアハードトップが用意された。

エンジンは、1.6L直4 SOHCで、最上級グレードには新開発の1.6直4 DOHC VTECを搭載。160psを発揮したVTECエンジンは、NA(無過給)で初めてリッター100psを超えた歴史的なエンジンとなった。

インテグラは、TVコマーシャルに当時「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で人気となった米国俳優マイケル・J・フォックスを起用し、CM中の“カッコインテグラ”のフレーズとともに、爆発的な人気を記録した。

かつては人気がなかった5ドアハッチバックに流行の兆しが

5ドアハッチバックは、セダンとワゴンの良いところを融合させたボディスタイルである。クーペのような流麗なスタイリング、セダンのような室内スペース、ワゴンのような開口部が広いラゲッジスペースと多様なニーズに対応できる。

ホンダ・クイント
1980年にデビューしたホンダ「クイント」

かつての日本では、5ドアハッチバックは評価されずに、各メーカーから出ては消えるという繰り返しで成功モデルはなかった。2000年以前は、ある程度大きいクルマでは、セダンの方が豪華なクルマというイメージがあった。

しかし、最近は2代目以降のトヨタ「プリウス」や新型「クラウンスポーツ」、ホンダ「シビックハッチバック」などが採用して流行の兆しを見せており、注目を集めている。

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1970年代にファミリーカーの「シビック」と「アコード」で成功したホンダが、1980年代に入ってからは「プレリュード」と「インテグラ」を投入して、スポーティ路線で大ヒットを飛ばした。クイントは地味な存在で終わったが、ホンダのスポーティなクルマづくりの礎となったモデルなのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…