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■個性的過ぎたスタイルが不評だった4代目クラウン
1971(昭和46)年2月16日、トヨタを代表する高級車「クラウン」の4代目がデビューした。注目されたのは、“スピンドルシェイプ(紡錘形状)”と呼ばれた独創的なスタイリングで、後にクジラクラウンという愛称が付けられたが、個性的過ぎたために販売は伸び悩んだ。


クラウンの誕生から3代目までの軌跡


・初代クラウン誕生(1955年~1962年)
1955年1月7日、完全オリジナルの純国産車の初代クラウン「トヨペットクラウン」が誕生。当時は、国産車と言っても名ばかりで、GMやフォードの部品と技術を使って組み立てるだけのクルマで、クラウンは歴史的にも大きな意味を持った存在となった。世界に通用する乗用車を目指して、初代クラウンには多くの新しい技術が採用され、当時の外国部品で組み立てた国内車より優れていると評価された。

・2代目クラウン(1962年~1967年)
初のモデルチェンジによって、より長く広くそして低いヨーロピアンスタイルに変貌。高剛性の“X型プラットフォーム”を採用して高速走行の安定性が増し、国産初のV型8気筒エンジンを搭載した「クラウン・エイト」も登場した。


・3代目クラウン(1967年~1971年)
“ペリメーター・フレーム”を採用し、低床化を実現。静粛性や乗り心地を改良し、公用車でなく個人ユーザーへの拡販を狙って白いクラウンキャンペーンなどを積極的に推進。さらに2ドアハードトップを追加して、高級パーソナルカーのイメージもアピールした。
クジラクラウンと呼ばれたスタイルが不評だった4代目

1971年2月のこの日に登場した4代目から、車名が 「トヨペットクラウン」から「トヨタクラウン」に変更された。

ボディスタイルは、先代同様4ドアセダン、2ドアハードトップ、5ドアワゴンの3種が用意されたが、注目は大きく変わったスタイリングだった。“スピンドルシェイプ(紡錘形)”と名付けた先鋭的で個性的なスタイリングは、3代目から積極的に推進している個人ユーザー層へのアピールを意識したものだった

丸みを帯びた4代目のスタイリングは、雰囲気がクジラを連想させることから、クジラクラウンの愛称で呼ばれるようになった。しかし、当時の高級車クラウンに求められたのは重厚さや落ち着きであり、その点では保守的なユーザー層から支持されず、1955年以来守り続けてきた高級車クラストップの座を日産「セドリック/グロリア」に明け渡すことになった。
パワートレインは、2.0L直6 SOHCエンジンの設定違いで最高出力125ps/115ps/105psの3機種エンジンと、3速/4速MTおよび3速ATの組み合わせ。車両価格は、標準グレードで107.5万~118万円(セダン)/101.7万~109.2万円(ハードトップ)に設定。当時の大卒初任給は、4.7万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で526万~577万円/498万~534万円に相当する。
4代目はわずか4年足らずで5代目に移行
その後、4代目は新たに最高級グレードのスーパーサルーンや2.6Lエンジンを搭載した2600スーパーサルーンを追加するなど商品力強化を行なった。さらに1973年10月には、マイナーチェンジで不評だったスタイリングに手直しを加えるなどしたが、結局人気挽回には至らなかった。

この状況をみてトヨタは、4代目のイメージを払拭するため、わずか3年8ヶ月後の1975年に5代目へモデルチェンジした。冒険しすぎた4代目の反省を踏まえて、5代目の使命は本来の落ち着いた雰囲気のクラウンに原点回帰することだった。

5代目クラウンは、ロングノーズ/ロングテールの落ち着いた雰囲気で、セダンは丸目4灯ヘッドライト、ハードトップは角目2灯ヘッドライトを装備して、先代の曲線基調から直線基調の重厚感を強調したスタイリングに変わった。インテリアについても、余裕の室内空間に上質の素材を使ったシート、遮音による防音対策など快適さ、静粛性が大幅に改良され、高級感が磨かれた。
スタイリッシュで風格あるスタイルと豪華なインテリア、優れた走りなどクラウン本来の高級感を復活させた5代目クラウンは、順調に販売を伸ばし、見事に高級車トップの座を奪回することに成功したのだ。

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今見ると、4代目クラウンはそんなに奇抜なスタイリングに見えないし、特にハードトップはスポーティでスタイリッシュに見える。奇抜と言えば、現行クラウンもかなり独創的だが、やはり落ち着いた重厚なクラウンを求める人にとっては、少なからず抵抗感があるように聞いている。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。