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自律航行により広い範囲で機雷を捜索
海上自衛隊 護衛艦隊の公式Xアカウントが2月7日に、護衛艦「くまの」による掃海訓練の様子を写真付きでツイートした。「くまの」は、最新鋭の多機能護衛艦(FFM)「もがみ」型の2番艦である。「もがみ」型は護衛艦として初めて機雷戦(機雷の敷設と処分)能力を持ったことで知られている。

注目したいのは掲載された写真だ。黄色い魚雷のような円筒形の物体が映っている。これは三菱重工が開発した機雷探知用の水中無人機「OZZ-5」であり、「もがみ」型のみに搭載されている。これまでも海上自衛隊では機雷探知等の能力をもった有線式遠隔操作型の水中無人機を保有してきたが、OZZ-5では自律航行型となった点が特徴だ。また、OZZ-5はリチウム蓄電池により最大9時間もの活動時間を持ち、あらかじめ設定した航路に従い母艦から離れて自律的に作業するため、母艦を危険に晒すことなく広い範囲の機雷を捜索できる。

OZZ-5は船体中央部に搭載されており、使用する際には船体側面のハッチを開き、クレーンで懸吊して海面に下ろす。Xに投稿された写真は、まさにその瞬間だ。写真を見ると、艦の側から“さすまた”型の棒で押し出し、海面からはボートに乗ったEOD(水中処分員)がロープで引っ張っているが、これは海面の動揺でOZZ-5が船体に激突するのを防ぐためのもの。クレーンアームの短さ、一点吊りによる不安定さに原因があり、今後改善の余地があるようだ。


OZZ-5は機雷探知でも優れた能力を備えている。海底面に沈底するステルス機雷や、泥に埋もれてしまった機雷など、これまで探知が難しかった機雷に対応し、フランス製(タレス社)の高周波合成開口ソーナーと、国産(NEC)の低周波合成開口ソーナー、ふたつのソーナーを備えている。通信機能としては、浮上時に母艦との通信を行なうための衛星通信用アンテナを尾部に備えるほか、海面上を航行する水上無人艇と音波通信を行なうことも想定されているようだ。

海上自衛隊はますます機雷戦能力を高める
自律型水中無人機として、海上自衛隊ではOZZ-5に続いて、OZZ-6、OZZ-7、さらにOZZ-100と呼ばれる機種の開発を行っている。これらの具体的な能力は不明だが、OZZ-6が深深度用、OZZ-7が浅深度用とも言われている。
今後、日本が想定する有事は南西諸島や台湾など、広い海を舞台としている。最近は中国による「台湾海上封鎖」というシナリオが話題に上がるが、仮に実行するとなれば台湾周辺に大量の機雷が敷設され、軍事的にはもちろん、通商の面でも日本に与える影響は甚大だろう。それだけに機雷戦能力の向上は、海上自衛隊にとって大きな課題のひとつといえる。