ミニバン随一の走破性をもつ孤高の存在「三菱デリカD:5」【最新ミニバン 車種別解説 MITSUBISHI DELICA D:5】

モデルそのものは2007年のデビューだが、19年にはフルモデル級の変身を見せた「三菱デリカD:5」。ハード、ソフトとも大きく進化し、その機動性やオフロード性能は突出しつつ、静粛性など快適な空間作りは大きく向上している。パワートレインがディーゼルターボのみというラインナップも筋の通った強い存在感を見せる。
REPORT:河村康彦(本文)/遠藤正賢(写真解説) PHOTO:中野幸次/神村 聖 MODEL:渡川もも

改良を重ねて全身が大変化 高い静粛性や操舵感覚に好感

初登場は2007年1月と単純計算ではデビュー以来間もなく18年が経過しようという長寿モデルが三菱デリカD:5だ。ただし、実はこのモデルは19年に内外装のリファインやADAS機能のアップデートはもちろん、パワートレインやシャシーの改良、さらにはボディ骨格の見直しにまでおよぶ“準フルモデルチェンジ級”と紹介しても過言ではない、大規模マイナーチェンジを敢行している。車齢はそこからカウントするのが合理的とも言えそうだ。

エクステリア

「ダイナミックシールド」を採用したフロントマスクは押し出し感が強いものの、グリルやホイールなどを黒、スキッドプレートをグレーに変更した「CHAMONIX」は幾分控えめな印象に。撮影車両はさらに、緑のドアミラーやエンブレム、迷彩柄のサイドデカールなどをセットにしたディーラーオプション「CHAMONIXコンプリートパッケージ」を装着している。
特別仕様「CHAMONIX(シャモニー)」は標準仕様の最上級「P」がベース。3つのアプローチアングルは21度、16.5度、23度と、凹凸の大きい路面でも安心して走れる。最小回転半径は5.6m。

現在販売されているのは、その後も小改良が重ねられたモデルで、全車に2.2ℓのターボ付き直列4気筒ディーゼルエンジンを8速ステップATと組み合わせたパワーユニットと多板カップリングを用いる4WDシステムを搭載。ちなみに、そんなシステムではセンターパネル上に設けられたダイヤルスイッチで通常走行向けの2WD/濡れた路面や雪道に向く4WDオート/悪路走破用のロックと3つのポジションを選択できる。前後輪間を最も高い締結力で結ぶ“ロック”のポジションを選んでも、電子制御式ゆえにフルタイム4WD方式の車両としての使用が可能となる。

乗降性

スクエア基調のシルエットや押し出し感の強いフロントマスクが力強さや高いタフネスぶりを連想させるルックスで、前述の本格的4WDシステムや185㎜と大きな最低地上高、ボディ各部の大きな対障害角デザインなどもあって、ミニバンとしては世界でも随一と言えるオフロード走破性を実現させているのも、このモデルならではの特徴である。

インストルメントパネル

ウインカー&ワイパーレバーやドアミラースイッチの華奢な操作感に基本設計の古さを感じるものの全体的な質感は上々。オリジナル10.1型ナビは全車ディーラーオプションだ。

実際、特設された深い雪のオフロード・コースにおいてもスタッドレスタイヤに履き替えただけの試乗車が大きな凹凸や急な坂道、深いわだちに進入しても、ものともしない目を見張る走りのポテンシャルを味わわせてくれた経験を思い出す。それでいながら、2-3列目の居住空間も荷室スペースもゆとりがあり、ミニバンとしての高い適性を両立させていることも、このモデルならではの見どころだ。

居住性

走り出してすぐに実感できるのは、思いのほか高い静粛性。特に、ロードノイズは完璧なまでに遮断されていることに感心する。一方で、ウインドウシールドへの遮音ガラスの採用や各部の遮音/防音対策によって“暗騒音”が小さく抑えられた結果、相対的にエンジン音は明瞭に耳に届く印象。ただし、それもまたこのモデルならではの走りの逞しさの一端と好意的に受け取ることもできそうだ。

うれしい装備

2列目はキャプテン/ベンチとも座面前側を1段階持ち上げることが可能。写真の7人乗りはヒール段差が335㎜から380㎜へと上がるため、下半身のホールド感が高まる。
月間販売台数       1647台(24年5月~10月平均値)
現行型発表    07年01月(一部改良 23年11月)
WLTCモード燃費  12.6 ㎞/ℓ  

ラゲッジルーム

車両重量は1.9tオーバーと決して軽いとは言えないものの、スタート時の蹴り出し感が強力なのは8速ATの採用で1速ギヤ比が低いことや低回転域から大きなトルクを発するエンジン特性が功を奏していそう。同時に、高速域でのクルージングが得意科目なことも、ディーゼルエンジン搭載モデルゆえの美点のひとつだろう。コーナーを追い込むとアンダーステアがやや明確だが、総じて扱いやすいハンドリングの感覚は好印象。百花繚乱のミニバンが競い合うなか、ライバル知らずのオフロード能力を備える色濃い個性の持ち主である。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.164「2025年 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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