最新世代のフロントマスクに進化し宿敵に対抗「シトロエン・ベルランゴ」【最新ミニバン 車種別解説 CITROËN BERLINGO】

国内のミニバン市場も成熟を続け、輸入ミニバンも街中にその姿が多く見られる昨今、その最右翼のひとつが「シトロエン・ベルランゴ」。ベースをともにするリフター、ドブロにはないしなやかな乗り味はシトロエンの本領発揮と言える。荷室もスクエアかつフラットで使い勝手は文句なし。シャープさを増したフロントフェイスも今のシトロエンらしさだろう。
REPORT:佐野弘宗(本文)/遠藤正賢(写真解説) PHOTO:中野幸次 MODEL:渡川もも

癒し系からハンサム顔に進化 内装各部や先進機能も大幅刷新

かつてルノー・カングーの寡占市場だった輸入ピープルムーバー市場に割って入ったのが、2019年秋に発売されたシトロエン・ベルランゴだった。以後、同じステランティスグループ傘下で基本設計も共有するプジョー版やフィアット版も上陸。このクラスの日本市場は、カングーとステランティス軍が群雄割拠する構図に様変わりしてしまった。

エクステリア

フロントは2022年パリサロンの「オリコンセプト」をルーツとする新世代シトロエンの前衛的なマスクに変更。LEDヘッドライト&オートハイビームが全車に標準装備された。ボディ側面は、エアバンプがフラットな形状となっている。バックドアのストラップが垂れ下がった部分の地上高は1730㎜。手動式で操作力も重いためガラスハッチだけ開けて荷物を載せたい。
マイナーチェンジによるリヤまわりの変更点は、ダブルシェブロンのロゴがCITROËNロゴとなり、装着位置がリドアパネル中央から同左側に移った程度。最小回転半径は5.6m。

そんなステランティス軍でも一番人気を誇ってきたのが、このベルランゴである。シトロエンブランドの知名度に加えて、最初に上陸したこと、そしてエアバンプをモチーフとする癒し系デザインが日本人に受けた……のが、その理由と思われる。そんなベルランゴも上陸から約5年で、初のマイナーチェンジを受けた。主眼は外観デザインの刷新で、従来のかわいい系から、ある意味で真逆とも言えるハンサム顔に一変した。内装ではステアリングホイールが新デザインになったほか、メーターのデジタル液晶化、センターディスプレイの大型化、先進運転支援システムの世代交代、そしてシフトセレクターやドライブモードスイッチなど、各部がアップデートされた。

乗降性

逆に言うと、デザインや装備以外のクルマの本質に大きな変化はない。標準モデルで4405㎜×1850㎜×1830㎜というスリーサイズでは、全高のみ20㎜大きくなったが、これはルーフレールの形状変更によるものだ。さらに全長を365㎜、ホイールベースを190㎜延長してサードシートを備えたロングが変わらず用意されるのも、宿敵カングーに対するベルランゴの利点だ。

インストルメントパネル

メーターはデジタル、ステアリングは楕円状の2本スポーク、シフトはトグル&ボタン式となり、中央のタッチスクリーンも10インチへ拡大。前衛的な装いへと激変している。

もともとが商用バンと基本骨格を共有する高スペース効率設計もあって、室内空間は広大そのもの。荷室も余計なでっぱりのない四角四面の形状でとても使いやすく、リヤシートもきれいにフラットになるチルトダウン可倒。そのリヤシートが3分割式であることや、開閉式のリヤガラスハッチ、さらにガラスルーフと収納ブリッジを組み合わせたモデュトップが、カングーに対する明確な差別点で、これらの使い勝手を理由にベルランゴを選ぶ向きもあろう。1.5ℓディーゼル+8速ATのパワートレインを含めた走行メカニズムも基本的に変更はない。エンジンの最高出力や最大トルク、カタログ燃費もこれまでどおりだ。パワーはこれもまた必要十分レベルだが、少なくともカングーのディーゼルよりはパワフルで柔軟である。

居住性

その乗り味はシトロエンらしいもので、例えばライバルのカングーや、同じ基本設計ながらSUV仕立てのプジョー・リフターと比較しても、柔らかに上下するしなやかさを身上とする。アッパーボディの動きもルノーやプジョーと比較すると大きいが、マイルドなステアリングレスポンスによって巧くバランスされており、怖さを感じるような挙動にはならない。また、日本上陸からシャシーの改良は明言されていないものの、約5年前の上陸当初と比較すると、アッパーボディの動きはより抑制が効いたものとなり、ロードノイズなどの静粛性も0.5〜1ランク引き上げられたような印象である。

うれしい装備

大きく重いバックドアを開けずとも、ガラスハッチだけを開ければ、狭い場所でも荷物を積み下ろしできる。フレキシブルラゲッジボードを下段にセットしておけば、荷物の出し入れがよりスムーズに。
月間販売台数      NO DATA
現行型発表       19年10月(マイナーチェンジ 24年10月)
WLTCモード燃費     18.1 ㎞/ℓ

ラゲッジルーム

ご承知のように、カングーも昨年に新しくなったばかりで、輸入ピープルムーバー市場はますます熱い。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.164「2025年 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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