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■モータースポーツ参戦を前提にしたブーンの最強モデルX4

2006(平成18)年3月10日、ダイハツはリッターカーであるブーンのスポーツモデル「ブーンX4(クロスフォー)」を追加した。X4シリーズは、ダイハツがモータースポーツ参戦のためのベース車として設定した最強グレードであり、「ミラX4」に始まり、ブーンX4は4代目となる。


トヨタとの共同開発で誕生したリッターカーのブーン/パッソ
1997年、ダイハツはトヨタが出資比率を34.5%から51.2%に引き上げたことで、トヨタの連結子会社になった。これを機に、両社は共同で小型車「ブーン(ダイハツ)」/「パッソ(トヨタ)」の開発に着手。開発に際しては、トヨタが企画とマーケティングを、コンパクトカーのノウハウに長けているダイハツがコンポーネント開発と生産を担当した。

生産については、トヨタがダイハツに新型小型車を委託するという形で行なわれ、一般的なOEM(相手先ブランド製造)とは異なる共同開発の兄弟車として2004年にデビューを果たした。

ブーン/パッソは、丸みのある面構成ながらエッジの効いたキュートなスタイリングに。パワートレインは最高出力71psの1.0L直3 DOHCと90psの1.2L直4 DOHCの2機種エンジンと電子制御4ATの組み合わせ、駆動方式はFFとフルタイム4WDが用意された。
小回りが効いて扱いやすいブーン/パッソは、好調な販売を継続し3代目まで続いたが、2023年に生産を終了した。
レースのために誕生したホットモデルのブーンX4

モータースポーツ参戦用のベースモデルとして、ブーンX4はブーン誕生の2年後2006年3月のこの日にデビューした。外観上は大きく変わらないが、心臓部であるエンジンにはハイチューンされた高性能エンジンが搭載されていた。

高性能エンジンは、ラリーやダートラなどの1.6L以下クラスに参戦可能な新開発の1.0L(936cc)直4 DOHCインタークーラー付ターボエンジンで、最高出力133ps /最大トルク13.5kgmを発揮する。JAF公認レースに出場する際のクラス分けは排気量で行なわれ、ターボ車は排気量に1.7を掛けて換算することになっているので、936ccはギリギリ1.6L以下のクラスに入れるのだ。

トランスミッションは、クロスレシオの5速MT、駆動方式はVCU付センターデフ式のフルタイム4WDを搭載。さらにフロント/リアにスタビライザーやスポーツサスペンションなどを採用して、優れた走破性と操縦安定性が確保された。

X4の車両価格は、標準グレードが183.75万円、MOMO製革巻ステアリングホイールやスモークドガラス、専用アルミホイールなど内外装や快適装備を充実させたハイグレードパックが204.75万円に設定。ちなみに、ベースのブーンで最もハイスペックな仕様(1.0L NAエンジン、4WD)は、130.2万円である。
ダイハツ最強のモンスターマシンX4シリーズの軌跡
ダイハツ最強のX4シリーズは、1990年に設定された最高出力63ps/最大トルク9.4kgmを発揮する4WDターボ「ミラTR-XX X4」が最初である。全日本ラリーやダートトライアルに参戦し、ライバルのスズキ「アルトワークス」と激戦を繰り広げた。その後、アルトワークスが圧倒的な強さを発揮して、1991年に登場した2代目「ミラTR-XX X4-R」では太刀打ちできない状況が続いた。

その後3代目となるX4は軽ではなく、ブーンの先代にあたるストーリアをベースにした120ps/13kgmを発揮する713cc直4 DOHCインタークーラー付ターボ搭載の「ストーリアX4」が1998年に登場し、そして「ブーンX4」へと移行した。
ダイハツ最強のホットマシンとしてのX4は、一部の走り好きのファンから支持され続けたが、2008年に起こったリーマンショックによる不況の煽りを受け、ダイハツはモータースポーツから撤退、残念ながらブーンX4も生産を終えた。
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ブーンX4は、ダイハツを代表するホットモデルだが、2000年以降はリッターカーやホットモデルそのものの人気が低迷し、さらにメーカーのモータースポーツからの撤退が相次ぎ、残念ながら市場では実力通りの評価を得ることはできなかった。
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