目次
航続距離は14~20%延長、充電時間は最大30分以上短縮
「新型RZ」といってもフルチェンジではなく、マイナーチェンジ。
だが、BEVシステムをモデルチェンジ並みに変えているから、目に見える内外部分に変化は見られなくとも、かなり規模の大きなマイナーチェンジというべきだ。
変更項目は大きく3つ。
ひとつはBEVシステムの大刷新。
バッテリーシステム以外では、ステアバイワイヤーシステムの採用と、F SPORTに与えたオリジナルデザインがある。
これら主な3つそれぞれの概要を述べていく。
1.BEVシステムを全面刷新、基本性能を徹底的に追求
1.高出力化による動力性能の向上と顧客のニーズに寄り添った選択肢の拡大
バッテリーセルの改良と搭載セル数の増加で出力特性を向上した大容量リチウムイオンバッテリーにより、モーターも高出力型になった。同時にインバーターの効率が向上した新型eAxleの駆動モーターの高出力化(フロント、リヤとも167kW)に対応している。
BEVシステムと大容量リチウムイオンバッテリーの冷却には水冷式を起用し、高い動力性能に寄与、これら高出力化したユニットと、駆動方式の組み合わせにより、165kW(FWD車)、230 kW、250 kW、280 kW、300 kW(すべてAWD)の5種となり、顧客の選択幅が拡がった。


2.航続距離の伸長と充電システムの見直しによる充電時間の短縮。
EVといえば誰もが懸念する航続距離を伸ばし、充電時間の短縮に重点を置きながらモーターの高出力化も果たしている。
新型eAxleによる電力の大幅な損失低減とバッテリーの大容量化に加え、制御の最適化を図ることで、AWDモデルで約14%(約500km)、FWDモデルで約20%(575 km)と大幅に航続距離を延長し、ユーザーの安心感をさらに高める航続距離を確保したという。

併せてバッテリーの大容量化とバッテリーパック構造の最適化、車載充電器の充電性能と各機能のレベルアップにより、充電性能を向上。最大30分以上の充電時間の短縮化を図った。

もうひとつ、「電池プレコンディショニング機能」が新しい。これは低温環境下での使用で、充電開始前からあらかじめ電池温度が最適な状態に調整され、充電時間の遅延を解消することができるというものだ。
2.LEXUSならではの走りの味の深化と新しいドライビング体験の提供
1.LEXUS初の「ステアバイワイヤシステム」の設定
ステアリングバイワイヤの前例には現行の日産スカイラインがあるが、レクサスでは初。ただし、スカイラインはシャフトを完全に取り去ることができなかったが、こちらRZはシャフトがなく、完全なステアバイワイヤーになっている。
同時に、ハンドルも専用仕立ての「ステアバイワイヤシステム用ステアリングホイール」とし、ハンドルというよりは操縦桿の形をしたステアリングとなっている。
ステアリングの操作範囲は中立位置から200°。ギヤ比は車速制御による可変式となっており、低速時は取りまわし時だけでなく、ワインディングでの軽快な走行を可能にする俊敏性や、自動車専用道路など、高速時の高い安定性をもたらす。
また、このシステムは、これまでタイヤとステアリングがシャフトで機械的に連結していた従来方式と異なり、電気信号によってタイヤの動きを制御するため、路面からドライバーに伝わる振動を効果的に抑制すると同時に、路面の状態をセンシングして、運転に必要な情報のみをドライバーに伝達する。

2.DIRECT4の進化
高出力モーターの搭載と、新型eAxleの搭載と併せ、LEXUSの電動化技術による四輪駆動力システム「DIRECT4」の駆動力配分の制御を見直し、さらに優れたトラクション性能と操縦安定性を実現した。
発進時、直進加速時は、車両のピッチングを抑え、ダイレクトな加速感が得られるように、前輪:後輪の配分を60:40~0:100程度にまで、コーナリング時には、車速や舵角などの情報と走行状態を鑑み、80:20~0:100まで制御・・・いずれにしても、FWD寄りの四駆から、ほぼ完全な後輪駆動にまで変化するすんぽうだ。
また、「統合車両姿勢安定制御システム(VDIM)」との連携と併せ、フラットな乗り心地と優れた操縦安定性に加え、緊急時の危険回避性能を高い次元で確保したという。

3.「インタラクティブマニュアルドライブ(Interravtive Manual Drive)」がもたらす、操る楽しさと深化するクルマとの対話
マニュアルトランスミッション感覚で駆動力を操作するパドルシフトによる、「インタラクティブマニュアルドライブ(Interravtive Manual Drive)」をLEXUSで初採用。
モーター走行ならそもそも存在しないギヤ段の概念を仮想の8速ギヤで設定し、アクセル開度と車速に応じて算出した仮想パワートルクに、パドルシフトスイッチで選択した仮想ギヤ段のギヤ比を乗じて駆動力を出す。
ドライバーは最適な、というよりは好みのタイミングで、エンジン車よろしくシフト操作ができ、アクセルを踏んだ際の高揚感も体感できるというものだ。
また、エンジンが搭載されているようなサウンドの演出が加えられているのと、シフトアップ/ダウンのタイミングを視覚的に伝える専用のシフトガイドメーターもある。
この「インタラクティブマニュアルドライブ」は車両の状態をアクセル操作のレスポンスや音、視覚から把握する機能で、F SPORTに搭載される。

4.Lexus Driving Signatureの深化
新開発の大容量リチウムイオンバッテリー&新型eAxleの搭載もあり、サスペンション特性も見直され、車両運動性能と乗り心地が向上させている。
フロントサスペンションは、低周波側のアブソーバー減衰力向上により、フラットな乗り味を追求し、リヤサスペンションは、ダンパーの可変幅を拡げ、低周波と高周波のアブソーバー減衰力を最適化して、優れた操縦安定性の確保と乗り心地の向上を図った。


5.BEVならではの高い静粛性を実現
後席下にリヤフロアサイレンサーを設置し、ノイズ侵入を抑制した。
また、ドアトリムやシート彩度ガーニッシュ、バックドアトリムの防音材をより高性能化し、シートサイドガーニッシュの範囲を拡大。防音性能を持つトノカバー採用や、バックドアトリムアッパー、デッキボックスへの防音材追加もある。
エンジン車ではメカノイズに隠れていた音もBEVでは顔を出すだけに、音の退治をより徹底させた印象がある。
振動対策も入念で、ボディフロアに用いた高減衰接着剤は不快な振動を抑え、質感の高い乗り心地に貢献するという。



3.運転する楽しさをもたらすF SPORT独自デザインの設定
今回新たにF SPORTが設定された。正式には「RZ550e“F SPORT”」だ。
最大システム出力300kW(407ps)を発生、足回りもアブソーバー減衰力、コイルスプリングのばね定数とともにスポーツ仕様にふさわしい専用チューニングとされた。
さらには、先述の「インタラクティブマニュアルドライブ(Interravtive Manual Drive)」の採用で、よりクルマとの対話を深め、操る楽しさを提供する。
1.空力性能に根差したF SPORT独自のエクステリアデザイン
内外は専用にデザインされ、フロントロアバンパーモール、ブレーキダクト、リヤスポイラー、20インチエアロホイールなど、空力パーツで優れた空力性能と操縦安定性を狙い、エアロホイールででは、アルミホイールに空力パーツとしてカバーを施し、軽量化と空力効果で電力消費量の抑制を図っている。



ボディカラーにはF SPORT専用の「ニュートリノグレー」を含めたモノトーン全5色とバイトーン全4色を用意している。

2.クリーンで開放的なインテリア空間を追求
インテリアもF SPORT専用にあつらえられており、前席から後席まで前後2分割されたガラスが頭上を覆う調光機能付きのパノラマルーフになっている。
電子インナーミラーへの映り込みを低減させたことで、調光パノラマルーフと電子インナーミラーの同時装着が可能となった。

ウルトラスエードに、レーザー加工によるグラフィックを施したLEXUS初のドアトリム表皮には、これまたLEXUS初となるダイナミック陰影イルミネーションが灯る。


光の模様が揺らぐ動きが加えられたもので、いうなれば光のアニメーションだ。
「時間の移り変わりを感じさせる徐々に変化する繊細な陰影柄が乗員の気持ちに寄り添った心地よい時間を提供する」と。
3.走りを想起させるF SPORT独自のインテリアデザイン
F SPORTの内装カラーとして「ブラック×ダークグレー」が設定された。
BEVならではの内なる力強さとスポーティな走りのイメージとして、ブラックとダークグレーの色と素材にブルーステッチのアクセントを組み合わせたほか、オーナメントパネル「マイクロジオメトリックパターンフィルム」をはじめ、表皮一体発泡工法を用いたフロントシート、F SPORTロゴ入りフロントスカッフプレート、ステアリングホイールのF SPORTエンブレムなどで、スポーティなドライビング体感を演出する。


4.LEXUS初のステアバイワイヤ用ステアリングホイール設定
さきに何度か触れた、F SPORTだけに起用されるステアバイワイヤシステム専用のステアリングホイールは、小舵角操作が前提の形をしている。リング型ハンドルと異なり、上下に円弧がない形状は、ドライバーの視線を自然と前方に誘う効果があるといい、BEVの爽快な走りに集中できるコクピットを実現すると同時に、足元スペースの確保による優れた乗降性にも貢献する。

冒頭で触れたとおり、今回の発表はブリュッセルでのもの。
諸元は次表のとおりだ。

順次各地域での発売は2025年秋以降というから、価格も未発表で、当然日本仕様の価格も未定と思われるが、このところ連続しているLEXUS改良モデルの例からして値上げは必至と思われる。
なお、ここに掲げた以外の写真もあるので、ご覧になりたい方は画像ギャラリーをどうぞ。