AUTECHの新たな進化形! 専用チューニングされた「オーラ オーテック スポーツスペック」の実力を試す

日産のプレミアムコンパクト「ノート オーラ」にラインアップされた新たなスポーティグレード「AUTECH SPORTS SPEC」は、内外装のカスタムだけでなくシャシーやパワートレインに専用のチューニングが施されている。日産モータースポーツ&カスタマイズが手がけた「NISMO」とは異なる方向性を持つ新たなスポーツ仕様として、どのような走りを実現しているのか、詳細を見ていく。

TEXT:岡本幸一郎(OKAMOTO Koichiro) PHOTO:宮門秀行(NIYAKADO Hideyuki )

ニスモとオーテック、どちらを選ぶ?

日産・ノート オーラ オーテックスポーツスペック

ノートオーラにはすでに内外装を専用に仕立てた「AUTECH」というモデルがあるが、走りについては基準車と共通とされていたところ、今回のAUTECH SPORTS SPECは、シャシーやパワートレインなどが専用にチューニングされている。それは同じく日産モータースポーツ&カスタマイズが手がけた既出のNISMOとも異なるものだというから、違いが気になるところだ。

日産モータースポーツ&カスタマイズは、NISMOとAUTECHという2つのブランドを擁しており、モータースポーツ由来の「ピュアスポーツ」を身上とするNISMOブランドに対し、AUTECHブランドはクラフトマンシップによる「プレミアムスポーティ」をコンセプトとしている。
同じ「スポーツ」でも方向性が異なり、ひとつのメーカーでこうした本格的な直系のカスタムカーを2種類も選べるという例はちょっと心当たりがなく、コンセプトにあわせて、それぞれ内外装や走りには異なる味付けが施されている。

上質な乗り味と、爽快なハンドリング

メタル調フィニッシュのフロントグリルがエレガントな雰囲気を醸し出す。

NISMOとAUTECH系の見た目の違いは一目瞭然だが、既出のAUTECHと今回のAUTECH SPORTS SPECでは、外観の違いはパーツとしては大型リアスポイラーとタイヤ銘柄とエンブレム程度なのだが、若干ローダウンされているせいか、AUTECHSPORTS SPECのほうが心なしか走りそうに見える。

パッと見では判別がつきにくいものの、乗ればすぐにわかるほど違っている。AUTECH SPORTS SPECでは、サスペンションの仕様やタイヤ銘柄を「MICHELIN e·PRIMACY」変更し、パフォーマンスダンパー、大型のルーフスポイラーなどの採用を軸に、パワーステアリング特性をチューニング。さらには、加速フィールを司るコンピュータも専用仕様とすることで、安心感が高いハンドリングと爽快で質感の高い乗り味を実現しました。

リヤに装着された大型ルースポイラーは、ダウンフォース増大させ直進安定性を高める。

開発にあたっては、AUTECHとNISMOの両方を担う熟練のテストドライバーが徹底的に走り込みを行い、すべてを把握した上でそれぞれに相応しく、一部を共有しつつドライブモードにひとつひとつにいたるまで整合性を図り差別化を図ったという。

乗り心地はNISMOよりもマイルドで万人向けという印象だが、リアをモノチューブ式としたショックアブソーバーや大型リアスポイラーはNISMOと共通ながら、スプリングレートが実はNISMOよりも高いと聞いて驚いた。

路面からの入力が巧みに緩和されて瞬時に収束するのは、タイヤの変更やリアエンドのNISMOでは補剛バーを追加した箇所にパフォーマンスダンパーを採用したことも効いているに違いない。その性能を十分に発揮できるようブラケットの剛性や取り付けボルトのサイズにまでこだわったというのも、ファクトリーチューンなればこそだ。

日産・ノートオーラ オーテックスポーツスペック

回頭性は俊敏で、FWDながらハンドリングにはあたかも4WDのような感覚もあることも印象的だ。リアがふんばって路面を捉え、前後が同じバランスでグリップする感覚があり、フロントが外に逃げることなく舵角を維持したままコーナーをスムーズに立ち上がっていける。

NISMOももちろん楽しいが、やや意図的に刺激度マシマシにされている印象もあったところ、微舵の領域からリニアに応答してしっかりとした手応えのあるAUTECH SPORTS SPECのほうが、走りの一体感では上回っているように思えた。

アクセルレスポンスは俊敏、カスタマイズされたスポーツモード

パワートレーンも基準車とNISMOのいずれに対しても、モーターやバッテリーを変えることなく、AUTECH SPORTS SPECとして相応しくリニアで上質な加速フィールを目指して差別化されている。

ドライブモードのノーマルモードが基準車のスポーツモードよりも速くされているとおり、たしかに明らかに速い。ただし、扱いやすさを損なうことなく速さを実感できるような、ちょうどよい味付けとなっているあたりがAUTECH SPORTS SPECらしい。アクセルレスポンスは俊敏ながら、踏んだ以上に強く加速することはないので、意のままに操れる。スポーツモードにするとさらにパワフルになるのはもちろんでも、扱いやすさが損なわれることはない。

現状、AUTECH SPORTS SPECの駆動方式は2WDのみで、車両本体価格は319万8800円となる。ご参考まで、NISMOは2WD車が307万2300円で、2024年夏に基準車のマイナーチェンジに合わせてラインアップに加わった4WD車は347万3800円となる。

いずれAUTECH SPORTS SPECにも4WDが追加されるかどうかも気になるところだが、AUTECHには車高を高めた「AUTECHクロスオーバー」があり、2025年初の時点では、そちらのアップデートがまず先ということになりそうだ。

また、AUTECH SPORTS SPECとNISMOではだいぶキャラクターが異なり、求められるものも違うので、どちらか迷う人はあまりいないことと思うが、AUTECH SPORTS SPECはあくまでAUTECHの一員らしく、持ち前のクラフトマンシップとともに、走りにおいてもどんなシチュエーションにも対応る懐の深さを兼ね備えているところが印象的だった。こうした選択肢の登場を心待ちにしていた人も少なくないことだろう。

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著者プロフィール

岡本 幸一郎 近影

岡本 幸一郎

クルマ業界に入って28年超、内、フリーランス歴は22年あまり。これまで25台の愛車を乗り継ぎ、高級輸入車…