元F1ドライバーにしてインディ500ウィナー佐藤琢磨とカートバトル!?『TAKUMA CLUB KART MEETING 2025』は大盛り上がり!

F1で活躍し、世界三大レースのひとつ「インディ500」で日本人初優勝を果たしたレーシングドライバー・佐藤琢磨選手(以下、敬称略)。そのファンクラブ交流会である「Takuma Club Meeting」が今年も開催された。お台場の電動カートサーキット「シティサーキット東京ベイ」を会場に、カート大会やトークショーなどが行われた。

カート大会は佐藤琢磨とタンデムカートで同乗走行も!?

カート大会は経験者の「チャレンジコース」と初めて乗るビギナー向けの「エンジョイコース」を設定。それぞれ練習走行と、その後の耐久レース、さらにチャレンジコースは決勝レースとたっぷり走れるプログラムが組まれていた。

さらに、エンジョイコースではタンデムカートで佐藤琢磨と同乗走行というファン垂涎のプログラムも組まれていた。

くじ引きで選ばれた幸運な8名がタンデムカートで佐藤琢磨と同乗走行を体験。
佐藤琢磨レプリカのヘルメットを被る参加者の姿も。

この日は生憎の雨でコースはヘビーウェット。参加者はレインウェアを用意しての参加だが、それでも雨だけでなくカートが跳ね上げる水飛沫にズブ濡れになりながらもカートレースを楽しんだようだ。

カート大会にはレース経験もあるモータジャーナリストも参加してレースを盛り上げた。写真は走行後にコメントする桂 伸一氏。

佐藤琢磨が電動レーシングカートでデモ走行

また、練習走行後は佐藤琢磨による電動レーシングカートのデモ走行。レンタルカートとは明らかにモーター音やレスポンスの違う様子は、確かにレース用であることを窺わせた。

一方で、レイン用のセッティングになっておらず、雨天でのデモ走行レベルではタイヤも温まらず佐藤琢磨のテクニックをもってしてもその扱いには苦労していた様子。とはいえ、パフォーマンスで来場者を盛り上げるスター性はさすがだ。

実はこのシティサーキット東京ベイを走るのは初めてという佐藤琢磨。電動カートや今回のカート大会、電動レーシングカートについてこう語った。

「まず圧倒的に静かですよね。排気ガスもオイルの匂いもない本当に都市型でクリーンで非常にサステナブル。ただ、レースはやっぱり音とかって大事なので、自分としてはもちろんエンジンの感覚っていうのは好きなんですが、でもEVならではのトルクとアクセルレスポンスの良さは良いですね。エンジンタイプのレンタルカートって、発電機用のエンジンだったり遠心クラッチだったりするので、そういうのに比べると、逆にこっちの方がダイレクトでレスポンスも良い。もちろんレンタルカートはスピードを抑えているんでしょうけど、パワフルなモーターを使えば、相当迫力あるレースが見られるんじゃないかな」

「デモランももう少し行けると思ったんですが、全然でしたね(笑)。レーシングタイヤはワーキングレンジ(作動温度)まで上がらないとただのプラスチックの塊ですから。そういう意味ではレンタルカートのタイヤの方が誰でも乗れるように、いつでもグリップするようにできてるんだな、と思いました」

シティサーキット東京ベイ
所在地:東京都江東区青海1丁目3-12
営業時間:月曜~木曜12:00-20:00/金曜・土曜・日曜12:00-22:00
400mの本格的な屋外コースや雨天でも楽しめる屋内コース、シミュレーターなどを備えた都市型カートコース。レンタルカートで手ぶらで楽しめ、ゆりかもめ駅直結、りんかい線東京テレポート駅徒歩4分というアクセスの良さも魅力。

TAKUMA KIDS KART CHALLENGE

レーシングドライバーになるためのある意味最も大事な資質は資金があること。多くのレーシングドライバーが資金的に余裕のある環境で幼少期からカートを始め、ステップアップしていくのが一般的だ。
しかし、そんな王道とは異なる道でF1ドライバーまで上り詰めた佐藤琢磨は、資金力で劣る子供たちがレーシングドライバーを目指せる可能性のために「TAKUMA KIDS KART CHALLENGR」を主催している。

『TAKUMA KIDS KART CHALLENGE』出身者にその経験を聞く佐藤琢磨。

レンタルカートによる初心者歓迎のタイムトライアルから成績上位者による決勝ファイナル、そしてレーシングカートのアカデミーへ……比較的安価に挑戦し、レーシングドライバーへの可能性を模索できるチャレンジなのだ。
今回の『TAKUMA CLUB KART MEETING 2025』のカート大会でも、『TAKUMA KIDS KART CHALLENGE』出身者が参加して鋭い走りを見せていた。中にはこのチャレンジから本格的なレーシングカートに進み、カートエリート達とタイムを競っているという。

小学生を対象にした『TAKUMA KIDS KART CHALLENGE』。中にはそこで何年も経験を積んだキッズも。

佐藤琢磨はこの『TAKUMA KIDS KART CHALLENGE』出身者について
「卒業生の中には鈴鹿サーキットのスクールに入って英才教育を受けた子たちと肩を並べて、本格的にレーシングドライバーを目指している子もいます。まだフォーミュラに乗れるようになった子はいませんが、卒業生が成長してレーシングドライバーを目指しているというのは嬉しいですね」
と語った。

始まりは東日本大震災復興支援から
スポーツを通じて子供の挑戦を後押しする

佐藤琢磨は2011年の東日本大震災をきっかけに子供たちへの長期的な支援を目指して「With you Japan」を立ち上げ。そこから発展して2014年から「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」をスタートし、小学生を対象にレースへの挑戦を後押ししている。

「元々は外で自由に遊べなくなってしまった復興地の子供のチャレンジをサポートしたいと思っていろいろなスポーツを始めたんですが、やはり僕がレーシングドライバーということでキッズカートの耐久レースをやってみたらこれがとても好評でした。そこから広げて全国の子供達を応援できる場にしようと『TAKUMA KIDS KART CHALLENGE』という形でスタートしました」

雨のレースはスピン続出の波乱の展開。

「カートって学校でできるスポーツではないですよね。興味はあっても乗ったことのない子供達がほとんどで、中には怖がって乗りたがらない子もいるんですよ。それが他の子が楽しそうに乗っているのを見ると、自分もやれるんじゃないか、できないのが悔しい、と思うんでしょうね。そこからやってみたら、スタートストップやカルガモ走行を経て最後にはタイムアタックできるようになる」

経験者は経験者なりに、初心者は初心者なりに、カート走行を楽しんだ。

「これ何が起きたかっていうと、自分の中で”私はこれできない”って一度線を引いてしまった。
でもやってみたらできるようになって、すごく楽しくてうまくなったっていうそのプロセスが1日で勉強できる。これは、なかなかできないスポーツだからこその良さで、教材として面白いなと思ったんですね」

レースではチーム分けが行われるのだが、チーム名は佐藤琢磨がかつて所属したチーム名。ちなみにこのコースのレンタルカートでのコースレコードは29秒台。

「だからそれで”レーシングドライバーになる”というわけじゃなくて、将来自分の夢に向かって挑戦しようとした時に、キッズカートチャレンジの時の”やってみたら道が開ける”という経験を忘れずに頑張ってもらえたらいいな、というのが趣旨です」

48歳16度目のインディ500で3勝目を目指す

佐藤琢磨は2017年に日本人で初めてインディ500を制し、さらに2020年には2勝目を挙げている。そして2025年、3勝目を目指す挑戦が発表された。『TAKUMA CLUB KART MEETING 2025』の会場で本人にその意気込みを伺った。

「もうちろん3勝目を狙っていきます。今年は去年に引き続きレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングで走るんですけども、やはり去年復の復帰戦というか……もう年に1回しか走らないので難しいんですよね。その去年でさえ、苦労してたんですけど、本当にいろんなことに取り組んで予選でホンダ勢2位、トップ10に入れたのはすごく良かった。
ただ、決勝は残念ながら雨で5〜6時間順延してコンディションも大幅に変わって、僕としては満足行くようなレース展開は行けなかった。でもたくさんヒントというか、良いところが見えたので、今年はそれをしっかりと次のステップに繋げて勝利を目指して頑張りたいなと思ってます」

PHOTO:amada

2025年で16度目の挑戦となるわけだが、やはり毎年違いがあるのだろう。

「毎年いろいろな課題が見えてくるんですが、1つずつ克服しながら進むんですよね。例えば2017年にインディ500初優勝した時のアンドレッティオートスポーツは歴史もあるインディのトップチームで、素晴らしい環境もあって勝てたんですけど、翌年はレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに復帰して、もうほんとに厳しい状況から始まり、2018年と2019年3位表彰台があって、2020年優勝してるんですよ。
確実に継続することで力をつけて、自分も経験を積んで、チームに足りないものがあってもその中でも全力を尽くすしかないですよね」

「インディは去年からパワーユニットがハイブリッドになっていて、僕はインディ500でそのハイブリッド使うのは初めてなんですけども、そこもすごく楽しみです。それにここ2年間はシボレーにやられてしまっているので、今年こそはホンダのパワーユニットで勝ちたいなと思ってます」

インディ500の最年長出場者は1992年のA・J・フォイトの57歳(58歳の1993年は予選落ちで出生扱いにならず)。A・J・フォイトじゃインディ500で通算4勝のヒーローで、自チームで佐藤琢磨を走らせたこともある。
最年長優勝は1987年のアル・アンサーの47歳。インディ500はベテランが活躍できるレースだけに、佐藤琢磨にはこの最年長優勝記録の更新を期待したい。

佐藤琢磨を囲んで記念撮影。

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