「自分は大丈夫だとなぜ思ってた…?」飲酒運転を取り巻く心理と厳罰化の現実

高速道路で取り締まられるドライバーや、ニュースで伝えられる痛ましい事故の原因として「飲酒運転」という言葉をよく耳にする。「飲んだら乗るな」という標語は広く知られているが、長崎県警の「自分はなぜ大丈夫だとなぜ思った…?」や北海道県警の「いかのにぎり」など地域によってはユニークな標語も存在する。

飲酒運転と一口にされているが、実は「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」という2つの区分が存在する。しかしながら、この2つの違いを正確に理解している人は意外と少ない。両者には罰則の重さや判断基準に大きな違いがあり、中には運転者だけでなく同乗者にも重大な責任が生じるケースもある。

道路交通法で定められている罰則

道路交通法では、飲酒運転について「酒気帯び運転等の禁止」として、第65条 第1項:何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならないと厳しい罰則が設けられている。これはドライバーはもちろんだが、運転者以外の周囲の人にも関係する罰則だ。

ドライバーに対しての罰則は以下の通り。

酒酔い運転5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
酒気帯び運転3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

次に運転者以外の周囲の人に対しての罰則だが、車両提供者は運転者と同じ処罰を受けることとなる。

第65条 第3項において何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。と定められているのだ。

酒類を提供したり車両の同乗者だった場合の罰則は以下の通りだ。

運転者が酒酔い運転3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
運転者が酒気帯び運転2年以下の懲役又は30万円以下の罰金

さらに詳しい情報は警視庁のホームページをご覧ください。

数値で判断される「酒気帯び運転」

酒気帯び運転とは、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上、または血液1ミリリットル中に0.3mg以上のアルコール濃度を含んでいる状態で車両を運転する行為だ。この基準値は政令で明確に定められており、運転手の体質や体調に関わらず、この数値を超えれば違反となる。

警察の飲酒検問では、アルコール検知器を用いて呼気中のアルコール濃度が測定される。たとえ「全然酔っていない」「時間が経っている」と主張しても、基準値を超えていれば例外なく罰則の対象となる。つまり、酒気帯び運転は客観的な数値によって判断される違反なのだ。

罰則は呼気中のアルコール濃度によって段階的に設定されている。0.15mg以上0.25mg未満の場合は13点の減点と3年以下の懲役または50万円以下の罰金。0.25mg以上では25点の減点となる。

状態で判断される「酒酔い運転」

「飲酒したら絶対に運転しない」という強い意識を持つことを運転手や同乗者、お酒を提供する人にも徹底したい

酒気帯び運転が呼気中のアルコール濃度で判断される一方、酒酔い運転はこのような数値ではなく運転手の「状態」で判断される。

アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転を指し、呼気中のアルコール濃度に関わらず、以下のような内容で状態が判断される。

  • 白線の上をまっすぐ歩けるか
  • 警察官との質疑応答で呂律が回っているか
  • 視覚や認知能力が正常に機能しているか

これらの要素を総合的に判断し、明らかにアルコールの影響で正常な判断ができない状態と見なされれば、たとえ呼気中のアルコール濃度が基準値以下だとしても酒酔い運転として検挙される可能性がある。酒酔い運転の罰則は酒気帯び運転よりも厳しく、5年以下の懲役または100万円以下の罰金に加え、35点の減点が課せられる。これは前歴や累積点数に関わらず一発免許取り消しとなる重い処分だ。

同乗者にも責任が及ぶ飲酒運転

近年の飲酒運転厳罰化に伴い、同乗者にも責任が問われるようになった点は特に注意が必要だ。運転者が飲酒していることを知りながら同乗した場合、同乗者にも厳しい罰則が科せられる。具体的には、酒気帯び運転の車に同乗した場合、2年以下の懲役または30万円以下の罰金。酒酔い運転の場合はさらに重く、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。「自分は運転していないから関係ない」という考えは通用しないのだ。

また、飲酒運転の車両に同乗しなくても、飲酒している人に車を貸したり、お酒を提供したりした場合も共犯として罰せられる可能性がある。飲酒運転は運転者だけの問題ではなく、周囲の人間も含めた社会全体の問題なのだ。そもそもの前提として「少しだけなら」「もう時間が経っているから」という甘い考えが、取り返しのつかない事故を引き起こす可能性がある。今更ではあるが、飲酒運転を防ぐためにも「飲酒したら絶対に運転しない」という強い意識を持つことを徹底したい。

また各自治体の県警では飲酒運転に対し、様々な啓発活動が行われている。しかし、結局のところ最も大切なのは「飲酒したら絶対に運転しない」という個人の強い意識である。

長崎県警の「自分は大丈夫だとなぜ思ってた…?」は過信への警告を込めた印象的なものであり、北海道県警の「いかのにぎり」は地域色を感じさせる標語だ。しかしながら、どんなにユニークな標語であっても、その意識が欠けていては命を守ることはできないのである。

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