いまや希少な3.0Lターボ×6MT対決「GRスープラ」 vs. 「フェアレディZ」似たスペックの陰に潜む違いを探る

6気筒ターボと6速MTという共通の構成を持ちながら、ブランドの個性と設計思想によって異なる魅力を放つトヨタ GRスープラと日産 フェアレディZ。スペックもよく似た2台だが価格は大きく異なる。両車のスペックや走行性能、実用性などを比較しながら価格差について深堀りしてみよう。

車内の使い勝手や荷室容量はZが優位

現代では絶滅危惧種となっている大排気量6速MTのFRスポーツカー。今回は「トヨタ GRスープラ」と「日産 フェアレディZ」を比較してみよう。

ますは2台のサイズから、スープラは全長4380mm×全幅1865mm××全高1295mmのコンパクトサイズにまとめられた2シータークーペだ。車内はドライバーを包み込むようなタイトな構成となっており、水平基調のインパネや低く構えたシートポジションがスポーツドライビングを意識させる仕上がりになっている。

一方のフェアレディZも、ボディサイズは全長4380mm×全幅1845mm×全高1315mmと、スープラと非常に近い寸法にまとめられている。アナログ3連メーターが備わるインテリアは、往年のスポーツカーを思わせるオーソドックスなデザインだが古臭さはない。各部のデザインは内外装を含めてスープラとは対称的といえるだろう。

両車の荷室容量はスープラが290L、フェアレディZは241Lとなっており2人用としては十分な容量だ。容量自体はスープラの方が大きいが、リアまわりの補強のためにハッチ開口部は狭く、床面が低いためやや使いづらい。反対に、フェアレディZは開口部が広が、荷室床面は浅い。

座席まわりのユーティリティを含めて、日常的な使用上の観点ではフェアレディZの方が使いやすそうだ。ただし、どちらも2シーターのハッチバックスポーツカーであるため相応に不便であることは変わりない。

トヨタ GRスープラ RZ(6MT)
ボディサイズ=全長4380mm×全幅1865mm×全高1295mm
ホイールベース=2470mm
車両重量=1520kg
タイヤサイズ=265/30ZR19(前後)

日産 フェアレディZ(6MT)
ボディサイズ=全長4380mm×全幅1845mm×全高1315mm
ホイールベース=2550mm
車両重量=1570kg
タイヤサイズ=255/35ZR19(前)275/35ZR19(後)

6気筒×FR×6MTの共通構成でも、走りの味つけはまったく異なる

両車ともに、3.0L6気筒ターボエンジンをフロントに搭載して後輪を駆動する構成であり、どちらにも6速MTが用意されている。

スープラには、直列6気筒ターボが搭載され、最高出力は387PS、最大トルクは500Nmを発揮する。完全バランスを実現する直列6気筒エンジンは振動が極めて小さく、高回転までよどみなく吹き上がるフィーリングも相まって、よりスープラの特別感を引き上げる。

一方、フェアレディZに搭載されるのは最高出力405PS、最大トルク475NmのV6ツインターボだ。最高出力発生回転数がスープラよりも高く、出力値でも上回ってはいるがレブリミット付近のフィーリングに直6エンジンのような爽快感は少ない。

フェアレディZは大排気量自然吸気エンジン車のような雰囲気であり、シャシーの仕立て方の違いも相まってスープラとは走行フィールの方向性が異なる。

どちらもスポーツカーらしい構成であるが、スープラがドライビングの一体感を楽しむ「操る喜び」に寄せた味つけであるのに対し、フェアレディZは「余裕あるパワーを滑らかに使いこなす」方向でキャラクターを分けているようだ。

トヨタ GRスープラ RZ(6MT)
エンジン形式=直列6気筒ターボ
排気量=2997cc
最高出力=387ps/5800rpm
最大トルク=500Nm/1800~5000rpm
トランスミッション=6速MT
駆動方式=2WD(FR)

日産 フェアレディZ(6MT)
エンジン形式=V型6気筒ツインターボ
排気量=2997cc
最高出力=405ps/6400rpm
最大トルク=475Nm/1600~5600rpm
トランスミッション=6速MT
駆動方式=2WD(FR)

近いスペックでも価格に差が出る理由、それぞれに合うユーザー像とは

直6エンジンとMTを搭載した「スープラ RZ」の価格は800万円だ。フェアレディZのもっとも安価なベースグレード6速MTモデルは549万7800円であり、両車には約250万円もの価格差がある。

両者とも同じような構成であるのにもかかわらず、これだけの価格差が生まれる背景には複数の要因がある。ひとつ目はプラットフォーム原価の違いだ。

BMWとの共同開発されたスープラは、構造をZ4と共有しているため、内装や電子制御系に輸入車準拠の高コストな部品が多く含まれている。さらに、シャシーやボディ剛性の造り込みにおいても、高剛性・高精度を前提とした仕上がりになっており、これが製造コストにも反映されている。

ふたつ目の理由は装備内容と質感の違いだ。スープラはプレミアムスポーツとしての性格も併せ持っており、インテリアの質感に加え、安全装備の充実度でも高い水準を誇る。対するフェアレディZは、純国産であることによるコスト抑制が効いており、必要十分な装備とスペックを備えながらも、価格とのバランスに優れた設定となっている。

スポーツカーの本質である「走る楽しさ」を手頃な価格で味わいたいなら、フェアレディZが理想的な選択となる。一方で、素材や感触といった細部までの完成度、そしてプレミアム性を重視するならスープラの持つ価値が明確になるだろう。

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