なぜだ!? ジムニーシエラのワイドフェンダーをあえてナロー化【リターン四駆乗りのためのクロカン4WDトレンド講座・その1】

1ST JOAミーティング
APIO TS8 ジムニーシエラ
アウトドア人気の高まりに伴い、タフでワイルドな“四駆”に注目する人が増えている。四駆といえばカスタムとの親和性も高いカテゴリーで、多くのオーナーが愛車を自分色に染めている。そんな四駆カスタムの最新トレンドを2回に分けてお伝えしよう。まず取り上げるのは、APIOが手がけたジムニーシエラ。なんとワイドフェンダーをあえてナロー化していた!

TEXT●山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka) PHOTO●Motor-Fan 取材協力●1ST JOAミーティング

四駆に乗るなら押さえておきたい最新のトレンドとは?

80年代から90年代初頭にかけて、世を席巻したのがクロスカントリー4WD、いわゆる“四駆”だ。スポーツカーやハイソカーを凌ぐ人気ぶりで、四駆に乗ってキャンプやスキーに行くのが一種のステイタスになったほどだ。

ご存じの通り、ジムニーの大ブームによって、四駆は完全に復権を遂げている。流麗なSUVが普通のクルマになってしまった今、無骨でシンプル、機能美に溢れた四駆は、幅広い年代の人々の心を掴んでいる。

四駆と言えば、他のカテゴリーにはない独特のカスタムが人気だ。さる12月8日、神奈川県横須賀市にある長井海の手公園ソレイユの丘において、日本四輪駆動車用品協会が主催する『1ST JOAミーティング』が行われた。会場には老舗四駆ショップがカスタムした、イマドキの車両が勢揃い。今回は、そろそろ四駆に戻りたい! 新たに四駆に乗ってみたい! という人に、四駆最新トレンドを2回に分けてお伝えしたいと思う。

ジムニーの老舗カスタマー、APIOの最新作はナロー化したジムニーシエラ

さて、前述の通り、今の四駆ブームを再燃させたのは、現行型ジムニー&ジムニーシエラである。ジムニー乗りは、ジムニーをJB64、シエラをJB74と、型式で呼ぶのがスタンダードとなっている。ジムニーブームに沸いたのはユーザーのみならず、カスタム業界も同様だ。

古くから四駆カスタムを行っているショップはもちろんのこと、普段は畑違いのカテゴリーのカスタムショップまで市場に参入してきている。しかし、そこは「餅は餅屋」。独特の車体構造を持つ四駆、そしてジムニーの特性を知った老舗ショップが、現在も業界をリードしている状況だ。

そんな老舗ショップのひとつが、「APIO(アピオ)」だ。創業半世紀以上の実績と、ジムニーの豊富な知見、そして独自のセンスにより、多くのジムニー乗りから支持されている。アピオの展示車両の中で、いま最も注目を集めているのが新作の「APIO TS8 ジムニーシエラ」だ。TSシリーズはAPIOのコンプリートカーに与えられた名称であり、TS8は最新モデルとなる。

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APIO TS8 ジムニーシエラ

写真を見ていただくと分かると思うが、ワイドフェンダーの付いたシエラを、あえてナロー化しているのである。さらにオリジナルのフロントグリル、前後バンパー、30mmアップサスペンションを装着してカスタム。またファンに爆売れの、APIO×ヨシムラコラボレーションマフラーもポイントのひとつだ。ご存じの方も多いと思うが、ヨシムラはバイク用マフラーを作っているメーカー。バイク乗りはお馴染みのブランドだ。このマフラーが付けたいがために、APIOでジムニーを購入するユーザーが少なくないという。

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APIO TS8 ジムニーシエラ
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APIO TS8 ジムニーシエラ
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APIO TS8 ジムニーシエラ
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APIO TS8 ジムニーシエラ

そもそも、なんでワイドのシエラをナロー化したかというと、それは日本の林道にワケがある。日本の林道の道幅は非常に狭く、軽サイズのジムニーでも厳しいと思えるシーンが多々あるほど。そこで、シエラのトレッドを狭くして欲しいというユーザーの声を基に、このTS8が生まれた。ジムニーよりもワイドトレッドなので運動性能的に有利で、見た目にも迫力が出せるというのもメリットだ。

ちなみに、ジムニーと言えばリフトアップ化がカスタムの定番だが、最もベーシックなのが2インチアップ。オフロードを頻繁に走るという人は3インチアップ。昨今、関西方面からトレンドとしてやって来ているのが、チョイ上げの1インチアップといった感じだ。1インチアップはかかるコストも低く抑えられ、見た目も大仰にならないのがいい。初めて四駆に乗る人は、とりあえず1インチから始めたい。

タイガーオートが提案するオーバーランド仕様のジープ・ラングラーアンリミテッド

ジムニーがブームになるずっと前から、日本で人気だったのがジープ・ラングラーアンリミテッドだ。初代モデルはJK、2代目で現行モデルはJLというモデル名が付いている。実は知らない人も多いのだが、日本はアメリカに次ぐジープ大国。世界の市場において、日本は2番目に販売台数が多い国なのである。ジムニーほどではないが、道を走るととにかくJKやJLに出会う。

ジープの正規ディーラーで、カスタムの老舗なのが、埼玉県にある「タイガーオート」だ。現在、当たり前のようにユーザーが行っているJeepカスタムの礎は、タイガーオートが先代の頃に築いたと言っても過言ではない。“タイガーパッケージ”というコンプリートカーは、正規ディーラーで購入できる唯一無比なコンプリートカーとして、全国のファンに人気がある。

そのタイガーパッケージをベースに、新しい価値観を提案しているのが、写真のJL。いわゆる「オーバーランド仕様」というやつだ。オーバーランドとは、豪州初のクルマ旅のスタイルで、クルマで自然の中を走り回りながら、好きな場所で寝泊まりし、また次の場所へ移動する。ルーフテントやサイドーニングを屋根に取り付け、車内には簡易キッチンなどを載せていくというのが「オーバーランダー」と言われるクルマである。

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タイガーオート ジープ・ラングラーアンリミテッド

昨今はアメリカでオーバーランドが大流行しており、彼の地ではSUVやピックアップをオーバーランダーに改造するのが流行っている。豪州や南アフリカ、欧州、日本では、四駆をベースにしてオーバーランダーを作るのが人気だ。ジープ・ラングラーアンリミテッドやジムニー、ランドクルーザー70系、ランドローバー・ディフェンダーをベースにするのが定番になっている。

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タイガーオート ジープ・ラングラーアンリミテッド

タイガーオートのJLには、オーバーランダーのプロトコルに則って、「ARB」のルーフテントが装着されている。古くからの四駆ファンならご存じだと思うが、ARBはオーストラリア発の老舗四駆パーツメーカー。かの国では定番のブルバー(カンガルバー)をはじめ、カスタムというよりは実用性の高いパーツを豊富にリリースしている。ARBはアメリカやその他の国でも人気で、日本ではリアルオフローダー、特にランクリストに支持されている。

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タイガーオート ジープ・ラングラーアンリミテッド

テントは4方向が開口する珍しいルーフテントで、タイプは横開き。横開きは床面積が2倍になるため就寝スペースが広くなる一方で、横に張り出してしまうため、道の駅やSA・PAなどで使うことができないという点もある。

ちなみにこのテント、よく見ると取り付けにベースキャリアを介していない。実は中に取り付け用のステーを装着し、FRP製ルーフを貫通する形で取り付けているのである。穴開けが必要なので少し勇気がいるが、頻繁に旅に出かける人であれば、車両全体がローフォルムに抑えられるのでいいかもしれない。

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タイガーオート ジープ・ラングラーアンリミテッド

ボディサイドを見てみると、ドアヒンジに共締めするフィッシュボーンオフロード社製の折り畳み式ステップや、水タンクなどが付けられるクォーターウインドウのステーパネルがヘビーデューティを演出している。このステーパネルは、レインガーターが後部に伸びているJLだから取り付けられるパーツで、残念ながらJLに装着不可。ここにロトパックスやサンドラダーなどを取り付けたら、オーバーランダーとして完璧なスタイルになるだろう。

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タイガーオート ジープ・ラングラーアンリミテッド
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タイガーオート ジープ・ラングラーアンリミテッド

ブラックライノのホイールが足元を彩るランドローバー・ディフェンダー110

オーバーランダーをおう1台ご紹介しよう。こちらはホイールインポーターのMLJが出展した、ホイールブランド「ブラックライノ」のデモカー・ディフェンダー110である。ディフェンダーもホットなオフロード4WDだが、何分高級車である。またデリバリーもこのコロナ禍の影響で遅れており、レアなモデルになってしまっている。

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ブラックライノ ランドローバー・ディフェンダー110

高級車ゆえになかなか大がかりなカスタムに踏み切る人が少ないと思うが、ここまでやると、旧モデルを彷彿させるスタイリングになる。20インチのマッドタイヤとブラックライノのホイールの組み合わせは、上品テイストな現行型ディフェンダーを一気にヘビーデューティに見せる。

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ブラックライノ ランドローバー・ディフェンダー110

ルーフ上にはハードシェルタイプのテント、クオーターウインドウにはお約束のロトパックスが装着されている。目を惹くのが、車体の2方向を覆うアンブレラタイプのサイドオーニングで、海外のオーバーランダーで人気を博している。今後、日本でも定番のアイテムになるはずだ。

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ブラックライノ ランドローバー・ディフェンダー110
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ブラックライノ ランドローバー・ディフェンダー110

もうひとつ気になったアイテムが、シュノーケル。シュノーケルは本来、水深の深い場所を走るための空気用パイプだが、四駆をタフなイメージにドレスアップできるパーツとしても人気がある。写真のシュノーケルのメーカーは不明だったが、マークから想像するにUKのブランドなのだろうか。昨今のデザインはかつてのような煙突形状ではなく、Aピラーに沿ってスタイリッシュに見えるものがトレンドだ。今後、ジムニーでも流行しそうなのでチェックしておきたい。

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ブラックライノ ランドローバー・ディフェンダー110

さて、パート2ではホイールのトレンドや、人気のランドクルーザーカスタムなどについてご紹介していく予定だ。

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…