ビードロック、鉄チン、補助灯、グリルガード…80年代のカスタムが令和に復活!?【リターン四駆乗りのためのクロカン4WDトレンド講座・その2】

2回にわたって紹介している四駆最新トレンドさが、今回はホイールをはじめとするアイテム類に注目してみたい。そこで見えてきたのは、80年代〜90年代にかけて流行していたトレンドが、今また復活しているというユニークな現象だ。カスタムの歴史は繰り返す!?

TEXT●山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka) PHOTO●Motor-Fan 取材協力●1ST JOAミーティング

歴史は繰り返す! かつて流行した四駆カスタムが今、再び熱い

「温故知新」という言葉があるが、まさに現在の四駆カスタムの世界がそれだ。トレンドは得てして繰り返してやってくるものだが、現行型ジムニーやランドクルーザーがデザインヘリテージを採用したことで、カスタム業界もまた80年代、90年代へと回帰している。

オフロード4WDに限らず、愛車のカスタムをする場合にまず考えるのがタイヤ&ホイールの交換だろう。四駆の場合は特に、フットピースを替えることはイメージチェンジに非常に効果的だ。さらに走行性能の向上や乗り心地の改善といった部分についても有効だ。

ジムニーなどのオフロード4WDの場合、タイヤはM/T、いわゆるマッドテレーンタイヤに替えることで、愛車のイメージをグッとヘビーデューティにすることができる。では、アルミホイールはどうするかというと、「スポーク系」「ディッシュ系」のいずれかということになる。

スポークホイールでスポーティさをアピール

まずスポーク系だが、昨今は非常にスポーク自体が細くなり、しかもエッジが立ったデザインが主流になっている。さらにスポークの途中で方向が変わっているような繊細なデザインの商品も次々と登場している。こうしたデザインは、かつては鍛造ホイールの特権だったが、最近は生産技術の向上によって鋳造でも細やかな作り込みが可能になっている。

1ST JOAミーティング
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ビードロック“風”ホイールでタフさを表現

一方、SUVの台頭でしばらく人気のなかったディッシュ系が、いま復権の兆し著しい。80年代、90年代と言えばディッシュ系華やかかりし頃で、“レンコン”と呼ばれる多孔デザインのホイールがブームになった。で、現在はと言えば、ビードロックホイールが注目されている。

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「ビードロック」とは、オフロード走行で空気圧を落とした時に、ホイールのリムからタイヤのビード部が外れてしまわないようにするための“リング”、つまり留め具だ。実際にビードロックを付けている人も見かけるが、ホイール市場に出回っている多くのホイールはダミーデザイン。ビードロックのような意匠をホイールの一部に施しているのである。だから、実際にタイヤ落ち防止の効果は望めない。しかし、足元がグッとタフなイメージになることは間違いない。

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ノスタルジックな雰囲気のスチール風アルミホイール

これに加えて、スチールホイール風アルミホイールも流行している。と書くとよく分からなくなるが、要はスチールホイールのようなデザインを持ったアルミホイールである。“鉄チン”といった方がイメージが湧く人が多いかもしれないが、昔のオフロード四駆は純正ホイールと言えば、まず鉄チンだった。それがかえって力強く見えたことから、あえてこのデザインを選ぶ人が増えているようだ。

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ランプバーや作業灯など多彩な補助ランプが登場

復権していると言えば、補助ランプも同様だ。今回、フレックスドリームが出展していたランドクルーザー70ピックアップトラック(79系)が、まさにお手本のようなカスタム例だった。

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かつて四駆カスタムと言えば、グリルガード、補助ランプ、ルーフラックが三種の神器と言われていた。しかしSUVが主流になると、こうしたヘビーなカスタムは廃れ、エアロパーツ中心のカスタムになったことは周知の通り。同時に補助ランプが付けることが減っていた。

補助ランプ復権の立役者となったのは、ランプバーだ。多くのLEDを1本のバーの中に内蔵したアイテムで、ルーフ状に取り付けて作業灯として使う。法規上、走行中に点灯することはできない。

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そしてまさに復権なのが、フロントグリル中央部に付ける補助灯だ。かつて流行したドライビングランプやフォグランプとほぼ同じ形状だが、現在では法規上、ハイビーム補助灯として使う。つまりヘッドランプをハイビームにした時にのみ点灯するようになっている。使い方は変わっても、愛車の顔のイメージを大幅に変えてくることは変わらない。

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また、ルーフラックなどに付ける小さな作業灯も人気が上がっている。こうしたランプが何使われているかというと、それはキャプサイトの照明。設営・撤収時はもちろんのこと、キャンプ中も照明として使われるのである。補助ランプのトップブランド「IPF」では、こうした使用シーンを考慮して、昨今は停車中でも長時間点灯できるように、ポータブル電源との併用システムも販売している。

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実用性とデザイン性を両立したルーフラックが人気

オフロード四駆でヒット商品になっているのが、ルーフラックだ。かつてはネコも杓子も四駆と言えばルーフラックを付けていたものだが、キャンプブームによってカスタムというよりは実用で付けている人が多い。最近のルーフラックは非常に軽量で、ローフォルムのデザインが多い。と言うのも、ルーフラックは取り付けた時に少なからず風切り音が出てしまう。これが高速道路などでは、非常に耳障りなのである。

そこでできるだけ低く取り付けられるレッグ部、必要最低限の突起物、風切り音防止の形状などが採用されているのである。風切り音だけで考えるなら、床板ののみのロータイプが理想的と言えるし、付けた時の見た目もスッキリしている。積む物の形状の制限もない。しかしいざ荷物を積むとなると、周囲が少し立ち上がっている方が落下防止になるし、荷物の位置決めがしやすい。どちらもメリットデメリットがあるので、好みということになるだろう。

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一度は絶滅したグリルガードが再び注目のアイテムに

さて、オフロード四駆カスタムの真骨頂と言えば、やはりグリルガードと言えるだろう。ブルバーやカンガルバーといった別名もある。グリルガードはその名の通り、野生動物や障害物に衝突した時に、ラジエターが損傷しないように付ける機能部品だ。日本では野生動物が出現する機会がほとんどないが、オーストラリアや北米などでは生きて帰ってくるために必要なパーツになっている。

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日本では歩行者保護の問題で一時は絶滅種になったパーツでもあるが、ジムニーの流行をきっかけに他の車種でも付けられることが多くなった。素材を考慮することで、歩行者保護性能を持たせた商品もあるが、オールスチール製の場合は車検時に取り外さなければならないものもあるので、購入時に確認したい。

以上、ざっとではあるが、最近のオフロード四駆カスタム事情のトレンドについて触れてみた。「なーんだ。昔の四駆ブームと同じか」と思われるかもしれないが、機能性の高いモノというのは、同時に普遍的だということ。

こうした傾向はオフロード四駆に限らず、腕時計やスニーカー、アウトドア用品など多岐に渡る。優れたデザインは、年代を問わず人を魅了するもの。オフロード四駆は、まさにそうしたデザインヘリテージの頂点にあるのではなだろうか。

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…