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2025年3月13日(木)、トヨタから新型クラウンエステートが発売された。これで、クロスオーバー、スポーツ、セダンにエステートが加わり、現行クラウンのモデルラインナップが完成した。

そのスタイルはセダンの延長線上ではなく、ホイールアーチをブラックアウトしてクラッディング風に見せていたり、車高もセダン派生のステーションワゴンより高めで、むしろSUVテイストを感じさせる。

世界的なSUVの大流行により、そもそもセダンのラインナップが激減。セダンをベースにするステーションワゴンもそれに伴い減少している。特に日本市場と国産メーカーにおいては、クラウンエステートを除くと実質トヨタ・カローラツーリングとスバル・レヴォーグ(とレイバック)の2車種しか存在しない。


というのも、スバル・レガシィアウトバックは2025年3月31日をもってついに販売終了。トヨタ・カローラフィールダーもついに2025年10月で生産終了とアナウンスされているからだ。また、長らくラインナップされていたマツダ6ワゴンが販売終了したのはもう1年前の2024年4月だった。



そんな市場状況もあってか、クラウンエステートはハイブリッドの「Z」とプラグインハイブリッドの「RS」という2グレードに絞ってきた。価格も「Z」が635万円、「RS」が810万円とシンプルになっている。しかも、ドライブトレインはエンジンからモーターまで同じ形式ものを採用しているばかりか、駆動方式は電気式4WDのみでタイヤサイズにも違いはない。


昨今の自動車価格の高騰を考えると”トヨタ”ブランドの高級車としては驚くほどの価格設定ではないが、それでもなかなかのプライスタグだ。
となると、やはり前出の国産ステーションワゴンは車格的にも価格的にもクラウンエステートとは異なるため、ライバルとはなり得ない。


ではクラウンエステートと比較するライバルとなるステーションワゴンは?となると、やはり未だプレミアムな立ち位置のステーションワゴンを多くラインナップする欧州メーカー車ということになろう。
そこでクラウンエステートとサイズや価格が近いステーションワゴンを比較してみよう。
VW(フォルクスワーゲン)
トヨタと常に世界最多生産台数を争う巨大自動車メーカー・フォルクスワーゲンアウディグループは傘下に上から下まで様々なブランドを抱えている点もトヨタと似ているが、本体のVWが基本的に大衆車メーカーであることは(高級車を別ブランドに任せている点も含め)トヨタと似たメーカーであるとも言える。

そんなフォルクスワーゲンも欧州で人気のステーションワゴンを古くからラインナップしている。基幹車種のゴルフと上位モデルのパサートに「ヴァリアント」と称して設定されるワゴンモデルがそれだ。

流石にゴルフヴァリアントでは、価格的にゴルフRヴァリアントなら釣り合うかもしれないが、サイズ的にクラウンエステートとは比較しづらい。やはり、VWの上位モデルにして、日本導入モデルとしてはトップとなるパサートが相応しいだろう。
パサート
パサートのステーションワゴンはこれまで通りならパサートヴァリアントになるはずが、9代目となる現行パサートはついにセダンが消滅。ワゴンボディのみになってしまったことから、ヴァリアントが付いていないのだ。さらに、以前は「オールトラック」というクロスオーバーモデルもあったが、現行モデルにはラインナップされていない。

パサートのラインナップはガソリンエンジンが1.5L水冷直列4気筒DOHCインタークーラーターボ+マイルドハイブリッドの「eTSI」が524万8000円〜576万4000円、同エンジンにプラグインハイブリッドを組み合わせた「eHybrid」が655万9000円〜679万4000円、2.0L水冷直列4気筒ディーゼルターボの「TDI 4MOTION」が622万4000円〜645万8000円となっている。

これら3モデルの価格差は上位モデルの「R-Line」と基本モデルの「Elegance」の違い(「eTSI」のみエントリーグレード「Elegance Basic」を設定)で、さらにレザーシートやDCCなどの各種パッケージで価格が変動、というか上乗せされる。


ボディサイズ
ボディサイズは全長4915mm(4930mm)×全幅1850mm(1880mm)×全高1500mm(1625mm)、ホイールベースは2840mm(2850mm)とパサートが若干小さいが、ほんの気持ち程度でサイズは車高を除けばほぼ等しい。
( )内クラウンエステート


1500mmという車高はドイツ御三家のステーションワゴンよりもやや高め(メルセデス・ベンツCクラス・オールテレインでも1495mm)だが、クラウンエステート(1625mm)に比べればまだまだ低い。最低地上高は公表されていないが、おそらく140mm内外と予想される。これもクラウンエステート(165mm〜175mm)よりは低く乗用車的だ。


タイヤサイズは全車235/45R18と常識的なサイズで、クラウンエステートの235/45R21という大径ホイールと比べると小径に感じる。
最小回転半径は駆動方式に関わらず全車5.5mとクラウンエステートと同じ。ボディサイズがほぼ近似値による相似だろうか。
ドライブトレイン
パサートのエンジンは前述の通り、ガソリンエンジンが1.5L直列4気筒インタークーラーターボのマイルドハイブリッドかプラグインハイブリッドと、2.0L直列4気筒ディーゼルターボの3種類。


( )内は「RS」
また、4WDモデルはディーゼルエンジンの「TDI 4MOTION」のみで、「eTSI」と「eHybrid」はFFとなる。トランスミッションはハイブリッド車(「eTSI」「eHybrid」)が7速DCT、ディーゼル(「TDI」)が6速DCTだ。
インテリア
インストゥルメントパネルは最新VW車のフォーマットに則ったレイアウトで、メーターも含め新世代のMIB4と大型ディスプレイによるインフォテインメントシステムが特徴だ。物理スイッチを極力少なくなっており、センターコンソールもステアリングコラムにドライブセレクターを設置することでパーキングスイッチくらいしかないほど徹底されている。


ラゲッジルームは通常で690L(510L)、最大まで拡大すると、なんと1920L(1770L)の容量(VDA法)を誇る。同程度のボディサイズながらクラウンエステートの570L〜1470Lを大きく上回るばかりか、クラス最大級のサイズと言える。リヤシートも6対4分割のクラウンエステートに対し、欧州車では定番の4対2対4分割となっている。
( )内は「eHybrid」



燃費
車重はクラウンエステートの「Z」(1890kg)と「RS」(2080kg)に対して、FF+マイルドハイブリッド「eTSI」(1570g)、ディーゼル+4WD「TDI 4MOTION」(1740kg)、FF+プラグインハイブリッド「eHybrid」(1830kg)といずれも軽量。ただし、クラウンエステートは基本的に電気式4WD+ハイブリッドなので、その組み合わせがないパサートはその分軽量ということだろう。「eHybrid」に4WDがあればクラウンエステート「Z」と同じくらいになるのではないだろうか。

燃費は「eTSI」が17.4km/L、「TDI 4MOTION」が16.4km/L、「eHybrid」が18.0km/Lとまずまずの数値ではあるが、クラウンエステートの「Z」20.3km/L、「RS」20.0km/Lには及ばない。やはりハイブリッドではトヨタに一日の長があるようだ。
※いずれもWLTCモード

燃料タンク容量(クラウンエステート: 55L/パサート「eTSI」「TDI」:66L/「eHybrid」:47L)で単純計算すると航続距離はクラウンエステートが1100kmを超えるの対して、パサートもは「eTSI」と「TDI」は 1100km前後と良い勝負。しかし、プラグインハイブリッドの「eHybrid」となると逆に800km台に留まり、燃費よりもタンク容量が航続距離に大きく影響している。
また、パサートのガソリンエンジンは燃料がハイオクであることも経済的には厳しい点だ。

逆にクラウンエステート「RS」のEV航続距離が89kmなのに対し、パサート「eHybrid」は140kmを実現している。ただし、クラウンエステートにあるチャージモードは、パサートには無い。この点はメーカーの考え方の違いといったところか。この辺りが実燃費にどのように影響してくるかも興味深い。
価格&スペック表
価格的には524万8000円(「eTSI Elegance Basic」)〜679万4000円(「eHybrid R-Line」)とクラウンエステートの635万円〜810万円よりやすく、「ehybrid」がクラウンエステート。「Z」と重なるくらい。マイルドハイブリッド同士であればパサートが150万円ほど安いが、クラウンエステートが4WDなのに対しパサートはFFという違いがある。


駆動方式を軸に考えるとディーゼル+4WDの「TDI 4MOTION」が622万4000円〜645万8000円とクラウンエステート「Z」が価格的にも近い。ディーゼルの経済性を考慮すると、マイルドハイブリッドよりも比較対象としてはむしろこちらの方が合っているかもしれない。

大衆車メーカーのプレミアムステーションワゴン同士ながら、そのラインナップやキャラクターはかなり違うクラウンエステートとパサート。パサートにオールトラックが追加されたり、ハイブリッド系に4WDが設定されるようならまた見方も変わってくるのだが……。
メーカー | トヨタ | フォルクスワーゲン | |||
車名 | クラウンエステート | パサート | |||
グレード | Z | RS | eTSIエレガンス | TDI4MOTIONエレガンス | eHybridエレガンス |
全長 | 4930mm | 4915mm | |||
全幅 | 1880mm | 1850mm | |||
全高 | 1625mm | 1500mm | |||
ホイールベース | 2850mm | 2840mm | |||
車重 | 1890kg | 2080kg | 1570kg | 1740kg | 1830kg |
最低地上高 | 175mm | 165mm | ー | ||
最小回転半径 | 5.5m | 5.5m | |||
乗車定員 | 5名 | 5名 | |||
トランク容量 | 570L〜1470L | 690〜1920L | 510〜1770L | ||
エンジン | A25A-FXS型 水冷直列4気筒DOHC | DXD型 水冷直列4気筒DOHCインタークーラーターボ | DXN型 水冷直列4気筒ディーゼルターボ | DUC-EAN型 水冷直列4気筒DOHCインタークーラーターボ | |
排気量 | 2487cc | 1497cc | 1968cc | 1497cc | |
最高出力 | 190ps/6000rpm | 130ps/6000rpm | 150ps/5000-6000rpm | 193ps/3500-4200rpm | 150ps/5000-6000rpm |
最大トルク | 236Nm/4300-4500rpm | 219Nm/3600rpm | 250Nm/1500-4000rpm | 400Nm/1750-3250rpm | 250Nm/1500-4000rpm |
燃料/タンク容量 | レギュラー/55L | ハイオク/66L | 軽油/66L | ハイオク/47L | |
WLTC燃費 | 20.3km/L | 20.0km/L | 17.4km/L | 16.4km/L | 18.0km/L |
サスペンション | F:マクファーソンストラット R:マルチリンク | F:マクファーソンストラット R:マルチリンク | |||
ブレーキ | F・R:ベンチレーテッドディスク | F:ベンチレーテッドディスク R:ディスク | |||
タイヤサイズ | 235/45R21 | 235/45R18 | |||
駆動方式 | 電気式4WD | FF | 4WD | FF | |
トランスミッション | 電気式無段変速機 | 7速DCT | 6速DCT | 7速DCT | |
モーター | F:5NM R:4NM | 4452 | ー | BATTYPV85 | |
最高出力 | F:134kW R:40kW | 13kW | ー | 85kW | |
最大トルク | F:270Nm R:121Nm | 56Nm | ー | 330Nm | |
電池容量 | 5Ah | 51Ah | 0.7kWh | ー | 25.7kWh |
価格 | 635万円 | 810万円 | 553万円 | 624万円 | 655万9000円 |