熱い! 実に熱い! 初代セリカの、熱気むんむんなインテリア 【時代の名車探訪No.2-3】 トヨタセリカ・TA22型・1970年(昭和45)年1600GT/1972(昭和47)年1600ST ~内装編1~

時代の名車探訪・セリカ回の前回までは外装をお見せしたが、みなさん興味があるのはむしろ内装のほうではないだろうか。
ここから数回に渡り、セリカの内装を細かに見ていく。

TEXT:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi) PHOTO:中野幸次(NAKANO Kouji)

タイトな空間に密集する、やる気にさせる装備群あれこれ

名車探訪・初代セリカ回、今回からは同車の内装を見ていく。
クルマのキャラクターがキャラクターだけに、インテリアは熱い! 実に熱いぞ!
その熱さたるや、あなたの町の銭湯にあるサウナ並みだ。
★マーク付きは、当時のカタログや資料などでの呼称です。

【運転席まわり】

●計器盤

黒1色! 私は黒い内装は室内が暗いからなのと、火事の焼け跡をみる思いがするので自動車の黒内装は嫌いなのだが、この頃のクルマはいまと違って「自動車らしさ」を備えているので、ま、いいや!
計器盤は、助手席側とそれ以外を曲線のゾーンで分けている。その内側には、左側はグローブボックスが、右側はメーター、空調&ラジオをひとまとめにしている。この時代なりの未来感がなくもない。
写真のGTは、メーターまわりが、カタログ呼称「ダークグレーメタリック」になるいっぽう、もうひとつの写真ST車はウッド仕上げになる。このあたりの違いについては別にまたひと記事作るつもりだ。
この時代のクルマらしく、計器盤全体はパッド仕上げになっている。「パッド」という言葉の印象ほど指で押してやさしく引っ込むわけではないのだが、いまのクルマのような、乗員の上半身受け止めはエアバッグに任せ、外側は硬質プラスチックですませるより、パッド仕立てである方が心理的な安心感が違う。この頃は軽自動車でさえ、このような造りだったが、いまはよほどの高い車でもない限り、カチカチの安っぽい硬質プラスチックだ。
さて、運転席に座っておもしろかったのは、センターコンソールにある時計だ。この続きは「時計」の項で・・・

1600GT計器盤。
1600ST計器盤。

●メーター

写真は上が1600GT、下が1600ST。
円筒型にくりぬいた奥に盤面があるのが、いかにもこの頃のクルマという感じがする。
それはさておき、ハンドル輪っかを通して見るメーターはふたつで、左には積算距離計と区間距離計を抱えた速度計、右には下に「BRAKES」ランプを備えた回転計がレイアウトされる。
速度計のプロッティングは、この1970年型セリカ実車およびカタログ写真は白のままだが、1971年型のカタログから、100km/hから140km/hまでは黄色に、150km/h以上は赤の色付けがされている。1600ST写真は1972年型なので、年式の違いが速度計に表れている。
回転計はプロット数字が2桁のため、下の「×100rpm」を見落とすと、一瞬速度計に見えてしまうのが困るぜ!
その回転計下の「BRAKES」ランプは、キーON時、駐車ブレーキを引くと点灯するものだが、1600車はブレーキ「システム」の警告灯になっている。キーON時に駐車ブレーキ作動で点灯、そのときにブレーキペダルをいっぱいに踏むと消灯・・・というのが正常だ。

なお、ふたつのメーターの間にある顔のようなものはランプ。
目に当たる横長ふたつはターンシグナル、その下の口に相当するまるポチは青のハイビーム灯。
これらは表示灯で、警告灯らしき警告灯はさきの「BRAKES」のたった1個。
これは通常なら異常を赤ランプで示す油圧や充電の報知を、次項の補助メーター群に置き換えているためだ。

1600GTのメーター。
こちらは1600ST。

★オイル プレッシャ ゲージ/アンメータ/ウオータ テンパラチャ ゲージ/フユーエル ゲージ

スポーツもしくはスポーツテイストとなるとなぜかメーターの数が増えるのがクルマの世界。セリカもハンドル外に3連メーターを備える。
写真左から、オイル プレッシャ ゲージ(油圧計)とウオータ テンパラチャ ゲージ(電流計)をひとつにくくった後、次にウオータ テンパラチャ ゲージ(水温計)、フユーエル ゲージ(燃料計)を個別に置いている。このような、乗る者をやる気にさせる演出はいまのクルマにはない。
私の場合は、いまのクルマの状態を知りたいという観点から、別にやる気がなくても、油圧や電流ばかりか、油温や電圧まで知りたいくらい。実用車にあってもいいと思う。いまのクルマはこともあろうに水温計までランプにしてしまうなんざあ、とんでもない話だ。

1600GT。
1600ST。角度が違っていてごめん。

なお、速度計や回転計も含めた全メーターとも、照明は盤面裏の光源で文字部を透かす透過照明ではなく、目で見えない陰に仕組んだランプで盤面を照らす間接照明だ。

★ライト・コントロール・スイッチ/ハザード・パーク・スイッチ

回転計右の上が2段式ライトスイッチ。1段引きでスモール(やメーター照明など)、2段引きでヘッドライトが追加点灯する。カスタム内装車とGTはメーター照度調整機能も備え、このつまみを右いっぱいにまで回すと消灯、左に回すにおよんで明るくなる・・・右左間違えて書いてないぞ!

下はハザード・パーク・スイッチ・・・いまでいうハザードスイッチで、引くと全部の方向指示灯が点滅する。
このスイッチは、夜間の路上駐車時に自車の存在を示す駐車灯(パーキングランプ)のスイッチを兼ねており、OFF位置から左右どちらかに回すとそれぞれの側の、右2段回しで全部の駐車灯が灯る。
規制緩和で「義務」ではなくなったが、スバルの普通車だけはエンジンをONにしている間だけヘッドライトが点く回路だった都合上、長い間ハンドルコラム上面にパーキングスイッチを備えていた。
筆者が簡単にざーっと調べたところ、どうやら駐車灯を備えた最後のクルマは4代目レガシィの最終モデルだ。ただし、BMWと共同開発されたという経緯から、いまのスープラは、片側ずつ点灯する駐車灯を備えている(見落とすところだった、あぶねえっ!)。

ライトスイッチ(上)、ハザード・パーク・スイッチ(下)。

★ワイパー・アンド・ウォッシャー・スイッチ/チョーク

ここは1600ST写真で。
速度計左の上側が2段式のワイパースイッチ。1段、2段引きそれぞれで低速・高速作動し、つまみの右まわし保持でウォッシャー液が電動で噴出する。というわけで、間欠作動はない。

下側のくぼみは冷間での始動時、エンジンに送る燃料を濃くするためにに引くチョークノブのスペース。
昔のクルマは冬期のエンジン始動のさい、ドライバー自身がチョークを引いたり、アクセル微調整するなどし、エンジンのご機嫌をうかがう必要があった。
このセリカの場合、1600GTのみチョークがつき、1400車および写真の1600シングルキャブ車にこそオートチョークがつくので、ここはダミースペースになる。チョーク付車はその下の写真のとおりだ。
なお、1972年10月の改良時には、ST以上のライト/ワイパー/ハザードのスイッチが照明付きになっている。

ワイパースイッチ(上)、1600GTにつくチョークのダミースペース(下)。
1600GTのチョークノブ(下)。

★タイムリング付三針時計

「計器盤」項の続き。
時計は、メーターとはかけ離れた場所にある。さきの計器盤写真から、一見、時計は実に見づらそうな位置にあるが、運転席に座るとなかなか見やすかったのが「おもしろい」と書いたゆえんだ。
クルマの性格上、着座位置は低い。いっぽう、時計は後方から前にかけ、せり上がったコンソール先端に・・・つまり、時計と目の玉が上下方向で互いに歩み寄るため、「割に見やすいじゃないの」となるのだ。やはりひともクルマも見た目で判断しちゃあいかんのである。

時計は文字盤周囲にタイムリングが刻まれる三針式だ。
いまの時刻表示はナビないしメーター内の液晶任せにし、デジタル表示で素っ気ないものばかり。
アナログ時計はLEXUSすら手放そうとしているようで、調べたらアナログ時計は現在、LS、ES、IS、RCくらいにしかなかった。
アナログ時計なんてデザイナーの腕の見せどころだと思うのだが、見やすいことを前提にした、品のいいデザインのアナログ時計はできないのだろうか。

タイムリング付三針時計。カタログでは「ラリーなどで便利」と謳う。
上下歩み寄りの図。

★ターンシグナル・アンド・ディマー・スイッチ

先っちょが平べったくなっているのは操作のしやすさを狙ってのことだろう。
作動は、レバー上下でターンシグナル点滅、ロービーム点灯時の向こう押しでハイビーム、手前保持でパッシング・・・このあたり、いまのクルマとまったく同じ。
このレバーの先端にライトスイッチが備わり、ハンドル左にワイパースイッチがやってくるのは1975年10月のマイナーチェンジ時のことだ。

ターンシグナル・アンド・ディマー・スイッチ。

★エンジンスイッチ

くぼんだ位置に挿し穴があるエンジンスイッチは、鍵を抜いたときハンドルがロック固定される「LOCK」、エンジンをかけなくとも電装品(といってもこの頃はラジオとライターくらいか)が使える「ACC(アクセサリー)」、エンジン始動中の「ON」、スタートモーターをまわす「START」の5つ。始動時にSTARTまでまわし、エンジンがかかると自動でONに定置する。
ボタンひと押しでエンジン始動orハイブリッド起動するいまのクルマしか知らないひとからすると古く映るだろうが、乗用車の廉価機種や営業車などではまだ使われている。

エンジンスイッチ。

●シフトレバー・5速MT

まずはギヤ比の表を。

5MT車は、4MT車と4速目まではギヤ比は同じ。5MT車は、オーバードライブの0.861比歯車を5速めに追加するとともに、最終減速ギヤを4MTの3.900から4.111に下げている。
同じタイヤサイズ、同じ速度なら、4速めまではトータルでギヤ比をローギヤード化してダッシュしやすい特性にしてあるいっぽう、高速域ではオーバードライブによる5速ギヤにより、4速がトップとなるクルマよりはエンジン回転が下がって静粛性と燃費がよくなる道理だ。

1400、1600各車の4速、5速マニュアルトランスミッションギヤ比。
5速マニュアルシフトレバー。

計算すると、例えばセリカ1600を同じ3速ギヤ、同じ50km/hの速度で走らせるとき、エンジン回転は、4MT車が2390rpmちょいになるのに対し、5MT車は2520rpmほどになり、ローギヤードになることがわかる。
逆に高速道路を100km/hで走るとき、4速めで走るしかない4MT車(あたり前だ)は3450rpm強ほど。
5MT車は3140rpm弱となり、5速車のほうが燃費と静粛性が有利になるというわけだ(6.45-13-4タイヤの扁平率は82%で計算)。
どのトランスミッションであれ、いまの多くのクルマが100km/h時のエンジン回転が3000rpm未満が多いことからすると、やはりセリカは動力性能をフルに引き出すギヤ比であることがわかる。

もっともこれが1400の4MTになると話は変わってきて、3速の50km/hで2680rpmほど、4速の100km/hに至っては3875rpmにまで跳ね上がる。
これは1600シングルキャブ車ともども、細身の5.60-13-4タイヤを履いているのと、最終減速比を1600・4MTの3.900ではなく、1600・5MTの4.111を1400・4MTに持ってきているためだ。
1400がシリーズで一番のアンダーパワーであることの弱点を回転数でカバーするための策だろうが、見方を変えれば、これはこれで動力性能をフルに引き出しているといえる。

なお、R(リバース)へは5速からそのまま入らないよう、いったんN(ニュートラル)に戻し、いったんレバーを持ち上げて(LIFT))からRに入れるのがこの頃のトヨタ式だ。4MT車に「LIFT」の文字はない(あたり前だ)。

●シフトレバー・3速トヨグライド

AT車は、P・R・N・D・2・1の6ポジションの3速AT。
T字レバーのロック解除ボタンはグリップ右サイドではなく、グリップ左に下向きについている。左手の親指以外の4本指で押すというレイアウトだ。
ストレート式ゲートに見える歯ブラシみたいなやつはごみ侵入防止のためだ。

昔のトヨタのAT車は、「グライダーのようにふぉーっと走る」イメージから「トヨグライド」と名付けられた。
走りやエンジンブレーキがATよりもよほどグライダーみたいな、いまのCVTこそ「トヨグライド」の名にふさわしい。
「無段トヨグライド」「トヨグライドCVT」の名称にしたらいいと思うが、ま、誰からも賛同は得られなさそうだ。

3速トヨグライドシフトレバー。

●ペダル

シフトレバーを2種載せたなら、ペダルだって2種載せなければなるまい。

まずはMT車用。
左からクラッチ、ブレーキ、アクセルペダルの3本。この当時のことだからまだフットレストはない。
アクセルは最近また増えつつある、床から生えたオルガン式。といっても踏面の下が床に固定されているだけのことで、キャブレターにリンクするステーは通常の吊り下げ式同様、上からぶら下がっている。
靴裏のかかとが支点になるから微調整がしやすいというのがオルガン式の利点とされているが、そのへんはひとそれぞれだろう。

5MT車のペダル。

いっぽうのトヨグライド車のペダルは2本。
アクセルがオルガン式なのはMT車と同じだが、クラッチペダルがないことによるスペース拡大と、そもそもアクセルを踏んでなくともクルマが進むクリープ現象を有することから、ブレーキペダルはMT車よりも格段に大きいのが違う。このへん、いまのクルマも同じだ。スペースに余裕があるトヨグライド車にもフットレストはない。

トヨグライド車のペダル。

★パーキングブレーキレバー

現在、電動化が否応なく著しいパーキングブレーキは、この頃ではあたり前のレバー式。作動については「メーター」の項で述べた。
根本付近にあるつまみは調整機構のキャップで、レバー操作のカチカチノッチ数が基準引きしろ3~7山に収まらないとき、この★ワイヤ アジヤステイング キヤツプを外して表れるナットをまわして引きしろを調整する。

パーキングブレーキレバー。

★防眩式ミラー

通常時は本体下のつまみを前側(向こう側)に押しやり、後続車ライトがまぶしいときは手前に引き、鏡面角度を上下変えて使う。
表面ガラスの上側は下側より厚くなっている(テーパー状になっている)から、鏡面が上を向いて天井が映ったとき、ガラス面はそれまでのミラーと同じ角度になる。そのガラス面に移った像は、ミラーほど鮮明に映らない・・・このことを利用したのが防眩ミラーで、プリズム式と呼ばれるものだ。
それにしても誰だっ! 眩惑をガラス厚みの変化だけで抑えてやろうなんていううまい仕掛けを考えたやつはっ!?

ルームミラー。

●サンバイザー

全高の低いクーペボディで、フロントガラスの天地寸も短いからだろう、サンバイザーも上下に低く、横に長い。上げ下ろしのほか、もちろんサイド光を遮ることができるよう、ドアガラス側に回すこともできる。
この時代にして造りが丁寧だなと思うのは、運転席用なら左側、助手席用なら右側が、きちんとルームミラーどおりに形づけられていることと、片持ちのままにしてぷらんぷらんしないよう、車両中央側にもクリップが設けられていることだ。

サンバイザー。

●ルームランプ

ON-DOOR-OFFの3ポジションで、角型をしている。
ドア連動のためのノックスイッチは一般的なセンターピラーでなく、Aピラー下にある。
この形のルームランプは90年代に入ってからもトヨタ車で見かけたものだが、長期間同じ部品を使っていたのではないだろうか。

ルームランプ。
DOORポジションの、ドア開閉のスイッチはフロントピラー根元下にある。

おっと、運転席まわりの話だけで時間いっぱいになってきたので、この続きは次回に。

【撮影車スペック】

トヨタセリカ 1600 GT(TA22-MQ型・1970(昭和45)年型のレストア車・5段MT)

●全長×全幅×全高:4165×1600×1310mm ●ホイールベース:2425mm ●トレッド前/後:1280/1285mm ●最低地上高:175mm ●車両重量:940kg ●乗車定員:5名 ●最高速度:190km/h ●最小回転半径:4.8m ●タイヤサイズ:6.45H-13-4PR ●エンジン:2T-G型(水冷直列4気筒DOHC・縦置き) ●総排気量:1588cc ●ボア×ストローク:85.0×70.0mm ●圧縮比:9.8 ●最高出力:115ps/6400rpm ●最大トルク:14.5kgm/5200rpm ●燃料供給装置:ソレックス型ツインキャブレター ●燃料タンク容量:50L(プレミアム) ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式コイルスプリング/4リンク・ラテラルロッド付コイルスプリング ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格:87万5000円(当時・東京店頭渡し価格)

トヨタセリカ 1600ツインキャブST(TA22-HZ型・1972(昭和47)年型・3段AT(トヨグライド)・カスタムSW内装)

●全長×全幅×全高:4165×1600×1310mm ●ホイールベース:2425mm ●トレッド前/後:1280/1285mm ●最低地上高:170mm ●車両重量:895kg ●乗車定員:5名 ●最高速度:165km/h ●最小回転半径:4.8m ●タイヤサイズ:6.45H-13-4PR ●エンジン:2T-B型(水冷直列4気筒OHV・縦置き) ●総排気量:1588cc ●ボア×ストローク:85.0×70.0mm ●圧縮比:9.4 ●最高出力:105ps/6000rpm ●最大トルク:14.0kgm/4200rpm ●燃料供給装置:2バレル式ツインキャブレター ●燃料タンク容量:50L(プレミアム) ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式コイルスプリング/4リンク・ラテラルロッド付コイルスプリング ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格:69万5000円(当時・東京店頭渡し価格。STエクステリア・3万円、カスタム内装SW・8万5000円含まず。)

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