トーヨー「PROXES」軽自動車専用タイヤが超絶進化! 高速路もウェットも納得の走りだ!

タイヤ選びで難しいのは同じサイズでもタイヤ銘柄によってキャラクターやパフォーマンスが異なること。さらに車種とのマッチングもタイヤの選択においては重要だ。ミニバンやSUVなど多様性が進んでいる現在であればなおさらだ。そこで注目したいのは、車種ごとに専用タイヤを用意するという設計思想を長らく掲げているTOYO TIRE(トーヨータイヤ)のラインナップだ。軽ハイトワゴン専用に作り込まれた「トランパスLuK」が「プロクセスLuk II」に進化したというので早速、新旧を比較試乗してみることにした。

REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:TOYO TIRES

軽ハイトワゴン専用タイヤは「トランパス」から「プロクセス」へ

専用タイヤ思想の本家といえるTOYO TIRE(トーヨータイヤ)が、車種別の最適化という設計思想を表立って表現したのがミニバン専用タイヤのブランドとして誕生した『TRANPATH(トランパス)」だ。現在でも、ミニバン専用ブランドとして支持を集めているが、そのラインナップに「TRANPATH LuK」というタイヤがあった。

ネーミングの末尾に”K”と入っていることからわかるように、これは軽ハイトワゴン専用タイヤとして生み出されたものだった。その誕生から10年あまり、軽ハイトワゴン専用タイヤが進化を遂げるときがやってきた。

それこそが、ここで紹介する「PROXES LuK II(プロクセス エルユーケーツー)」だ。

「PROXES LuK II(プロクセス エルユーケーツー)」は、アウト側でハンドリングを、イン側で静粛性を狙った非対称パターンを採用する。

“LuK”として2世代目となったのに合わせて、ミニバン専用ブランドのトランパスから、トーヨータイヤのフラッグシップブランド「プロクセス」へと進化した、新しい軽ハイトワゴン専用プレミアムタイヤの誕生である。

「プロクセス」と聞くと、D1はじめモータースポーツの印象が強いかもしれないが、コンフォート寄りのプレミアムタイヤも多くラインナップしている。新作「PROXES LuK II」は、まさに軽自動車の王道たるスーパーハイトワゴンの走りを磨き上げるために生まれたタイヤといえる。

3Dマルチサイプとフレキシブルテーパーが特徴

向かって左がアウト側、中央の太いセンターリブが「しっかり感」のある乗り味を視覚的に表現している。

「PROXES LuK II」が軽スーパーハイトワゴンをメインターゲットにしたのは、このジャンルが軽自動車においてもっとも売れているというのもあるが、車高の高いスーパーハイトワゴンはどうしても横風など外乱に弱く、コーナリングが苦手な傾向にあるためだという。

しっかり感のある軽ハイトワゴン専用タイヤで、そうしたウィークポイントを解消すれば、より安心してスーパーハイトワゴンを運転できるようになることが期待できる。さらにドライブを楽しむには静粛性も欠かせない。雨の日の安心感に直結するウェット性能についても重要になる。

そのために「PROXES LuK II」には、いくつもの新技術が投入されている。その中でも重要な2つのテクノロジーに着目してみよう。

ひとつは「フレキシブルテーパー」。タイヤ表面のトレッドパターンを構成するブロックのエッジ部分を、あえて斜めのテーパー状にするという技術だ。ブロックを斜めにカットしたことで接地面積が小さくなるように思えるが、このテーパーがない状態ではエッジ部分に圧力が溜まる傾向にあるのだという。つまり、タイヤ接地圧に濃淡が生まれてしまう。

真正面からトレッドパターンを見ると、「フレキシブルテーパー」がよく分かる。「3Dマルチサイプ」は向かって右側のエリアに採用されている。

フレキシブルテーパーを採用することによって接地の安定化が実現でき、ユーザーは「しっかりさ」を感じることができるわけだ。

もうひとつの「3Dマルチサイプ」は、通常のサイプ(タイヤの細い溝)と異なる十字型の断面形状としているのが特徴。こちらは静粛性を考慮したデザインのイン側に採用されているが、やはりブロック端に集中しがちな接地圧を軽減することで、接地バランスの最適化を図る技術となっている。

こうしたトレッドパターンにおける工夫が、軽スーパーハイトワゴンに、しっかり感・快適性をプラス。さらに耐摩耗性やウェット性能などでオールマイティな安心感を実現しているという。

最新の「PROXES LuK II」で高速周回路を走ると笑みがこぼれるほど安心感がある。

新旧比較でウェット性能の進化は圧倒的

ウェット路と高速周回路にて、新旧比較を行うことができた。

2014年に発売開始となった「TRANPATH LuK」と最新の「PROXES LuK II」。はたして10年あまりの時間は、どれだけ軽ハイトワゴン専用タイヤの性能を向上させたのだろうか。ダイハツ・タントにそれぞれのタイヤを履かせ、ウェット路と高速周回路という2つのステージで進化の度合いを確認する機会に恵まれた。

まずはウェット性能からお伝えしよう。

正直、ここまでウェット路における走りが違うとは思わなかった。

最初に「TRANPATH LuK」で走ったときに大きな不満を感じることはなく、ブレーキングでも思ったように減速するり、そこからハンドルを切れ込んでも期待通りに旋回していく。

テストコースで人工的に作ったハードウェットをものともしない安心感があった。

そこから最新の「PROXES LuK II」を履いたタントに乗り換えると、最初のコーナリングから明らかに違う。さっきまでは不満を感じていなかった「TRANPATH LuK」のコーナリングは、わずかにアンダーステアが出ており、狙ったラインの少し外側を走っていたことに気付かされた。

ブレーキングでの安心感も増している。トーヨータイヤの発表によると、新旧比較でウェット制動性能は12%も向上しているということだが、数字のイメージ以上にブレーキの効きが上がっている印象もあった。

高速走行での安定感がここまで向上しているとは!

「PROXES LuK II」を履いたタントは写真のようなバンクを走っているときの安心感が段違いに優れていた。

つづいて、高速周回路にて新旧比較をしてみよう。試乗前には静粛性の違いが最大のチェックポイントになると予想していた。つまり、基本的な走りの良さはそれほど進化させようがないと考えていたのだ。

そうした予想はいい意味で裏切られた。

ウェット路と同様に、まずは従来モデルの「TRANPATH LuK」から試走した。平坦なコースを走っている分には不満はなかったが、テストコースならではのバンクを走行したときに、そこはかとない不安を感じる瞬間があった。何度もバンクを走って確認したが、再現性のある不安感があった。これがタイヤの影響なのか、それともタント自体の素性なのか、この時点では判断できない。

「PROXES LuK II」を履いたタントで同じようにバンクを駆け上がってみると、先ほどの不安は微塵もなくなっていた。プレミアムブランドらしく、軽ハイトワゴン専用タイヤにおいても、高速安定性が明らかな進化を遂げている。ちなみに、バンクの走行速度は100km/h。誰もがこの違いを公道で体感できることは確実だ。

もともと路面の整ったテストコースでの試乗につき、ロードノイズの違いはそれほど大きいとは感じなかったが、メーカー発表によれば、新旧比較で転がり抵抗は9%ほど低減しているという。高速巡航での燃費性能向上も期待できる。

新旧比較により高速安定性の面で大きな進化を体感できた。

いずれにしても、背高のっぽなシルエットの軽スーパーハイトワゴンが苦手としている高速安定性を、向上させるタイヤというのは、その一点だけでも大きなユーザーベネフィットがある。

今回、試乗したタントをはじめ、ホンダN-BOXやスズキ・スペーシアといった軽スーパーハイトワゴン・オーナーが、タイヤの履き替えを考えているのであれば、「PROXES LuK II」は有力な候補となることだろう。

PROXES LuK IIは全4サイズ設定

サイドウォールに施された立体デザインは、見る角度によって異なる表情をみせる。

PROXES LuK II 設定サイズ一覧
155/65R14 75H
165/60R14 75H
165/55R15 75V
165/60R16 75V

予想以上の進化に驚きを隠せない筆者。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…