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■5代目で名車シーマもついに終焉を迎えた
2012年(平成24)年4月25日、日産自動車は1988年に誕生して一世を風靡したスポーティな高級セダン「シーマ」の5代目を発表(発売は5月21日)。バブル崩壊以降はセダン冬の時代に突入し、さすがのシーマも厳しい販売を強いられ、5代目はハイブリッド専用車となって走りと燃費を両立させたがラストモデルとなった。


高価ながら爆発的なヒットでシーマ現象を巻き起こす
1988年に誕生した初代シーマ(FY31型)は、高級車セドリック/グロリアをベースに、スタイリッシュな曲面基調のハードトップにすることでスポーティな高級セダンをアピール。車速感応式電子制御パワステや4輪ベンチレーテッドディスクブレーキ、さらにハイグレードには電子制御式エアサスペンションを採用するなど当時の先進技術が満載だった。

またインテリアについて、100%高級ウール素材が使われ、オプションで運転席メモリー機能や後席ヒーターシートも用意された。エンタメ系では、ハイグレードにイコライザー&TVチューナー付オーディオ+6スピーカー、ヘッドホーンジャック&マイクロヘッドホーンなどが装備された。

パワートレインは、当時最強レベルの最高出力255psを発生する3.0L V6 DOHCセラミックターボと200psの同NAの2機種エンジンと、電子制御式4速ATの組み合わせ。駆動方式はFRで、高級セダンながらスポーティな走りも大きな魅力だった。
車両価格は、NA仕様が433万円/478万円、ターボ仕様が500万円/510万円。特に高価なハイグレードが人気を呼び、トータルで1年間になんと3万6400台が売れた。ちなみに、令和の今ならターボ仕様は728万円/742万円に相当する。高級車シーマの過熱した人気ぶりに“シーマ現象”という社会現象を表す新語が生まれ、ハイソカーの象徴的存在になったのだ。
バブル崩壊をトリガーに1990年半ばからシーマ人気に陰りが
一大ブームを巻き起こして高級車市場に確固たる地位を築いたシーマ。しかし、1991年にバブル崩壊が起こり、市場がRV人気に押されるようになるとシーマの輝きは徐々に失われていった。

・2代目FY32型(1991年~)
エンジンが大排気量の4.1L V8 DOHC NAに換装(後に3.0L V6 DOHCターボが追加)され、足回りはエアサスから油圧式アクティブサスに変更。本革の内装や室内照明の追加などによって、走りと高級感にさらに磨きがかけられた。

・3代目FY33型(1996年~)
先代と同じエンジンが搭載されたが、安全技術の向上が図られたのが特徴。最高レベルの安全ボディと1999年にハイグレードに追加設定された国産車初の自動ブレーキ(車間自動制御システム)が注目された。

・4代目FY50型(2001年~)
スタイリングはベンツのようなドイツ車風となり、マルチプロジェクターキセノン式ヘッドライト(通称、バルカンヘッド)が独特の表情を与えた。これは、メインライトユニットを7つの凸レンズで構成したもので世界初だった。またエンジンは、4.1L V8が4.5L V8 DOHC NAへと変更された。
5代目はハイブリッド専用モデルに、そして最後のシーマに

4代目シーマは、2010年4月に一旦生産を終えたものの、2012年4月のこの日に5代目(HGY51型)となって復活した。最大の特徴は、ハイブリッド専用モデルになったことである。

ボディやプラットフォームは、基本的には「フーガ」の拡大版で全体的なフォルムも類似していた。ボディサイズは、フーガよりも175mm長く、ホイールベースも150mm長く、また全高も高くなったことから先代よりさらに余裕の居住空間が実現された。

注目のハイブリッドシステムは、「フーガハイブリッド」と同様の最高出力306ps/最大トルク35.7kgm を発揮する3.5L V6 DOHCエンジンと、最高出力68ps/最大トルク27.5kgmのモーターに2クラッチを装備したFR用パラレルハイブリッドの組み合わせ。ハイブリッドの効果で力強い走りと優れた燃費性能が両立した。


また、「インテリジェントクルーズコントロール」、「インテリジェントブレーキアシスト」、「車線逸脱防止支援システム」などの最新の安全技術が搭載され、車両価格は735万円(標準グレード)、787.5万円(VIP仕様)、840万円(VIP G仕様)に設定された。


5代目シーマは、三菱自動車に「ディグニティ」としてOEM供給したり、商品力強化などで台数確保を図るものの目標台数は確保できず、2022年8月に生産を終了。同時に名車シーマ終焉を迎えたのだ。

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1988年に500万円(今なら730万程度に相当)もする3ナンバーのシーマが、1年で3万6400万台売れた。売れた理由はもちろんシーマの魅力だが、一方で高いから売れたとも言われている。これこそシーマ現象だが、今となってはまるで理解しがたい現象でもある。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。