【届いたばかりの現地ホヤホヤ写真付き!】 大変身! LEXUS、上海モーターショーにて新型「ES」を初公開 ~日本発売は2026年春頃を予定~

LEXUSは4月23日、本日4月23日(水)から5月2日(金)まで開催される上海モーターショーにて、新型ESを初公開した。
プラットフォームGA-Kは同じながら、ハード面でもソフト面でも現行ESから大きく考え方を違えた新型ESのようだ。
その新しいESについて、ついさきほど現地から届いたばかりで湯気が上がっている写真も交えながら概要をお伝えする。
なお、ここに掲げる情報は、現時点ではすべてプロトタイプのものであることをご承知おきいただきたく。

PHOTO:トヨタ自動車/MotorFan編集部

大変わりに変わる、新型「ES」8代目!

ESはLSと同じだけの歴史を持つ、LEXUSの中で最古参のブランドだ。
1987年にアメリカで発足し、89年に開業したレクサスチャンネルで、「LS400」と同時に発売した「ES250」が「ES」の始まり。
初代ESはV6を積んだ日本の「カムリプロミネント」だ。
2代目ESは日本で初代「ウィンダム」として売られ、「レクサスES300、日本名ウィンダム」のコマーシャルフレーズを覚えている方も多いだろう。

3代目以降もESはウィンダムと足並みを揃えて続いたが、5代めからは日本市場から遠ざかり、すでにLEXUSチャンネルが定着した2018年、いまの7代目が「ES」名で再投入された。

あれから早7年・・・たったいま、新しい「ES」が上海モーターショーでベールを脱いだ。

上海モーターショーでさきほどワールドプレミアを果たしたばかりの新型ES。

数えて8代目。
「ES」の「E」は「Exective Sedan」の「E」だが、今回の「E」には、8代目のコンセプト「Experience Elegance and Electrified Sedan」の「E」と解釈してよさそうだ。

現在販売中の7代目はハイブリッド専用だが、新型8代目はガソリン+モーターのハイブリッドの他、BEV(電気自動車)仕様も布陣に加えられる。

先にスペックを掲げてしまうと、その内容は次表のとおり。

メーカーが掲げる新型「ES」の特徴を解説していく。

新型ESの主な特徴

1.機能的本質や動的性能に根差したプロポーションと独自性の追求

新しい価値の創造を目指し、デザインコンセプトに「Clean Tech × Elegance」を掲げ、これまで積み重ねてきたESらしいエレガントなデザインをより磨き上げるともに、ESが生み出す機能的価値と情緒的価値を高い次元で融合させ、シンプルでクリーンな世界観を想像したという。

【エクステリア】

従来に対し、BEV車もラインナップされることから、床下バッテリー搭載と室内居住性を両立させる全高を前提に、セダンが最も美しく見えるプロポーションを追求した。

現在のESはエクステリア、インテリアとも、現行LSの縮小版のようなスタイリングだが、それでいてちっとも「プアマンズLS」にはなっていないのがよかった。

次期LSがどうなるのかわからないが、新型ESのスタイリングは、LSとも歴代ESとも訣別する道を選んでいる。
ただし、いまのLS流にサイドガラスは6ライトになった。現行は4ライトだ。

新型ES

「トランクレスな印象の流麗なフォルム、リヤへと強く絞り込まれたキャビン、大胆な平面立体勘合をテーマとするロアボディ」が特徴だという。
ルーフ面をそのままリヤガラス~トランクまで延長し、極力トランクを短くした手法はいまのクラウンと同様の処理だし、斜め前方からリヤボディを見ればほとんど5ドアリフトバックの趣だ。

全高はハイブリッド車で従来+110mmの1555mm、BEV車はさらに5mm高い1560mm。
タイヤが大径であることもあるだろうが、サイドから見て、1500mm超でありながら背高感のない、セダンらしいバランスを保っているところもうまいデザイン処理だ。「全高の高さを感じさせずに引き締まった印象を持たせる平面立体勘合により、リフトアップ感と低重心なプロポーションを両立させたと。

全高が従来より100mm以上上がってものびやかさを失っていないデザインマジック!
同じフロア上の見学者と比べると、単体で見て全高の高さを感じさせないスタイルでありながら、1500mm超なりのルーフ高さであることがわかる。
新型ES(プロトタイプ
発表されたモデルは2台ともBEV仕様で、BEV車のタイヤは19インチないし21インチとなる。これも見た目のフェンダーの厚みを解消しているのだ。

フロントフェイスが一変している。
現行ESはLSと同じテイストのスピンドルグリルだが、今回はスピンドル形状というべき。プレート下だけがグリル仕立てになっており、両脇のブラック部分もただの塗り分けのようだ。
ただしハイブリッドはエンジンの冷却性確保から、ナンバー直上に通風孔が残された。

いずれにしても電動車主体であることが前提のフロントデザインで、LEXUS中唯一のBEV専用車・RZと同系統の顔になった。

新型ES 新世代のスピンドルボディ(プロトタイプ)
新型ES HEVモデル(プロトタイプ)
見学者視線で見ると、バンパーのフード延長面とスピンドルとのエッジはかなり鋭いことがわかる。

「ツインL シグネチャーランプ」がおもしろい。
白のデイタイムランプを内向きに、ターンシグナルを外向き上下に重ね、両者端部をアロー型にすることで、特にターンシグナルの役割を視覚的に明確化している。

新型ES ツインLシグネチャーランプ(プロトタイプ)

後ろ姿には現行の面影が残されているように思う。
見れば横一文字のランプ(リヤL シグネチャーランプ)であり、現行との共通要素なないのだが、LSほどでないプレステージ感を抱かせるところが現行を思わせるのだろう。
ただし、ランプを赤の一文字に徹したかったがためにターンシグナル、リバースランプがバンパー側に追いやられたのは、いまのハリアーにも似て周囲のクルマからの視認性の点で気がかりだ。

新型ES(プロトタイプ)
新型ES リヤLシグネチャーランプ(プロトタイプ)

【インテリア】

内装もガラリと変わっている。
室内寸法は公表されていないが、全長を165mm、ホイールベースを80mmも延ばした効果で広くなっているという。
着座位置を上げて乗降性向上と見晴らしのよさを確保。

新型ES 室内イメージ(プロトタイプ)
新型ES BEVメーター表示イメージ(プロトタイプ)

寸法数値を大きくしてキャビン容量を大きくしただけでなく、広々「感」の向上に力を入れている点もほめていい。

新型ES 室内イメージ(プロトタイプ)

特筆したいのは、好き嫌いわかれようが、パノラマルーフだ。
前席上から後席頭上までガラスを覆うのはめずらしくないが、前後ばかりか、ルーフ両サイドスレスレまで広げたガラス面積でありながら、剛性確保のための支柱がないのは大したもの。たいていは中央に補強ステーを横切らせるものだが、あるなしの違いは大きく、一度このパノラマルーフ付ESに乗ったら、廃車時期が訪れても乗り換える気にはならないだろう。もっともこれだけ大きいとスライドやチルトアップは期待できまい。いっぽうで通常サイズのムーンルーフが用意したのが、スライド&チルト要請を満たすためだとしたら、顧客の細かな要求に応えようとするトヨタの姿勢は評価すべきだ。

新型ES 濃色調光機能付パノラマルーフ(プロトタイプ)
新型ES パノラマルーフ(プロトタイプ)
新型ES ムーンルーフ(プロトタイプ)

インストルメントのデザインは、どのLEXUSにも似ていない。
テレビ台の上に置いた薄型テレビのようなセンターモニターを、2段構成にしたインパネに置く造形にしたのも広々「感」の追求だろう。
モニターはかなり大きいようだし、機種によっては助手席までおよぶほどの特大サイズになっているが、その圧迫感抑制効果も狙っていると思われる。

新型ES BEVコックピット(プロトタイプ)
新型ES(プロトタイプ)
新型ES(プロトタイプ)

広々「感」向上への工夫はまだある。
フロントやサイドガラス下端を下げたことも去ることながら、シートにも着目したい。
いまのクルマが車体サイズや室内寸法ほど広く感じられないのは、シートの厚みがあると思う。特にシートバックは不必要なほど厚く、後席足元を思うほど広くしていない要因になっている。
きちんとした座り心地を提供できるなら、シート・・・特にシートバックなど、厚紙で造っていいとさえ思うほどだ。
説明資料では軽く触れているていどなのだが、「室内空間を構成するシートやトリムなどをできる限り薄型とし・・・」とあるのは見過ごすことができない。
あくまでも写真で見る限りなのだが、前後席座面奥行きを充分に備えた上で、かつ前席背もたれを薄く造っている(ように見える)。さらに後席側すなわち背もたれ背面もやや大げさなまでに「反り」を与え、とにかく広く「感じられる」ように努めているのは、他のクルマでも積極的に採り入れてほしい手法だ。

新型ES(プロトタイプ)
新型ES ドアトリム(プロトタイプ)

2.静粛性と乗り心地の継承と、走りの深化

【GA-Kプラットフォーム、刷新】

今回、BEVの投入もあり、専用開発を施した新しいTNGAプラットフォーム「GA-K」を起用。
他のLEXUSでも展開中の、フロントエンド、フロア、リヤエンドの剛性を強化したことで、ボディ振動の抑制、クルマの大きさを感じさせない、ドライバーの意図に忠実で素直なステアリング応答性や加速・減速レスポンスを実現した。

新型ES ボディ構造(プロトタイプ)

サスペンションは、フロントはマクファーソンストラット、リヤはES初のマルチリンク式。現行はリヤがダブルウィッシュボーンだから、同じGA-Kでもまったくの別ものプラットホームであることを示している。
サスペンションアームのブッシュ特性を見直し乗り心地向上。Dynamic Rear Steering(DRS)を搭載し、後輪を逆相/同相で最大4度もの舵角を与えることで、低速域ではコーナーリング時の回頭性、取りまわし性向上に寄与し、高速域では高い車両安定性をもたらす・・・このへんは他のクルマでもよく聞くフレーズだ。

新型ES フロントサスペンション(プロトタイプ)
新型ES リヤサスペンション(プロトタイプ)

さきに「薄く造られている」と述べたシートは構造を見直した新規開発品だ。
転舵時の筋負担を軽減し、背中が沈み込みやすいシートバックがドライバーの姿勢保持をサポート。いずれもドライバーがクルマの挙動をすばやく認知、判断し、より正確に操作できる運転姿勢を確保しやすいようにするための配慮だ。

新型ES シート

【パワートレーン

現行ESは、2.5直列4気筒のハイブリッド「ES300h」だが、新型ではここに2L直4のハイブリッドが新たに加わる。新しい2Lハイブリッド、そして見かけ上従来と同じ2.5Lハイブリッドも、システムとしては刷新されたものだ。新2.5Lは通常版とハイパワー版に分かれ、2Lと2.5通常モデルが「ES300h」を名乗り、2.5Lハイパワー版が「ES350h」となる。

新型ES HEVシステム(プロトタイプ)
新型ES 2.5L HEVシステム(プロトタイプ)
新型ES 2.5Lエンジン(プロトタイプ)

新2.5Lは、パワーコントロールユニットとトランスアクスルを一体化した「eAxle」がパワーユニットの小型軽量化に寄与すると同時に高出力化を実現。新2.5Lエンジンとのコンビネーションと専用制御ロジックにより、優れた加速性能と低燃費を高次元で両立させているという。

新型ES フロントeAxle(プロトタイプ)
新型ES リヤeAxle(プロトタイプ)

BEVも複数あり、約685kmの航続可能距離を実現するFWD「ES350e」とAWD「ES500e」の2種類。
さきに触れたように、電池は床下搭載。低重心化と走行性能の安定化を実現している。
また、AWDのES500eは、路面や走行状態を問わず、四輪駆動力を緻密に制御する「DIRECT4」を起用し、電動化技術が実現する、より優れた操縦安定性と、運転する楽しさを両立させた。

新型ES BEVシステム(プロトタイプ)
新型ES BEVシステム(プロトタイプ)

3.LEXUSらしい世界観を体現する最新技術

操作類には新しい試みが見られる。
たぶんトヨタ&LEXUSでは初だろう,

ハンドルやインストルメント部に、スイッチとしての機能とシンプルな室内空間を創出する、「機能性と上質なデザインを両立するResponsive Hidden Switches(レスポンシブ・ヒドゥン・スイッチ)」がある。
空調吹出口直上部は、普段は可食部だが、手をかざすことで光で浮かび上がった機能アイコンがスイッチとなる。
似たような例には日産アリアやサクラがあるが、「静電タッチパネルのようにシンプルな見た目でありながら、しっかりとした押下感のあるスイッチを採用することで、押し間違いを防ぐようにデザインした」という。

新型ES Responsive Hidden Switches点灯時イメージ(プロトタイプ)
新型ES Responsive Hidden Switches消灯時イメージ(走行中・プロトタイプ)

「LEXUSならではのパーソナライズされた体験価値」と謳い、「すべての乗員に自宅のリビングルームのようにくつろげる空間を提供する」という「Sensory Concierge(センサリーコンシェルジュ)」についても触れておきたい。
空間と演出で魅了する世界感「パフォーミングアーツ」をコンセプトに、LEXUS独自の体験価値を追求したというものだ。
イルミネーション、音楽、マルチメディア動画、空調、シートバックとシートクッションに内蔵するエアブラダーが大腿部から背中までを押圧するリラクゼーション機能やヒーターが連動し、乗員の気持ちの寄り添う3つのモードで乗員をリラックスさせたり、高揚させたりする車内空間を提供するという。

3つのモードは以下のようなものだ。

INSPIRE(インスパイア) : エキゾチックで刺激的な鼓動で気持ちの高揚をサポート。
・RADIANCE(ラディエンス) : 反射と揺らめきが交差する冴えた空間で集中をサポート。
・REVITALIZE(リバタライズ) : 優しい自然の循環をイメージした雰囲気でリラックスをサポート。

新型ES Sensory Concierge RADIANCE(ラディエンス)(プロトタイプ)
新型ES Sensory Concierge REVITALIZE(リバイタライズ)

ここにもうひとつ、「音楽連動イルミ」が加わる。
これは音楽とイルミネーションが連携するもので、乗員の選ぶ音楽の周波数に合わせて色彩を、音圧に合わせて輝度を変化させることで、乗員の気持ちの寄り添う空間を提供する。

この手のものはアフターマーケットのオーディオ単体レベルでは存在していたが、どちらかといえば派手な光の点滅に過ぎず、銀座のネオン看板にも似た動きだった。車両の開発段階から開発されたものならLEXUSというブランドキャラクターに合わせて練りに練られているはずで、夜のドライブが待ち遠しくなるような、いや、走らなくても自宅ガレージのESで夜を過ごしたくなるような仕上がりになると期待したい。

光の次に来るパーソナライズ空間価値はフレグランスだ。
LEXUSのシグネチャーアイテム・バンブー(竹)は、フレグランス・・・香りの領域にまで踏み込んだ。
LEXUSとして初導入だという。

「Time in Design」の思想と自然から感じ取る感性を表現する5つの香りを提供する。

前述の光の明滅と同じく、各フレグランスに合うオリジナルのマルチメディア動画、音楽、イルミネーションが連動し、視覚や音と一緒に楽しんでもらえるという。
すべての香りにバンブーアコードを用いたほか、フレグランスを収めるカートリッジには、樹脂を粉砕した竹を混ぜ込んだ「Forged bamboo」を採用。そのカートリッジは竹からのインスピレーションでデザインしたというから、開発陣はESパーソナライズのフレグランスに対して本気だ。
発生器はグローブボックス内に収められ、3種類の専用カートリッジをセット可能。インストルメント奥のスピーカーグリルから香りを発生させる。

用意される香りは5種類。

・天光(TENKO) : あたたかい自然の光に包まれた、ウッディアロマティック
・恵風(KEIFU) : 深い森の中で広がるスモーキーグリーン
・青陽(SEIYO) : 春の陽溢れる、のどかでやさしいホワイトフローラル
・半夜(HANYA) : 深い夜の静粛に漂う、神秘的で柔らかなムスク
・晨明(SHINMEI) : 夜明けにはじまりを予感させる、清らかなシトラス

デザインや動きなどは、写真や動画でお見せすることはできても、残念ながら香りを読者にわからせるような技術は、いまのところ紙でもネットでもまだ実現していない。
興味のある方は、いまのところ新型ESが発売された後、LEXUS販売店で確かめるしかないのは残念だ。

フレグランス
フレグランス

4.より安全・安心なドライブに寄与する先進安全技術

LEXUSブランドでおなじみ「Lexus Safety System +」は、多くは機能改善にとどまるようだ。
かいつまんでお伝えする。

・レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付) : エコランモードと地図連携機能を追加。エコランモードは加速をゆるやかにして燃費重視の走行を行ない、地図情報連携機能は、従来の減速支援に加え、一時停止などの道路標識、T字路、ラウンドアバウト、料金所などでの減速を、地図情報を読み取って減速サポートする。

・レーンチェンジアシスト(LCA) : 起動操作や車線変更の速さを見直し、より簡単でスムースな車線変更を支援するように改良。

・プリクラッシュセーフティ(PCS) : 交差点での出合い頭のシーンに於いて、警報およびブレーキの作動車速を拡げることで、これまでよりも広い車速域で衝突回避を支援、あるいは衝突被害の軽減に貢献するようにした。

・ドライバーモニター : ドライバーモニターカメラでドライバーをモニタリングするシーンを拡大し、ドライバーの眠気の兆候を検知した際のドライバーへの注意喚起を行なう。

・ドライバー異常時対応システム : 従来機能に加え、高速道路および自動車専用道を走行中に動作した際、路肩に寄せて停車する機能を追加する。

・高精細式アダプティブハイビームシステム(AHS)採用

・ブラインドスポットモニター(BSM) : 従来機能に加え、自車の側方を走行する自転車、バイクを検知して注意喚起し、右左折時の巻き込み事故防止をアシストする。

・パノラミックビューモニター : LEXUS初の新開発3Dビューにより、ドライバーの周囲確認をアシストする。画面のスワイプ操作により、ドライバー任意の視点から周囲確認が可能。

ここに掲げたすべての情報は、現時点プロトライプのもので、世界各地によって仕様が異なったり、変更になったりする可能性もある。 日本での発売は来年2026年春ごろ予定というからまだしばらく先だが、クルマで大人数で移動することはない、SUVほどのものは要らないというユーザーには気になる新型ESかも知れない。これまでにない雰囲気を持つインテリアの構築に力を入れた節がある新型ES、ひと味ちがうセダン像を見せてくれるかも知れない。

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