ベスト8進出! 加速力を向上させるタイヤ変更が、チーム・ドルーピー石川の武器になる【MOTOR FAN FESTA D1GP ROUND ZERO】

2025年もグランツーリスモD1グランプリシリーズ開幕に先立って、富士スピードウェイで開催されたイベント「モーターファンフェスタ」の中で、D1GPのエキシビションマッチ「ラウンドゼロ」が開催された。ダンロップ勢では広島トヨタ team DROO-Pの石川隼也がエントリー。2025年仕様のマシンを披露するとともに、レベルの高い単走と追走を見せた。

Photo:サンプロスD1事務局

モーターファンフェスタのイベントコンテンツのひとつとして開催されたラウンドゼロは、ポイントのつかないプレシーズンマッチだ。18台がエントリーして単走競技を行い、そのうち上位の8台が追走トーナメントを戦って勝者を決める。ダンロップ勢の中ではチーム・ドルーピーの石川が乗るHT DUNLOP 86(GR86)がエントリーした。

広島トヨタ team DROO-Pの石川隼也。今季はレーシングスーツを黒基調から白基調に変更している。

GR86は2024年仕様を踏襲したカラーリングではあるものの、ボディ全体を再塗装し、カラーリングをやり直している。そして、フロントまわりにはグレーのピンストライプが入っているが、これはカッティングシートではなく手描きだ。同様にライト部分に描かれているロウソクのイラストも手描き。もしフロントをぶつけるなどして破損した場合、ロウソクからちょうちんに、その次は線香花火に変わるという予定があるらしい。

各種スポンサーロゴなどはステッカーだが、グレーのラインと、ライト部分のイラストは手描きで施されている。

そして走行性能に関わる部分としては、使用タイヤが変わるという大きな変更を受けた。昨年までは18インチのDUNLOP DIREZZA β02を使っていたが19インチの、DUNLOP SP SPORT MAXX GT600を使用することになったのだ。

ゴムのグリップ力自体はDIREZZA β02と同等ながら、タイヤの外径が大きくなったことで、前に進む力が強くなったという。

あわせてエンジンの仕様も、より低回転からトルクを出せるように作用角の小さいカム(IN260°/EX270°)に変更。これによって昨年のエンジンよりも400rpm低い回転から同じトルクが出せるようになった。

これらの仕様変更をもとに足まわりのセッティング変更も行っている。ドライバーの石川も「外径が大きくなって、特に加速のときに進む気がします」という。

なおシーズンはおもに19インチのタイヤで戦うことを想定しているが、オートポリスのような加速区間が長いコースでは、20インチを使うことも考えている。

今季から使用する19インチのDUNLOP SP SPORT MAXX GT600。サイズは285/35-19だ。

そしてラウンドゼロの単走本番。石川はクラッチに不安を抱えていた状態で臨まざるをえなかったが、クイックな返しから絶妙な方向へドリフトを飛ばし、アウトいっぱいまで使ったドリフトで4位通過。追走トーナメント進出を決めた。なおチームは追走までにクラッチ交換を行った。

単走決勝。万全のコンディションではなかったが、石川は完成度の高い走りを見せて難なく追走進出を決めた。

追走トーナメントではVR38エンジンを積んだGR86に乗る蕎麦切と対戦。1本目は石川が先行。石川はヘアピンで少し角度が浅くなり、蕎麦切もラインが小さくなったが比較的近い距離で石川に合わせつつドリフトの姿勢は保ったため蕎麦切アドバンテージ。2本目は蕎麦切先行。石川は最初のコーナーである100Rまでに蕎麦切に距離を開けられてしまい、近い追走はできず。そのまま蕎麦切はミスなく見事な走りを見せて、石川の敗北となった。

追走の1本目。石川自身にも若干ミスがあったが、蕎麦切にしっかりドリフトを合わせられてしまった。

走行を終えて、広島トヨタ team DROO-Pの松岡監督は「去年のことを思えば(制御系トラブルでドリフトできず)、壊れずに走りきるという、もう最高の結果でございます。

今回、コウダイ(蕎麦切選手)は速かったね! でもコウダイのクルマとの差がはっきりしたし、もう改善しなきゃいけないところの答えはひとつだから。ちょっとワクワクしつつある。あれをストレートでやられるんだったら、こういう高速サーキットはやっぱり20インチじゃないと。コースで使い分けるのはありかなって思うね。回しきれれば20インチで絶対距離は縮まると思うし、逆に奥伊吹とかお台場とか狭いところだと、自由度もあるから19インチのほうがいいかもしれない。まだ内圧の微調整とかは今日も試している途中だったので、未来は明るいです。

今年はとにかく1個勝とう、と。本当に毎年お台場では見え隠れしているところで、するっと逃げていくけど、そのするっと逃げてく原因がわかってるから。それは絶対に改善方向には来てる。タイヤ。それはやっぱり武器だからね。そこが噛み合ったときには1個勝てるんじゃないかなっていう予感は持ってる。勝負権は絶対持ってる。だから、勝ちます。ひとつ勝ちます」と、今年のプランと抱負を力強く語ってくれた。

マシンのアップデートによる戦闘力向上に手応えを感じている様子の松岡歩監督。「松川にも期待してほしい」という。

いっぽう今回はエントリーしていないが同じチーム・ドルーピーの松川和也が乗るAE85のほうも、昨年までセルフステアがないことに悩んでいたが、様々なパーツを組み合わせて電動パワステから油圧のパワステに変更したことでセルフステアを出すことに成功し、テストでは好調な走りを見せているという。

そしてやはり今回はエントリーしなかったURAS RACINGの野村圭市も、開幕にはカラーリングを変更して参戦予定。リヤサスペションをより動かす方向にモディファイするためにサスペンションメンバーの加工をしてアームの角度などを変え、それに合わせてセッティング変更も行ってトラクションがアップ。「以前より動きがピョコピョコしなくなりより進むようになった」とのことだ。

今回出走はしなかったが、競技後のステージに登壇した野村圭市。今年は追走初進出を実現してほしい。

GR86の石川をはじめ、ダンロップ勢は3台とも明確な進化・改善を遂げて2025シーズンの開幕戦を迎える。5月に滋賀県・奥伊吹モーターパークで開催される第1戦、第2戦が楽しみだ!

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