空冷VWの”キャルルック”ってナニ?『第32回ヨコハマホットロッドカスタムショー』に集まったカスタムビートルがスゴい!

パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)を会場に、2024年12月1日(日)に開催された『32nd YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW(第32回ヨコハマホットロッドカスタムショー)』(以下、HCS)は国内最大規模のカスタムカー&カスタムバイクのインドアショーだ。カスタムカーの中でエントリーが多いのがやはりアメ車だが、空冷VWだって負けてはいない。今回は「Cal Look(キャルルック)」のおさらいをした上で、HCSにエントリーしたカスタム・ビートルを紹介しよう。
REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

『ヨコハマホットロッドカスタムショー』に集まったカスタムVW

パシフィコ横浜を会場として、2024年12月1日(日)に開催された『32nd YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW』(以下、HCS)は、国内最大規模の屋内カスタムカー&モーターサイクルショーだ。今回はカスタムカーが250台以上、カスタムバイクが500台以上が参加した。その規模とレベルの高さから名実ともに国内最高峰のカーショーと言えるだろう。

カスタムカーが250台&カスタムバイク500台!『第32回ヨコハマホットロッドカスタムショー』は海外からのエントリーもあるビッグイベント!!

2024年12月1日(日)、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)を会場にカスタムカー&モーターサイクルの祭典『32nd YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW』(以下、HCS)が今年も行われた。カスタムカルチャーファンの間では1年を締めくくるイベントであり、国内最大の屋内カスタムショーにして、世界が注目する日本最高峰のカスタムマシンが集うイベントなのだ。そして、このショウの目玉のひとつにUSAから招待したゲストマシンがあり、2台のカスタムカーと5台のカスタムモーターサイクルがこのイベントのために来場した。今回は大いに盛り上がったHCSの様子をリポートする。 REPORT:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu) PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)/りな(RINA)

そんなHCSでもっともエントリーがもっとも多いのがアメ車で、会場にはさまざまな車種・年式・ジャンルのカスタムカーが展示されていた。だが、アメ車以外の輸入車やドメスティックカー(日本車)も、情熱とレベルの高さでは負けてはおらず、キラリと個性が光る素晴らしいマシンがエントリーしているのだ。今回はその中から「Cal Look」(キャルルック)に代表されるカスタムVWを紹介しよう。

西海岸らしい明るく、開放的で、健全なイメージのCal Look

まずはCal Lookの語源から説明しておこう。この言葉は「California Looker」の略で、1960年代後半にカリフォルニア州オレンジ郡で生まれた西海岸流のコンパクトカーのカスタムスタイルのことを指す。空冷VWの中古車が以前ほど安価に買えないこともあって解釈の幅が広がり、現在のアメリカではVWラビット(ゴルフ)やBMWミニ、フィアット500をベースにしたマシンも「Cal Look」と呼ばれるようになったが、もともとはVWを対象としたカスタムジャンルだった。

Bug Maxが出展した1959年型VWタイプI。「Best Volkswagen」のアワード受賞車。フロントをやや低くめにローダウンした足まわりに、大径のフックス・デザインのホイールを組み合わせている。

当時の定番のスタイルは、空冷VWをベースに車体を黄色やオレンジ、ターコイズ、イエロー、ピンクなどの明るいカラーでリペイントを施し、ローダウンした足まわりにEMPI製5本スポークまたは8本スポーク、BRM製スピードウェル、マーレ製ガスバーナーなどの社外ホイール、あるいはポルシェ911の純正ホイールを組み込み、バンパーやサイドトリムを交換または取り外して、メッキパーツを用いつつ、よりスッキリしたルックスに仕上げていた。

だが、じつのところ明確な定義がなく、オーナーが「俺の愛車はCal Lookだ!」と主張すればCal Lookとして認められる寛容さがあった。

1959年型VWタイプIのリヤビュー。軽量化のため前後のバンパーを外し、リヤエンドにはレブマスターデュアルクワイエットマフラーをチョイス。レーシーなルックスが魅力のカスタムVWだ。

もともとCal Lookの担い手は、ギャングや犯罪行為と結び付けられることの多いLOWRIDER(ローライダー)に馴染めなかったチカーノ(メキシコ系)の若者たちだった。彼らはキャデラックやインパラなどのフルサイズカーをベースにしたLOWRIDERへのアンチテーゼとして、同じように安価に手に入る中古の空冷VWをベースに、ショートパンツやTシャツ、サーフボードなどのビーチファッションが似合う、オシャレで品良く、キュートなカスタムを施したのが始まりだった。

そんなCal Lookの持つ、西海岸流の明るく、開放的で、健全なイメージは、白人やアジア系の若者をも虜とし、やがては人種の垣根を越えて多くの人々から支持されるになる。これは人種とカスタムコミュニティが密接に関わるアメリカでは大変珍しいことだ。

日本でのCal Lookは1980年代が人気のピーク

Cal Lookは1970年代末に日本にも上陸し、1980年代中盤~1990年代初頭にかけて隆盛を極めた。その勢いは凄まじく、1987年3月に大井競馬場で開催された『第1回MOONEYES Street Car Nationals®』ではエントリーの過半数以上をCal Lookの空冷VWが占めた。
それと前後して『Cal magazine』(修伝社/日本ジャーナル出版刊)や『Daytona』(ネコ・パブリッシング刊)などの西海岸のモーターカルチャーを伝える専門誌が相次いで創刊した。

1955年型VWタイプI。こちらも「Best Volkswagen」のアワードを受賞したBUG MAXの出店車両。ルーフのラグトップに注目。

しかし、日本ではカスタム手法の定番化、ファンの先鋭化と高齢化、さらにはベースとなる中古車を気軽に入手がしずらくなったこともあって、2000年代に入ると空冷VWをベースにしたCal Lookは徐々に下火となってしまう。

1955年型VWタイプIのサイド/リヤビュー。貴重なオーバルウィンドウをベースにエンジンをフルチューン。ドラッグマシンスタイルにカスタマイズした。

その一方、経済の長期低迷に税金や社会保険料の引き上げ、ガソリン価格や物価の高騰などにより、日本のユーザーが購入するクルマの車格がシュリンクする。その結果、軽自動車や国産コンパクトカーとの相性の良さから、これらをベースにしたわが国独自のCal Lookが台頭してきている。

会場にずらりと並ぶハイレベルなカスタムVW

1965年型VWタイプIをベースに、チョップドトップ&オープンホイールの大胆なカスタムを施したVWロッダー。Brook Motor Psychoの作品でパーツのチョイスや仕上げなどパーフェクトなカスタムマシン。数々のアワード受賞も頷ける。

さて、話をHCSの会場であるパシフィコ横浜に戻そう。日本でも屈指のハイレベルなマシンが集まるHCSだけあって、一時に比べれば熱が下がった空冷VWベースのCal Lookもここでは元気いっぱいだ。

Brook Motor Psychoが手掛けたVWロッダーのリヤビュー。ボディワークはもちろん、メッキ処理の足まわりやフルカスタムのエンジンなどまったく隙がない。

空冷VWショップの老舗『Flat4』をはじめとする空冷VW専門店が持ち込んだ魅力的なマシンが、今回もずらりと並んだ。そのバリエーションは豊富で、伝統的なCal LookはもちろんのことVWロッダーやドラッグマシンの姿も見える。ここからはHCSにエントリーした車両を写真を中心に紹介していく。

HCSに出店したFlat4ブース。車両展示のほかグッズや用品の販売も行なわれた。
Flat4ブースに展示された1967年型タイプI“Strato Silver Bullet”。同社がコレクションするVWの1台。
BUG MAXが手掛けた1956年型VWタイプI・コンバーチブル。ドラッグマシンのテイストを巧みにインストールしたマシン。
1956年型VWタイプI・コンバーチブルのリヤビュー。BUG MAXは茨城県石岡市に店を構える空冷VWの専門店だ。
1951年型VWタイプI。「Let’s Play VWs Magazine’s Pick」と「MOONEYES HAWAII’s Pick」のアワードをW受賞したマシン。
群馬県のgo motor service(GMS)がエントリーした1970年型VWタイプ1。「Paticipation Award」を受賞。
ファッションブランドのmuta MARINE OSAKAのマスコットカーの「ビートル」。
BUG MAXが出展した1956年型タイプI。ツートンカラーが美しい貴重なオーバルウィンドウ。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…