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『ヨコハマホットロッドカスタムショー』に集まったカスタムVW

パシフィコ横浜を会場として、2024年12月1日(日)に開催された『32nd YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW』(以下、HCS)は、国内最大規模の屋内カスタムカー&モーターサイクルショーだ。今回はカスタムカーが250台以上、カスタムバイクが500台以上が参加した。その規模とレベルの高さから名実ともに国内最高峰のカーショーと言えるだろう。
そんなHCSでもっともエントリーがもっとも多いのがアメ車で、会場にはさまざまな車種・年式・ジャンルのカスタムカーが展示されていた。だが、アメ車以外の輸入車やドメスティックカー(日本車)も、情熱とレベルの高さでは負けてはおらず、キラリと個性が光る素晴らしいマシンがエントリーしているのだ。今回はその中から「Cal Look」(キャルルック)に代表されるカスタムVWを紹介しよう。

西海岸らしい明るく、開放的で、健全なイメージのCal Look
まずはCal Lookの語源から説明しておこう。この言葉は「California Looker」の略で、1960年代後半にカリフォルニア州オレンジ郡で生まれた西海岸流のコンパクトカーのカスタムスタイルのことを指す。空冷VWの中古車が以前ほど安価に買えないこともあって解釈の幅が広がり、現在のアメリカではVWラビット(ゴルフ)やBMWミニ、フィアット500をベースにしたマシンも「Cal Look」と呼ばれるようになったが、もともとはVWを対象としたカスタムジャンルだった。

当時の定番のスタイルは、空冷VWをベースに車体を黄色やオレンジ、ターコイズ、イエロー、ピンクなどの明るいカラーでリペイントを施し、ローダウンした足まわりにEMPI製5本スポークまたは8本スポーク、BRM製スピードウェル、マーレ製ガスバーナーなどの社外ホイール、あるいはポルシェ911の純正ホイールを組み込み、バンパーやサイドトリムを交換または取り外して、メッキパーツを用いつつ、よりスッキリしたルックスに仕上げていた。
だが、じつのところ明確な定義がなく、オーナーが「俺の愛車はCal Lookだ!」と主張すればCal Lookとして認められる寛容さがあった。

もともとCal Lookの担い手は、ギャングや犯罪行為と結び付けられることの多いLOWRIDER(ローライダー)に馴染めなかったチカーノ(メキシコ系)の若者たちだった。彼らはキャデラックやインパラなどのフルサイズカーをベースにしたLOWRIDERへのアンチテーゼとして、同じように安価に手に入る中古の空冷VWをベースに、ショートパンツやTシャツ、サーフボードなどのビーチファッションが似合う、オシャレで品良く、キュートなカスタムを施したのが始まりだった。
そんなCal Lookの持つ、西海岸流の明るく、開放的で、健全なイメージは、白人やアジア系の若者をも虜とし、やがては人種の垣根を越えて多くの人々から支持されるになる。これは人種とカスタムコミュニティが密接に関わるアメリカでは大変珍しいことだ。
日本でのCal Lookは1980年代が人気のピーク
Cal Lookは1970年代末に日本にも上陸し、1980年代中盤~1990年代初頭にかけて隆盛を極めた。その勢いは凄まじく、1987年3月に大井競馬場で開催された『第1回MOONEYES Street Car Nationals®』ではエントリーの過半数以上をCal Lookの空冷VWが占めた。
それと前後して『Cal magazine』(修伝社/日本ジャーナル出版刊)や『Daytona』(ネコ・パブリッシング刊)などの西海岸のモーターカルチャーを伝える専門誌が相次いで創刊した。

しかし、日本ではカスタム手法の定番化、ファンの先鋭化と高齢化、さらにはベースとなる中古車を気軽に入手がしずらくなったこともあって、2000年代に入ると空冷VWをベースにしたCal Lookは徐々に下火となってしまう。

その一方、経済の長期低迷に税金や社会保険料の引き上げ、ガソリン価格や物価の高騰などにより、日本のユーザーが購入するクルマの車格がシュリンクする。その結果、軽自動車や国産コンパクトカーとの相性の良さから、これらをベースにしたわが国独自のCal Lookが台頭してきている。
会場にずらりと並ぶハイレベルなカスタムVW

さて、話をHCSの会場であるパシフィコ横浜に戻そう。日本でも屈指のハイレベルなマシンが集まるHCSだけあって、一時に比べれば熱が下がった空冷VWベースのCal Lookもここでは元気いっぱいだ。

空冷VWショップの老舗『Flat4』をはじめとする空冷VW専門店が持ち込んだ魅力的なマシンが、今回もずらりと並んだ。そのバリエーションは豊富で、伝統的なCal LookはもちろんのことVWロッダーやドラッグマシンの姿も見える。ここからはHCSにエントリーした車両を写真を中心に紹介していく。







