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ヨーロッパで人気急上昇中のヒストリックラリー
ラリーが盛んなヨーロッパではWRCを頂点に様々なラリーが毎週いろんな場所で開催されている。その中でも最近人気が高まっているのがヒストリックラリー。1970年代~1990年代に活躍したラリー車が全開で走るとあって、現役当時を知る人たちから雑誌や映像でしか見たことがない人たちまで、様々な世代のギャラリーがステージへと観戦に訪れる。とくにここ数年は世界的なヤングタイマーブームも人気を後押ししているようだ。

今回取材したFIAヨーロピアンヒストリックラリーチャンピオンシップ、略してFIA EHRCの開幕戦となるRALLY COSTA BRAVAは、スペインのバルセロナから東へ約100キロの街ジローナ周辺で開催された。かつてはERC(ヨーロッパラリー選手権)やWRC(世界ラリー選手権)として開催され長い歴史を持つラリーとして広く知られている。

2025年は全10戦が開催されるEHRCは、おおまかに4つのクラスに分けられている。最近のトピックとしては2000年までに製造された車種が参戦が可能になったこと。まだ台数は少ないものの、GC8型インプレッサWRXやエボ6までのランサーといった世界中のラリーで大活躍した車種が参戦できるようになり、ギャラリーからの注目も高まっている。

グループ4からグループBにグループAまで多彩な参戦マシン

参戦している主な車種はヨーロッパで開催されている他のヒストリックラリーと同様に、ポルシェ911やフォード・エスコートが多数を占め、ここ最近エントリーを増やしているのはE30型BMW M3だ。他にもプジョー205やルノー5、ランチア・デルタなど、お馴染みの車種の姿も。


エントリー台数はレギュラリティクラスまで含めると約250台。全車スタートするだけで2時間以上を要するのだけど、これはヨーロッパのラリーではよくあること。日本では考えられない台数だ。


ドライバー、コ・ドライバーの多くはいわゆるジェントルマンドライバー。とは言え、ヨーロッパ各国のチャンピオン経験者も参戦していて、レベル自体は高い。




ランチア・ラリー037が10台集結!ミキ・ビアシオン優勝40周年記念セレモニーも
今回のラリーで大きな話題となったのが、グループB時代を代表する車種であるランチア・ラリー037が10台も集結したことだろう。

1985年に当時はERCとして開催されたこのラリーをtotipカラーの037で勝利したミキ・ビアシオンの優勝40周年を祝って、スタート前にセレモニーが開催されたのだ。10台もの037が揃うことは滅多にないとあって、ギャラリーだけではなく多くの関係者も駆けつけていた。



TOYOTA GAZOO Racing WRT代表のヤリ-マティ・ラトバラがセリカGT-FOURで参戦!

もうひとつ話題となったのが、TOYOTA GAZOO Racing WRT代表のヤリ-マティ・ラトバラが参戦したこと。選手としては一線を退いたラトバラだが、時間を見つけては地元フィンランドの国内戦を中心に参戦し続けている。

2024年に日本でのデモランなどに使用したST185型セリカGT-FOURでの参戦で、コ・ドライバーには同じくフィンランドのヤンニ・フッシを起用。モデルとして活躍していたフッシは、2022年からコ・ドライバーとしてラリーへの参戦を始めるや瞬く間に実力を身につけた選手で、最近では勝田貴元のペースノートクルーを務める。

2004年にWRCとして開催された際に使用されたステージの一部も走行する今回のラリー。ラトバラ本人もその事は知っていて、「あの時はスズキのイグニススーパー1600だったね」と感慨深く思い出を語ってくれた。

セリカGT-FOUR vs ポルシェ911カレラRS

リエゾンも短く比較的コンパクトにまとまったコースは、カタルニアの道の特徴とも言えるカントが大きい高速コーナーが続くステージが多い。
ラリー期間中を通じて気温が低く、雨も降り続きコンディションは良くないものの、各ステージには多くのギャラリーが詰めかけ、人気の高さを示していた。

そんな悪コンディションの中、圧巻の走りを見せたのはラトバラ/フッシ組のセリカだ。ターマックラリーには初めて使用するセリカだが、終わってみれば全ステージでベストタイムを記録する完全試合で総合優勝だ。

続く総合2位にはラリーだけではなく、レースやダカールでも活躍するフランスのロマン・デュマ/マシュー・タイラン組の911カレラRS。ラトバラ/フッシ組とデュマ/タイラン組のタイム差は3分52秒。セリカよりも年式も古く空冷RRの911で4WDターボのグループAセリカに肉薄した走りは見事で、ポルシェ使いの面目躍如といったところ。


伝統のラリーを往年の雰囲気で楽しめるシリーズ

WRCと比べるとこじんまりとしたラリーではあるけど、リモートサービスがロードサイドであったり、ギャラリーエリアが今のWRCの基準と比べるとはるかにコースに近かったりと、現代のラリーが失った昔ながらな雰囲気を残していて、選手はもちろんギャラリーにとっても満足度の高いイベントであるように感じた。

シリーズ全10戦の中にはギリシャのアクロポリスやベルギーのイプルーなど、かつてはWRCやERCとして開催されていた歴史あるラリーも含まれていて、それぞれイベントごとに特色があって飽きさせないシリーズ構成になっている点も見逃せない。

ヨーロッパから遠く離れた日本では今まであまり注目されてこなかったラリーだけど、これを機にぜひ注目してもらいたいシリーズだ。