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選手権として開催されるヒストリックラリーシリーズ
全10戦で開催されるFIAヨーロピアンヒストリックラリーチャンピオンシップ、略してFIA EHRCにはかつて世界中のラリーで活躍したクルマが参戦している。今年はTOYOTA GAZOO Racing WRT代表のヤリ-マティ・ラトバラの参戦もあり、とくに注目が集まっている。
スペインで開催された2025年の開幕戦「RALLY COSTA BRAVA」には約250台もの参加車を集め、人気の高さを証明した形だ。2000年までに生産され、FIAのホモロゲーションとヒストリックテクニカルパスポートを持つ車両が参戦できるこのシリーズには、世界各国のメーカーの車両が参戦している。今回はラリー黎明期より数々の名車を生み出し、今なおラリーにおいて大きな存在感を示しているフランスメーカーの車両を紹介したい。

WRCで存在感を示すフランスメーカーとフランス人ドライバー
1973年にスタートした世界ラリー選手権(WRC)の初代マニュファクチャラーチャンピオンを獲得したのはフランスのアルピーヌA110。その後は長くイタリアメーカーの時代が続き、1981年にギ・フレクラン/ジャン・トッド組が駆るタルボ・サンビーム・ロータスがチャンピオンを獲得。

なおこの年のドライバーとコ・ドライバー部門のチャンピオンはプライベーターとしてフォード・エスコートMK.IIで参戦したアリ・バタネン/デヴィッド・リチャーズ組が獲得している。
その後のグループB時代には1985年~86年にプジョーが205ターボ16でマニュファクチャラーチャンピオンを獲得している。1990年代は日本メーカーの時代が続いたが、2000年からはプジョーとシトロエンが勝ち続けた事はよく知られている。

フランスのメーカーがラリーで存在感を示していることにはいくつか理由があるが、若手育成に注力していることはあまり知られていない。各メーカーが国内選手権にワンメイク選手権を設け、長年に渡って選手の育成を続けてきた。セバスチャン・ローブやセバスチャン・オジェといった絶対王者もそういったカテゴリーから頭角を表した選手だ。

また、欧州各国では一般的だが、フランスでもフランスモータースポーツ連盟(FFSA)が有望な若手選手をサポートしていることも大きな理由と言える。
グループ4からグループBとグループA……
そして四駆ターボ一矢報いたNA+FFのF2キットカー
RALLY COSTA BRAVAにもラリーで存在感を示してきた多くのフランス車が参戦していた。WRC初代チャンピオンのアルピーヌA110をはじめ、プジョー205や309。ルノーからはグループB時代を代表する1台である5ターボや、1989年のWRCコートジボワールで優勝した5GTターボなどの姿が見られた。







なぜかシトロエンは少なくて、レギュラリティクラスにAX GTが1台参戦しただけだった。個人的に注目したのがルノー・クリオマキシ。F2規定で製作され、大幅に拡幅されたトレッド、高度にチューニングされたNAエンジンは澄んだ甲高い音を発し、F2キットカーとも呼ばれ過激な見た目と走りで人気を集めたカテゴリーだった。

F2キットカーの嚆矢、ルノー・クリオマキシのディティールをチェック!
当時、ルノーはクリオマキシや後継であるメガーマキシ、プジョーでは306マキシなどが活躍。中でもシトロエンのクサラキットカーは、1999年にフィリップ・ブガルスキーのドライブでWRCカタルニア、コルシカで2勝を挙げるなど、格上の4WDターボ勢をも上回るタイムを叩き出すこともあったカテゴリーだ。

残念ながら、今回はマシントラブルによって出走が叶わなかったクリオマキシだが、チームの計らいでクリオの細部を紹介してもらうことができた。インパネなどに市販車の面影が残るのが当時のラリー車らしい特徴だ。





様々なヒストリックラリーカーの競演
羨ましき哉、成熟したヨーロッパのラリー文化

安全装備などは今の基準が採用されるので、厳密に言えば当時と全く同じ姿ではないものの、多くのヒストリックラリー車が参戦できるのは、技術や素材の進歩によって「無い部品」を製作できるようになったことも大きいように思う。

またラリー自体がビジネスとして成立していることも大きな理由と言える。何はともあれ、身近なイベントでかつての名車が今でも全開で走る姿を見られることは、遠く日本に住む者にとっては羨ましい限り。機会があればぜひ観戦に出掛けてみて欲しい。



