アルピーヌ!ルノー!プジョー!シトロエン!『ラリー・コスタ・ブラーヴァ』のフランス車を一気に紹介!! 二輪駆動こそターマックラリーの華

選手権として開催されるヒストリックラリーシリーズ

全10戦で開催されるFIAヨーロピアンヒストリックラリーチャンピオンシップ、略してFIA EHRCにはかつて世界中のラリーで活躍したクルマが参戦している。今年はTOYOTA GAZOO Racing WRT代表のヤリ-マティ・ラトバラの参戦もあり、とくに注目が集まっている。

セリカGT-FOURにランチア・デルタやラリー037が現役で走ってる!?『ラリー・コスタ・ブラーヴァ』はファン垂涎のクラシックイベントだった!

ラリーが身近で圧倒的な人気を誇るヨーロッパ。WRC(世界ラリー選手権)を頂点にさまざまなラリーが開催されているが、昨今、特に注目を集めているのが往年の名車によるヒストリックラリー。そんなヒストリックラリーの一戦を、長年海外ラリーを取材してきた山本佳吾がレポートする。 REPORT&PHOTO:山本佳吾(YAMAMOTO Keigo)

スペインで開催された2025年の開幕戦「RALLY COSTA BRAVA」には約250台もの参加車を集め、人気の高さを証明した形だ。2000年までに生産され、FIAのホモロゲーションとヒストリックテクニカルパスポートを持つ車両が参戦できるこのシリーズには、世界各国のメーカーの車両が参戦している。今回はラリー黎明期より数々の名車を生み出し、今なおラリーにおいて大きな存在感を示しているフランスメーカーの車両を紹介したい。

雨の中スタートしていくルノー5ターボ。

WRCで存在感を示すフランスメーカーとフランス人ドライバー

1973年にスタートした世界ラリー選手権(WRC)の初代マニュファクチャラーチャンピオンを獲得したのはフランスのアルピーヌA110。その後は長くイタリアメーカーの時代が続き、1981年にギ・フレクラン/ジャン・トッド組が駆るタルボ・サンビーム・ロータスがチャンピオンを獲得。

この手のイベントでは必ず目にするアルピーヌA110。

なおこの年のドライバーとコ・ドライバー部門のチャンピオンはプライベーターとしてフォード・エスコートMK.IIで参戦したアリ・バタネン/デヴィッド・リチャーズ組が獲得している。

フォード・エスコートMK.IIについてはこちらの記事もご覧ください。

その後のグループB時代には1985年~86年にプジョーが205ターボ16でマニュファクチャラーチャンピオンを獲得している。1990年代は日本メーカーの時代が続いたが、2000年からはプジョーとシトロエンが勝ち続けた事はよく知られている。

こちらはプジョー 106XSi。れっきとしたグループAのベース車両だ。

フランスのメーカーがラリーで存在感を示していることにはいくつか理由があるが、若手育成に注力していることはあまり知られていない。各メーカーが国内選手権にワンメイク選手権を設け、長年に渡って選手の育成を続けてきた。セバスチャン・ローブやセバスチャン・オジェといった絶対王者もそういったカテゴリーから頭角を表した選手だ。

地味な印象のプジョー309だが、現役当時はフランソワ・デルクールなど、多くのドライバーを育てた車種だ。

また、欧州各国では一般的だが、フランスでもフランスモータースポーツ連盟(FFSA)が有望な若手選手をサポートしていることも大きな理由と言える。

グループ4からグループBとグループA……
そして四駆ターボ一矢報いたNA+FFのF2キットカー

RALLY COSTA BRAVAにもラリーで存在感を示してきた多くのフランス車が参戦していた。WRC初代チャンピオンのアルピーヌA110をはじめ、プジョー205や309。ルノーからはグループB時代を代表する1台である5ターボや、1989年のWRCコートジボワールで優勝した5GTターボなどの姿が見られた。

アルピーヌA110のような貴重なクルマであっても惜しみなく走らせる。
アルピーヌA110についてはこちらの記事もご覧ください。
プジョー205はヒストリックラリーではメジャーな車種。
こちらはシングルカム1.3Lのプジョー205ラリー。
今や貴重なプジョー309GTIの前期型。
リエゾンを行く2台のルノー5ターボ。前がBozian Racingのsadicamカラー、後がワークスのルノースポールカラーだ。
1985年に登場したルノー5ターボの最終形態とも言えるマキシ5ターボ。
数は少ないものの、ルノー5GTターボも参戦。
ルノー5ターボや当時のグループ4/グループBラリーカーについてはこちらの記事もご覧ください。

なぜかシトロエンは少なくて、レギュラリティクラスにAX GTが1台参戦しただけだった。個人的に注目したのがルノー・クリオマキシ。F2規定で製作され、大幅に拡幅されたトレッド、高度にチューニングされたNAエンジンは澄んだ甲高い音を発し、F2キットカーとも呼ばれ過激な見た目と走りで人気を集めたカテゴリーだった。

シトロエンAXはGTiではなく3穴ホイールのGTが1台だけ参戦していた。

F2キットカーの嚆矢、ルノー・クリオマキシのディティールをチェック!

当時、ルノーはクリオマキシや後継であるメガーマキシ、プジョーでは306マキシなどが活躍。中でもシトロエンのクサラキットカーは、1999年にフィリップ・ブガルスキーのドライブでWRCカタルニア、コルシカで2勝を挙げるなど、格上の4WDターボ勢をも上回るタイムを叩き出すこともあったカテゴリーだ。

Diacカラーを纏ったルノー・クリオマキシはギャラリーの注目の的。

残念ながら、今回はマシントラブルによって出走が叶わなかったクリオマキシだが、チームの計らいでクリオの細部を紹介してもらうことができた。インパネなどに市販車の面影が残るのが当時のラリー車らしい特徴だ。

ライトポッドを装着しさらに迫力が増したクリオマキシ。
市販車の面影が濃く残るルノー・クリオマキシのインパネ周り。
運転席のシートはルノースポールの物が装着されていた。
スペアタイヤ、ジャッキなどが効率よく納められるラゲッジルーム。
エンジン内部の大幅な改造も許されていたF2規定。

様々なヒストリックラリーカーの競演
羨ましき哉、成熟したヨーロッパのラリー文化

Bozian Racingのsadicamカラーを施したルノー5ターボ。

安全装備などは今の基準が採用されるので、厳密に言えば当時と全く同じ姿ではないものの、多くのヒストリックラリー車が参戦できるのは、技術や素材の進歩によって「無い部品」を製作できるようになったことも大きいように思う。

ルノースポールカラーのトランポと並ぶと、まるで当時のような光景。

またラリー自体がビジネスとして成立していることも大きな理由と言える。何はともあれ、身近なイベントでかつての名車が今でも全開で走る姿を見られることは、遠く日本に住む者にとっては羨ましい限り。機会があればぜひ観戦に出掛けてみて欲しい。

最近めっきり数を減らしたプジョー104。
アルピーヌA310はグループ4時代を代表する1台。
由緒正しいcalbersonカラーのアルピーヌA310。
ごくごく普通のセダンがゴルディーニよって立派な競技車へと生まれ変わった、ルノー12ゴルディーニ。

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著者プロフィール

山本佳吾 近影

山本佳吾

1975年大阪生まれの撮り鉄で阪神ファン。格安航空券を見つけては海外のラリー取材に出かける生活。好物はW…