GENROQ編集長が惚れ込んだ3モデル 最後の打ち上げ花火として相応しいのは?

今買わずにどうする! 良き時代の最後の打ち上げ花火スーパーカー 2021-2022 GENROQ編集長が推す3台

マクラーレン765LT リヤウイングは状況に応じて自動的に上昇、急ブレーキ時にはエアロブレーキの役割も果たす。クーペ、スパイダーともに765台の限定生産となる。
Motor-Fan.jpのMotor-Fan/Motor-Fan TECH./Motor-Fan Bikes/Web Option/SW DressUp Navi/GENROQ webの各チャンネルを担当する編集者たちが、「個人的な想い」で推す、いまお勧めのクルマ3台をお届けする。今回はGENROQ永田編集長のおすすめの3台です。良き時代最後のスーパーカーとは?
TEXT○永田元輔(NATATA Gensuke)

GENROQ編集長が惚れ込んだ3モデル

GENROQといえば、やはりスーパーカーを外すわけにはいきません。しかし、かつては「エンジンを運ぶためのクルマ」などと言われ、カッコ良くて最高速度が速ければすべて許されたスーパーカーも、最近は時代に合わせてものすごく優等生になっています。カッコが良くて速いのは変わりませんが、コーナーでの運動性能も素晴らしく、乗り心地も良く快適なので真夏に東京の渋滞を走ってコンビニへ乗り付けるのも苦ではありません。

そして今、スーパーカーも環境への配慮を求められる時代となってきました。排気量ダウンサイズの流れは数年前から始まっていますが、これから来るのは電動化です。すでにマクラーレンやフェラーリからハイブリッドの新型車が発表されており、ランボルギーニも次世代モデルでは全車種を電動化すると発表しています。つまり、ガソリンを燃やしてエンジンだけで走るスーパーカーを楽しめるのは、今が最後の時代だと言ってもいいでしょう。

そこで、GENROQ編集長の私が選んだのは、「今買わずにどうする! 良き時代の最後の打ち上げ花火スーパーカー2021」です。多気筒エンジンの音と鼓動、レスポンスを感じながら走る、古典的スーパーカーの香りを味わわせてくれる2021年の3台。もうこのような古典的スーパーカーは今後なくなってしまうかもしれないのです。ハイブリッドのスーパーカーもそれはそれで魅力的ですが、排気量は大きいほどエラい、ピストンは多いほどエラい、という時代に育った私としては、やはりこの流れはちょっと寂しいですね。だから今こそ! 良き時代最後のスーパーカーをオススメします! 実際に買えるかどうかは別問題として……。

マクラーレン765LTこのピュアさこそすべて

ボディはクーペとスパイダーがある。カーボンモノコックの恩恵でスパイダーでも一切の剛性低下がない。1388kgのボディに765ps/800Nmで0→100km/h加速は2.8秒、最高速度は330km/hに達する。

F1で有名なマクラーレンが市販車部門のマクラーレンオートモーティブを設立したのが2011年。それからわずか10年でマクラーレンは世界のスーパーカーをリードする存在となりました。マクラーレンが造るクルマはすべてカーボンモノコックを採用し、軽量と高い剛性を両立、その剛性の高いボディによってサスペンションやステアリングの動きはまるでレーシングカーのように素直なフィーリングです。この走り味こそ、マクラーレンが10年でスーパーカーのトップブランドとなった理由です。

765LTはフラッグシップである720Sをさらに改良し、パワーアップと徹底的な軽量化、そしてエアロダイナミクスの再構築によって生まれた限定モデルです。車名のLTとはロングテールの意味で、かつて耐久レースで勝つためにあのマクラーレンF1-GTRの前後オーバーハングを延長したことに由来するネーミングです。事実、765LTはリヤオーバーハングが720Sから57mm延長され、専用のエアロパーツや80kgの軽量化、さらに4ℓV8ツインターボエンジンを45psアップして765psとするなど、あらゆる面に手が加えられています。

スイッチ類の一切ないステアリングがマクラーレンの性格を象徴する。メーターは格納することが可能で、サーキットなどでも視界を妨げない。

その走りは強烈のひと言。とんでもなく速いのは当然ですが、誤解を恐れずに言えば原始的なクルマです。アクセルレスポンスやステアリングやブレーキのフィールに一切の曇りがなく、まるで四肢がクルマと直結したかのような気分になります。今の時代、これほどピュアな走りを見せてくれるスーパースポーツカーは他にありません。純エンジンスーパーカー時代のフィナーレを飾るにふさわしい1台です。

ランボルギーニ・ウラカンSTO 今までのランボルギーニの集大成

スタンダードモデルのウラカンEVOはAWDだが、STOはRWD。STOとはスーパートロフェオ・オモロガータの略で、ワンメイクレース車両のスーパートロフェオのホモロゲーションモデルという意味だ。

ランボルギーニといえばスーパーカーの代名詞。現在はV12のアヴェンタドールとV10のウラカンという2台のスーパーカーをラインアップしますが、いずれもNAエンジンと言うのが魅力。そしてV10のウラカンの最後を飾るモデルとして登場したのがSTOです。これはランボルギーニのレース部門がノウハウを投入して造り上げた「公道も走れるレーシングマシン」と言うべき1台です。

エンジン自体は他のウラカンと基本的に同じですが、ポイントは徹底した軽量化とエアロダイナミクスです。まず軽量化はボディパネルをほぼすべてカーボン製としてフロントフェンダーとボンネットを一体化、ドア内張りもカーボン製で薄板ガラスやマグネシウムホイールも採用するなどして1339kgという軽さを実現。さらにコーナーでの安定性を高めるセントラルシャークフィンや手動調整式リヤウイングなど、専用のエアロパーツも導入されています。

3段階に調節可能なリヤウイング、コーナーでの安定性を高めるセントラルシャークフィン、さらにルーフにシュノーケル状のエアインテークを備える。
フロントフェンダーとボンネットは一体構造のカーボン製で、開けた姿はミウラを思わせる。この部分だけで通常より75%の軽量化を達成している。

「公道も走れるレーシングマシン」というだけあり、このクルマのメインステージはサーキット。300km/h近くまで一気に駆け上がるとんでもない加速とFSWの1コーナーでもびくともしないブレーキ、そして超高速コーナーでも安心してスロットルを踏んでいけるスタビリティ、ステアリングを切ったときのノーズの反応の気持ちよさなど、ランボルギーニの走りの集大成と言える仕上がりです。

2014年にデビューしたウラカンもこのSTOが最後のモデルとなり、次期ウラカン(という名前かどうかはわかりませんが)はモーターを搭載することになります。このウラカンSTOはランボルギーニのひとつの時代の最後を飾るクルマとして、スーパーカーの歴史に名を刻む存在となるのではないでしょうか。

ポルシェ911カレラGTS MTの楽しさは永遠

搭載されるエンジンは3ℓの水平対向6気筒ツインターボ。パワーはベースモデルのカレラより95psも大きい480ps。7速MTだけでなく8速PDKも用意される。価格はMTでもPDKでも同じ(1868万円)だ。

ポルシェ911はスーパーカーというよりもスーパースポーツカーですが、長い歴史のなかでずっとトップであり続けるというのはやはりすごいことです。現行のタイプ992はちょっと大きくなり過ぎたと感じますが、それでもスポーツカーとしてのレベルの高さと実用性、そしてプレミアム性、信頼性という要素をすべて満たすクルマで、911を超えるクルマはちょっと思い当たりません。

2018年に発表された現行のタイプ992は、少しずつバリエーションを追加していき、ほぼすべてのラインアップが揃うようになりました。なかでもファンが待ちかねたのは2021年に上陸したGTSでしょう。GTSはカレラシリーズの最高峰という位置づけのグレードですが、注目なのはついにMTが用意されたことです。ご存知のように近年のスーパーカーはすべて2ペダルで、マニュアルトランスミッションはほぼ絶滅。もはや時代遅れとも言えるMTをあえて用意してくれるのは、ポルシェがスポーツカーファンの気持ちを理解しているからでしょう。そう、大事なのは絶対的な速さよりも操る楽しさなのです。

シャシーはターボ系を使用しているので、ホイールはセンターロック式。ボディはクーペの他にカブリオレがあり、AWDも選べるが、MTが選択できるのはクーペのRRのみ。

相変わらずアイドリング近辺からの図太いトルクによってクラッチミートは容易。程よい重さのクラッチを踏みながら左手を動かしていると、スポーツカーに乗っている実感がこみ上げてきます。シフトフィールはややスイッチ的ですが、ストロークが短くスパッとギヤが入るので気持ちいい。またシフトダウン時に自動で回転を合わせてくれるオートブリップも備わります。これがまた素晴らしく、一所懸命ヒール&トゥの練習をしたのは何だったのかと虚しくなるほど。でも個人的にはオフにして、時には失敗しながらも自分で回転を合わせる方が楽しいですね。

ファンの期待に応えて911にMTを用意してくれたポルシェですが、それもいつまで続くかわかりません。いずれは911も2ペダルのみになってしまう日が来るでしょう。そうなる前に、今こそ911のマニュアルを楽しみましょう。

アルカンターラを使用したシフトノブは滑りにくく感触もいい。右ハンドルだけでなく左ハンドルが選択できるのも嬉しい。

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