最高時速400km/h以上!空で戦う4次元モータースポーツ『エアレースX』ってなに?福島の空で日本人チャンピオンの神技飛行を見た!!

2025年4月29日(火・祝)、ふくしまスカイパークで「エアレースX」の第1戦が開催された。2024年からスタートした"空のモータースポーツ"であるエアレースXでは日本人パイロットの室屋義秀選手が初代チャンピオンに輝くなど、活躍している。ディフェンディングチャンピオンとして迎えた2025年の第1戦で室屋義秀選手はどのようなフライトを見せたのか?そして、そもそもエアレースXとは?
PHOTO&REPORT:MotorFan.jp

エアレースXとは?

エアレースXとは最高時速400km、最大重力加速度12Gにも及ぶ極限下で、世界最高の操縦技術を有するパイロットたちがレース専用の小型飛行機を操り、タイムと正確さを競い合う空のモータースポーツ。パイロンを立てて作られたコースをタイムアタック形式で競う形は、立体的なジムカーナと表現するのがわかりやすい。

エアレースXで使用される「エッジ540V3」。アメリカのジブコ・エアロノーティック社がアンリミテッドエアロバティックス専用に開発した、素直な操縦性とメンテナンスフリー性を兼ね備える高性能な軽量機。レッドブルエアレースをはじめとしたエアロバティックス競技で活躍する。
現在、日本にあるエッジ540V3はこの1機のみで、ふくしまスカイパーク以外での展示は行われていない。今イベントは、エアレースはもちろん、エッジ540V3の実機や飛行の様子をライブで見られる貴重な機会となった。
エッジ540V3 スペック(レクサス・パスファインダー・エアレーシング/室屋義秀選手機)
全長:6.3m
全幅:7.4m
空虚重量:530kg
エンジン:ライカミングAEIO-540空冷水平対向6気筒
最高速度:425km/h

2023年に渋谷を舞台に初開催され、2024年には初のシリーズ戦として3戦を開催。革新的モータースポーツとして進化を遂げている。そして2025年シーズンは、新たにルーキーパイロット2選手が加わり全4戦で争われる。

エアレースXファイナルラウンド(エアレースX公式サイトより)

予選の順位でトーナメント初戦の対戦相手を決定し、ファイナルは予選ファイナルーセミファイナル(準決勝)ーファイナル(決勝+3位決定戦)のトーナメント形式で争われる。
シリーズポイントは決勝ポイントに加えて予選順位にも付与されるので、全4戦のシリーズと考えると予選順位も重要となってくるのだ。

チャンピオンシップポイント(エアレースX公式サイトより)

決勝の様子はパブリックビューイングで

エアレースXは、選手がそれぞれのホームで飛行し、そのデータをリモートで対戦させる形式。気象条件などコンディションも異なる場所でのフライトになるため、ここでもイコールコンディションであることがレギュレーションで厳しく定められている。

格納庫でのパブリックビューイング。

そのため、来場者としては目の前でトップ選手がレースをする様子を見られるわけではなく、大型モニターでのパブリックビューイングでの観戦となる。しかし、生での迫力こそないものの、オンボードカメラによる映像とCGによるフライトコーストレース映像で、下から見ているだけではわからないレースの展開を見ることができる。

コース設定とフライトコース。別の場所で1機ずつ飛んでいるのをコースやスピード、タイム差など組み合わせた映像で見せてくれる。© Taro Imahara TIPP

さらに、各ラウンドのインターバルが短く、コースタイムも今回の第1戦では1分前後と短くテンポよく進行するので見ていて飽きることがない。このあたりは映像編集や構成の妙味もあり、実にドラマチックだ。

レース中のコックピットの様子。© Taro Imahara TIPP

リアルとバーチャル、ライブとリモートを組み合わせたまさに新時代のエンターテインメントと言えるだろう。

レースの様子などは公式YouTubeチャンネルで配信されており、いつでも視聴可能だ。

室屋選手のアクロバティックとレース機でのデモフライト

とはいえ、やはり空港に来て飛行機レースを観戦する以上、飛行機が飛ぶところをライブで見たいと思うのは当然。このエアレースX第1戦では室屋義秀選手がアクロバティック飛行とレース機による飛行と、合わせて3度もデモフライトを見せてくれた。

スモークを焚いてフライパス。アクロバット飛行では普通にイメージする飛行とは全然違った飛び方をしていた。その様子は下の動画からご覧いただけます。
アクロバット飛行を終えた室屋選手。
来場者とハイタッチを交わす。

アクロバティック飛行では室屋選手得意の機動が余すところなく披露され、来場者は空を見上げ、その飛行機らしからぬ動きに歓声を上げていた。
また、着陸後に行われたスモークを焚いてのグラウンドループはドーナツターンのようで(タイヤスモークではないので匂いは無いが)、モータースポーツ的な雰囲気を強く感じさせた。

実際のレース機によるデモフライト。

一方、ド派手な機動のアクロバティック飛行と異なり、実際のレース機によるデモフライトは、エアレースのコースを飛行機がどのように飛ぶのかを見ることができた。
コースが1分前後のパイロン周回で飛行場上空で完結するため、高さはともかくとして飛行機が目視範囲内にいる点はサーキットレースよりも観戦しやすいかもしれないと感じた。

室屋選手のアクロバット飛行を動画でご覧ください。

エアレースチャンピオン”Yoshi”こと室屋義秀選手

そんなデモフライトを披露した室屋選手は、エアロバティックパイロットを経て、2009年にアジア人初のエアレース世界選手権参戦を果たし、2017年には世界王者に輝いた。2023年にエアレースXを立ち上げ、2024年から始まったシリーズ戦ではふくしまスカイパークをホームに戦い、再びチャンピオンに輝く。

デモフライトを終えた室屋選手。パイロットを志したのは『機動戦士ガンダム』の影響だそうだ。

第1戦の会場となったふくしまスカイパークは室屋選手のホームであり、今イベントでは室屋選手が使用した歴代フライトスーツやトロフィーなどが展示されていた。

室屋選手の歴代フライトスーツ。右端は2016年のレッドブルエアレース千葉大会で優勝した際に着用していたもので、オークションに出品された。
室屋選手の等身大パネルとトロフィーの数々。

また、デモフライトだけでなくフライトの合間にはトークショーが開催された他、チャリティオークションでは前述のフライトスーツやファンクラブ終身名誉会長の称号が出品され、それぞれなかなかの高額で落札されるなど、室屋選手の人気ぶりを感じさせた。

チャリティオークションに出品されたフライトスーツ。
トークショーでフライトの様子を語る室屋選手。

初戦は2位スタート!連覇に向けて次戦での巻き返しを誓う

第1戦ではパトリック・デイビッドソン選手(チーム77)が予選・決勝ともに好タイムを出して優勝を飾った。「Yoshiに勝ちたい」と公言していただけにデイビッドソン選手にとっては最高のスタートとなった。

第1戦予選の結果。
第1戦決勝の結果。(エアレースX公式サイトより)

一方、室屋選手は予選・決勝ともに2位。全4戦で争われるシリーズだけに次戦の結果が重要になってくる。次戦からはマシンがアップデートが予定されており、連覇に向けて優勝が期待される。

第1戦を2位でスタートした室屋選手。ディフェンディングチャンピオンとして第2戦での巻き返しを誓う。
室屋選手が駆るレクサス・パスファインダー・エアレーシングチームのエッジ540V3。イコールコンディションのために改造範囲は限られるが、チームごとに可能な範囲でアップデートされている。同チームでは次戦に改良されたウイングレット(主翼端の跳ね上がっている部分)が投入されるという。

2年目を迎えたエアレースXは各選手のマシンのアップデートも進み、実力伯仲。さらに、2選手が新たにシリーズにエントリーしたことでより盛り上がりを見せている。
7月6日(日)に予定されている第2戦は、今シーズンを占う重要な一戦になるだろう。これは目が離せない。

第1戦後のポイントスタンディングス(エアレースX公式サイトより)

ふくしまスカイパークフェスタ2025春

会場のふくしまスカイパーク。

エアレースX第1戦の会場となったふくしまスカイパークでは、同時に「ふくしまスカイパークフェスタ2025春」が開催された。
室屋選手のアクロバット飛行やエアレースXの飛行機によるデモ飛行が見られた他、各種飛行機も展示されコックピットに座れるサービスも行われた。

展示された各種飛行機。
展示された小型機のコックピットに座ることもでき、多くのキッズが列を作った。

他にも、福島県消防防災ヘリコプターによる展示飛行に加え降下デモや担架収容デモを見ることができた。目の前をヘリコプターがフライパスするところを見られたり、降下・上昇してローターのダウンウォッシュに晒されるという貴重な体験ができた。

来場者の前をフライパスしていく福島県消防防災ヘリコプター。
隊員の降下シーン。
要救助者を担架に載せて収容するデモ。

また、自衛隊や福島県の物産、活動をアピールする出展をはじめ、キッチンカーなども並び、飛行機だけでなくさまざまな形で楽しめるイベントとなっており、GWということもあり多くの家族連れが訪れていた。

陸上自衛隊ブースでは高機動車が展示され、運転席などに座ることができた。
福島県白河郡矢吹町の脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーおよび水素関連産業に取り組む
ワーキンググループ「チームやぶき」がクラウンFCEVの電力で綿菓子を作って振る舞っていた。
メインディッシュからスイーツまで、いろいろなキッチンカーが並んだ。

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