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■エンジン排気量アップと4ストローク化を図ったフェローMAX550
1976(昭和51)年5月10日、ダイハツは軽の新規格に対応してエンジン排気量を360cc→550ccに拡大した「フェローMAX550」を投入した。先代の「フェローMAX」は、高性能化で人気を集めたが、1970年代に入ると排ガス規制強化が始まり、排気量アップと4ストロークエンジンのフェローMAX550で対応を図った。

ダイハツ初の軽乗用車フェロー、そしてフェローMAX誕生
1957年に誕生した「スバル360」で日本の軽自動車市場は幕開け、各メーカーから立て続けに新型車が投入され、軽市場は一気に活況を呈した。そのような中、ダイハツが1966年に満を持して投入した軽乗用車第1弾が「フェロー」だった。

フェローは、リヤにトランクを持つ3ボックススタイルに、日本初の角型ヘッドランプを採用。搭載エンジンは、最高出力23psの360cc 2気筒水冷2ストロークエンジンで、駆動方式はFRが採用された。


運転のしやすさや広い室内空間などが評価されて、フェローは順調に販売を伸ばした。ところが、1967年に高性能で広い室内、おまけに低価格の「ホンダN360」が登場して爆発的な人気を獲得、フェローの存在は薄れてしまった。
そこで、ダイハツは軽の高性能化時代に対応するため、1970年に初めてのモデルチェンジで2代目「フェローMAX」を投入。フェローMAXは、ロングノーズにカムテールを組み合わせたダイナミックな2ボックススタイルに変貌し、また車室内空間を確保するため駆動方式はFRからFFに変更された。

その後フェローMAXは、積極的にモデル展開を進め、同年7月には軽最強の40psを誇る高性能モデル「フェローMAX SS」を追加。さらに翌1971年には、軽としては初のハードトップモデルを投入し、フェローMAXはヒットモデルへと成長した。

昭和48年排ガス規制に対応したフェローMAX550

高性能競争に大きなブレーキをかけたのが、1973年から始まった排ガス規制だった。高性能時代の安全性確保や排ガス規制対応のために、政府は1976年1月に軽自動車の新しい規格(ボディを全長20mm、全幅10mm拡大、エンジン排気量を360ccから550ccへ拡大)を施行した。

ダイハツは、この規格変更にいち早く対応した排気量550ccのフェローMAX550を1976年5月のこの日に投入。同時に、従来の水冷2ストロークから水冷4ストロークに変更。排ガス規制対応のため、最高出力28ps/最大トルク3.9kgmと控えめだったが、実用上は問題なかった。
1973年には、世界的なオイルショックが起こったことで省エネ(低燃費)機運が高まり、フェローMAX550に限らず、当時は先代よりも性能が低下することは珍しくなかった。

フェローMAX550のボディサイズは、新規格に対応せずに従来と同等で、乗員4名の2ドア/4ドアセダンが用意された。車両価格は2ドアの標準グレードが51.6万円、4ドアのハイカスタムが63.3万円だった。当時の大卒初任給は9.0万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約132万円(標準)/162万円(ハイカスタム)に相当する。

その後進化し続けてダイハツの看板モデルのミラに成長
フェローMAX550は、翌1977年にボディサイズを新規格に対応して拡大した「MAXクオーレ」となり、その後モデルチェンジして1980年に「クオーレ」を名乗った時に、アルトに対抗する形で兄弟車の軽ボンネットバン「ミラクオーレ」が誕生した。

軽ボンネットバンは、乗用車のようなハッチバックにして低価格を実現した軽商用車、1979年にデビューしたスズキ「アルト」が初めて採用して爆発的な人気を獲得した。1980年にデビューしたミラクオーレ(1982年に「ミラ」に車名変更)もアルトに負けない人気によって、ダイハツを支える大黒柱に成長した。

その後1989年に、物品税が廃止されて消費税が導入されたため、軽商用車の割安感が少なくなったため軽ボンネットバンブームは終焉。これを機に、ミラは軽ボンネットバンから乗用車セダンとなった。

一方で、軽市場は1993年にデビューしたスズキ「ワゴンR」が開拓した背の高いハイトワゴンが大ブームとなったが、乗用車セダンのミラ(2017年に「ミライース」に変更)とアルトのライバル関係は続き、2025年現在も堅調な販売を続けている。
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1970年代のオイルショックと排ガス強化は自動車の進化に大きな影響を与えた。特に排気量の小さな軽自動車にとっては、厳しい排ガス規制に適合することは至難の業だった。排ガス規制対応や燃費改善で性能は頭打ちになったが、これらの試練を乗り越えた1980年代を迎えると、その反動か以前にも増して高性能・高機能時代が到来したのだ。
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