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グループA時代を彩った日本メーカー製マシンが増加中
『FIAヨーロピアンヒストリックラリーチャンピオンシップ』、略して『FIA EHRC』の開幕戦、スペインで開催された『RALLY COSTA BRAVA(ラリー・コスタ・ブラーヴァ)』には様々な競技車両が参戦していた。

前回紹介したフランスメーカーは一大勢力であるけれど、ここ最近台数が増えているのが日本のメーカーの車だ。
かつてグループA/N時代に世界中のラリーを席巻したスバルと三菱。スバルはBC5型レガシィRSとGC8型インプレッサWRX、三菱は歴代ランサーエボリューションの人気が高く、ギャラリーからの注目度も抜群だった。
EHRCに限らず、ヨーロッパのヒストリックイベントでレガシィとインプレッサ、ランサーは頻繁に見かけ、いずれも今でも一線級の戦闘力を持っているようだ。



FIAの規定で開催されるラリーには、最新の安全規定が用いられるために厳密に言えばロールケージなど、安全に関わる部分は現役当時の姿ではないものの、その速さは現役当時をも上回る。

さすがに元ワークスカーなどのヒストリーを持った車両では無いものの、併催の国内戦クラスに参戦していたランサーエボリューションはラリーアートジャーマニー製のグループN車だったりと、今となってはお宝とも言える車両で参戦している選手もいる。

ヤングタイマーあるいはネオクラシック世代のパーツは世界共通の悩み?
世界的なヤングタイマー人気でこれらの車種は日本のみならず世界中で人気だが、心配なのが部品の供給。筆者の友人たちからも国内で見つからない部品を海外からの輸入に頼っているという話を聞く。
日本車なのに海外から輸入というのも変な話しだけど、逆に海外で日本車の部品の供給はどうなのか?少し気になったので複数の参加者に話しを聞いてみた。

国内戦クラスにランサーエボリューションVIで参戦していたオーストリアのチームは「とにかく部品が無いんだよ。日本で買えないかなあ?」と筆者に色々と逆質問。

先述のラリーアートジャーマニー製のグループNランサーで参戦していたポルトガルのチームは「今のところ部品は大丈夫。もちろん手に入りにくい部品もあるけれど」とのこと。

競技用の部品に関しては心配は少ないけど、純正部品に関しては不安があるようで、これは日本も含めて世界中で同じ状況のよう。競技車両として走らせていくには想像以上の時間と労力とお金、さらには情熱が必要なのは間違いないようだ。

現役当時はスバルはSTIが、三菱はラリーアートがそれぞれ世界中でユーザーをサポートしてきた。その時代を経験したメカニックやエンジニアが日本も含めて世界中でまだ活躍している今だからこそ成り立つ競技とも言える。

ラトバラがセリカGT-FOURでパーフェクトウィン!シリーズ制覇を狙う
今年のEHRCで一番の目玉と言えばヤリ=マティ・ラトバラがST185型セリカGT-FOURで参戦していることだろう。

以前から母国フィンランドのイベントを中心に自ら所有するST165型セリカGT-FOURなどでヒストリックラリーに参戦していたラトバラ。ラリードライバーだった父もかつてはST165で参戦していたり、ラトバラ本人のラリーデビューは16歳で、マシンはAE86型カローラレビン(現地名はカローラGT)。WRCデビューはカローラWRCと、トヨタ車とは何かと縁がある。


今回ドライブしたST185型セリカGT-FOURはカストロールカラーではなくWRCで活躍するGRヤリスRally1と同じく黒いGRカラーを纏っただけでなく、細部まで丁寧に制作されていてギャラリーのみならず他の選手からも注目を集めていた。

大のクルマ好きとしても知られるラトバラは、サービスでもセリカが気になって仕方ない様子。エンジンルームを眺めながら「大容量のオルタネーターにしたいなあ」と呟きつつ、筆者に「どう?このエンジンルーム。写真撮ってよ!」とリクエスト。

FIA格式のれっきとした競技ではあるけれどどこかリラックスした雰囲気で、これはラトバラだけではなくこのラリー全体からも感じ取れた。生憎の雨の中でのラリーとなったが、スタート前に「当然、チャンピオンを狙ってシリーズを追うよ」と語ったラトバラは、全ステージでベストタイムを記録し、総合優勝でラリーを終えた。


レーシングスーツやサービスカーまで当時を再現?
競技だけでなく楽しむ方向でも本気度高し!

当時の選手と同じデザインのレーシングスーツで参戦する選手もいたり、BC5型レガシィRSで参戦していたチームのサービスカーがBF5型レガシィ・ツーリングワゴンといった具合に、サービスカーも当時の車種を選ぶチームもあり、ともすればコスプレとも思えるけれど、それなりのお金を使って大真面目に楽しんでいる様子がとても良い雰囲気だった。



選手やギャラリー、さらには主催者も心底楽しんでいる様子が見て取れて、人気の高さも納得できるラリーだった。


