インプレッサWRX!歴代ランエボ!セリカGT-FOURにレガシィRSまで!グループA時代の日本車が大人気の『ラリー・コスタ・ブラーヴァ』

ラリーが身近で圧倒的な人気を誇るヨーロッパ。WRC(世界ラリー選手権)を頂点にさまざまなラリーが開催されているが、昨今、特に注目を集めているのが往年の名車によるヒストリックラリー。そんなヒストリックラリーの一戦を、長年海外ラリーを取材してきた山本佳吾がレポートする。今回はグループA時代の後半を席巻した日本車をフィーチャー。ランサーエボリューションやインプレッサWRXだけでなく、セリカGT-FOURにレガシィRS、AE86まで!?
REPORT&PHOTO:山本佳吾(YAMAMOTO Keigo)
クラシックラリーのシリーズ戦『FIA EHRC』の2025年第1戦『ラリー・コスタ・ブラーヴァ』には往年のラリーシーンを彩った名車がズラリと並ぶ。

グループA時代を彩った日本メーカー製マシンが増加中

『FIAヨーロピアンヒストリックラリーチャンピオンシップ』、略して『FIA EHRC』の開幕戦、スペインで開催された『RALLY COSTA BRAVA(ラリー・コスタ・ブラーヴァ)』には様々な競技車両が参戦していた。

昔ほどではないものの、最近のWRCと比べると遥かに近くで観戦できるのも魅力。もちろん自己責任ではあるけれど。

前回紹介したフランスメーカーは一大勢力であるけれど、ここ最近台数が増えているのが日本のメーカーの車だ。

開幕戦はスペインでのターマックラリーということもあり、二輪駆動の新旧フランス車勢が多数エントリー。

かつてグループA/N時代に世界中のラリーを席巻したスバルと三菱。スバルはBC5型レガシィRSとGC8型インプレッサWRX、三菱は歴代ランサーエボリューションの人気が高く、ギャラリーからの注目度も抜群だった。
EHRCに限らず、ヨーロッパのヒストリックイベントでレガシィとインプレッサ、ランサーは頻繁に見かけ、いずれも今でも一線級の戦闘力を持っているようだ。

貴重なクルマだからといっておとなしく走るなんてことはなく、みんな本気で走らせるのがヨーロッパのヒストリックラリー。
インプレッサもランサーも現役当時に多くのラリー車が製作されたからか、今でも現役として走れる車が多い印象。
日本ではほとんど見なくなった世代でも、ヨーロッパのイベントではまだまだ現役。

FIAの規定で開催されるラリーには、最新の安全規定が用いられるために厳密に言えばロールケージなど、安全に関わる部分は現役当時の姿ではないものの、その速さは現役当時をも上回る。

主に安全装備が現代の基準となるので、見た目ではロールケージが現役当時よりも太くなる。

さすがに元ワークスカーなどのヒストリーを持った車両では無いものの、併催の国内戦クラスに参戦していたランサーエボリューションはラリーアートジャーマニー製のグループN車だったりと、今となってはお宝とも言える車両で参戦している選手もいる。

国内戦クラスにも多くの日本車が参戦していた。

ヤングタイマーあるいはネオクラシック世代のパーツは世界共通の悩み?

世界的なヤングタイマー人気でこれらの車種は日本のみならず世界中で人気だが、心配なのが部品の供給。筆者の友人たちからも国内で見つからない部品を海外からの輸入に頼っているという話を聞く。
日本車なのに海外から輸入というのも変な話しだけど、逆に海外で日本車の部品の供給はどうなのか?少し気になったので複数の参加者に話しを聞いてみた。

GC8型インプレッサWRXは世界中で大人気。グループAやグループN車両は年々値上がりし続けている。

国内戦クラスにランサーエボリューションVIで参戦していたオーストリアのチームは「とにかく部品が無いんだよ。日本で買えないかなあ?」と筆者に色々と逆質問。

オーストリアから遠征してきたチーム。最近のクルマなイメージだけどエボ6もヒストリックの範疇。

先述のラリーアートジャーマニー製のグループNランサーで参戦していたポルトガルのチームは「今のところ部品は大丈夫。もちろん手に入りにくい部品もあるけれど」とのこと。

由緒正しいラリーアートジャーマニー製のグループNランサーで参戦したポルトガルのチーム。

競技用の部品に関しては心配は少ないけど、純正部品に関しては不安があるようで、これは日本も含めて世界中で同じ状況のよう。競技車両として走らせていくには想像以上の時間と労力とお金、さらには情熱が必要なのは間違いないようだ。

微妙にマルボロっぽい2台。先頭はイギリスからの参加者なので右ハンドル。

現役当時はスバルはSTIが、三菱はラリーアートがそれぞれ世界中でユーザーをサポートしてきた。その時代を経験したメカニックやエンジニアが日本も含めて世界中でまだ活躍している今だからこそ成り立つ競技とも言える。

グループA仕様のBC5型レガシィRSは2台参戦。

ラトバラがセリカGT-FOURでパーフェクトウィン!シリーズ制覇を狙う

今年のEHRCで一番の目玉と言えばヤリ=マティ・ラトバラがST185型セリカGT-FOURで参戦していることだろう。

ラトバラのコドライバーを務めたヤンニ・フッシは、キャリアはまだ浅いものの急速に実力をつけている選手だ。

以前から母国フィンランドのイベントを中心に自ら所有するST165型セリカGT-FOURなどでヒストリックラリーに参戦していたラトバラ。ラリードライバーだった父もかつてはST165で参戦していたり、ラトバラ本人のラリーデビューは16歳で、マシンはAE86型カローラレビン(現地名はカローラGT)。WRCデビューはカローラWRCと、トヨタ車とは何かと縁がある。

AE86も人気の車種。ラリーでは2ドアクーペのイメージだけど今回は見られなかった。
道路沿いに設定されたリモートサービスからステージへと向かう2台のトヨタ。AE86のマフラー位置に注目。

今回ドライブしたST185型セリカGT-FOURはカストロールカラーではなくWRCで活躍するGRヤリスRally1と同じく黒いGRカラーを纏っただけでなく、細部まで丁寧に制作されていてギャラリーのみならず他の選手からも注目を集めていた。

楽しむつもりと言いつつ、走り出せば常に本気のラトバラ/フッシ組のセリカGT-FOUR。

大のクルマ好きとしても知られるラトバラは、サービスでもセリカが気になって仕方ない様子。エンジンルームを眺めながら「大容量のオルタネーターにしたいなあ」と呟きつつ、筆者に「どう?このエンジンルーム。写真撮ってよ!」とリクエスト。

自慢の愛車を前にずっと笑顔だったラトバラ。

FIA格式のれっきとした競技ではあるけれどどこかリラックスした雰囲気で、これはラトバラだけではなくこのラリー全体からも感じ取れた。生憎の雨の中でのラリーとなったが、スタート前に「当然、チャンピオンを狙ってシリーズを追うよ」と語ったラトバラは、全ステージでベストタイムを記録し、総合優勝でラリーを終えた。

全ステージをベストタイムで制覇し、完全勝利でラリーを終えたラトバラ/フッシ組。
第2戦チェコが開催された週末にはスペインでWRCが開催されていたが、EHRCを優先したラトバラ。チェコでも勝利。

レーシングスーツやサービスカーまで当時を再現?
競技だけでなく楽しむ方向でも本気度高し!

当時のワークスカラーを再現しているのでミシュランのロゴが貼られているけど、実際に使用しているタイヤはピレリだった。その辺りは意外とアバウトな印象。

当時の選手と同じデザインのレーシングスーツで参戦する選手もいたり、BC5型レガシィRSで参戦していたチームのサービスカーがBF5型レガシィ・ツーリングワゴンといった具合に、サービスカーも当時の車種を選ぶチームもあり、ともすればコスプレとも思えるけれど、それなりのお金を使って大真面目に楽しんでいる様子がとても良い雰囲気だった。

補助灯が付くと一気にラリーっぽい雰囲気に。
レガシィで参戦するチームのサービスカーはアンドラナンバーのBF型レガシィ・ツーリングワゴン。
『モンテカルロヒストリック』にも参加したのだろうか。なぜか筑波サーキットやエビスサーキットのステッカーも。

選手やギャラリー、さらには主催者も心底楽しんでいる様子が見て取れて、人気の高さも納得できるラリーだった。

こういう何気ない雰囲気が当時を感じさせてくれることがこのラリーの特徴。
こちらはギャラリーのグランドシビック(EF型)。歴代シビックはヨーロッパでも大人気。
シビックに貼られたステッカーから、世界的なJDM人気を感じさせてくれる。

キーワードで検索する

著者プロフィール

山本佳吾 近影

山本佳吾

1975年大阪生まれの撮り鉄で阪神ファン。格安航空券を見つけては海外のラリー取材に出かける生活。好物はW…