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環境問題から生まれた2人乗りコミューターというジャンル
クルマと環境問題とは切っても切れない問題となっている。1960年代にアメリカで制定されたマスキー法によって排気ガス規制が始まり、1990年代に入ると環境問題はグローバル化。1992年には欧州での統一規格ユーロ1がスタートしている。
クルマは排ガスのクリーン化だけでなく、低燃費化も考えられるようになり、より環境にやさしいクルマが次々と誕生した。1994年にはスイスの時計会社スウォッチとダイムラー・ベンツがMMCを設立し、2人乗りのシティコミューター「スマート」を開発。1998年から市販を開始している。

日本でも各自動車メーカーは環境問題に取り組んだが、日本には元々優れたシティコミューターとして「軽自動車」という規格があることもあり、モーターショーなどでショーモデルとして出展されることはあっても、市販化されたモデルはまだ少なかった。
日産は1997年の東京モーターショーでコンセプトカートしてバッテリーEVの「ハイパーミニ」を発表。2000年に市販化されるが、全長2.6mの小さな二人乗りでありながら、価格は400万円と高額で、一部の自治体で導入されたほかは個人での購入者は少なく、2002年に生産終了するまで、販売台数はわずか350台だった。

実は3年間で1万台も売れていたスズキ・ツイン
もう1台の国産シティコミューターのスズキ「ツイン」は、1999年の第33回東京モーターショーに「Pu3コミュータ」として発表。当時のアルト(HA12)をベースとした2シーターコミューターで、ホイールベースをアルトの2360mmから1800mmへ560mmも短縮。リヤハッチを廃した2ドアとすることで、コストの削減だけでなく、少ないパーツでモノコックボディの強度を増している。

大人2名が移動するためのコミューターとして割り切った設計になっており、座席はフロント2脚のみの2シーター。装備も簡素化していた。ちなみこの第33回東京モーターショーでは、出展車両の中で最も優れたコンセプトカーに贈られる「ザ・ベストコンセプトカー 特別賞」を受賞している。
ちなみにP3コミューターは2000年に開催された第34回東京モーターショーにも出展。商用車をメインとした展示となったこの年に展示されたPu3コミュータは、左ドアが電動で開閉し、スライドして引き出された助手席がそのまま車椅子になる福祉車両「Pu3コミュータ助手席 車椅子使用車」としての展示だった。ボディカラーがブルーメタリックからグリーンメタリックに変更されたほか、ヘッドライトがデュアルプロジェクタータイプとなっていた。

過去2回の東京モーターショーで好評だったPu3は、2002年に開催された第36回東京モーターショーにおいて、市販化予定の参考出品車「ツイン」として発表され、翌2003年1月に市販が開始された。基本的な構成はpu3とほぼ変わらなかったが、ヘッドライトは一般的なハロゲン仕様だった。全長2735mm、全幅1475mmとコンパクトで、車両重量もわずか570kg(5MT車)と軽量だった。

5速MTでエアコン、パワステも装備しない「ガソリンA」は車両本体価格が49万円と非常に安価だった。ガソリンエンジン車だけでなく5kWのモーターを組み合わせたハイブリッドもラインナップしていた。
ショーでの評判は良かったものの販売は伸び悩み、装備の充実や新グレード、新カラーの追加が行われたが、2005年に生産が終了してしまう。東京モーターショーでの発表時には電動車のBEVモデルもアナウンスされていたが、わずか3年間の販売期間中に追加されることはなかった。総生産台数は約1万台にとどまっている。
レカロシートに革巻きステアリングやサンルーフにオーディオも追加

2024年10月にモビリティリゾートもてぎで開催されたデルソルミーティングで出会ったゆゆさんはスズキ・ツインの魅力に取り憑かれたその1人。現在所有しているのは2003年式の初期型でグレードは「ガソリンA」。

最初はツインの独特のデザインに惹かれてATの「ガソリンB」を手に入れたが、3ATだったこともあり走りには少し不満があったため、4年ほど前にキビキビ走りそうなMTモデルに乗り換えたのだとか。

ちなみに初期型のMTモデルである「ガソリンA」のボディカラーはスペリアホワイトの1色のみしかラインナップされていなかった。塗装には劣化が見られたため、ゆゆさんはパールホワイト&シルバーに全塗装を施している。

定期的にディーラーで整備を行っていることもあり、大幅な改造は行なっていないが、内装を中心に快適に過ごせるように装備を充実。シートは両席共にレカロのLX-Fに載せ替え、ステアリングは同時期のアルトやワゴンRに採用されていた本革巻きに交換している。



また、ダッシュボードはフロッキー塗装と呼ばれる、ふわふわと手触りの良い植毛塗装が施され、質感が大幅に向上している。購入当初は簡素だった装備も充実して、ロングドライブも楽しんでいるのだとか。




スズキ・ツイン ガソリンA(2003年1月発売)
全長:2735mm
全幅:1475mm
全高:1450mm
ホイールベース:1800mm
車両重量:560kg
エンジン形式:水冷直列3気筒DOHC(K6A型)
総排気量:658cc
最高出力:44ps/5500rpm
最大トルク:5.8kg-m/3500rpm
新車価格:49万円