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プラットフォームを継承しつつ、確実にアップデート

先代までのフォレスターのユーザー層は、40歳代以下が54%を占め、若い層から支持されているという。一方で、年齢構成で最も高いのは50代の27%、40代が26%と、40〜50代で半数を占めている。若者からファミリー層、ポストファミリーといわれる世代まで幅広い層から支持を集めているわけだ。
プラットフォームは、「SUBARU GLOBAL PLATFORM(SGP)」を踏襲しつつもフルインナーフレームの採用。構造用接着剤の拡大(8mから27m)、シート直付/スポットタイプナットの採用、ルーフの高減衰マスチック(ルーフ振動抑制)など、走りのクオリティアップに利くメニューを用意した。
また、NVHの中でも騒音面の対策を念入りに施している印象だ。ストロングハイブリッド車、ターボ車共通のメニューとして、フロアマットの素材見直し、最適化。トランクアクスル、CVTの剛性アップ、フェンダーアッパー部の吸音材追加、フロントドアガラスの板厚アップなど。
ストロングハイブリッド(S:HEV)の静粛性や乗り心地は期待以上

モーター走行の領域が拡大し、明らかに静かになったストロングハイブリッド(S:HEV)の対策は、フードインシュレータの拡大、リヤアンダーカバーの吸音材化、トンネルインシュレータの面積アップなど、多岐にわたっている。S:HEVは、EV度合いが増したことで静粛性が高まった反面、モーター音が相対的に気になってしまうというジレンマに対策を施したわけだ。
「ヒューン」というインバータ由来の音は伝わっては来るものの、気になるレベルではなく、十分に静かといえるレベルにある。試乗時は、雨天だったが、旧型と乗り比べるとウェット時の「シャー」といったロードノイズ(パターンノイズ)も低く抑えられている。

とくにS:HEVは、100km/hくらいまでの加速時も静かさが続き、良くも悪くも勇ましいエンジン音、エキゾーストノートを奏でる直噴ターボ車との大きな差だ。たとえば、小さな子どもがいて後席に座る機会(寝る機会)が多いのなら、静粛性の面からもS:HEVを指名してもいいだろう。
S:HEVのストロングハイブリッドシステムは、クロストレックのS:HEVとまったく同じ。2.5L水平対向4気筒エンジンによる118kW(160PS)/5600rpmの最高出力、209Nm/4000-4400rpmの最大トルク、モーターの88kW(119.6PS)、270Nmのスペック、63Lの燃料タンクまで同値だ。
2.0Lマイルドハイブリッドがないワケ

クロストレックにある2.0Lエンジン+モーターのマイルドハイブリッドがフォレスターでは見送られた。同じ「Premium S:HEV」系グレードの比較では、フォレスターの方が90kgほど重く、重量のあるフォレスターでマイルドハイブリッドだと、動力性能や燃費性能の面で厳しいという判断があったようだ。
フォレスターとクロストレックのS:HEVは、既述のようにスペック上はまったく同じだが、走り出しのフィーリングなどで、数値に表れないレベルでの極めて細かい専用チューニングが盛り込まれているという。
加えて、先代と新型の重量差(70kg以上)、クロストレックとフォレスターの車格の違い(マーケティング戦略の面から)も含めて2.0Lマイルドハイブリッドの採用が見送られた。ただし、開発時には2.0Lマイルドハイブリッドの採用も検討したそう。

新型フォレスターのストロングハイブリッドは、クロストレックS:HEVよりも90kg重いものの、試乗ステージとなったミニサーキットの袖ケ浦フォレストレースウェイで走らせる限り、当然ながら体感上大きな差はない。当初からこうした重量差を見越した開発がされているという。
過給が始まると怒濤の加速を引き出せるターボと比べると、全開時の速さはターボ車ほどは強烈ではないものの、常識的な速度域では常にモーターの加勢があり、減速から加速に移るシーンなどでもモーターが利いていて走らせやすい。実際の郊外路や山道、低〜中速域が多い都市高速などでもスムーズな加減速が得られるはず。さらに、エンジンとモーターの仕事ぶりは、頻繁に切り替わり、アクセルを離すと即座にコースティング、回生が行われる。コースティング時は当然静かさが増す。
相変わらずの速さを披露する直噴ターボ「DIT」

一方の1.8L直噴ターボ「DIT」は、最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm/1600-3600rpmというアウトプットで、こちらは先代のターボと変わっていない。先代よりも約70kg増えたが、過給後の力強い加速、高速域のパン力ともに健在で、ターボ車を指名買いする層の期待を裏切ることはないだろう。
乗り心地やハンドリングともに洗練されている。乗り心地は、先代よりも若干ソフトになり快適性を高めつつ、コーナーでの踏ん張り感も明らかに高まった。2ピニオン化された電動パワステは、すっきり感が増し、低速域から高速域まで違和感を抱かせない。逆にいうと、旧型と乗り比べると軽く感じるため、手応えが欲しい層には物足りなく感じるかもしれないが、フリクションを抱かせることなく洗練されている。

もちろん、グレードによりタイヤサイズが異なるため、乗り味は異なる。タイヤは全車オールシーズンで、S:HEVの「Premium」系は235/50R19(試乗車はブリヂストン・トランザEL450)。「X-BREAK」系、そしてターボ車の「SPORT」は、225/55R18サイズ(試乗車はファルケン・ジークスZE001A/AS)を装着する。
19インチ装着車は、低速域の当たりはそれなりにあるものの、「SPORT」よりも上質感があり、中速から高速域ではフラットライド感が印象的で、オーバースペック感を抱かせないのが美点となっている。走り全般にわたって上質さを磨きあげた新型フォレスターは、レガシィ・アウトバックに変わる日本向け最上級SUVにふさわしい進化を披露してくれる。