前期型オーナーが「最初からこれで出してよ〜」と言いたくなった最新フォルクスワーゲン・ゴルフの改良メニューとは?

フォルクスワーゲン・ゴルフの8代目、そのマイナーチェンジモデルとなる通称「ゴルフ8.5」が今年の1月から日本で販売中だ。いわゆる前期型(ゴルフ8)のオーナーである私は、ちょっと悔しい。今でも愛車とのドライブは楽しいひと時だが、一度ゴルフ8.5に乗ってしまうと、「新しいクルマっていいなぁ」という思いが頭から離れない。というのも、マイナーチェンジで色々気になっていたところの多くが解消されているのだ。ちょっとジェラシーを抱きながら、その改良点をご紹介していこう!

エクステリアをブラッシュアップ&最新インフォテインメントを搭載

モーターファン.jpの編集部員である私の愛車は、フォルクスワーゲン・ゴルフ。2021年に日本に上陸を果たした、ゴルフ8と呼ばれる現行型ゴルフだ。いや、「現行型だった」と言わなければならないだろう。というのも、ゴルフは2024年にマイナーチェンジを実施して、いわゆるゴルフ8.5に進化したから。その最新モデルが日本でも2025年1月から出荷が開始され、街中でもその姿を見かける機会が徐々に増えてきている。

写真の試乗車は2.0Lディーゼルターボを搭載したゴルフTDI Rライン。価格は475万3000円。

果たして、ゴルフ8.5にはどのような改良が加えられているのだろうか。旧型(涙)になってしまったゴルフ8のオーナー(←私)が、悔し涙を堪えながら厳しく(⁉︎)チェックしてみたいと思う。

エクステリア:LEDマトリックスライトは見た目も中身もブラッシュアップ

ボディサイズはゴルフ8.5になっても変更はない。全長4295mm×全幅1790mm×全高1470mm、ホイールベースは2620mm。

まずは外観からチェックしてみよう。ゴルフ8.5では、フロントマスクがより精悍になった印象を受ける。その大きな要因はヘッドランプで、下端の形状が直線状になったことで、8代目ゴルフの特徴であるスリムなフロントグリルとの一体感もより強まっている。

そしてこのヘッドライト、ただ形状が変わっただけではない。フォオルクスワーゲンが言うところのIQライト、いわゆるLEDマトリックスライトの最大照射距離が100mから500mへと大幅に伸びているのだ。

ヘッドライト消灯時。
ロービーム点灯時。
ハイビーム点灯時。

私の愛車であるゴルフ8にもIQライトが装着されているのだが、街灯が少ない郊外路や山道を走る際は、大変重宝している。基本はハイビームで前方を遠くまで照らしつつ、前走車や対向車を感知すると、眩しくないようにその部分だけライトが当たらないように照射範囲を細かく調整してくれるのだ。ゴルフ8.5ではそれがさらに進化しており、より遠方まで照らしてくれるようになったのが羨ましい。

そして、ゴルフ8.5のフロントマスクと言えば、「VW」のエンブレムがイルミネーションで光るようになったのも話題となっている。現行型のパサートやティグアンでも同様のギミックが装備されており、他メーカーでも採用が増えつつあるギミックだ。最初は「エンブレムが光っても、運転している自分からは見えないから関係ないでしょ」とはすに構えていたものの、実車を見てみると、なかなかスタイリッシュで似合っているではないか! 「やっぱり光っているとカッコいいな…」と思ってしまった単純な私なのでした。

「e TSIアクティブアドバンス」以上のグレードではVWエンブレムが点灯する。
テールライトの点灯パターンも新しくなり、より先進的な印象を受ける。
「Rライン」系とGTIはルーフがブラックになった。

インテリア:中央のタッチディスプレイは10インチから12.9インチへ

ゴルフ8.5では、インテリアも大きく変化した。エクステリアよりも、こちらの方が実用上でのユーザーメリットは大きい。

12.9インチの大型タッチディスプレイが目玉のインパネ。

車内に乗り込んでまず目につくのは、中央上部のタッチディスプレイだ。サイズは12.9インチに大型化され、格段に見やすくなっている。これは「MIB4」と呼ばれる新世代のインフォテインメントシステムで、処理能力も大幅に向上。最新のスマートフォンのようにサクサクとした操作が行えるようになった。

また、運転席前のデジタルメータークラスターやヘッドアップディスプレイに表示される情報も増えた上に、色使いが洗練されてより見やすくなっているのも好印象。また、ゴルフ8ではなぜかトリップメーター(区間走行距離計)が備わっていなかったのだが、ゴルフ8.5ではしっかりと装備されているなど、細かいところでも使い勝手が良くなっている印象だ。

10.25インチのデジタルメータークラスターは全グレードに標準装備。
こちらはゴルフ8のメーター。ゴルフ8.5と比べると表示項目が少なく、色使いもちょっとバタくさい。

インフォテインメント:ユーザー目線の改良多数で使いやすさは段違い

さて、ゴルフ8が登場した際、大きな議論の的となったのが、室内のデジタル化だ。物理スイッチを極力排して、多くの操作をタッチディスプレイに集約することで、すっきりとクリーンなインパネを実現した。ところが、その変化がドラスティックだったため、「コンパクトカーのメートル原器たるゴルフが、操作性を蔑ろにして物理スイッチを無くしてしまうのはいかがなものか云々」と、物議を醸すこととなったのだ。

我が愛車であるゴルフ8のインパネ。最近は他車もどんどん物理スイッチが減ってきているが、ゴルフ8がデビューした3年前は非常に先進的で議論の的となった。

実際に約3年、オーナーとしてゴルフと付き合った経験から言うと、物理スイッチがなくなったことの弊害はあまり感じなかった。使用頻度の多いエアコンの温度調整に関しては、タッチディスプレイ下部のタッチスライダーでササッと操作が可能。また、エアコンの操作画面を呼び出すスイッチも設けられており、風量や風向きの調整も「スイッチを操作して画面呼び出し」→「タッチパネルを操作」のツータッチで可能だからだ。

とはいえ、ナビ画面を開いている状態でオーディオを操作しようと思った際は、いちいちメニュー画面に戻らなければならなかったりと、手間がかかる操作があったのも事実である。ゴルフ8.5でうれしいのは、画面サイズが大きくなったことに合わせてメニュー構造も一新されたこと。上下の帯にはショートカットキーを配置することができるようになって、オーディオの操作画面などに一発でジャンプできたり、エアコンの設定状況が常時表示されたりと、使い勝手が大幅に向上しているのだ。

また、エアコンの温度調整用のタッチスライダーにも照明が内蔵され、夜間でも目を凝らすことなく操作ができるようになったのも、地味にうれしい。

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地図画面。やっぱり画面が大きいと見やすい!

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メニュー表示画面。アイコンの順番は変更することもできる。

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エアコン操作画面。

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エアコンの設定は、直感的にわかりやすいメニューも用意されている。

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車両の設定画面。

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ドライバーアシスト系操作の設定画面。

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ドライビングモードやライトなどの設定画面。

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エコモード。

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コンフォートモード。

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スモーツモード。

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ステアリングやエンジンなどを個別に設定できるカスタムモード。
ゴルフ8のタッチディスプレイ。画面の下にエアコンの温度調整などを操作するためのタッチスライダーがあるのだが…。
バックライトが備わらないため、夜間やトンネルなどの走行時は暗くて操作できなかった。

ゴルフ8では上級グレードのステアリングスイッチがタッチ式だったのだが、ゴルフ8.5では物理スイッチに変更された。見た目は確かにタッチ式の方がスッキリはしているのだが、ふとした弾みで意図せず触ってしまって誤作動することもあった。さすがにこれはやりすぎだったということだろうか、ゴルフ8.5では虚を捨てて実を取る改良を実施したというわけだ。かの発明王・エジソンが残した「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」という名言を思い出す今日この頃だ。

また、MIB4ではボイスコントロール機能にも対応しており、エアコンやオーディオ、ナビなど多くの操作を音声で行えるようになったのも、使い勝手の面では助けとなっている。

ステアリングスイッチが物理ボタンに回帰した(ゴルフRを除く)。
ボイスコントロールは「Hello,IDA(ハロー・アイダ)」または「Hello,Volkswagen(ハロー・フォルクスワーゲン)」で起動。温度やオーディオなどのコントロールが音声でできる。
「お腹が空いた」と言えば、近くのお食事処も案内可能。ただ、目的地検索は施設名ではなく住所を指定しなければならい点は注意が必要だ。

というわけで、インフォテインメント系で大幅な進化を果たしたゴルフ8.5。ゴルフ8も慣れてしまえば…という面が大きかったとは思うのだが、「操作系が心配」と考えて購入を躊躇っていた人は、ゴルフ8.5になって不安なく購入できるのではないだろうか。

ゴルフ8.5では、装備の充実ぶりもうらやましい。シートヒーターは全車に標準。さらに、ステアリングヒーターも全車に標準で装備されるほか、頭上から車両の周囲を見下ろしたような画面を表示できるアラウンドビューも新設定された。アラウンドビューはなければないで何とかなるものの、最近は軽自動車にも普及しつつある装備だし、狭い場所に駐車する際などあれば助かるのは間違いない。こうした便利な装備の拡充も、ゴルフ購入のハードルを下げてくれる一助になるはずだ。

「Rライン」系は専用ファブリック&マイクロフリースシートが標準。写真のレザーシートはオプション。
後席は決して広大ではないが、大人がしっかりと座れる空間が確保されている。
「レザーシートパッケージ」を装着すると、シート調整が電動式になる。
「Rライン」系で「テクノロジーパッケージ」を追加すると、アラウンドビューカメラも利用可能に。
荷室の容量は通常時で380L、後席の背もたれを格納すると1237Lまで拡大される。

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通常時の荷室。

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後席(片側)背もたれ格納時の荷室。

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後席(両側)背もたれ格納時の荷室。

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床下にはスペアタイヤが収まっている。

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ラゲッジボードを持ち上げた状態をキープできるストッパー。地味だけどうれしい装備だ。

パワートレイン:力強さが頼もしく、省燃費がうれしい2.0Lディーゼルターボ

続いて、パワートレインをチェックしてみよう。ゴルフ8.5のグレードはガソリンが「eTSIアクティブベーシック」「eTSIアクティブ」「eTSIスタイル」、「eTSI Rライン」、ディーゼルが「TDIアクティブベーシック」「TDIアクティブアドバンス」「TDIスタイル」、「TDI Rライン」とそれぞれ4種類、さらにホットハッチモデルの「GTI」、ハイパフォーマンスな「R」が用意される。

まず試乗したのは2.0L直列4気筒ディーゼルターボを搭載する「TDI Rライン」だ。ゴルフ8に搭載される際に大きな改良が行われ、アドブルー(尿素水)の噴射を2か所に増やすことで排気ガスに含まれるNOxの浄化性能を向上。これによりエンジンマッピングをより攻めた設定とし、最大トルクとドライバビリティが大幅にアップしたという謳い文句のエンジンだ。ゴルフ8.5になっても150PS/360Nmという最高出力/最大トルクに変更はないが、WLTCモード燃費は20.1km/Lから20.8km/Lへと少しだけ向上している。

実は私がゴルフ8.0を購入した際、本当に欲しかったグレードはこの「TDI Rライン」だった。3年前にディーラーで試乗した際に感激した、ディーゼルならではの大トルクによるゆとりの走りはゴルフ8.5でももちろん健在。豊昇龍が町内の相撲大会でちびっ子に胸を貸してあげているかのような、余裕綽々の様子で山道もグイグイ登っていく。当時は導入直後のディーゼルモデルの人気が高く「納期が未定」と言われたため購入を諦めたのだが、やっぱりいいなぁ、と初恋の同級生に再会したかのような気分になってしまった。

TDI系にはデュアルAdBlue噴射機構「ツインドージングシステム」を備える2.0L直列4気筒ディーゼルターボを搭載。最高出力は150PS、最大トルクは360Nm。
軽油の給油口の隣にAdBlueの補充口が設けられている。
「Rライン」系は新デザインの18インチ・アルミホイールを履く。タイヤサイズは225/40R18。

パワートレイン:ベーシックグレードも1.5L直4ターボ+マイルドハイブリッドに統一

続いて、ガソリンモデルの方をチェックしてみよう。ゴルフ8では、ベーシックな「e TSIアクティブ」系に1.0L3気筒ターボ(110PS/200Nm)+48Vマイルドハイブリッド、中間グレードの「e TSI Style」とスポーティなルックスの「e TSI Rライン」に1.5L4気筒ターボ(150PS/250Nm)+48Vマイルドハイブリッドを搭載していた(GTIとRは除く)。それがゴルフ8.5では1.0L3気筒ターボが廃止され、「e TSIアクティブ」系にも1.5L4気筒ターボ(の出力違い)が搭載されるようになったのだ。

エンジンが1.0L直3ターボから1.5L直4ターボに変更されたゴルフe TSIアクティブ。価格は379万9000円。

私の愛車であるゴルフ8は、この姿を消してしまった1.0L3気筒ターボを搭載している。「ゴルフに排気量1.0Lのエンジン? それも3気筒?」と買う前は力不足を懸念していたものの、これがなかなかの実力の持ち主なのだ。軽自動車の自然吸気エンジン並みのトルクを発生するモーターのサポートのおかげで、110PS/200Nmというスペックから想像する以上に活発に走ってくれる。

確かに高速道路の合流などアクセルを全開にして加速するような場面では、「もうちょっとパワーがあれば…」と思う場面がないわけではないが、街中〜高速といった一般道を普通に走行するのには十分以上の実力。信号待ちからの発進では、モーターアシストが効いて俊敏なスタートダッシュを決めることも可能。さらに高速では20km/L以上、街中でも15km/Lをコンスタントに叩き出す省燃費性能や、自動車税の安さ(2万5000円/年)もあって、今となっては大のお気に入りなエンジンである。

マイナーチェンジ前のゴルフ8 e TSIアクティブ。上のゴルフ8.5と比べると、ライトやバンパー形状が異なるのがわかる。
ゴルフ8.5のラインナップから姿を消してしまった(涙)、1.0L直3ターボ+48Vマイルドハイブリッド。

では、それにとって変わった1.5L 4気筒ターボ(の出力の低い方)の実力はどれほどのものなのか。これが、やっぱりいいのである。スペックは116PS/220Nmなので、1.0L3気筒ターボと比べると6PS/20Nm増に過ぎない。しかし、0.5Lの排気量のおかげなのだろうか、加速に小さじ一杯分のゆとりが感じられる。また、4気筒の方がアクセルをグッと踏み込んだときの吹け上がりもスムーズさが感じられて、運転していて気持ちが良い。1.0L3気筒ターボは実用の鏡と言えるエンジンだが、1.5L4気筒ターボのはそれに余裕と滑らかさがほんのりと加味された印象だ。

なお、1.5L4気筒ターボには気筒休止機能が搭載されており、高速巡行時などパワーが不要な場合は2気筒を休止して燃料消費を節約する。そのアクティブ・シリンダー・マネジメントもゴルフ8.5では「プラス」に進化。ゴルフ8では2番と3番のシリンダーが休止するようになっていたのだが、改良によって休止するシリンダーの位置を変化させることが可能となり、2気筒用に最適化されたカムプロフィールに切り替わる仕組みが採用された。それにより、2気筒走行時のギクシャク感が解消されたという。実際に試乗してみると、ギクシャク感どころか気筒休止がいつ作動しているかも気づかないほどのウルトラスムーズさだ。

ACT(アクティブ・シリンダー・マネジメント)の切り替えもスムーズで、まったくドライバーを煩わせない。やっぱり、新しいクルマはいいなぁ…。

48Vマイルドハイブリッドの要でもあるBSG(ベルト・スターター・ジェネレーター)も進化している。水冷式となり、最高出力も13PSから19PSへ向上(ただし最大トルクは62Nmから56Nmへダウン)。また、スターターモーターを廃止して、冷間始動の際にもBSGを用いることになった。それにより、スターターモーターのキュルキュル音とは無縁になったというわけだ。また、リチウムイオンバッテリーの容量も従来の250Whから704Whに大容量化されている。

ちなみに、ゴルフ8の1.0L直列3気筒ターボの「e TSIアクティブ」系は足周りも差別化されており、他グレードがリヤにマルチリンクを採用していたのに対して、唯一トーションビームとなっていた。ゴルフ8.5では1.5L直列4気筒に統一されたが、リヤサスペンションの形式はそのままで、「e TSIアクティブ」系はトーションビーム式となる。

トーションビームが廉価版で乗り心地がしょぼいのかというと、そんなことはない。「e TSIアクティブ」のタイヤは205/55R16サイズで扁平率が高く、エアボリュームにも余裕があるおかげか、乗り心地も穏やか。その好印象はゴルフ8.5になっても変わっていなかった。

「e TSIアクティブ」の16インチ・アルミホイール。デザインはゴルフ8と共通だ。

そんな中、ちょっと気になったのがブレーキのフィーリングだ。ブレーキペダルを一定の踏力で操作しようと思っていても、たまに減速Gが安定しないときがあるのである。ディーゼルエンジンを搭載してマイルドハイブリッド機構が備わらないTDIグレードではそうした違和感は皆無で、48Vマイルドハイブリッドを採用しているモデルでたまに感じられる癖なのだが、これはゴルフ8.5になっても同様だったのがちょっと残念ではある。

とはいえ、ゴルフ8からゴルフ8.5となってしっかりと「0.5」分の進化を果たしていることが確認できた。扱いやすいサイズ、しっかりとした走り、良好な燃費と、コンパクトカーのあるべき姿を体現する存在であるのは間違いない。ゴルフ8のオーナーとしては、「最初からこれで出してくれていれば…!」と、ちょっぴり(かなり!?)悔しい気がしているのは、否定できない事実である。

左がゴルフ8.5(TDI Rライン)、右がゴルフ8(e TSIアクティブ)。
フォルクスワーゲン・ゴルフ TDI R-Line
全長×全幅×全高:4295mm×1790mm×1475mm
ホイールベース:2670mm
車重:1430kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
エンジン型式:DXR型
排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0mm×95.5mm
圧縮比:16.0
最高出力:150ps(110kW)/3000-4200rpm
最大トルク:360Nm/1600-2750rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:軽油
燃料タンク容量:51L

トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FF
WLTCモード燃費:20.8km/L
 市街地モード 14.8km/L
 郊外モード 21.2km/L
 高速道路モード 24.8km/L
車両価格:475万3000円
試乗車はDiscoverパッケージ:17万6000円、テクノロジーパッケージ:20万9000円を装着

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著者プロフィール

長野 達郎 近影

長野 達郎

1975年生まれ。小学生の頃、兄が購入していた『カーグラフィック』誌の影響により、クルマへの興味が芽生…