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■ハードトップブームにカローラも応えたカローラセレス
1992(平成4)年5月18日、トヨタ「カローラ」の派生車として4ドアハードトップの「カローラセレス」がデビューした。1980年代後半に絶頂期を迎えたバブル期に一世を風靡したハードトップのスポーティな高級車“ハイソカー”の勢いは、大衆車のカローラにも波及してスタイリッシュな4ドアハードトップが設定されたのだ。


カローラセレスのベースとなった7代目カローラ
1966年に誕生した「カローラ」は、1990年8月に世界累計1500万台を達成して、大衆車No.1の地位を確固たるものにしていた。1991年にデビューした7代目カローラは、バブル絶好調期に開発され、歴代の中でも最も贅沢なカローラだった。

7代目カローラは、4ドアセダンと2ドアクーペのレビンが用意され、スタイリングは張りのある曲面で構成されたラウンディッシュなフォルムで、塗装などボディの仕上げは大衆車とは思えない出来栄えだった。インテリアについても、インパネは豪華な大型メータークラスターが配置され、大きな厚みのあるシートによって快適な乗り心地も実現された。
パワートレインは、最高出力160psのスポーツ仕様と標準仕様115psの1.6L直4DOHC、105psの1.5L直4 DOHC、100psの1.3L直4 DOHCの4種エンジンと5速MTおよび3速/4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFと4WDが選べた。
一方レビンには、トップグレード170psの1.6L直4 DOHCスーパーチャージャーを筆頭に、115ps、105psの1.5L直4 DOHC105psのエンジンがラインナップされ、5速MTと4速ATのトラスミッションが組み合わされた。
カローラは、80点主義のクルマとして有名だが、バブル期に開発された7代目については100点主義だったかもしれない。
大衆車を代表するカローラにも4ドアハードトップ登場
7代目カローラが誕生した11ヶ月後の1992年5月のこの日、カローラの派生車としてスタイリッシュな4ドアハードトップ「カローラセレス」がデビューした。同時に兄弟車スプリンターには、同様に「スプリンターマリノ」が設定されたが、両車の違いはフロントマスクとリアコンビランプの形状ぐらいである。

日本は、1980年代後半に前例のないバブル絶頂期を迎え、市場ではハードトップのスポーティな高級車“ハイソカーブーム”が起こり、このブームは大衆車にも波及しカローラにも当時流行のハードトップが採用されたのだ。

カローラセレスの全長は、セダンより100mm長く、車高は70mm低い1315mmの流麗なピラードハードトップスタイル。また、フォグランプ一体式のヘッドランプとリアには低くてスリムなテールエンドでスポーティさが演出された。

パワートレインは、最高出力160psの1.6L直4 DOHC、115psの1.6L直4 DOHC、105psの1.5L直 DOHCの3種エンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせ、駆動方式は全車FFである。

車両価格は、1.5Lエンジンの標準グレードで129万円。当時の大卒初任給は、18万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約165万円に相当する。スプリンターマリノも同額に設定された。
スタイリッシュなカローラセレスだったが、バブル崩壊でハイソカーブームが去り、RV人気に押されたこともあり、スプリンターマリノとともに1998年6月に生産を終了した。
あれだけ人気だったハードトップが消えた理由
1965年に「トヨペットコロナ」が、日本車初となるハードトップを採用して人気を集めたことから、その後は各車にハードトップモデルが設定されるようになった。そして1980年代には、トヨタの「マークII」に代表されるハイソカーブームが巻き起こり、ハードトップ人気は絶頂期を迎えた。
しかし、セダン人気の低迷もあるが、ハードトップモデルは1990年代半ばには姿を消してしまった。いったい、なぜだろうか。
最大の理由は、1993年に「道路運送車両の保安基準」が改訂され、1994年以降の新型車には前面衝突試験が義務付けられたことが上げられる。この頃から、トヨタのGOAに代表される衝突安全ボディが各メーカーで開発されたのは、この保安基準改定に対応するためである。

ハードトップは、Bピラーがない(ピラーレスハードトップ)と、カローラセレスのようにBピラーがあっても窓枠がなくしてBピラーがないように見える(ピラード、サッシュレスハードトップ)の2種があるが、いずれも剛性が低くなり、衝突安全性が劣ってしまう。ボディ強度を上げるために補強すると、重量とコストが上がり、競争力が低下してしまう。
これが、ハードトップが消えた主要な理由である。

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バブル崩壊時期と発売時期が重なったカローラセレスは、デビューのタイミングが悪かった。もしも5年前に登場していれば、カローラらしからぬスタイリッシュなカローラとして、その名を残したかもしれない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。