レクサスのカーボンウイングは『エアレースX』から生まれた!? 航空機の技術が導入されているレクサスのクルマとパーツとは……

2025年4月29日(火・祝)、ふくしまスカイパークで「エアレースX」の第1戦が開催された。2023年のプレイベントを経て2024年からスタートした"空のモータースポーツ"であるエアレースXだが、チャンピオンである室屋義秀選手を擁するLEXUS PATHFINDER AIR RACINGには、その名の通り自動車ブランドとしてお馴染みの「レクサス」が深く関わっている。レクサスはエアレースXで何をやっているのか?
PHOTO&REPORT:MotorFan.jp/LEXUS
エアレースX第1戦の様子はこちら。

レクサスはパーソナルスポンサーからテクニカルコーディネーターへ

レクサスといえば今や高級乗用車ブランドして定着している。さらに、クルマだけでなく高級ヨットもリリースしており、陸に海に展開している。

レクサスのラグジュアリーヨット「LY680」。

そして、エアレースXにおいてはLEXUS PATHFINDER AIR RACINGとしてレース機の開発にも携わっており、市販モデルではないものの陸海空と制覇する勢いだ。

室屋選手がエアレースXで駆るLEXUS PATHFINDER AIR RACINGの「エッジ540V3」。

室屋選手とレクサスの関係は2016年に遡る。戦い続ける姿勢や精神が人々に勇気を与えるエアレースパイロットの室屋選手への共感からパーソナルスポンサー契約を締結。2017年には航空機と自動車の両領域において新しい技術の可能性を模索する「技術交流会」へと進化した。

2021年には室屋選手とレクサスによりLEXUS PATHFINDER AIR RACINGが発足。「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を念頭に、空力や冷却などの「レース機の技術」を活用した車両の新技術開発に加え、乗員のアシストといった「車両の技術」を随所に活用したレース機の開発などにチームと共同で取り組んでいる。

2021年10月、レクサスは室屋選手が代表を務める株式会社パスファインダーとチームパートナーシップ契約を締結した。

クルマの技術をエアレースへ・エアレースの技術をクルマへ

レクサスのクルマづくりの技術がエアレースXに活かされている分野のひとつがコックピットまわりにある。航空機のコックピットでは最新鋭機においては各種アナログメーターをディスプレイ表示に置き換える「グラスコックピット化」が進んでいる。

イギリス空軍のタイフーン戦闘機のコックピットとテスト中の新型ヘルメット。(PHOTO:BAE SYSTEMS)

エアレースXでは飛行中の最大Gフォースは安全のためにルールで12G(4G〜6Gと言われるF1のコーナーリングGの2倍)までに制限されているとはいえ、これは人間が耐えられるかなりギリギリのライン。そのような過大なGがかかる状況においては、パイロットの視界や意識は通常状態からかなり減退することになるのだが、その状態でコックピットにズラリと並ぶアナログメーターを全て正確に読み取るのは難しい。

会場に展示されていたエアレース機のコックピット部分。
インストゥルメントパネル一面に並ぶアナログメーターとスイッチ類。
メーターや各種インターフェースの解説。

そこで、LEXUS PATHFINDER AIR RACINGではコックピットを液晶ディスプレイ化。さらにヘッドアップディスプレイに室屋選手が必要とする情報を絞って投影することで、的確なフライトを助けている。

上のアナログメーター仕様と比べると極めてシンプルにまとめられた室屋選手機のコックピット。左に貼ってある黄色い紙は第1戦のコースだ。
ヘッドアップディスプレイは曲面のキャノピーに正確に見やすく表示するため試行錯誤を重ねた。

これらは全てレクサスがこれまで培ってきた人間工学やマンマシンインターフェースの技術が投入されている。そして、エアレースXで開発された技術がまた、レクサスのクルマづくりにも反映されていくことになるわけだ。

レクサスブースに展示されたRZ450eとカーボンパーツ

レクサスは2020年10月にレクサスLCに大空を舞う鳥や航空機に着想を得た特別仕様車「AVIATION」を発表。2021年1月に国内70台限定発売した。これは室屋選手との技術交流から生まれたウィングなどの専用装備を採用したモデルだ。

レクサスLC”AVIATION”
レクサスLC”AVIATION”と室屋選手。
レクサスLC”AVIATION”とレース機「エッジ540V3」。
また、2023年には”EDGE”の名を冠したレクサスLCの特別仕様車も発売している。

エアレースX第1戦の会場となったふくしまスカイパークにはレクサスもブース出展。2024年1月に発表した限定モデル、レクサスRZ450e“F SPORT Performance”を展示した。

レクサスブースとRZ450e“F SPORT Performance”。
RZ450eの詳細はこちらを参照。

RZ450e“F SPORT Performance”は室屋選手との技術交流から得られた知見を活かし、航空機に用いられている空力技術を応用したカーボンウイング、カーボンターニングベインなど17点の専用エアロパーツが採用されている。

RZ450e“F SPORT Performance”のカーボンウイング。

カーボンウイングはレクサスブースでパーツ単体でも展示しており、実際に触れることができた。ウイングはかなり大柄な部品ではあるのだが、片手で持ち上げられるほど軽い。それでいて、強度が必要な部分はハニカム構造とすることで軽さと強度を両立しているという。

RZ450e“F SPORT Performance”のカーボンウイングは大きさに比べて驚くほど軽い。

軽さと強度を両立するカーボンパーツについては、もちろんエアレースXのレース機開発知見が生かされている。レースだけに機体形状や空力についてはレギュレーションで厳しく制限されるものの、許される範囲で追求してきた空力的知見も同様だ。

もうひとつ、操縦桿も室屋選手とレクサスの技術交流がエアレースXとクルマに活かされている部分だ。レース機の操縦桿はGに耐えながら力を入れて操作する必要がある一方で、繊細な操作も求められる。それだけにフィッティングやタッチなどが極めて重要となる。
当初は室屋選手が樹脂を握って操作しやすい形状のモノを作っていたが、レクサスとの技術交流により、さらに精度の高いものへと進化した。

室屋選手とレクサスの技術交流が生かされている操縦桿。左が室屋選手が当初使っていた操縦桿で、右がレクサスとの共同開発で生まれた操縦桿。操縦桿を握る際に最も力が入るのが小指と薬指。そして最もインフォメーションを感じ取れるのが親指の下=母指球だという。

これには、レクサスの”匠”の技術が活かされているという。そしてこの操縦桿開発のノウハウはレクサス車のステアリングにも反映されている。握り心地が良く情報を的確にフィードバックし、適切な入力で確実な操作を行なうことができる……そんなレクサスのステアリングはエアレースX由来なのだ。

エアレースX会場のレクサスブース。ウイングのパーツ単体だけでなく、操縦桿やステアリングも展示され、実際に触ることでレクサスとエアレースの技術的繋がりを肌に感じることができた。

BREITLINGブースではVR体験も

また、航空機のパイロットと切っても切れない関係なのが航空時計=パイロットウォッチだ。エアレースXにおいても、LEXUS PATHFINDER AIR RACINGの室屋選手がブライトリングのパイロットウォッチを使用している。

LEXUS PATHFINDER AIR RACINGの室屋義秀選手。その左手に輝くのはブライトリングのパイロットウォッチ。

ふくしまスカイパークで開催されたエアレースX第1戦では、室屋選手のアクロバティック飛行が披露されたが、その際に搭乗した飛行機はブライトリングカラーに彩られていた。

ブライトリングカラーのアクロバット機「EXTRA330LX」。
アクロバット飛行を終えて滑走路に着陸した「EXTRA330LX」。

ブライトリングも会場にブースを設けており、同社の腕時計を展示したほか、室屋選手のフライトにフライト映像を楽しめるVRゴーグル体験も実施しており、来場者の大人も子供も楽しんでいた。

VRゴーグルで室屋選手のフライトを疑似体験。子供はもちろん、大人も夢中になっていた。

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