スポーティなトヨタ「カローラII」誕生! 若者ターゲットの3/5ハッチバックは82年登場【今日は何の日?5月19日】

トヨタ「カローラII」
トヨタ「カローラII」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日5月19日は、トヨタ「ターセル/コルサ」の派生車で、カローラの弟分に相当する「カローラII」が誕生した日だ。当時世界的に流行っていた2ボックスのハッチバックで、ファミリーカーのカローラに対して、カローラIIのターゲットは若者だった。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・トヨタ 新型ターセル/コルサ/カローラIIのすべて、AUTO SPORT、モーターファン イラストレーテッド

■2代目コルサ/ターセルの派生車として登場したカローラII

1982(昭和57)年5月19日、トヨタの2代目「ターセル/コルサ」の派生車でカローラの弟分に相当する「カローラII」がデビューした。カローラを名乗ったが、カローラとの共通点はなく、若者をターゲットにした2ボックスのハッチバックのみの設定だった。

トヨタ「カローラII」
1982年にデビューした「カローラII」

カローラIIのベースとなったターセル/コルサ

ターセル/コルサは、1978年8月にトヨタ初のFF車としてデビューした。1970年代、徐々にFF化が進む中で後れを取っていたトヨタが満を持して投入した初のFF車、しかもエンジンが横置きではなく縦置きという点がユニークだった。

ターセルとコルサは販売系列の異なる兄弟車で、違いはグリルなど細微な部分だけ。ハッチバックの3ドアと、セダンの2ドア/4ドアの3つのボディスタイルが用意され、「カローラ」と「スターレット」の中間の新しい大衆車という位置づけだった。

歴代ターセル/コルサ
歴代ターセル/コルサ

エンジンは、最高出力80psの1.5L直4 SOHCエンジンと4速ATおよび5速MTの組み合わせ。トヨタ初のFF車だが、エンジンは一般的な横置きでなく、エンジンを縦置きに搭載し、その下部にトランスミッションとファイナルギアを配置するレイアウトだった。エンジン縦置きを選択したのは、FRのカローラとのエンジンの共用化を優先させたためだが、結果として横置きに比べてメンテナンスが容易でトルクステアが少ないというメリットがあった。

ただし、若者や女性のエントリーモデルとして扱いやすいクルマという狙いがスターレットと被ったため、販売は期待したほど伸びなかった。

当時流行のFFハッチバックでデビューしたカローラII

トヨタ「カローラII」
1982年にデビューした「カローラII」

1982年5月のこの日デビューしたカローラIIは、ターセル/コルサがモデルチェンジして2代目に移行したタイミングでデビューした。ターセルが新設のビスタ店、コルサがトヨペット店、カローラIIはカローラ店という具合に棲み分けられたが、機構的には同じ3兄弟だった。

トヨタ「カローラII」
1982年にデビューした「カローラII」

ターセル/コルサにはセダンが設定されたが、カローラIIは特に若者を意識して3ドア/5ドアハッチバックのみを設定。当時は、ワーゲン「ゴルフ」やマツダ「ファミリア」のようなFFの2ボックススタイルが若者から人気を獲得していたのだ。

1982年に登場したカローラ
1982年に登場したカローラ。左からコルサ1500 4ドア ノッチバックEX、カローラII 1500 3ドア 八バックSR、ターセル1500 5ドア ハッチバックVE
2代目「コルサ」
1982年にデビューした2代目「コルサ」。カローラIIの兄弟車
2代目「ターセル」
1982年にデビューした2代目「ターセル」。カローラIIの兄弟車

カローラIIのスタイリングは、欧州車の雰囲気を持つシャープなラインで構成。横置きエンジンのFFレイアウトは小型車としては珍しかったが、ナチュラルなドライブフィーリングが楽しめ、高速安定性も優れていた。

AL20型搭載の3A-HU型エンジン
AL20型搭載の3A-HU型エンジン

パワートレインは、スポーツ仕様の最高出力86ps/最大トルク12.3kgmの1.5L直4 SOHC(可変ベンチュリーキャブ仕様)を筆頭に、83ps/12.0kgmの1.5L直4 SOHC、75ps/10.9kgmの1.3L直4 SOHCの3種エンジンと、4速/5速MTおよび3速ATの組み合わせ。

トヨタ「カローラII」
1982年にデビューした「カローラII」

車両価格は、3ドアハッチバックで標準グレード(1.3L)が76.9万円/スポーツ仕様のトップグレード(1.5L)は101.3万円(1.5L)。当時の大卒初任給は、11.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約154万円/203万円に相当する。

若々しさやスポーティさをアピールしたカローラII、特にツートンカラーを設定したスポーツグレードには、スポーツシートを用意するなどして若者の注目を集めることに成功した。

2代目のリトラ・GPターボが注目を集める

その後カローラIIは、カローラの弟分として多くの女性や若者中心に順調に人気を獲得しつつ4代目まで続いたが、1999年新世代コンパクトカー「ヴィッツ」の誕生によって、ターセル/コルサとともに生産を終了した。

カローラII リトラGPターボ(1988年車)
カローラII リトラGPターボ(1988年車)
カローラII リトラGPターボ(1988年車)
カローラII リトラGPターボ(1988年車)

その中で注目された1台を上げるとしたら、2代目に登場した「リトラ・GPターボ」だ。2代目は、1986年5月に2ボックス未来形を謳った“流星ライナー”のキャッチコピーでデビュー。シャープなラインとクリーンな面構成のスタイリングで、特にリトラクタブルヘッドライトを装備した「リトラ」は、流星ライナーと呼ぶに相応しい造形美だった。

カローラII リトラGPターボ(1988年車)
カローラII リトラGPターボ(1988年車)のインテリア

エンジンは、1.3Lと1.5L直4 SOHCが設定されたが、同年9月には1.5Lエンジンにインタークーラーターボを搭載した110ps/17.2kgmを発生する「リトラ・GPターボ」が登場して、多くの若者から熱狂的に支持された。

初代と2代目カローラII
初代と2代目カローラII

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カローラIIは、多くのカローラシリーズの中でも特に小型であり、道路の狭い都市部での運転や駐車がしやすいことから多くのファンに愛された。軽自動車では物足りないが、カローラよりちょっとだけ小さいクルマを求めるユーザーに、便利なクルマとして重宝されたのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…