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ギャラン3代目はサブネームΣを付けて登場
1976(昭和51)年5月20日、三菱自動車からギャランシリーズ3代目となる4ドアセダン「ギャランΣ」がデビューした。当時の国産車にはない欧州車風のデザインを取り入れ、それまでのやや地味なギャランからラグジュアリーなセダンへと変貌し、ギャランシリーズのなかで最大のヒットモデルとなった。

三菱自動車設立とともに中核モデルとなったギャラン
三菱重工時代には、「コルト」シリーズを展開して自動車メーカーとして着々と成長してきたが、1970年に重工から三菱自動車として分離独立すると、その役目は「ギャラン」に引き継がれた。初代「コルト・ギャラン」は、1969年にコルトより若いユーザーの獲得を狙って誕生した。

4ドアセダンのコルト・ギャランは、イタリアの巨匠ジウジアーロのデザインを、三菱の技術者が手直ししたロングノーズのスタイリッシュなスタイリングを採用。さらに、三菱初のSOHCエンジンの搭載などで、従来の三菱車の質実剛健的なイメージを一新した。
パワートレインは、最高出力87psを発揮する1.3L直4 SOHCと95pの1.5L直4 SOHCの2種エンジンと3速/4速MTおよび3速ATの組み合わせ。駆動方式は、従来通りFRだった。
コルト・ギャランは、スタイリッシュなデザインと俊敏な走りで人気を獲得し、三菱の中核モデルに成長した。
3代目はΣ(シグマ)のサブネームが付いて欧州車風に変貌
1972年には、ややボディが大きくなった2代目に移行。基本的にはキープコンセプトで車名からコルトが外れて「ギャラン(通称:ニューギャラン)」となった。

そして1976年5月のこの日、3代目となる「ギャランΣ」がデビューした。総和記号のΣを付けたのは、あらゆる意味での良さを集大成するという意味合いで採用されたとされている。

ギャランΣのスタイリングは、“セダンを変えた際立ったヨーロピアンスタイル”と謳われ、直線基調でフロントからリアにかけてスマートなラインで構成。2代目ギャランよりもさらにひと回り大きくなり、グラジュアリー路線へと舵を切った。インテリアも豪華に仕上げられ、上位グレードでは後席にリクライニング機構まで装備された。

エンジンは、最高出力92psの1.6L直4 SOHCのほかに、サイレントシャフトを備えた105psの1.85L直4 SOHC、トップグレードには、115ps/16.5kgmを発揮する2.0L直4 SOHCが搭載された。厳しい昭和53年排ガス規制には、サーマルリアクターとEGRを組み合わせたMCAシステムで対応した。

車両価格は、標準グレードが93.7万円(1.6L)/109.0万円(1.85L)/119.0万円(2.0L)。当時の大卒初任給が、9.0万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約239万円/279万円/304万円に相当する。

排ガス規制強化の中でデビューしたラグジュアリーなアッパーミドルセダンのギャランΣは、当時ライバルが不在だったこともあり、歴代ギャランシリーズのなかで最も売れたヒットモデルとなった。


ギャランΣをベースにした個性的なクーペのギャランΛ(ラムダ)もデビュー

ギャランΣの誕生の約半年後の同年11月には、ギャランΣをベースにしたクーペ「ギャランΛ(ラムダ)」がデビューした。落ち着いた雰囲気のセダンΣに対して、ギャランΛはセンターピラーレスの個性派2ドアクーペだった。

スラントノーズの流麗なサイドラインを組み合わせ、斜めに切り落とされた尖角ノーズに角型デュアルヘッドライト、ロールバールーフ、リアウインドウを側面まで広げたラップアラウンドリアウインドウなど、斬新なデザインを採用。インテリアについても、国産車初の1本スポーク式ステアリングやヘッドレスト内蔵リクライニング式フロントシート、後席シートもバケットタイプを装備するなど、近未来を感じさせる雰囲気を漂わせた。

パワートレインは、サイレントシャフト付の最高出力105psとツインキャブ仕様115psの2.0L直4 SOHCエンジンと、3速ATおよび5速MTの組み合わせ、駆動方式はFRである。

ギャランΛは、その斬新なスタイリングが若者から注目され順調に滑り出したが、排ガス規制から解放された1980年代に入ると各メーカーから続々と高性能スポーツが登場し、ギャランΛの存在は徐々に薄れてしまった。
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三菱自動車が設立された1970年以降は、重工の支援やクライスラーとの提携を背景に、「ギャランGTO」、「ギャランクーペFTO」、「ミニカスキッパー」、「ランサーGSR」、「ランサーセレステ」、「ミラージュ」と個性的なクルマを続々と市場に放った。今ではちょっと考えられない、三菱にとって良き時代だった。
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