2.0L直4ターボのフィールと軽さがいい

このところセダンの話題を耳にすることは少ないが、ちょっとした日常使いや、コーナーが多い所などでは背が低いクルマの方が落ち着く。SUVも目線の高さから、遠くまでよく見えて安心できるというのも確かだが、死角の少なさから言えばセダンのほうが気楽だ。ファミリー層にとってはサイズ的に無理でも、子育てが終わった世代には何かと使い勝手がいい。
そんな想いから絶滅危惧種と言われそうな数少ないセダンに乗ってみた。限定モデルとして投入されたレクサスIS300 F SPORTである。

Mode Black Ⅳとネーミングされているとおり、F SPORTをベースにブラック基調の鍛造ホイール、ドアミラーやウィンドウモールを採用。インテリアもステアリングをはじめブラックを基調とすることで、内外装ともにグッと引き締まった印象を受ける。第4弾となる今回のモデルには他にHEVモデルの350hにも用意されていて、価格はIS300の590万円に対し、635万円となる。
ソニックイリジウムと呼ばれるちょっと渋めのボディカラーながらも随所にブラックをあしらうことによって、抑揚のあるISのフォルムを一層際立たせてくれていて、もはや走りのセダン。アスリートのような躍動感をもつスポーツセダンに仕上がっている。


このIS300に積まれているパワーユニットも見逃せない。245ps/350Nmのスペックを持つ2.0L直4気筒ターボユニットは、純エンジンならではといえるコンパクトさからHEVモデル比で車重は50kg軽く、パワーフィールはもとより、走りの良さが魅力。

2015年以来ISに搭載されてきた8AR-FTSユニットは今となっては感動するほどのインパクトは薄いものの、ツインスクロールターボと連続可変バルブタイミング機構のVVT-iWの組み合わせによって、低中速域の扱いやすさは今も健在。8ATとの組み合わせによって、低い回転領域でリレーしていった時の加速感は途切れることなく、3.0L自然吸気ユニットレベル以上の粘り強さを持つ。
もっともアイドリングストップ機構を採用し、燃料消費量を抑えてくれてはいるものの、再始動時の振動はマルチシリンダーに比較して大きく、ブルッと来たり。燃費自体も大排気量車並で街中だと9km/Lあたりで推移。高速で3割増しと言ったところ。このあたりはやはり純ターボユニットのつらいところだ(モード燃費はWLTC12.2km/L、市街地8.8km/L 郊外12.0km/L 高速道路14.7km/L)。

その分、運動性能の高さはそれを補ってあまりある。パワーフィールは6000rpm強のレッドゾーンまでフラットなトルク感と伸びの良さがあって、扱いやすさと軽快さを味わえる。SPORTモード以上ではシフトアップを遅らせることで上まできっちりと使い切れるし、トルクのある領域を常にキープできることでメリハリのある走りが楽しめる。
電池やモーターを積んでいないことでフロントは軽く、ステアリングの手応えが大きく変化することなく、スーッとノーズが入っていってくれる。もちろん鍛造ホイールの効果も大きい。4輪で7kgほど軽量化できたことで、ゴツゴツするはずの前後異形サイズのタイヤにもかかわらず、足元の収まりが早く、操作に対するレスポンスもいい。

街中ではスイスイと自然な操舵で乗りこなせて、高速などでは高い路面追従性によって、正確で安定したハンドリングを味わえる。デビューから10年が経っていることで、新規格のTNGAシャシーは採用されていないものの、年時改良によってボディの強化や、トヨタで初めてハブボルトを採用するなどしていささかも見劣りすることはない。
むしろ磨きを掛け続けていることで、トヨタを代表するFRモデルとしての実力を身に沁みて感じ取ることができて、乗るたびに頷いてしまうことが多い。サイズ的にもパッケージング的にも使い勝手が良くて、スタイリッシュなその印象から、もはや子育て卒業世代向けだけでは惜しい。
レクサス自体SUVが主力となりつつあるが、GSなきあとのFRセダンの火を一日でも長く灯し続けてもらいたく、あらためてエールを贈りたい。

レクサスIS300 F SPORT Mode Black Ⅳ
全長×全幅×全高:4710mm×1840mm×1435mm
ホイールベース:2800mm
車重:1640kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rマルチリンク式
駆動方式:RWD
エンジン
形式:2.0L直列4気筒DOHCターボ
型式:8AR-FTS型
排気量:1998cc
ボア×ストローク:86.0mm×86.0mm
圧縮比:-
最高出力:245ps(180kW)/5200-5800pm
最大トルク:350Nm/1650-4400pm
燃料供給:D-4ST(筒内直接+ポート噴射)
燃料:プレミアム
燃料タンク:66L
燃費:WLTCモード12.2km/L
市街地モード:8.8km/L
郊外モード:12.0km/L
高速道路モード:14.7km/L
トランスミッション:8速AT
車両本体価格:590万円
オプション価格26万5100円(マークレビンソンプレミアムサラウンドサウンドシステム)