野村圭市が追走初進出! 困難な路面状況でダンロップ勢全員がポイント獲得【D1GP OKUIBUKI DRIFT】

「2025グランツーリスモD1GPシリーズ」が5月9、10日の週末に奥伊吹モーターパークで開幕した。土日の2日間で第1戦、第2戦が行われたが、2日とも朝まで雨が降り、路面がしだいに乾いていくという難しい状況で競技が行われた。しかし第1戦では野村圭市が、第2戦では石川隼也と松川和也が追走に進出。ダンロップ勢全員がポイントを獲得し、幸先のいいスタートを切った。

Photo:サンプロスD1事務局

広島トヨタ team DROO-PのHT DUNLOP 86(ドライバー:石川隼也)は今季からリヤに19インチタイヤを履く。4月のラウンドゼロに出走したが、その後リヤのサスペンションメンバーにクラックを発見したため、補強を施して開幕戦に登場した。

石川が乗るGR86は、おもに加速時のトラクション向上を狙ってリヤに19インチのSP SPORT MAXX GT600を履く。

また、同じく広島トヨタ team DROO-PのHT・DUNLOP・85(ドライバー:松川和也)は、パワーステアリングを変更してきた。昨年までは電動のパワステだったが、もどりの速度に十分追従してくれないということで、AE86の油圧式パワステのラックに変更し、電動の油圧ポンプを使用。しかし、ステアリングギアレシオがダルくなってしまったため、ステアリングシャフトに1.5倍の増速ギヤをかませてクイックにしてきた。通常のドリフト競技車両よりもかなりクイックなギヤ比なので、あるていど慣れを要することが予想された。

松川が乗るトレノは、電動から油圧のパワステに変えてきた。

そしてURAS RACINGのDUNLOP CUSCO SKYLINE(ドライバー:野村圭市)は、CUSCOカラーに変更されて登場。そして、リヤサスペンションはより動きをよくするためにアームの取り付け位置を変更し、それにセッティングも合わせてきた。またフロントのナックルは、2020年D1GPチャンピオンの小橋選手にクルマごと預けて製作してもらったものに変更してきた。これでクルマの動きはかなりよくなり、扱いやすくなったという。

野村のスカイラインはフロントのナックルを変更。ドリフトにおいては切れ角アップも含めてナックルのつくりが非常に重要になる。

土曜日に行われたD1GP第1戦。前日から続いた雨が朝まで残り、チェック走行は完全ウエット路面。しかし、単走決勝本番までに雨は止んだ。路面がしだいに乾いていく非常に難しいコンディションになることが予想されたが、路面コンディションの違いによる特性の変化が小さいダンロップタイヤは強い味方だ。なお、ウエットコンディションなので、全体での得点順位ではなく、4つに別れた走行グループの各上位4名が追走進出という選抜方法となる。

そして単走決勝本番。野村は、コースがまだらに乾き、グリップする路面と滑る路面が混在するもっとも難しい状況だったBグループで出走。通過指定ゾーンふたつを部分的に外してしまったものの、ヘアピンでの安定性などで高得点を稼ぎ、グループ4位で初の追走進出を決めた。Cグループ以降はかなり路面が乾いてきて点を出しやすいコンディションになった。その中で松川はまだステアリングのギヤ比に慣れられなかったこともあり、コースリミット超過などの減点もあってCグループ7位で単走敗退。トップ選手が集まってしまったDグループで出走した石川は渾身の振りを見せて1コーナーに飛び込んだが、ヘアピンでの安定性を欠き、惜しくもグループ5位で追走進出を逃した。

石川の1コーナー飛び込みの振りと角度はピカイチだったが、その先で点を落としてしまった。

追走トーナメント開始時にはもう路面はドライコンディションだった。野村は5組目に登場。対戦相手は昨年のチャンピオン中村直樹だ。1本目は中村が先行。野村はやや角度が浅めながら安定した姿勢で中村についていく。3.9点のアドバンテージを取った。しかし2本目後追いの中村は1コーナー進入から終始近いドリフトを決めて逆転。野村はベスト16敗退となり、順位は15位だった。

先行ではきれいに走りきった野村だったが、それだけに中村には接近ドリフトを決められた。

初のポイント獲得となった野村は「単走は超むずかしかったです。1コーナーはドライだったんですけど、でもちょっとビビるじゃないですか。ウエットみたいに滑ったらどうしようかな、って。でもDIREZZA β02を信じて思いっきりいったら、めっちゃ食って、1コーナー奥のゾーンに届かなかったくらいでした。その先は濡れてたんで慎重には行ったんですけど、慎重に行き過ぎると、また乾いたところでドリフトが戻されちゃうんで、まぁウエットで滑るといってもDIREZZA β02はけっこうグリップしてくれるんで、さぐりさぐりだったんですけど、うまくいきましたね。追走は最初から腹に入るつもりでいったんですけど、経験不足のせいでストレートのひとつ前のクランクのところで離されちゃいました。間髪入れずにもっと頭出るぐらいまでギュッといけばよかったなって反省しています」とのコメントだった。

去年は届きそうで届かなかった追走進出を、今年は開幕戦から実現した野村圭市。

翌日の日曜日に行われた第2戦。天気予報とは異なって朝しばらく雨が降り、チェック走行はウエット路面で行われた。そして前日同様に本番前には雨が上がり、路面がどんどん乾いていく状況で単走決勝が行われた。

広島トヨタ team DROO-Pの石川と松川は同じBグループに入ってしまっていた。通常なら厳しい組み合わせだが、この日は非常に幸運だった。各グループ内で前半・後半に分かれて走行するのだが、Bグループはそのあいだの路面コンディションの変化が大きく、石川、松川が走った後半のほうが圧倒的に有利になったのだ。石川は振り出しの躍動性、松川はコーナーでの角度で点を稼ぎ、ふたりとも追走進出を決めた。

チェック走行時にほかのグループの走行を見る広島トヨタ team DROO-Pの石川(左)と松川(右)。第2戦はそろって追走に進出した。

野村は単走決勝をCグループで出走。1本目にはクイックな振り出し、2本目にもコーナーでの大きな角度を見せたが、いずれも通過指定ゾーンを外したり、コースリミット超過による減点を受けてしまい追走進出はならなかった。野村は「失敗こそしたんですけど、いまままでとは違う攻めた走りができるようなクルマに仕上がってきました。今回雨だったりドライだったりしたんですけど、DIREZZA β02は雨でもグリップが高いので、ビビらずに攻めた走りができるのも助かりましたね。今回、初日は中村直樹さん……日本が誇るトップドライバーと追走ができて、完敗はしたんですけど、なんとなくついていけたし、次に向けての改善点も見つかってすごくいい経験できました。今日は今日で、ずっと雨だったところから本番出走前にけっこうガラッとセットとかも変えて、それがうまくはまったりとかしたので、セッティングする力も身に付いてきたし、いま小橋さんにいろいろ見てもらってるんで、それもけっこう大きいかなって思います。クルマのポテンシャルが上がって、タイヤの性能も去年より引き出せるようになってきたし、けっこうやりたいことができるような感じになってきたんで、今年は暴れられる自信があります」と話してくれた。

野村の走りは、距離感こそ合わなかったが、振りのアクションやそのあとの姿勢の安定感はよかった。

そして追走トーナメントは完全にドライ路面で行われた。まずは石川がシルビアに乗る和田と対戦。後追いでは進入で近い距離につけて1、2コーナーをまわったが、振り返しの際に少し遅れをとり、ヘアピンではやや流されてしまう。2本目は和田に終始近いドリフトを決められて敗れてしまった。

石川も後追いではいい走りを見せたが、寄せた距離や区間の差で和田に逆転された。

次に松川はGRスープラに乗る山中と対戦。1本目後追いの松川はヘアピンでラインが小さくなってコースをインカットしてしまい減点。山中にアドバンテージをとられてしまう。2本目にも松川はヘアピンで流されるミスをして、やはりベスト16で敗退となった。第2戦の順位は石川が12位、松川が13位だった。

山中と対戦した松川は、先行時後追い時ともに若干のミスをしてしまった。

広島トヨタ team DROO-Pの松岡監督は大会後こう語った。

「奥伊吹はこれまでクルマが壊れたり、ぶつかったりとかそんなのばっかりで鬼門だったんでね、今年はちょっとよかった。石川はこのタイヤにして初めて追走をやって、やりようはいくらでもあるなって思えた。

とにかく追走に残るっていうテーマはこのあともいい確率でクリアできそうな匂いは出てきたし、そうすれば本当にちょっとした勝負のあやとか、天気もそうだし、そういうのはいろいろ起きるわけだから、とにかくまずは追走に残ることが重要で、そのステージに来られたっていう感じはあるね。まぁ今回は結果的にニコニコして帰れる内容でした。

それから、昨日今日とだいぶ路面状況が変化する中で、タイヤは松川のβ02と石川のGT600で雨量が変わるなかでもいろいろ試せた。雨が薄いとGT600もいいんだけど、雨量が増えるともβ02ってやっぱりいいタイヤだなと。もちろん、ここはサーキットと比べるとグリップレベルがそもそも低い舗装での雨だから、一概に結論は出せないけど、β02の雨に対する戦闘力もすごい証明された。

ドライだとやっぱりGT600の19インチのうまみが確実にあるんだけど、今後たとえば天気予報が雨で、その雨量次第では石川車用の登録タイヤをβ02にするのもちょっと一つ視野に入れてもいいのかなっていうぐらいでした。そこが今週の収穫でした。

次は筑波で高速コースだから、様子見ながらだけど、できればGT600の20インチを試したいなと思ってます」

2台とも、今季の仕様変更の成果が確認でき、手応えを感じている広島トヨタ team DROO-Pの松岡監督。

次のラウンドはD1GPシリーズ屈指のロングコースである筑波サーキットだ。6月下旬、梅雨の期間の開催となりそうなので、ダンロップ勢には天候の変化にも強いDIREZZA β02とSP SPORT MAXXの性能をフルに発揮して活躍に期待したい。

キーワードで検索する

著者プロフィール

MotorFan編集部 近影

MotorFan編集部