たったこれだけでベテラン並みに! バック駐車・車庫入れを簡単、まっすぐに決めるコツは、視線移動とハンドル操作 【MFクルマなんでもラウンジ 】 No.16

苦手な人が多い、バックでの車庫入れ。
車庫入れや駐車場でのバックが苦手というひとがいる。
教習所でも習っているはずなのだが、忘れていたり、頭ではわかっていてもうまくできないなど、理由はひとそれぞれだと思う。
ここではあらためてバックでの車庫入れ操作について、写真とともにおさらいしていこう。

TEXT/PHOTO:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)

苦手なひとが多い、バック駐車の方法をあらためて考える

このところ新型車の記事やら初代セリカ11本連続解説などをし、気づいたらこの「MFクルマなんでもラウンジ」が2月以来お留守になっていた。
私にとっては自動車本体の記事が連続していたので、今回の「ラウンジ」はクルマそのものから離れたテーマでお送りする。
主題は「バック駐車の仕方」だ。

ただし、これはあくまでも経験に基づく私見でしかない。
もしよかったらご参考までに。

視線の先をどこに向けるか?

出かけた先の駐車場・・・スーパーやホームセンター、コンビニエンスストアなどで、白線内にクルマを入れるのに、そう狭くないのに何度も切り返しをしたり、動く間に小刻みにブレーキを踏んだりするひとがいる。

周囲のクルマを待たせた挙げ句の割には区画線に対して曲がっていたり、柱にスレッスレの位置に置いたままクルマから降りてしまったり・・・こういったドライバーやクルマの様子を観察していると、おおかた2つの共通点が挙げられるように思う。

1.視線の先が近すぎる
2.駐車操作のための車両移動量が小さい。

「視線が近い」というのは、無意識のうちにボンネットの先や、そのすぐ先のアスファルトを見ているなどしており、つまりは視野が狭くなっているということだ。
ゆえにクルマの動きがぶれ、併せてポールや柱、白線の認識が遅れ、切り返しややり直しなどが生じる。

加えて、誰に遠慮しているのか、知らず知らずのうちなのか、なぜかクルマの移動量を控えめにし、省スペース性を優先させてしまうことで切り返しの回数を増やし、結果的に時間がかかってしまっているひともいる。

ということは、これでバック入れがうまくできないなら、まずはその逆を意識すればいいことになる。

つまり、

1-2. 遠くを見る。
2-2. 使える周辺スペースはフルに使う。

この2つだ。
といっても程度問題で、はるか向こうの山の稜線に目をやるということではない。
また、周囲のクルマを押しのけて(よけさせて)というわけでもない。

要するに、いままでより少し視野を広げ、ゆったりかまえるということだ。
これだけで余裕ができて周囲のクルマを待たせることもなくなり、結果的に駐車に費やす時間が短くなる。

車庫入れが苦手、もしくは下手と自認している方、まずはこのふたつを意識してみるといい。それだけで心理的にだいぶ変わってくることだろう。

駐車操作時に目を向ける先は?

本来、やろうとしていることはシンプルだ。
白線の中にクルマを収める。ただそれだけのことだ。
その途中がうまくいかないからクルマがうまく収まらない。

ではうまく収めるにはどうすればいいか?
まずキーになるのは、所定の位置にクルマを置くまでの間の視線の運び方だ。
写真の例のような車庫入れパターンの場合、運転席から車両の左斜め後方と左右を肉眼で、補助的に左右のドアミラーで確認すべし。

ここからは実践だ。

まず狙うスペースに直角に止まり、そのスペースに何もないことを確認したら、そこから右斜め前にクルマを移動させる。

ねらったスペースに左寄せし・・・
左ドアガラスから車庫や駐車場内に何もないことを確認する。
状況にもよるが、自宅車庫であれ駐車場であれ、道幅をいっぱいに利用してクルマを前に出す。


ここでのコツは、住宅街であれ店舗の駐車場であれ、道幅をいっぱいに使い、自車の右前を突き出すようにすることだ。

車両前部を突き出すように。


次にシフトレバーをRに入れ、ブレーキをしっかり踏みながら腰の左側に体重をかけるよう座り直し、同時に上半身もヨガ並みにねじってバックさせる。
このとき、駐めるスペースの左側先っちょ、駐車場でねらったスペースの左側にクルマがある場合は、そのクルマの右前角に自車の左後ろをぶつけるかのようになるべく近づく。
あくまでも「かのように」。
本当にぶつけないように。

ましてや、ひとやクルマに接触しておいて、ヘラヘラ笑いながら「ごめんね!」といい捨てて逃げるなんざあとんでもない話で、後で取っつかまえ、よくよく調べて酒飲んでたなんてことがわかったら、その時点で無期刑にしてしかるべきだ。

車両左後部を車庫左側の先などにぶつけんばかりの軌跡で車庫に向かう。寄せすぎに見えるが、あらかじめこのようにしておけば、スペース中央に収めるのに、ハンドルを戻し気味にする微調整だけですむ。

クルマと周囲との距離というのは、中から見たときと外から見たときとでは印象が異なり、運転席から見てギリギリまで寄せたつもりでも外から見ると結構空間があるものだ。窓から直接見てかなり近いようでも、左ドアミラーの中で自車左の壁ないし車両との間隔が写真くらいのようであれば適当だ。

車内から。
左ドアミラーを下に向け、ミラー内に車両最外側とフェンスなどとの間が少しでも空いていることが確認できれば絶対にぶつからない。

また、先にこの軌跡をイメージしておくことで、結果的に自然とスペース中央に、まっすぐに収めやすくなる。

ハンドルさばきはケチケチと

同時にハンドルのまわし方はどうするか。
ここで多めにまわすと不要な切り返しの元になってしまう。よってまわす量は必要最小限に。
省エネ・省資源、物価高でなお意識しなきゃならない出費の抑制・・・何でも節約のこの時代、このさい、ハンドルまわしもケチったらしくいこう。

後退しながら、必要に応じてハンドル回転を継ぎ足すというイメージで操作すべし。
下がりながら周囲の確認をするとき、後ろにしても前にしても、目安にするものは遠目のものにしてみるといい。
後ろのクルマのフロントガラス、建物なら壁や窓、前方なら向かいにあるクルマのフロントガラスなど、何でもかまわない。

不思議なことに、やや遠目のものを視線の軸にするとブレが少なくなる。
さきに「道幅をいっぱいに使い・・・」と書いたが、これはバックのスタートを駐車スペースから少しでも離れた場所から行うことで、スペースの全域をしっかり把握しながら行いたいのと、1発駐車を目指すハンドルの微調整&修正するための距離稼ぎという理由がある。

どうせ駐めるなら、まっすぐに決めたいところだ。

車両先端がスペース内に収まるまでの間、ハンドル修正を加えてまっすぐにしたいわけだが、前方を見ると同時にサイドにも目を向け、ドアガラス下辺(ウエストラインという)が、自宅車庫ならブロックなど、駐車場なら白線と平行になるようにする。
この場合、ガラスを下げる必要があるが、何も自車まわりの白線でなくても、少し先にある建物の壁やドア、ガラスなど、地面に対して平行な部分などでもかまわない。

これはフロントドア、リヤドアのウエストラインが、地面と平行する一直線スタイルを採っているクルマの場合に限られ、この部分にうねりが与えられたクルマでは通用しないが、ひとつの参考にしてみたらいいと思う。

段差のある駐車場ないし車庫なら、終盤で前タイヤが段差を乗り上げるわけだが、このとき前タイヤが乗り上げる感触が1回になることを意識するといい。
感触が1回なら前輪は左右ぴったり同時に乗っかっているわけで、その時点でクルマはちゃんと垂直・・・スペースに対してまっすぐに入っている。
左右わずかでも時間差があるなら斜めに入っている証拠だ。
ちょっと神経を研ぎ澄ませてみよう。

写真下部の白がドア、レンガ敷きが地面だ。レンガや立っているブロックなどの直線とドアが平行であればクルマはまっすぐになっている。
これは外の駐車場の白線でも同じ。
アングルを変えてこんな具合。
段差越えの感触が1回であれば、段差に対してクルマは直角に乗ることができているので意識しよう。
ひとまずまっすぐ収まった!

どこで駐車完とするか?

みなさん、出かけた先の駐車場で、周囲のクルマを見てみてほしい。
前輪であれ後輪であれ、タイヤを車止めのブロックにしっかり密着させた状態で駐めているクルマを見かけると思う。

タイヤをタイヤ留めブロックに押し付けたところで何がすぐに起きるわけではないのだが、クルマにとってもタイヤにとってもいいことでもない。

これを駐車のたびに繰り返していると、先々何かしらの致命的なトラブルが必ず起きる・・・こたァないが、後輪はブロックに押し付けられているわ、前輪は前輪で地面を後退する向きに力を受けながら地面をグリップしているわの状態は、厳密にいえば、ホイールベースが縮む方向にある状態のままブレーキをかけられているわけだから、サスペンションにも無用な負担がかかっていると思う。
ブロックにタイヤを当て、歪ませた状態にしておくことが、タイヤや車体に対して決していいこととは思えない。
これくらいのことで壊れるほどクルマはヤワじゃないが、何もクルマに無用な負担をかけることもないだろう。

夜寝るとき、顔を踏まれながら心地よく眠りにつけるやつはいない。

ブロックにタイヤが当たったままパーキングブレーキをかけることはせず、ここはいったんN(ニュートラル)に入れてブレーキペダルから足を離し、ブロックに当たったときの反力でわずかにクルマを前進させてからブレーキをかけて駐車完了としよう。

もっと細かくいうなら、レバーN+フットブレーキ制動の状態でパーキングブレーキをかけるのがいい。

いまの電動ブレーキ車の場合、クルマが適当な制動力で車輪を止めてくれるからいいとして、駐車ブレーキがハンドレバー式、もしくは足踏み式の場合、同じ腕力または脚力で制動する場合、フットブレーキを踏んだ状態で行なうほうがしっかり制動される。

後輪のブレーキシューなりパッドなりがすでに制動させている状態を保持させるだけの操作になるからだ。

フットブレーキを踏まずに駐車ブレーキを操作すると、後輪の制動を人力でイチから行なうことになる。倍力装置による制動力併用の人力操作と人力のみの制動力・・・どちらが上かはいうまでもないだろう。
こう考えると、案外電動ブレーキ車も、ブレーキ踏みでスイッチ操作するほうがモーター負担が少ないのかもしれない。

試しに、駐車ブレーキを「フットブレーキ+ハンドor足踏みブレーキ」「ハンドor足踏みブレーキのみ」のふたとおり操作し、解除しないでそっとアクセルペダルを踏んでみるといい。
どちらの場合も発進するだろうが、「フットブレーキ+ハンドor足踏みブレーキ」のほうがにじり出しはかなり鈍いはずである。
したがって、フットブレーキ状態で人力ブレーキを継ぎ足すほうがいいというわけだ。

整理すると、

タイヤがブロックに当たったらブレーキ
          ↓
シフトをNに入れる
          ↓
ブレーキを離してブロックから少し離れる
          ↓
ブレーキを再度踏み、その状態で駐車ブレーキ
          ↓
ブレーキペダルから足を離してシフトをPに(MTなら1速またはRに)

となる。

この状態でいったんシフトをN(ニュートラル)に入れ・・・
ブレーキペダルから足を離し、自然に車両が少し前に出たところで・・・
ブレーキを踏んで・・・
パーキングブレーキをかける。 ブレーキ踏みの状態で駐車ブレーキをかけるほうが効きは強い。
このほうがタイヤにもクルマにもやさしいのですよ。

タイヤとブロックは、離れてさえいれば、その距離がたとえ1mmであっても充分だ。
写真は、ブロックから75mm離れた状態だ。

ここまでの「作法」、文章にすると、書いた当の本人でさえ、かなりめんどくさく感じられるのだが、こういった日常のちょいとしたクルマへの気遣いが、「長期に渡って何事も起こらない」というメリットとなって返ってくる。
朝起きて歯を磨き、顔を洗うのと同様、習慣化してしまえば苦ではなくなる。

バックでの車庫入れが苦手な方、試してみるといい。

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