マツダの美しい「センティア」、頂点に輝くフラッグシップは先進技術搭載、~413.5万円で91年登場【今日は何の日?5月21日】

マツダ「センティア」
マツダ「センティア」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日5月21日は、バブル時代に生まれたマツダの最高級車「センティア」が誕生した日だ。それまでのマツダの最上級車「ルーチェ」の後継であり、パーソナルユースに徹した先進技術満載のプレステージセダンである。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・マツダ センティアのすべて

■流麗なフォルムと先進技術満載のセンティア

1991(平成3)年5月21日、マツダからルーチェに代わる新フラッグシップ「センティア」がデビューした。堂々としたサイズの流麗な高級セダンでありながら、ショーファーカーでなく、ドライバー自身が優雅に運転を楽しむために開発された先進技術満載の最高級車である。

マツダ「センティア」
1991年にデビューしたマツダのフラッグシップ「センティア」
マツダ「センティア」
「センティア」のリアビュー

センティアの前身ルーチェはロータリーエンジンも搭載

初代「ルーチェ」
1966年にデビューした初代「ルーチェ」

マツダのフラッグシップであるミドルクラスセダンのルーチェは、1966年に誕生。デザインはイタリアの巨匠ジウジアーロが担当し、丸目4灯が特徴のヨーロピアンな雰囲気を漂わせていた。エンジンは、最高出力78ps/最大トルク11.8kgmを発生する新開発の1.5L直4 SOHCで、車体が軽量であったため俊敏な走りを発揮した。

ルーチェ・ロータリークーペ
1969年にデビューした「ルーチェ・ロータリークーペ」、ロータリーパワーで圧巻の走りを披露

ルーチェ誕生の3年後の1969年には、セダンをクーペ化したロータリー搭載車「ルーチェ・ロータリークーペ」がデビュー。最高出力126psで最高速度190km/hに達するロータリーエンジンの高性能ぶりは、当時の「クラウン」や「スカイライン」の6気筒エンジンを凌駕する圧倒的な動力性能を誇った。

ルーチェ・ロータリークーペ
1969年にデビューした「ルーチェ・ロータリークーペ」、ロータリーパワーで圧巻の走りを披露

1977年のモデルチェンジでは、それまでより上級クラスのモデルとなり、1981年の4代目ではロータリーエンジン車が廃止され、ガソリン車のみの設定となった。さらに1986年の5代目はV6エンジンを搭載した本格的な高級セダンとなったが、1991年にセンティアにバトンを渡す形で生産を終了した。

新たなフラッグシップとして存在感をアピールしたセンティア

マツダ「センティア」
1991年にデビューしたマツダのフラッグシップ「センティア」

1980年代後半にピークを迎えた未曽有のバブル好景気を背景に、マツダもルーチェに続く新しいフラッグシップを開発、それが1991年5月のこの日にデビューした「センティア」だ。開発コンセプトは、ライバルの「クラウン」や「セドリック」とは一味異なることを意識した“アナザー(もうひとつの)・プレステージ”だった。

センティアのエンジン
センティア 30エクスクルーシブのJE-ZE型3.0Lエンジン(左)と25リミテッドSのJ5-DE型V6エンジン(右)

センティアのスタイリングは、2850mmというクラス最大級のホイールベースを持ち、美しい面構成の4ドアピラードハードトップを採用。低く構えた流麗なフォルムの3ナンバーサイズで、高級らしく堂々とした印象を与えた。

センティアのシート
センティア 30エクスクルーシブの前後シート(上)と25リミテッドSの前後シート(下)

パワートレインは、最高出力160ps/最大トルク21.5kgmを発揮する2.5L V6 DOHC、200ps/27.7kgmの3.0L V6 DOHCの2種エンジンと4速ATの組み合わせ。両エンジンとも、低中速重視の実用的なセッテイングが施された。

制作中コクピット
センティア 30エクスクルーシブのコクピット(上)と25リミテッドSのコクピット(下)

駆動方式は、フロントミッドシップのFRで、フロントとリアが52:48の理想的な前後重量配分を実現。サスペンションは4輪マルチリンク式で車速感応型4WSを採用。また、ラウンディッシュで上品な室内空間とともに厳選された素材の仕様、6ポジション/12スピーカーオーディオなど、さらに最上級エクシードではオーストリア・シュミトフェルドバッハ製の最高級牛皮が装備された。

マツダ「センティア」
「センティア」の流麗なフォルム

車両価格は、275万~413.5万円。当時の大卒初任給は17.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で361万~543万円に相当する。

自動車電話
センティアのカタログにはオプションで「自動車電話」も! 6万2000円也

センティアは発売1年目は2.6万台と好調に滑り出したが、以降はバブル崩壊の煽りで徐々に右肩下がりになり、2000年に生産を終了した。

注目の先進技術ソーラーベンチレーション

センティアの先進技術中で特に注目を集めたのは、世界初となるソーラーベンチレーションである。これは、サンルーフに搭載した太陽電池でファンを回し、走行中・停車中に室内を換気して快適な室内空間を維持するシステムである。

太陽電池付きサンルーフ
センティアに搭載される太陽電池付きサンルーフ

炎天下に駐車しても室内温度の上昇を抑え、エアコン作動時にすぐにエアコン効果が期待できるのだ。太陽エネルギーによるバッテリーへの充電もでき、充電状態を最適化できる。今から30年以上も前にこのような技術を採用するとは驚きである。

太陽電池付きサンルーフ
センティアに搭載される太陽電池付きサンルーフ

ちなみにトヨタも、2009年の3代目「プリウス」でルーフに太陽光パネルを付けてベンチレーションシステムを採用。4代目と5代目では、太陽光エネルギーによってPHEVの駆動用電池に充電ができるようにしたソーラー充電システムを採用した。1年間で走行距離約1250km分に相当する電力を生み出すという。

トヨタ「プリウスPHV」のソーラーパネル
2017年にデビューしたトヨタ「プリウスPHV」のソーラーパネル

太陽光パネルは、現在は効率とコストが見合わない点があるが、今後の改良次第ではカーボンニュートラルエネルギーの有力な手段となることが期待される。

・・・・・・・
センティアが実現した流麗な美しいフォルムと先進の機能装備による優雅なドライビング、贅沢な装備による快適な室内、これらはバブル景気だったからできたと言える。マツダにとってもう二度と作り得ない、頂点のクルマなのかもしれない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

キーワードで検索する

著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…