お米の値段も上がっているこのご時世で、圧倒的なコストパフォーマンスを実現したBYDシーライオン7に脱帽!

日本投入モデルの第4弾となる上級SUV「シーライオン7」をライバルのテスラ「モデルY」と比較チェック

BYDの勢いが止まらない。筆者が先日訪れた中国・上海モーターショーでは、最も来場者を集めていたブースのひとつがBYDだった。その場で披露されたのは、新開発のPHEV専用・水平対向4気筒エンジン。革新的な技術開発に積極的な姿勢を強く印象づけた。

さらに、わずか5分の充電で最大400kmの走行が可能となる超急速充電技術「スーパーeプラットフォーム」も発表。これに連動し、中国本土にはすでに4000か所以上の超高出力充電器を設置する計画を明らかにしている。

BYDの上級ブランド「迎望(ヤンワン)」が展示した発電用の2.0L 水平対向4気筒エンジン。
最大1000Vの高電圧システムにより超高速充電を可能とする「スーパーe-プラットフォーム」。

一方、日本市場では、2023年1月に「ATTO 3」、同年9月に「ドルフィン」、2024年6月には「シール」と、着実にラインアップを拡充。これまでに累計4000台を販売している。グローバルでは2024年に427万台を販売し、世界販売台数ランキングで7位につけるその実力からすれば、まだ日本での展開は緒についたばかり。しかし、2025年内にはPHEVモデルの導入と全国100拠点の販売網を構築、さらに2026年後半には日本専用設計の軽EVを投入することを発表するなど、日本市場を本気で攻略する足取りも加速しつつある。

そんな飛ぶ鳥を落とす勢いでのBYDが日本市場に送り込んだ最新SUVが、シーライオン7である。筆者はこれまでATTO 3、ドルフィン、シールにも試乗しているが、シーライオン7が一番のお気に入り。デザイン(これは好みがあると思うが)、装備、価格のどれもが高度にバランスしていて、「ありかも、BYD!」という長澤まさみさんの決め台詞が頭の中でリフレインする。

BYDシーライオン7は2グレード展開。車両本体価格は、後輪駆動の「シーライオン7」が495万円、四輪駆動の「シーライオン7 AWD」ガ572万円。
ボディカラーは4色展開。万人受けしそうな「オーロラホワイト」、鮮やかなブルーの「アトランティスグレー」、灰色が渋い雰囲気の「シャークグレー」、定番の「コスモスブラック」が用意される。

そんなシーライオン7だが、ライバルの筆頭と言えるのはテスラ・モデルYだろう。EVというカテゴリーを超え、世界で最も売れている車種となったモデルYとの比較を交えながらシーライオン7を紹介していこう。

2020年に発売が開始され、日本では2022年から導入されたテスラ・モデルY。2025年1月に大規模な改良が行われた。

エクステリア:全長4.8m、全幅1.9mの堂々サイズでクーペフォルムを纏う

シーライオン7は全長4830mm×全幅1925mm×全高1620mmと、堂々たるサイズを誇る。トヨタRAV4やスバル・フォレスターなど、日本で人気のSUVよりもひと回り大きい。デザインは他のBYDモデルと同様、元アウディのチーフデザイナーであるヴォルフガング・エッガーの指揮による「海洋シリーズ」のデザインコードに基づいており、X字を描くフロントフェイスやブーメラン型LEDライトが独特の表情をつくり出している。また、リヤゲートにはダックテール型のスポイラーが組み込まれるなど空力的にも優れたデザインで、Cd値(空気抵抗係数)は0.28に抑えられている。

「オーシャンX」と呼ばれるフロントフェイス。ブーメラン型LEDが特徴。
テールランプは横一文字。その上にはダックテール状の小さなスポイラーが備わる。
シーライオン7のボディサイズは全長4830mm×全幅1925mm×全高1620mm、ホイールベース2930mm。

モデルYのボディサイズは全長4800mm×全幅1920mm×全高1635mmで、シーライオン7よりもやや全長が短く、全高がわずかに高いだけで、大きさはよく似ている。ルーフがなだらかに下降するクーペSUV風のシルエットも共通の特徴だ。また、モデルYは2025年に改良が加えられ、同社のサイバートラックと共通イメージの薄型ヘッドライトを採用し、より近未来的な印象のフロントマスクとなっている。

2025年1月の改良で、顔つきがシャープになったモデルY。
テールランプ形状も横一文字に変更。さらに拡散反射技術を採用し、夜間は路面を赤く照らし出す。
モデルYは全長4800mm×全幅1920mm×全高1635mm、ホイールベース2890mm。

インテリア:先進性と上質さを巧みに融合したシーライオン7

シーライオン7のインテリアは、先進性と上質さを巧みに融合している。インパネ中央に鎮座するタッチスクリーンは15.6インチの大画面。BYDのお得意技である回転機構はシーライオン7にも備わっており、横型・縦型のどちらでも利用できる。最新の7nmチップの車載用高性能チップの採用によってインフォテインメント系の操作性は大幅に向上していて、例えば運転席側の窓をタッチスクリーンから指一本で開閉したりと、さまざまな操作が可能となっている。また、スマートフォンやApple Watch経由で施錠・解錠・起動が可能となったのもBYDのモデルではシーライオン7が初めてだ。

シーライオン7で驚いたのは、スマートフォンのワイヤレス充電機能。ちょっと昔のクルマだと7.5Wなど充電速度が遅いものが多いのだが、シーライオン7では50Wという高速充電が可能な上、トレイには冷却機能まで備わっているのだ。一方、モデルYのワイヤレス充電はふたつあるのだが、15Wにとどまっているのがちょっと残念。このあたりはスマホ先進国の中国が一歩リードしている印象だ。

シーライオン7のインパネ。価格を考えれば十分以上の高級感が味わえる。内装色はブラックのみ。
運転席前には液晶メーターが備わる。情報量も豊富で見やすい。
スイッチタイプのシフトノブをセンターコンソールに配置。従来のクルマから乗り換えても戸惑うことなく運転できる。使用頻度が高いスイッチを周囲に配置しているのも親切。
スマートフォンのワイヤレス充電器は、冷却機能付き。充電中、スマホ本体が熱くなりすぎるのを防いでくれる。

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15.6インチの大型タッチスクリーンでは、様々な操作が可能。

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指1本で窓の開閉操作も細かく行える。

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アプリの配置も自在に行える。

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画面のテーマや壁紙も好みに応じて変更できる。

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ステアリングやブレーキのアシスト量なども画面操作で変更可能。

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ADAS(先進安全装備)の設定画面。

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回生ブレーキの強さは2段階。

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バッテリーの充電設定画面。

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車両制御の設定画面。
ディナウディオ製のハイファイオーディオと採用。フロントガラス3面には防音ガラスを採用しており、静粛性が高いのもシーライオン7の自慢ポイント。

シーライオン7は運転席前にも液晶メーターが備わり、ヘッドアップディスプレイも搭載されているが、モデルYはというと15インチの大型タッチスクリーンにほぼすべてを集約。スイッチ類の姿はなく、シフト操作もこの画面で行うという割り切りぶりだ。シーライオン7が操作性にも配慮してギヤセレクトやドライブモードの切り替えのための物理スイッチを残しているのとは対照的。デジタルガジェットのようなスマートな運転席に驚かされるモデルYだが、慣れるまでしばらくは運転に戸惑うのは確実で、このあたりは好みが分かれるところだろう。

ミニマリズムの極地とも言えるモデルYのインパネ。

シート:シーライオン7はナッパレザー+キルティング加工で上質感を演出

シーライオン7のシートはナッパレザー仕様で中央部にダイヤモンドステッチがあしらわれ、高級感のある趣だ。ヘッドレストは一体でサイドのサポートが張り出しており、しっかりと身体を支えてくれる。運転席側12ウェイ/助手席側6ウェイの電動調整機構を備えており、さらにヒーター/ベンチレーションも完備、リヤシートも20度のリクライニング機構のほかシートヒーターが備わるなど至れり尽くせりだ。

シートの表皮はナッパレザーで、キルティング加工も高級感を抱かせる。
やや床が高く感じられるものの、広さは十分な後席。シートヒーターが後席に備わるのもうれしい。

一方、モデルYの最新型もフロントシートにベンチレーションが加わったほか、リヤシートもヘッドレストの幅拡大(17mm)や座面の延長(15mm)、背もたれの電動調整機能の追加によって居住性の向上につながる改良が施されている。

モデルYの室内。内装色は写真のホワイトのほか、ブラックも選択可能。また、モデルYも前席シートヒーター&ベンチレーション、後席シートヒーターを完備する。

ラゲッジルーム:どちらも容量はたっぷり。フロントにもトランクを用意

ラゲッジルームはというと、シーライオン7は通常時500Lで、リヤシートの背もたれを前倒しすると1769Lまで拡大可能。深さを2段階に調整できるフロアボードを備えており、上側にセットすれば開口部とツライチになるなど、気が利いている。

シーライオン7のラゲッジルーム。通常時は500Lの容量。
リヤシートの背もたれを前倒しすると、1769Lに拡大。
フロアボードは上下2段に調整可能。写真は下段に置いた状態。
床下には小物が収納できるちょっとしたスペースが備わる。
さらにその下には、パンク修理剤などが収まっている。
リヤゲートは電動開閉式。足を車両の下に入れても開閉できるハンズフリー機能付き。
フロントフード下のトランク、いわゆる「フランク」の容量は58L。深さが結構ある。

荷室容量に関してはモデルYがリードしているようで、通常時は約822L、後席格納時は約2138L。フロントトランクもシーライオン7が58Lなのに対して、モデルYは117Lと広い。さらに排水口が備わっているので氷と飲み物を入れて簡易クーラーボックスとしても利用できるというのもユニークだ。

一充電走行距離:シーライオン7はRWDが590km、AWDが540kmを実現

走行性能に関するスペックを見てみると、シーライオン7にはBYDお得意の「ブレードバッテリー」を採用。リン酸鉄リチウム(LFP)セルを薄く長い板状にパッケージングし、セル・トゥ・ボディ構造で車体フロアの一部として組み込んでいる。総電力量は82.56kWhで、一充電走行距離(WLTCモード)はRWD(後輪駆動)モデルが590km、AWD(四輪駆動)モデルが540kmを実現する。

シーライオン7のモーターは、リヤが最高出力230kW/最大トルク380Nm。AWDモデルの場合、フロントに最高出力160kW/最大トルク310Nmというスペック。AWDモデルは0-100km/h加速を4.5秒でこなすという俊足ぶりだ。

シーライオン7のタイヤサイズはRWDモデルがフロント235/50R19・リヤ255/45R19、AWDモデルが前後ともに245/45R20となる。

対するモデルYのバッテリー種類は、製造工場やグレードによってリン酸鉄リチウム(LFP)やニッケル-コバルト-アルミニウム酸リチウム(NCA)などを使い分けており、総電力量も未公表。一充電走行距離(自社測定値)はRWDモデルが547kmとシーライオン7に一歩譲る一方、ロングレンジという名称で電池容量も大きいAWDモデルは635kmと圧倒している。モデルYのモーター出力は未公表だが、AWDモデルの0-100km/h加速は4.8秒とシーライオン7に一歩譲る。

モデルYのホイールは標準が19インチ(写真左)。25万1000円のオプションで20インチ(写真右)を用意。

急速充電:シーライオン7はCHAdeMO、モデルYはスーパーチャージャー

EVの使い勝手を左右するのが急速充電に関する性能・装備だ。シーライオン7の急速充電ポートは日本で主流のCHAdeMO規格で、最大105kWの受け入れ電力に対応している。

シーライオン7の充電ポートは右リヤフェンダー部に備わる。

モデルYはというと、テスラが独自に展開してきた急速充電ネットワーク「スーパーチャージャー」を搭載している。最大250kWという高出力による充電の速さは圧倒的で、ケーブルをクルマに接続するだけで自動的に車両を認識して充電が始まる「プラグ&プレイ」も便利だ。テスラのEVはクルマ単体ではなく、このスーパーチャージャーという充電インフラとセットで評価されるべきもの、という感じが強い。

こちらは改良前のモデルYによる充電風景。スーパーチャージャーのケーブルは細くて取り回ししやすい。

シーライオン7のCHAdeMOとモデルYのスーパーチャージャーのどっちがいいかというと、自分を取り巻く環境やクルマの使い方次第によって一長一短がある。CHAdeMOの急速充電器の数は約1万基、一方のスーパーチャージャーは638基(125箇所)。数は圧倒的にCHAdeMOの方が多く、安心感は高い。

CHAdeMOの課題は出力で、現在のところ、平均的な出力は40kW。1回の急速充電は30分が目安なので、40kW程度だとバッテリー残量はそれほど回復しないのが実際だ。経済産業省は急速充電器の平均出力を80kWまで引き上げるべく、高速道路のサービスエリアを中心に90〜150kW級の急速充電器を増設している最中。シーライオン7で遠出をする際などは、時間とお金の節約のために、徐々に増えつつある高出力の急速充電器を上手に活用したいところだ。

スーパーチャージャーはというと、高出力の利便性は素晴らしいものの設置数が多くないため、そもそも自分の行動範囲内に施設がないとその恩恵が受けられない。しかし、1箇所の拠点に複数基があるため、先客がいて充電待ちの行列に並ぶ…ということがあまりないのはメリットだ。また、アダプターを使えばCHAdeMOの急速充電器を利用することも可能。その場合、最大出力は50kW程度に制限されてしまうが…。

なお、シーライオン7ではV2H(Vehicle to Home)システムにも対応していて、車両のバッテリーを家にも供給が可能。また、外部給電器を介して家電製品に電力を供給するV2L(Vehicle to Home)にも対応している。

車両本体価格:補助金を考慮すると、シーライオン7の実質価格は415万円から

そして車両価格はというと、シーライオン7のRWDモデルは495万円、AWDモデルが572万円。BYDオートジャパンは「補助金なしでもご検討いただける価格を実現できた」と鼻息が荒いが、補助金を活用すればさらにお得に購入が可能だ。令和7年度のCEV補助金は35万円、さらに東京都で購入・登録した場合は東京都の補助金45万円、合計80万円の優遇が受けられるため、実質的な価格は415万円からとなる。

モデルYはRWDが595万円、AWDのロングレンジが683万円なので、シーライオン7よりも価格帯は上。ただ、補助金はモデルYの方が手厚く、CEV補助金が87万円、東京都の補助金が40万円で合計は127万円。実質的な価格は468万円からで、シーライオン7との価格差は小さくなる。
※東京都の補助金は、再生可能エネルギーを導入していたりすると上乗せがある。

こうして見比べると、モデルYも魅力的なのだが、シーライオン7のコストパフォーマンスの高さはちょっと驚くほどのもの。これほどの堂々とした車格と充実した装備、余裕のある航続距離を備えるEVが、400万円代前半から購入できてしまうのだから。

また、テスラの購入はオンラインからに限られるが、BYDは前述のとおり、全国にディーラー網を展開中だ。その後のアフターサービスも含めると、「高価な買い物は、やっぱり実店舗じゃないと不安」という人は多いはず。その点も、BYDが日本の幅広いユーザーに受け入れられやすい要素だろう。今後、日本発売が予定されているPHEVモデルや軽自動車も俄然楽しみになると同時に、中国の勢いにちょっと背筋が涼しくなってくる今日この頃である。

BYD シーライオン7 AWD
全長×全幅×全高:4830mm×1925mm×1620mm
ホイールベース:2920mm
車両重量:2340kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式
フロントモーター
YS210XYA型かご形三相誘導モーター
最高出力:160kW(217ps)
最大トルク:310Nm
リヤモーター
TZ200XYC型交流同期モーター
最高出力:230kW(312ps)
最大トルク:380Nm
バッテリー
リン酸鉄リチウムイオン電池(BYDブレードバッテリー)
総電圧:550V
総電力量:82.56kWh

WLTC交流電力量消費率:177Wh/km
一充電走行距離:540km
車両価格:572万円

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著者プロフィール

長野 達郎 近影

長野 達郎

1975年生まれ。小学生の頃、兄が購入していた『カーグラフィック』誌の影響により、クルマへの興味が芽生…