RAV FOURからRAV4へ・・・新型RAV4登場で振り返る、わんぱくチビ、31年の成長物語 ~総覧・歴代RAV4~

新型RAV4が発表された。
初代RAV4が出たのは1994年5月だから、早くも31年が経つ。
その間に表れたRAV4は今回の新型で6世代。
これまでの過去5世代を、いっけん無関係なクルマとともに眺めていく。

TEXT:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi) PHOTO:トヨタ自動車/モーターファン・アーカイブ

初代登場からはや31年・・・意外な生まれとともに見渡す、トヨタRAV4ヒストリー

あれ、もうそんな時期だっけ?

そう思って調べたら、日本での発売は2019年4月だった。
何のことかといえば現行RAV4の話。
街で見るたび、いまの5代めが出たのはついこの間、まだ3~4年しか経っていないと思っていたら6年過ぎていたのだから、記憶が曖昧というかいいかげんというか・・・
もっとも、自己弁護するわけじゃないが、今回の新型RAV4に「もう?」なのは、何も自分の記憶違いのせいばかりじゃない。

一部例外はあるが、乗用車で発売から4年といえば、以前ならフルチェンジ秒読みの段階だ。
周囲のニューカーに対してスタイリングも見劣りしている頃で、世間は「次の新型はいつ?」と待ちわびる頃だ。

ところがいまのRAV4は、発売からさきの4年どころか6年も経ったというのに、スタイリングにちっとも陳腐化が感じられないのだ。
トヨタに対して提灯持ちするわけじゃない。
調べれば売れ行きが鈍っているわけじゃなし、いまでも安定的に月平均2500台売れており、実際、トヨタ内でも大幅マイナーチェンジで通したら? という声もあったらしい。
当のトヨタが本当にそう考えていたのだとしたら、路上の現行RAV4を見る私が「次期型はまだ先」と考えたのも不思議じゃない。

2019年4月に国内発売された現行RAV4。まだあと数年はこのまま通用しそうなのだが。

RAV4に限らないが、やはりいまのクルマは技術面だけでなく、デザイン面でも長期サイクルに耐えるほど進化しているのだ。

新型RAV4が5月21日に発表された。
あくまでもワールドプレミアで、私たちの前に現れたのはまだプロトタイプのモデル。
日本発売は2025年度を予定しているという。
「年度」ということは年内12月までの発売はなさそうで、売られるのは早くて8か月先。
それまでの時間つぶしに、本稿では過去5世代に渡る歴代RAV4をごらんいただこう。
8か月かけてお読みください。

その前に・・・RAV4誕生前の日本の4WD市場

4WDは、思想として(メカ構造の話じゃなく)おおかた3とおりあり、いわゆる生活4駆と、本格派オフロード4駆、スポーツ4駆がある。
生活4駆は初心者マーク付きからベテランまで、雪道でも安心して走れる需要を満たす、オーソドックスな乗用車に向けた4WDを指す。
当初は、普段はFFなりFRなり2駆状態で走行し、必要な時だけ4WDにするパートタイム式だったが、その後はタイトコーナーブレーキング現象やスイッチ操作のないフルタイム式に主流が移っていった。

スカイラインGT-Rに代表されるスポーツ4駆は、雪道を安心してというよりは、2輪駆動では余剰となってスリップを招く高出力をいっそ4輪に振り分け、有り余るパワーを有効に使って路面をしっかり掴む&蹴っとばし、そのマージンを走行安定性に振り向けることを主眼にしたものだ。

生活4駆のひとつ、日産パルサー。ビスカスカップリングを起用した最初のクルマだった(1986年)。
「凶悪犯人」と揶揄する人もいた、怖い顔のスカイラインGT-R(R32・1989年)。16年ぶりの復活は、日産のFR用4駆システム・アテーサE-TSで遂げた。

問題はオフロード4駆の本格派だ。
ランドクルーザーをはじめ、日産にはサファリ、テラノ、三菱ならパジェロ・・・世界中にばらまかれるクルマなら彼の地でどんな使われ方をするかわからない。4WDを活かして道なき道を走れるばかりでなく、必ず帰ることができなければならないのだ。
4駆方式はパートタイム式が基本。技術の向上でオフロードでの信頼性に確証が得られるとやがてこちらもフルタイム式に移行した。
生活4駆やスポーツ4駆と違うのは、それが20年、30年単位で使われる可能性があることで、何よりも頑丈さが要求される・・・4駆方式が変わってもラダーフレームは絶対に外せない。

ランクル200の透視図。この手のクルマには必須のラダーフレームが見える。

ただ、ラダーフレームを用いる以上、重量が問題になる。
長期使用に耐える構造である反面、重量がかさむため、この種のクルマは初手から燃費はあきらめなければならないのが、メーカーにとってもユーザーにとっても悩みの種だった。

1990年代初頭、いわゆる「RVブーム」で、巨漢のパジェロが瞬間的に月間販売台数1位になるときもあったほどこの種のクルマが流行したことがあったが、元来日本にはこれほどの頑丈さが必要なほどの道もなければ走る機会もないし、そもそも入れる場所もない(本当はよーく探せばあるのだが。)。

世界の途上国で活きる機能も、日本で乗る限りはオーバークオリティだったのだ。

ランクルほどの本格4WDでなくとも、ライトな感覚で見晴らしよく乗れ、オンロードでもオフロードでも気軽に乗れるクルマはないものか。
ここに目をつけて生まれたのがRAV4だ。

初代RAV4

1994年5月10日発表・発売。
まったく新しいコンセプトの4WDである。
このときは「RAV4」でも販売チャンネルごとに車名をわずかに変え、カローラ店向けを「RAV4 L」、トヨタオート店(その後のネッツ店)向けを「RAV4 J」とした。

初代RAV4(1994年5月)。

ネーミング由来は「レクリエーショナル・アクティブ・ヴィークル・4WD」。
「L」は「リバティ」、「J」は「ジョイフル」の頭文字だ。

機種は基本的にはモノグレード構成で、一部装備を略したE仕様があるのみ。
といっても、カタログ装備表上、E仕様で省かれるのはチルトハンドルとエアコンくらいのものだった。

自慢じゃないが、90年代初頭、パジェロが大人気だった頃に学生だった私は、日本の道では大げさな本格ヨンクオフローダーが街であふれている光景が奇異に映り、ドア1枚造れないくせに、「見晴らしのよさはそのままに、ランクルから過剰な造り・機能をそぎ落とし、モノコックボディ&FFベース4WDの、日常使いもオフロードでも走れるクルマ・・・要するにFFベースヨンクのモノコック版軽量ランクル、普段着で乗れるランクルはできないものか」と考えたことがあった。
その後に出た初代RAV4はまさにドンピシャなクルマで、「やはり素人が考えることは、とっくにプロも考えているものだ」と思ったものだ。

RAV4が出た時点で思想が近いクルマは、似たサイズを持つ初代エスクードだろう。
ただしあちらは「ランナバウト」を謳った割に造りは本格派で、副変速機付き4WDメカ、ラダーフレームを備えていた。
やはりジムニーを造っているスズキのクルマだったのである。
もうひとつ、これは私見だが、姿形の違いはともかく、4WDを武器に海へ山へのコンセプトが近似する初代RVRが挙げられる。
世に出たのはRVRのほうが先だったが、この頃併行開発されていた3列シートのシャリオ2代目のホイールベースとボディを短縮し、乗用車由来のRVに仕立て上げていた。

RAV4に近い思想のクルマは、それまでは初代エスクードだった(1988年)。
もうひとつ、初代RVRも数えられよう(1991年)。

お話をRAV4に戻して。
モノコック式で仕上げたボディは、全長×全幅×全高=3695×1695×1655mmのコンパクトサイズで、横から見ると、ホイールベース2200mmにして大径な215/70R16タイヤのせいでチョロQを思わせる。もしかしたら、ぜんまいで走るんじゃないか。
205mmの最低地上高はランクル並みだが、「おれはでかいんだぞ!」とでもいいたげだったランクルと違い、全身キュートな外観を身にまとう。

この記事を書くまで忘れていたが、リヤドアはスペアタイヤを背負う横開き式。
そのスペアタイヤは右と下にオフセットされ、後方視界を少しでも多く確保するように努めている。

初代RAV4。
初代RAV4。
サイドがキュートでチョロQのよう。後ろのスペアタイヤのところに10円玉をはさんだらウイリーしそうだ(そんなことはない)。
初代RAV4計器盤。メーターまわりのデザインモチーフは、たしかラジカセだったと思う。

短っかい全長は車室寸に表れ、キャビンの長さ・幅・高さは1645×1435×1195mm。
幅や高さはともかく、室内長なんていまのジムニーより短い(ジムニーの室内長は1795mm)。

とてもそうは見えないのだが、寸法上はいまのジムニーよりも短い室内長の、初代RAV4のインテリア。

ぜんまいは・・・じゃなかった、エンジンは当時のコロナやカムリでおなじみ2000ccの3S-FE。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リヤがダブルウィッシュボーンの独立懸架式・・・大排気量にものいわせ、悪路走破性一点張りの車軸式とは対極をゆく、「あくまでも乗用車的に、乗用車的に」という思想はスタイルだけでなく、メカにも表れているといえよう。

当時のコロナやカリーナ、カムリ/ビスタなどでおなじみだった3S-FEエンジン。

乗用車的といえば、当時の10・15モード燃費が5MT車で12.6km/L、4AT車で11.0km/Lなのもランクル級では得られない乗用車並みの数値で、サイズが小さいということもあるが、何よりもモノコック構造を採択したことの大きな効用だ。

初代RAV4のモノコックボディ。フレームは見当たらない。

乗用車志向だけに4WDメカは当時のコロナ4WD技術を転用、副変速機はない。
この頃の4WDではよくある話で、MT車用とAT車用とでは構造が異なり、MT車用はセンターデフに内蔵されたビスカスカップリングによるフルタイム式。
差動制限機能によってセンターデフを機械的にロックさせるフルタイム4WDだ。

初代RAV4の四駆システム。

AT車用は同じフルタイムでも、トヨタが最初のFFカローラで用いた「ハイマチック」の湿式多版クラッチの調圧を電子制御化した「ECハイマチック」で、ATの中の副変速機を働かせる、おおもとの油圧=ライン圧の一部を湿式多板クラッチの調圧に用い、多版クラッチ圧の強弱で前後の駆動力配分を調整する。
車速や前後輪の回転速度差、ギヤ段やスロットル開度をコンピューターで検知して配分調整する4WDだから、受動的というか、自然現象的に働くMT用のビスカス式に対し、AT用は能動的だから、堂々たる電子制御式4WDだ。

ATならすでに存在している油圧を、4WDのための湿式多版クラッチにつまみ食いするアイデアは、スバルが最初と記憶する。

こちらはAT車に用いられるEC-ハイマチック式フルタイム4WD。「ハイマチック(HYMATIC)」とは、「HYdric Multi plate Active Traction Intelligent Control」の略だ。

ライト感覚で乗れるキュートな姿で現れたオン&オフ4WDのRAV4だが、トヨタ&RAV4がチョロQサイズだけでずっと通用すると思っていたはずはなく、翌1995年4月にはホイールベースを210mm延ばした5ドアモデル「RAV4 V(ファイブ)を追加している。

これは当初から併行開発していたに違いない。
そうでなければショートRAV4からたかだか1年弱で出せるはずはないからだ。

RAV4から1年後、5ドアのRAV4 Vが追加された。
RAV4のあんちゃんという感じ。
RAV4 V の計器盤。
RAV4 V 前席。
RAV4 V 後席。居住性は、RAV4とは段違い。

これで野山を翔けまわるわんぱく小僧のRAV4、その様子を後ろから見守るやさしいおにいちゃん・RAV4 Vの2台体制が整った。
この兄弟で新しい市場を構築。
この頃はまだ「SUV」なる呼称はなく、筆者の記憶では、広告に「SUV」のフレーズを使った日本最初のクルマは、1995年のハイラックスサーフだ。

RAV4のヒットは、ホンダからはシビックベースのCR-Vを、日産からはサニーのプラットホームを用いたエクストレイルを誘い出すきっかけになった。

【初代RAV4・主要諸元】

トヨタRAV4 L(5MT・1994年5月10発表・発売)

●全長×全幅×全高:3695×1695×1655mm ●ホイールベース:2200mm ●トレッド前/後:1460/1465mm ●最低地上高:205mm ●車両重量:1150kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:5.0m ●燃費:12.6km/L(10・15モード燃費)、18.2km/L(60km/h定地走行燃費) ●タイヤサイズ:215/70R16 ●エンジン:3S-FE型・水冷直列4気筒DOHC ●総排気量:1998cc ●圧縮比:9.5 ●最高出力:135ps/6000rpm ●最大トルク:18.5kgm/4400rpm ●燃料供給装置:EFI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:58L(無鉛レギュラー) ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式コイルスプリング/ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/リーディング・トレーリング ●車両本体価格:176万9000円(当時・東京価格。消費税抜き)

同じ開発者の作品もうひとつ

初代RAV4の開発まとめ役を務めた野中正勝さん(当時、トヨタ自動車第3開発センターチーフエンジニア)は、かねてからこのようなクルマを造りたいと思っていたそうで、初代RAV4は、会社が本人の思い描いたことをやりたいようにやらせてあげればその商品はヒットするという好例だと思う。

その野中さんはもうひとつ、RAV4前年の第30回東京モーターショー1993に展示された「メガクルーザー」の開発者でもある。
野中さんばかりじゃない、メガクルーザーとRAV4、野中さん以外の開発スタッフも同じひとたちだったのだ。
RAV4の発売タイミングからして兼務だったと思うのだが、サイズが特大級のメガクルーザーと、ライト感覚RVのRAV4、両者(両車)走るフィールドは同じでも、サイズが対極にあるクルマの開発を同じひとたちが務めたのがおもしろい。

メガクルーザー。開発はRAV4と同じ野中正勝さん。
メガクルーザー室内。

サイズは全長5000×全幅2170×全高2105mm・・・こんどはランクルのほうこそがチョロQに見えちまうほどの巨体で、当時はこんなクルマが走れる道があるのかと思ったのだが、考えてみたらいま街を走っている大型バスやトラックなんかこれ以上のサイズなわけで、こんな心配はまったくの杞憂だった。

行けないところはないと思うしかない。
崖から落ちてもそのまま走れそうだ。
車幅感覚の把握もへったくれもない、ワイドな室内。

このメガクルーザーは、アメリカのハマーとの近似性を指摘されたが、こんなクルマをトヨタが造ったなんて! と話題になったものだ。

【メガクルーザー・主要諸元】

トヨタ メガクルーザー(1993年・第30回東京モーターショー1993 参考出品車)

●全長×全幅×全高:5000×2170×2105mm ●ホイールベース:3390mm ●トレッド前/後:1785/1765mm ●最低地上高:450mm ●車両重量:2900kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:5.6m(4WS時) ●燃費:- ●タイヤサイズ:37×12.50R17-8 ●エンジン:15B-T型・水冷直列4気筒インタークーラー付直噴ディーゼルターボ ●総排気量:4101cc ●圧縮比:- ●最高出力:150ps/3400rpm ●最大トルク:39.0kgm/3400rpm ●燃料供給装置:- ●燃料タンク容量:108L(軽油) ●サスペンション 前/後:ダブルウィッシュボーン式/ダブルウィッシュボーン式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/インボード型 ●車両本体価格:

RAV4前夜

実はこの初代RAV4、その前夜的モデルがある。
第28回東京モーターショー1989のトヨタブースで展示されたコンセプトモデル・・・まずは写真をごらんいただこう。
これだ ↓ 。

1989年の第28回東京モーターショーに展示されたコンセプトモデル「RAV FOUR」。

車名を口にすると「RAV4」と同じ「ラブフォー」だが、このときの表記は「RAV FOUR」。
スタイリングは、その後の初代RAV4がチョロQなら、こちら「RAV FOUR」は4輪バギーの趣だ。

ボディ下半身は樹脂パネルで1周させてプロテクターの役を担わせ、ボディカラーと呼べるのはフードとリヤクオーターくらいのものだ。
そのクオーターもロールバー的なデザインで、これが外観の大きな特徴になっている。
フロントライトがまんまるお目めなのと、細いグリル下にウインチの取付部位になっているのはどこかランクル40的だ。

内装は、ショーモデルということもあろうが、黒と真っ赤のツートーンで構成され、実にポップなカラーリングだ。
派手ではあるが、実用性もきちんと備えられている。
写真ではわかりにくいが、助手席正面のネット状もの入れをはじめとする収容も豊富に準備されており、ただのもの入ればかりか、助手席&後席シートのアレンジで、室内にモトクロッサーやマウンテンバイクを収められるようになっている。

RAV FOUR 室内。

このコンセプトモデルがショー会場で思いのほかの反響を呼び、市販化が検討された挙句、世に生まれたのが、私たちが知る初代RAV4なわけだ。

そしてこのRAV FOURの開発を手掛けたのもさきの野中正勝さん。先代からの継続車ならともかく、せめて新しいアイデアの製品・商品は、やっぱり発案者が手がけなければいけないヤ。

RAV FOURの荷室に、モトクロッサーやマウンテンバイクが積めると書いたが、それも道理で、実は野中さんはモトクロッサーの愛好家で、野山を翔けまわることを趣味としているひとなのだ。
野中さんはRAV FOURやRAV4を、タイヤを4つくっつけたモトクロッサーにしたかったに違いない。

1989年といえば好景気真っ只中の頃で、日本のクルマ市場はセダンが主流。
物品税廃止、消費税の導入で、いわゆる3ナンバー車(の特にセダン)が売れに売れ始めようとしていた時代だ。
いくらショー会場で好評だったからといって、この時点でよくぞ主流から外れたコンセプトモデルの市販化にGOサインが出たものだ。
これが約35年先、その末裔がSUVとして主流になるなんて、誰が予想したことだろう。
(ついでにいうと、新型RAV4の発表会でこのRAV FOURも披露されていたが、ショー終了後はたいてい壊して捨てられてしまうコンセプトモデルをよく取っておいたものだ)。

初代RAV4 V EV

初代RAV4の話をもうちょい続ける。

初代RAV4は、電気自動車トライヤーでもある。
1997年10月、ロング版RAV4 Vをベースとする電気自動車の「RAV4 V EV」が、税抜き495万円で販売された。
年間の販売目標台数は100台。

RAV4 V EV。
RAV4 V EV リヤ。
バッテリーの並びや見映えが古い感じがする。

【RAV4 V EV 主要諸元】

●全長×全幅×全高:3980×1695×1675mm ●駆動用バッテリー:シール型ニッケル水素バッテリー ●車両重量:1540kg ●乗車定員:5名 ●最高速度:125km/h ●1充電走行距離(10・15モード):215km ●駆動方式:FF ●駆動用モーター種類:交流同期モーター ●最高出力:50kW/3100~4600rpm ●最大トルク:190Nm/0~1500rpm ●トランスアクスル:モーター・減速機一体型 ●タイヤ:195/80R16(低ころがり) ●車両本体価格:495万円(当時・東京価格。税抜き)

初代RAV4 V EV インダクティブ充電仕様車新設

RAV4 V EVに、新充電方式を持つインダクティブ充電仕様車が追加された。

インタクティブ充電モデルが追加されたRAV4 V EV。
同車リヤ。
壁掛け式、床置き式、2種の接地方式が用意されたインダクティブ充電器。

「インダクティブ」とは「電磁誘導」のことで、「インダクティブ充電システム」とは、既存の接触充電システム「コンダクティブ充電システム」に対し、外部の充電器から電磁誘導で電力を供給する非接触充電システムのことだ。
GMが開発したインダクティブ充電技術「Magne-Charge」を基本に、トヨタとGMが共同で、パドル(充電器側)&チャージポート(車両側)の小型・軽量化を図って世界最小化を実現した。

併せて、この新充電方式に基づいた2種(壁掛け型と床設置型)の充電器も発売している。

ということは、「非接触」といえどケーブルが要るわけで、てっきり、いまのスマートホンの「おくだけ充電」のように、地面に内蔵された充電システムの上にクルマを置いて非接触充電するものかと思ったのだがそうではない。

【RAV4 V EV インダクティブ充電仕様車 主要諸元】

●全長×全幅×全高:3980×1695×1675mm ●駆動用バッテリー:シール型ニッケル水素バッテリー ●車両重量:1540kg ●乗車定員:5名 ●最高速度:125km/h ●1充電走行距離(10・15モード):215km ●駆動方式:FF ●駆動用モーター種類:交流同期モーター ●最高出力:50kW/3100~4600rpm ●最大トルク:190Nm/0~1500rpm ●充電器種類:屋外式 ●入力電源:単相200V/40A ●標準充電時間:約6時間 ●トランスアクスル:モーター・減速機一体型 ●タイヤ:195/80R16(低ころがり) ●車両本体価格:457万円(当時・東京価格。税抜き) ●インダクティブ充電器価格:38万円(販社オプション・壁掛け型、床設置型同額)

2代目RAV4

2代目以降はかけ足で。

RAV4が初のモデルチェンジを受け、2000年5月に発表・発売された。
「RAV4 L」がカローラ店に振られ、「RAV4 J」がこの時点でオート店から改称されたネッツ店に配属されたのは初代と同じだ。

初代は日本ではもちろんのこと、アメリカでも人気を博すヒット作となったが、2代目は初代の路線を推し進める作戦が採られた。キープコンセプトというと「守り」だが、ここは「正常進化」と解釈したい。

今回はショート版とロング版、同時発進。
初代は3ドアが本来の「RAV4」だったが、2代目は逆に5ドアを主体に日米欧、3つのトヨタデザイン拠点で競作となり、最終的にアメリカのCALTYのデザインが採用された。
そう、2代目セリカを初作品とする、アメリカのトヨタデザイン拠点である。

ボディは拡大され、3ドアは全長×全幅×全高:3750×1735×1680mm、5ドアが4145×1735×1690mmと、幅で1700mmを超えてふたり仲良く3ナンバー・・・普通乗用車枠に踏み込んだ。

2代目RAV4(2000年)。
こちらは2代目のロング版。
ずいぶん大人びた2代目RAV4のリヤ。
計器盤もぐんとグレードアップした。
2代目RAV4インテリア。

トヨタは慣例的に、フルチェンジでもプラットホームは2代使い続けるが、RAV4は贅沢にも2代目でプラットホーム新設。
パワートレーンは、初代の途中で高性能版3S-GE搭載車も加えたり、2WDも追加したりして、ずいぶんバリエーション豊かになっていたが、その路線を継続し、2代目もワイドバリエーションになった。

コロナプレミオに初搭載した直噴D-4もこの頃には軌道に乗り、2代目RAV4にも搭載。
2000のD-4を4WDに与え、FFにはコンベンショナルな1800を搭載した。

スタイリングは5ドアを主体に開発されたから、3ドアショートは5ドアを凝縮したといい替えていい。
その3ドアは、初代が持っていたキュートさがさらに増幅され、特にサイド視ではよい意味で幼い、かわいらしいコロリンとしたスタイリングになった。
いっぽうの5ドアは初代に対して急激に大人びたもので、見ようではいまのSUV勢に通じる雰囲気を先取りしている。

「コロリン」としたスタイルが愛らしい、2代目RAV4のサイド視。

初代の、3ドアのわんぱく小僧、5ドアの3ドア弟を見守るお兄ちゃんという関係性は2代目も変わらないが、初代の年齢差が中学生と小学生ぐらいのイメージなら、2代目は何だかもっと年の離れた兄弟・・・いうなれば大学生と幼稚園児くらいの差を感じる。

2代目RAV4主要諸元】

トヨタRAV4 J 3ドア 4WD X(Super ECT・2000年5月19発表・発売)

●全長×全幅×全高:3750×1735×1680mm ●ホイールベース:2280mm ●トレッド前/後:1505/1495mm ●最低地上高:190mm ●車両重量:1280kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:5.0m ●燃費:14.0km/L(10・15モード燃費) ●タイヤサイズ:215/70R16 ●エンジン:1AZ-FSE型・水冷直列4気筒DOHC ●総排気量:1998cc ●圧縮比:9.8 ●最高出力:152ps/6000rpm ●最大トルク:20.4kgm/4000rpm ●燃料供給装置:D-4(筒内直接燃料噴射) ●燃料タンク容量:57L(無鉛レギュラー) ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式コイルスプリング/ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/リーディング・トレーリング ●車両本体価格:192万8000円(当時・東京価格。消費税抜き)

3代目RAV4

シビック、シティ、オデッセイ、フィット、プリメーラ、ワゴンR、レガシィ・・・これらの初代モデルは、自動車史に残るエポックを刻んだクルマだ。
私見だが、並みならぬ意気で投入し、市場を喚起したり席巻したりしたクルマは、モデルチェンジで代を進めるにおよび、自らが誘い出したライバル勢の中に埋没していくことになる。これはさきのホンダ組に顕著なのだが、RAV4もその例に漏れない。
もうひとつ、開発まとめ役がその都度変わっていることも起因していよう。
クルマに込められた所期の志がだんだん薄れていくのである。
ちょっと例外なのはレガシィで、4代目までは「レガシィ!」路線を保ったが、北米を向くようになった5代目以降は存在感が薄れた。

RAV4も3代目の頃になると、初代を知る目にはさすがに目立たない存在になっていた。
登場は2005年11月。

3代目は2005年に登場。
5ドアは国内になし。5ドアに1本化された。

登場から10年以上経つと土壌も変わる・・・RAV4に触発されたCR-V、エクストレイル、周囲ばかりか、身内のトヨタにさえハリアーやヴァンガードといったライバル勢が増え、市場でひしめき合っていたからである。

その中にあって3代目が採ったのは、本格派SUVへの道だった。
さすがはお金持ちメーカー。
トヨタは3代目RAV4に対し、またも1世代でのプラットホーム刷新を許した。

思想はセダンライクな快適空間をめざすSUVとなり、ショート版3ドアをやめてロングの5ドアに1本化。
ネーミングも販社ごとの区分けをなくして単なる「RAV4」となり、ネッツ店専売となった。

サイズはさらに拡大され、全長×全幅×全高:4335×1815~1855×1685に・・・ついぞ1800mmをも超えるように。
RAV4に限らず、この頃から国産車はますます海外ユースを重視するようになっていく。

計器盤の雰囲気は2代目を踏襲している。

【3代目RAV4・主要諸元】

トヨタRAV4 G 4WD
(Super CVT-I 7速シーケンシャルシフトマチック・2005年11月14発表・発売)

●全長×全幅×全高:4335×1815×1685mm ●ホイールベース:2560mm ●トレッド前/後:1560/1560mm ●最低地上高:190mm ●車両重量:1460kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.1m ●燃費:12.6km/L(10・15モード燃費) ●タイヤサイズ:225/65R17 ●エンジン:2AZ-FE型・水冷直列4気筒DOHC ●総排気量:2362cc ●圧縮比:9.8 ●最高出力:170ps/6000rpm ●最大トルク:22.8kgm/4000rpm ●燃料供給装置:EFI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:60L(無鉛レギュラー) ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式コイルスプリング/ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:237万3000円

5ドアへの統一で、もはや初代にイメージされるキュートさはなくなった上、先述ハリアーやヴァンガード、その後のクルーガーのラインナップ増加もあってRAV4の存在意義が薄れたため、2013年に誕生した次代4代目は国内投入が見送られて海外専売に。
国内版は3代目が2016年まで継続されたのち、いちどRAV4の歴史に幕を下ろすことになる。

海外専売となった4代目RAV4。
この4代目が国内投入されても大きな成功は得られなかったような気がする。
もうプレミアムSUVの雰囲気の計器盤だ。

5代めRAV4

2019年4月、RAV4が日本市場に帰ってきた。約3年を経ての復帰である。
販売はもちろんカローラ店だが、クルマと同様、販売チャンネルにネッツ店も復帰した。(一部はトヨタモビリティ東京も)。
これがいまたくさん走っている5代目で、先日発表された6代目が発売予定とされる2025年度まで継続されるはずだ。

国内でのRAV4ブランドを再びよみがえらせた立役者・5代めにして現行のRAV4。

3代目あたりから兆しはあったが、もう初代の面影はなし。
「RAV4」を名乗っても、もはや別のクルマである。
初代を知る者としてはあのライト感覚がなくなって寂しい気がするが、いまやSUVが主流の時代だ。
初代の思想が薄れ、どっちつかずの姿で出すより、いっそ過去を忘れた新生RAV4にするほうがよかったのかもしれない。

もう初代の面影は見出せない。
後ろのガラスが寝ていて、荷の積載性よりもスタイルを優先したように思える。
現行型の計器盤。ちょっとヤリスに似ている。
インテリアもプレミアム感いっぱい。
5代めはハイブリッドが主流。ガソリン車もあったが、いまは廃止されている。

結果的には大成功。
再投入された5代めRAV4は人気を博す。
冒頭で述べたように、いまもって陳腐化することなくちゃんと売れているのだから、歴代RAV4の中で成功作に数えてしかるべきだろう。

それにしてもこのRAV4は、いったん市場から姿を消して復帰し、存在感を取り戻したクルマの稀有な例で、この復活劇はお見事だったと思う。
このような場合、たいていは「昔の名前で出ています」だけで終わるものだ。
もっともこれは日本で見るからそのように考えるのであって、海外では初代から5代めまで途絶えていない。

開発コンセプトは「Robust Accurate Vehicle With 4 Wheel Drive」・・・SUVらしい力強さと使用性へのきめ細かな配慮を兼ね備えた4WDという思想が込められた。

さすがに5代めではハイブリッド車が登板した。
その後にはプラグインハイブリッドが追加され、いまの最新現行ではFF車が廃止され、ガソリン4WD、ハイブリッド4WD、プラグインハイブリッド4WDだけになっている。

【5代目RAV4・主要諸元】

トヨタRAV4 HYBRID G E-Four
(リダクション機構付THSⅡ・2019年4月10日 国内発表・発売)

●全長×全幅×全高:4600×1855×1685mm ●ホイールベース:2690mm ●トレッド前/後:1605/1625mm ●最低地上高:190mm ●車両重量:1690kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.5m ●燃費:20.6km/L(WLTC総合モード)、25.0km/h(JC08モード) ●タイヤサイズ:225/60R18 ●エンジン:A25A-FXS型・水冷直列4気筒DOHC ●総排気量:2487cc ●圧縮比:- ●最高出力:178ps/5700rpm ●最大トルク:22.5kgm/3600-5200rpm ●フロントモーター 型式/種類/最高出力/最大トルク:3NM/交流同期電動機/120ps/20.6kgm ●リヤモーター 型式/種類/最高出力/最大トルク:4NM/交流同期電動機/54ps/12.3kgm ●動力用主電池/容量:ニッケル水素電池/6.5Ah ●燃料供給装置:筒内直接+ポート燃料噴射(D-4S) ●燃料タンク容量:55L(無鉛レギュラー) ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式コイルスプリング/ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:381万7800円

以上、初代に重点を置いて現行5代めまでのRAV4を眺めてみた。
発表された新型6代目も、価格次第では5代めの延長戦で現代的なSUV像を描いていくのだろう、ライバルと渡り合いながら。

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