中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?

中国自動車メーカーの存在感が増している。BYDの販売台数は世界第6位でホンダ、日産を上回る。200社とも300社とも言われる中国自動車メーカーのトップクラスと中国市場で防戦につとめる日欧米の自動車メーカーが集う世界最大のモーターショー、上海モーターショーでその勢いを見た。日本メーカーの巻き返しはあるのか?【上海モーターショー2025レポート 前編】
PHOTO:Motor-Fan/長野達郎(NAGANO Tatsuo)

NEV(新エネルギー車)だけじゃない。ロボットも空飛ぶクルマも

中国北京と上海で毎年交互開催される国際モーターショー。2025年は上海国際モーターショー(AUTO  SHANGHAI 2025)の年である。世界最大の自動車市場で行なわれる世界最大のモーターショー。4月23~24日のプレスデーでもその熱気は凄まじかった。まず、スケールが大きい。2日間ですべてのメーカーブースを見て回るのは困難だ。

1 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の1枚めの画像
ROEWEは、上海汽車集団(SAIC)のブランド

2 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の2枚めの画像
BYDのブース

3 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の3枚めの画像
CATLのブース

4 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の4枚めの画像
深藍汽車(Deepal)のブース

5 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の5枚めの画像
広州汽車のブース

6 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の6枚めの画像
JAC(江准汽車集団)のブース

7 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の7枚めの画像
SAIC(上海汽車集団)

8 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の8枚めの画像
Xiaomi(小米)のブース

9 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の9枚めの画像
AVATR(アバター)は、長安汽車のブランドのひとつ

10 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の10枚めの画像
XPENG(シャオペン小鵬)のブース

11 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の11枚めの画像
奇瑞汽車(CHERY)のブース

12 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の12枚めの画像
GEELY GALAXY(吉利銀河)のブース

13 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の13枚めの画像
五菱(WUKING)は上海汽車集団50.1%/GM44%/江西省汽車集団5.9%の出資する自動車メーカー

14 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の14枚めの画像
長安汽車のブース

15 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の15枚めの画像
方程豹(FANGCHENGBAO)はBYDのブランド

16 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の16枚めの画像
北京越野のブース。北京越野はBAIC(北京汽車集団)のブランド

17 / 17

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の17枚めの画像
理想汽車(Li AUTO)のブース

AUTO SHANGHAI 2025 フロアガイド

1 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の1枚めの画像

2 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の2枚めの画像

3 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の3枚めの画像

4 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の4枚めの画像

5 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の5枚めの画像

6 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の6枚めの画像

7 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の7枚めの画像

8 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の8枚めの画像

9 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の9枚めの画像

10 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の10枚めの画像

11 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の11枚めの画像

12 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の12枚めの画像

13 / 13

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の13枚めの画像

出展している自動車ブランドのブースは、ざっと80(中国のほか日米欧を含めて)。2023年のジャパンモビリティショーと比較してもその多さは際立っている。中国の自動車メーカーは200社とも言われているから上海モーターショーに出展している中国ブランドは、言わば中国自動車メーカーのなかの一軍プレーヤーたちだ。

GAC(広州汽車)の空飛ぶクルマのコンセプトモデル「GOVY-AirCar」。地上走行用の四輪シャシーと空中飛行用のドローンモジュールは分離/結合が可能。
「GOVY-AirCar」の定員は2名。航続距離は20-30km、飛行速度は120km/hだ。最大テイクオフウェイトは950kg。GAC独自のADiGO-Pilot自動運転システムを搭載している。
紅旗ブランド初の空飛ぶクルマ。これも地上走行用の車両と空中飛行用のeVTOL機が組み合わされたモジュール構造だ。

だから、ということでもないが、勢いを感じさせるのはやはり中国OEMである。ブースにはBEV、PHEVのニューモデルのほか、空飛ぶクルマ、人型ロボットが並ぶ。それも、かつてのようなこけおどしではなく、すでに実現できているものが多いのだ。ただし、中国自動車市場は、過剰な生産能力と激しい競争に直面しており、業界再編の波が押し寄せていることも同時に感じさせる。淘汰されるブランドも出てきている。韓国・ヒョンデ/キアは、今回出展を見送った。2024年の北京ショーでは熱狂に包まれていたシャオミのブースは、ひっそりとしていた。3名の女子学生の命を落とした3月のシャオミSU7の事故の影響は大きく、テスラ・Model Yのライバルになるはずの新型車の発表が見送られた(YU7はその後5月22日に発表された)。

BYDの上級ブランド「仰望(Yangwang)」のU7は、話題の水平対向4気筒エンジンを発電用に積む。
「仰望(Yangwang)のU7」水平対向の採用理由のひとつはパワートレーンの全高を抑えるため。そのためにオイル供給はドライサンプとしている。

中国の景気後退で新車販売の行方にも翳りが見えていて、各自動車メーカーは割引や金利低減などの販売促進策に力を入れる。

とはいえ、新技術に対する意欲が旺盛なのは、やはり中国OEMだ。特にBYDはブースの規模、内容ともに盛りだくさんで、いまもっとも勢いのあるメーカーであることを示していた。

ファーウェイ(HUAWEI)と江淮汽車(JAC)が共同開発した超高級EV「尊界(MAEXTRO)S800」

1 / 8

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の1枚めの画像
尊界(MAEXTRO)S800

2 / 8

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の2枚めの画像
尊界(MAEXTRO)S800

3 / 8

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の3枚めの画像
尊界(MAEXTRO)S800

4 / 8

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の4枚めの画像
尊界(MAEXTRO)S800

5 / 8

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の5枚めの画像
尊界(MAEXTRO)S800

6 / 8

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の6枚めの画像
尊界(MAEXTRO)S800

7 / 8

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の7枚めの画像
尊界(MAEXTRO)S800

8 / 8

「中国自動車メーカーの“実力”とその“脅威”はホンモノか? 日本勢は生き残れるか?」の8枚めの画像
尊界(MAEXTRO)S800

ファーウェイ(HUAWEI)と江淮汽車(JAC)が共同開発した超高級EV「尊界(MAEXTRO)S800」も今回のモーターショーで初披露された(じつは2024年11月の広州モーターショーでも、ごく一部の関係者に見せていた)。マイバッハやロールスロイスをベンチマークした尊界ブランド初のモデルだ。ファーウェイは、ファーウェイそのものでブースは構えないが、HIMA(鴻蒙智行)として、HUAWEI×賽力斯集団、奇瑞汽車、北京汽車、江准汽車とそれぞれの中国OEMとブランドを立ち上げている。具体的には賽力斯集団(セレス)が「問界(AITO)」、奇瑞汽車(チェリー)が「智界(LUXEED)」、北京汽車が「享界(STELATO)」、江淮汽車が前述した「尊界(MAEXTRO)」だ。

日本ブランドはNEVで存在感を示す必要がある

トヨタのプレスカンファレンスの様子
トヨタはbZ7を発表した。bZ7は現地開発モデルとして、広州汽車集団有限公司(GAC)、広汽トヨタ自動車有限会社(GTMC)、トヨタ知能電動車研究開発センター(中国)有限会社(IEM by TOYOTA)が共同開発したBEV。bZシリーズのフラッグシップセダンだ。

対する日系OEMは、トヨタ/レクサス、ホンダ、日産、マツダが中国市場で生き残っていくための新型車を投入した。それぞれが、中国の合弁先のリソーセス、サプライチェーンを活かして中国OEMの知能化が進んだ新エネルギー車(NEV=BEV、PHEV、FCEV)にキャッチアップを目論む。

マツダがまとめたデータ。2024年の中国乗用車市場における新エネ車(=NEV、BEV/PHEV/REEV/FCEV)の割合は47%に達した。NEVの内容まで見ると、BEVの伸びよりもPHEV/REEVの伸びが大きいことがわかる。つまり、ICEが必要なクルマということだ。

さて、上のグラフはマツダがまとめた中国市場の概況だ。2024年はICE(エンジン)車とNEVの比率は53:47だったが、おそらく2025年はこの比率は逆転するだろう。NEVのなかで販売が増えているのがPHEV/REEV(レンジエクステンダーEV)だ。

長安マツダは、EZ-60を発表。
ホンダは「烨(yè:イエ)」シリーズの第2弾となる「広汽Honda GT・東風Honda GT」を世界初公開した。バッテリーはCATLと共同開発したLFPを使う。イエシリーズは、Momentaと先進運転支援技術、DeepSeekのAI技術も使う。
日産のプレスカンファレンスの様子
日産が掲げる「中国で、中国のために、そして世界へ」という戦略のもと、PHEVのピックアップトラック、Frontier Pro PHEVが発表された。鄭州日産との共同開発によるグローバルモデルだ。フレーム構造のフロントには1.5L直4ターボを搭載。EV走行で最大135km走れる。中国市場で2025年後半に発売予定。将来的には中国からの輸出も想定している。

NEV市場を牽引しているのは中国ブランドで、そのシェアはなんと約9割。そして日系ブランドのそれはわずか1%だ。ちなみに、ここでもトップはBYD(34%)、以下Geely、上海汽車、テスラと続く。日系はTOP10には入ってこない。NEV市場で存在感を示せないと、中国市場からの退場を宣告されかねない。そんな危機感のなかで日系OEMは体勢の立て直しを図っている。

後編はこちらから

キーワードで検索する

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…