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■三菱が誇るFFホットハッチのコルト・ラリーアートバージョンR
2006(平成18)年5月30日、三菱自動車はコンパクトなFF大衆車コルトのスポーツモデル「コルト・ラリーアートバージョンR」を発売した。軽量ボディに154psを発揮する1.5L MIVECインタークーラーターボを搭載したFFホットハッチは、その痛快な走りで走り好きのユーザーから熱い視線を集めた。

三菱黎明期を支えた基幹モデルのコルト

三菱自動車の前身である新三菱重工(三菱重工の前身のひとつ)が、1960年に本格的に乗用車市場に参入するために初めて投入した小型乗用車「三菱500」の後を継いだのが、コルトシリーズである。

コルトシリーズは、1962年の「コルト600」に始まり、1963年に中型車4ドアセダン「コルト1000」、1965年に「コルト800」と「コルト1500」、1966年には「コルト1100」と「コルト1000F」、1968年「ニューコルト1200/1500」と、立て続けにモデル展開して、三菱は自動車メーカーとしての確固たる地位を築いた。

1969年に、初めてギャランの名を冠した「コルトギャラン」を発売。そして1970年に、三菱重工の自動車部門が分離独立し、三菱自動車が誕生した。

この年にデビューした「コルトギャランGTO」を最後に、三菱の基幹モデルはコルトからギャランに引き継がれることになり、コルトの名は三菱のラインナップから消えた。
24年ぶりに復活したコルト
コルトギャランGTOの販売終了から24年経過した2002年に新型コルトがデビューし、コルトの名が復活を果たした。当時三菱自動車は、リコール問題などに端を発した経営不振に陥り、2000年3月にダイムラー・クライスラーと資本提携を結んでいた。

そのような背景から、コルトのデザインはダイムラー・クライスラーから派遣されたオリビエ・ブーレイが担当し、ワンモーションのシンプルなフォルムを採用。フロントマスクには、スリーダイヤモンドマークを中心にしたグリルや立体的なヘッドライトを組み込み、リアにかけて流れるようなラインが特徴だった。

パワートレインは、MIVEC(可変バルブ機構)が組み込まれた最高出力90ps/最大トルク12.3kgmを発揮する1.3L&98ps/13.5kgmの1.5L直4 DOHCの2機種エンジンとCVTの組み合わせ、駆動方式は当初はFFのみだったが、後に4WDが追加された。
提携後初の新型車ということで大々的な販売促進策を図ったコルトは、発売1ヶ月で販売台数1万5000台を超える好調なスタートを切った。その後、徐々に販売は落ちるものの、三菱を代表するコンパクトカーとしてコルト復活を印象付けることに成功した。
ランエボの高性能技術が注入されたコルト・ラリーアートバージョンR


2006年5月のこの日、“まじめ まじめ まじめ COLT”のキャッチコピーで登場したコルトを大きく変貌させた「コルト・ラリーアートバージョンR」がデビューした。開発にあたっては、ランエボ(ランサーエボリューション)の弟分としてエボで培った高性能技術が惜しみなく取り入れられた。

大衆車のコルトを精悍に見せるため、大開口のグリル一体型フロントバンパーやターボ仕様をアピールするボンネットのエアスクープ、空力のためのエアロパーツ、黒いオーバーフェンダーなどを採用。またインテリアは、5速MT車に240km/hフルスケールホワイトメーター、CVT車にはハイコントラストメーターが装備された。さらに5速MT車には本革巻きシフトノブやアルミプレート付ペダルをセット、前席にはスポーツシートを標準装備するなど、内外装ともスポーティに仕上げられた。

また、高性能のターボモデルに相応しく、サスペンションなどがチューニングされ、高剛性ボディを実現するために標準車の1.5倍ものスポット溶接が行なわれた。


パワートレインは、最高出力154ps/最大トルク21.4kgm(MT)&18.3kgm(CVT)を発揮する1.5L直4 DOHCインタークーラーターボエンジンと、INVECS-III 6速スポーツモード付CVTおよびゲトラグ製5速MTの組み合わせ、駆動方式はFFである。

車両価格は、CVT車、5MT車とも197.4万円とリーズナブルな価格に設定。スポーティで精悍なスタイリングとパワフルな走りを誇る、そしてコスパに優れたFFホットハッチとしてスポーツ派ユーザーから熱烈な支持を受けた。
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まじめなコルトとして売り出したFFコンパクトカーが、一転してFFホットハッチのコルト・ラリーアートバージョンRに変身。ラリーアートの冠が付くと、何か戦闘的でガンダムチックなイメージを持ってしまうのは、筆者だけだろうか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。